76 / 97
後編
口を閉じろ
しおりを挟む
「流石に多くない?」
「あぁ、だがやるしかない!」
まさかのホールケーキまで頼んだ私達。ホールしかない種類をつくるなんて卑怯だわ!
「いくぞ……」
アルテも汗がたらりと流れる。さすがにカロリーがヤバそうです。ごめんね、エリーナ。私、あなたのもとの体重知らない……。
心の中で謝りながら、目の前に並ぶケーキにフォークをさした。
「美味しい!」
「だなぁ」
口にいれたそれらはやっぱり美味しくて、幸せな気持ちになる。
念のため、お店に確かめたら、手をつけてないものはお持ち帰りokだったので、ホールは最悪、皆で食べよう。
もぐもぐと食べ進めていると、アルテが笑顔で聞いてきた。
「エリナは向こうでも甘いものは好きか?」
「ん? 好きに決まってるじゃない! よく行くのはアーリー。シャルも好きね。あとは、うーんとグースとか!」
「そうか、色々行ってるんだな」
「ナホと一緒に……」
よく行ってた。お喋りするために。
「ナホと話して、むこうに帰って――、また行けるかなあ」
たはは、と笑いながら私は次のケーキを口にいれる。ブルーベリーののったチーズケーキ。少し甘酸っぱい。
「俺もはっきりと伝えないとなぁ」
アルテが笑いながら言う。
「何を?」
聞くと、んーと口を曲げながら彼が微妙な顔をする。
「むこうに戻って、言わないといけない事がある。絶対に負けられないヤツが現れたから、ソイツに持っていかれる前に、急がないと――」
「はい?」
「まあ、こっちのことだ」
そう言って、彼もチーズケーキの半分を口に運んでいた。もしかして、アルテには、向こうに好きな人がいるのかな。
だったら、戻りたくて当たり前なのかな。負けたくない――か、誰だか知らないけど、私だって、負けたくないよ。
次に手を伸ばすのは、少しほろ苦いザッハトルテ。
◇
「何だか久しぶりな気がするね」
「本番は俺だけだからな。もしかしたら、これが最後になるかもな」
ケーキ制覇後、テスト飛行中の私達。
これが、きっとアルテと二人で乗る最後のハイエアート。前と違って、風のガードがついているし、私の座席は前になった。後ろの座席をメインに変えたそうだ。
何だろう。後ろから話しかけられる事や背中越しに感じる彼の存在がすごくドキドキして恥ずかしい。
前に反対に座っていた時、彼もこんな気持ちだったらいいのにな。なんて、思ってしまう。
「ねえ、アルテ。ナホはどこに行ったと思う?」
「さぁ、わからない。ただ、もう一人と言っていた。その相手が誰なのかわかれば……」
「もう一人ってどういう意味なのかな……」
あまり思い出したくないけれどあの時の事を思い出す。
彼女の言った言葉、今回は、効いているつまり彼女は魅了の効かない相手を言っていた? もしかして、神様から何かもらったものを身につけていたら効果がないとか?
ナホは、「月城君」がこの世界にいることを知っていて探してる?
それじゃあ、ルミナスとグリードの事を確かめるつもりなのかな? でも、ナホは「もう一人」と言っていた。それがどちらをさしていたんだろう。
「グリードかルミナスか」
アルテも同じ考えのようだ。
「弟王子の動向も気になるらしいな。グリードが言っていた」
「あー、あの小悪魔キャラかぁ。ナホに魅了されてるのかなぁ」
「めんどくさい魔法だな。アイツは何を考えてこんなアイテムを渡してるんだか」
「ほんと、何だろうね」
ただただ、攻略の為だと思ってた。ユウは何か思ってそれぞれ渡したりしてたのかな。気まぐれに姿を見せたり隠れたりする彼の気持ちなんてわかるわけないけれど、考えてみる。
うん、わからない!
「見ろ! 綺麗だぞ」
日が傾き、オレンジ色にほんのりと染まりだす。雲と雲の隙間からまぶしいくらいの光が覗いていて、すごく綺麗。
アルテの瞳と幸運の宝石、二つと同じ色だ。
「夕焼けなら、明日も晴れるな」
「そうだね」
「明日、俺は――」
「ん?」
振り返ると、苦笑いを彼は浮かべていた。
二人きりの時間が終わる。伝えるなら今しかない?
「アルテ、私、あなたのこと――」
「エリナ! 口を閉じろ!」
「へ?」
いざっ! と心に決めたのに、アルテがいいタイミングで口を閉じろとか言う。なんなの? 嫌がらせ?
言われた通り口を閉じると、いつぞやのレース中にしたような急降下急上昇をされた。
話そうすると、何度も何度も同じ事をされて、さすがに私は凹んだ。
「あぁ、だがやるしかない!」
まさかのホールケーキまで頼んだ私達。ホールしかない種類をつくるなんて卑怯だわ!
「いくