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212、最高の魔導士
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クリスティーナは信頼しているようだが、アンジェリカは反対か。
俺は端末を眺めながらリーニャに尋ねる。
「リーニャ、お前はどう思う?」
「私はクリスティーナお姉様に賛成です。お姉様はもちろんですけど、私やアンジェリカにとってもルティナ先生は魔法の師でもありますし。エルフ族でも最高の魔導士と呼ばれている方ですから」
端末に映し出された知的な美貌を持つエルフ、それがルティナだ。
最高の魔導士か。
自らも優れた魔導士であるリーニャが言うぐらいだ、よっぽどだろう。
リーニャの言葉にアンジェリカは首を横に振ると言った。
「だったら何故お父様と一緒に戦わなかったの? きっと裏切ったのよ! 彼女だって元老院の一員だもの、最初からドルーゼスと繋がっていたんだわ!」
「アンジェリカ、貴方本当にそう思ってるの? ルティナ先生が裏切ったなんて、貴方が一番先生と仲が良かったじゃない」
「だから許せないのよ! 私にアルーティアへ行くようにお父様に進言したのも彼女じゃない、きっとロファーシルと私を都から遠ざけたかったのよ」
ロファーシルはそれを聞いて、アンジェリカをとりなした。
「ですがアンジェリカ様、結果的にそれが功を奏した。勇者殿やパトリシア殿下たちのご助力なければ、陛下たちのお命も無かったでしょう」
「そ、それは……偶然だわ! カズヤみたいに頼りになる騎士が、アルーティアにいるなんて誰も知らなかったもの」
ナビ子がすうっと飛んでいくと、アンジェリカの肩の上に着地する。
「あらぁ、アンジェリカさんてば素直じゃないですか? カズヤさんが頼りになる騎士だなんて、最初は下僕にしてやるなんていってたのに」
「ば、馬鹿じゃないの、ナビ子! こ、言葉のあやよ」
なるほどな。
アンジェリカたちをアルーティアに特使として送るようにエディセウス王に助言したのは、このルティナだってわけか。
俺はあらためて端末を眺める。
エルフェンシアの魔法学院の校長を務めていた大魔導士。
さらには元老院の一員でもある人物だ。
(これは判断が難しいな)
確かに俺がアルーティアにいたのは単なる偶然だからな。
あの女神の気まぐれだ。
それを知っていたとは思えない。
だが、クリスティーナが言うには、彼女が元老院の反乱を先んじて国王たちに伝えたらしい。
そうでなかったら、クリスティーナもエディセウスも今頃死んでいるかもしれない。
リーニャが言う。
「きっと、先生は何か理由があって都に残ったんだわ。そうとしか思えない」
「理由って何よ、お姉様」
「そ、それは分からないけど……」
答えられず口ごもるリーニャにアンジェリカは言う。
「裏切った罪悪感でお父様を助けただけよ。今頃は帝国の魔将軍に従っているに決まっているわ」
そう言って唇を噛み締めるアンジェリカ。
リーニャが言うように、三姉妹の中で一番ルティナと親しかったのだろう。
だから、エディセウスと共に戦わずに他の元老院の議員と同じように都に残ったことが許せないのかもしれないな。
俺は端末に映し出されたルティナを眺めながら言った。
「従っているか、さもなければ捕らえられているかだろうな」
俺の言葉にアンジェリカは目を見開いた。
「捕らえられているってカズヤ、ルティナ先生が帝国に捕らえられているって言うの?」
「心配か? アンジェリカ」
「ち、違うわ! 別に裏切者のことなんて……」
彼女が国王を逃がした事が連中に知られていれば、十分あり得る話だ。
俺はアンジェリカの鼻をちょこんとつつく。
「顔に心配だって書いてあるぞ。たく、お前は意地っ張りだからな」
「カズヤ……」
どうやら、エルフの三王女の意見は一致しているようだ。
アンジェリカも口ではこう言っているが、ルティナのことを心配しているのが見て取れる。
信頼している相手でなければこうはならないだろう。
それに、相手は元老院の一員だ。
味方にすることが出来れば、情報源としてはこれほど有益な存在はいない。
今現在の王宮内の状況についても、詳しく知っている可能性はある。
(クリスティーナには話していないが、場合によってはエルザベーラを俺が倒す手もあるからな)
もちろん、もっと情報を手に入れてからの話だ。
もしもそれが可能なら、連合軍に被害を出さずに帝国に大きな打撃を与えることが出来る。
俺は肩をすくめるとアンジェリカたちに答えた。
