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21.限界
しおりを挟むそれから少し経ち、泣いているロゼリア様のすぐ側にいる私ですが…そろそろ危ないような気がします。なんだか急にズキズキとまた身体中の痛みが戻って来ました。それに何だか少しずつ手足から熱もなくなっていっているような気がします。
「うぅ……ヒック……ユユ様?」
1番近くにいるロゼリア様が私の様子がおかしいことに気がついたのか顔を上げますが…
…フラ~…パタン
「!?」
「っユユ!?」
「「「奥様!!」」」
限界に近づいた私はパタリと横に倒れてしまいます。おかしいです。さっきまでは大丈夫だったのですが…
「ユユ!!大丈夫か!?」
「……ヨルト様…」
…何だか目も掠れてきてしまいました。
「奥様!!」
「しっかりして下さい!!」
「っおい!解呪師と医者はまだなのかよ!!」
皆さんの焦る声が聞こえます。そんな時ようやく解呪師様達が到着しました。
「「ーーっお待たせしました!」」
「「「「遅い!!!」」」」
「ヒッも、申し訳ありません!」
「も、申し訳ありません!!」
「謝るのは後にしろ!!すぐに彼女を!!」
「は、はい…っこれは…」
焦った声で解呪師様に声を上げるヨルト様ですが、私を見た解呪師様が動きを止めてしまいます。
「…………」
「おい!何をしている早くーー」
「…申し訳ありません。これは私にはどうすることもできません」
「何!?何故だ!!」
「……呪いが侵食しすぎています。それにこの呪術には何重にも呪術が重ねられていて…短時間でこの全てを解呪することは困難です…」
「これはただの呪術ではないのか!おい!どう言うことだロゼリア!!」
「し、知りませんよ。…あ、…そういえば公爵様がこれは特別製だとか言っていました。今まで失敗ばかりだったからって…」
「っくそ!なんだそれはっ。なんとかならないのか!」
特別製…『前』はそんなこと一言も聞いたことがなかったと思います。…成程。全て思い通りにはいかないものですね。身体の痛みがどんどん増していき、もうどこが痛いのか痛くないのかわからなくなってきます。…あの時のヨルト様もこうだったのでしょうか?
「……ユユ様死ぬんですか?」
ヨルト様達が解呪師様達と言い争っている中、ロゼリア様がそっと私に話しかけてきました。
「…ロゼリア様…」
「…ユユ様。私はヨルト様からの愛を得ているユユ様が嫌いです。だからユユ様がどうなろうと私には関係ありません」
「……ふふ。…そうですか…」
ロゼリア様の言葉につい笑みがこぼれてしまいます。
「……何を笑っているんですか?今笑える話なんて何もしていませんよ。ユユ様状況わかってますか?もうすぐユユ様は死ぬんです。なのに笑っていられるなんて頭がおかしくなったんじゃないんですか?」
…酷い言われようです。ですがそうですね。こんな時に笑ってしまうなんて変ですよね。でも、私のことを嫌いだと、関係ないと言っているのに言葉とは裏腹にロゼリア様が私のことをとても心配そうに見てくるんです。それが少し可笑しく思ってしまったんです。
「おいロゼリア!何を言っているんだ!!」
「何がですか?だって本当のことですよね?解呪ができないのならユユ様はもうすぐ死んでしまいます」
焦るヨルト様に対しロゼリア様は淡々と私は死ぬと答えます。ですが死ぬだなんて失礼です。
「それはっ「…死にません…よ」…っユユ…」
私はまだ死にませんよ。だって…
「私は…ヨルト様のこと…を…愛して…いますので…。…ヨルト様を…1人残すよう…な真似は…しません…」
「……っユユ」
「……そうですか」
「…は…い」
大切な人が目の前で亡くなってしまう悲しさ、辛さ、絶望を私はよく知っています。あんな思いヨルト様にさせたくありません。ここで私が死んでしまったらヨルト様はずっとその気持ちを抱えることになってしまいます。だから私は死にません。
「ユユ…頼む。頼むから死なないでくれ…君がいなくなれば私はっ!!」
「…ヨルト様…大丈…夫…ですよ」
死なないと言っているのにヨルト様はとても悲愴な表情になります。…本当に心配性ですね…。
重い腕を持ち上げヨルト様の頭を撫でます。…大丈夫です。大丈夫ですよヨルト様。まだまだあなたとやりたいことやお話したいことがたくさんあるのです。だから大丈夫ですよ。
「…大丈…夫…ですよ。大丈夫…ですヨルト様」
「ユユ…」
「ーーそうじゃぞ、そうじゃぞ。儂はお主らを気に入っておるからのぉ」
「「「「「!?」」」」」
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