「ルティナか。都に潜入したら彼女が今どこにいるのかも調べるとしよう、どうやら会ってみる価値はありそうだ」
俺は端末を眺めながらリーニャに尋ねる。
「リーニャ、お前はどう思う?」
「私はクリスティーナお姉様に賛成です。お姉様はもちろんですけど、私やアンジェリカにとってもルティナ先生は魔法の師でもありますし。エルフ族でも最高の魔導士と呼ばれている方ですから」
端末に映し出された知的な美貌を持つエルフ、それがルティナだ。
最高の魔導士か。
自らも優れた魔導士であるリーニャが言うぐらいだ、よっぽどだろう。
リーニャの言葉にアンジェリカは首を横に振ると言った。
「だったら何故お父様と一緒に戦わなかったの? きっと裏切ったのよ! 彼女だって元老院の一員だもの、最初からドルーゼスと繋がっていたんだわ!」
「アンジェリカ、貴方本当にそう思ってるの? ルティナ先生が裏切ったなんて、貴方が一番先生と仲が良かったじゃない」
「だから許せないのよ! 私にアルーティアへ行くようにお父様に進言したのも彼女じゃない、きっとロファーシルと私を都から遠ざけたかったのよ」
ロファーシルはそれを聞いて、アンジェリカをとりなした。
「ですがアンジェリカ様、結果的にそれが功を奏した。勇者殿やパトリシア殿下たちのご助力なければ、陛下たちのお命も無かったでしょう」
「そ、それは……偶然だわ! カズヤみたいに頼りになる騎士が、アルーティアにいるなんて誰も知らなかったもの」
ナビ子がすうっと飛んでいくと、アンジェリカの肩の上に着地する。
「あらぁ、アンジェリカさんてば素直じゃないですか? カズヤさんが頼りになる騎士だなんて、最初は下僕にしてやるなんていってたのに」
「ば、馬鹿じゃないの、ナビ子! こ、言葉のあやよ」
なるほどな。
アンジェリカたちをアルーティアに特使として送るようにエディセウス王に助言したのは、このルティナだってわけか。
俺はあらためて端末を眺める。
エルフェンシアの魔法学院の校長を務めていた大魔導士。
さらには元老院の一員でもある人物だ。
(これは判断が難しいな)
確かに俺がアルーティアにいたのは単なる偶然だからな。
あの女神の気まぐれだ。
それを知っていたとは思えない。
だが、クリスティーナが言うには、彼女が元老院の反乱を先んじて国王たちに伝えたらしい。
そうでなかったら、クリスティーナもエディセウスも今頃死んでいるかもしれない。
リーニャが言う。
「きっと、先生は何か理由があって都に残ったんだわ。そうとしか思えない」
「理由って何よ、お姉様」
「そ、それは分からないけど……」
答えられず口ごもるリーニャにアンジェリカは言う。
「裏切った罪悪感でお父様を助けただけよ。今頃は帝国の魔将軍に従っているに決まっているわ」
そう言って唇を噛み締めるアンジェリカ。
リーニャが言うように、三姉妹の中で一番ルティナと親しかったのだろう。
だから、エディセウスと共に戦わずに他の元老院の議員と同じように都に残ったことが許せないのかもしれないな。
俺は端末に映し出されたルティナを眺めながら言った。
「従っているか、さもなければ捕らえられているかだろうな」
俺の言葉にアンジェリカは目を見開いた。
「捕らえられているってカズヤ、ルティナ先生が帝国に捕らえられているって言うの?」
「心配か? アンジェリカ」
「ち、違うわ! 別に裏切者のことなんて……」
彼女が国王を逃がした事が連中に知られていれば、十分あり得る話だ。
俺はアンジェリカの鼻をちょこんとつつく。
「顔に心配だって書いてあるぞ。たく、お前は意地っ張りだからな」
「カズヤ……」
どうやら、エルフの三王女の意見は一致しているようだ。
アンジェリカも口ではこう言っているが、ルティナのことを心配しているのが見て取れる。
信頼している相手でなければこうはならないだろう。
それに、相手は元老院の一員だ。
味方にすることが出来れば、情報源としてはこれほど有益な存在はいない。
今現在の王宮内の状況についても、詳しく知っている可能性はある。
(クリスティーナには話していないが、場合によってはエルザベーラを俺が倒す手もあるからな)
もちろん、もっと情報を手に入れてからの話だ。
もしもそれが可能なら、連合軍に被害を出さずに帝国に大きな打撃を与えることが出来る。
俺は肩をすくめるとアンジェリカたちに答えた。
「ルティナか。都に潜入したら彼女が今どこにいるのかも調べるとしよう、どうやら会ってみる価値はありそうだ」
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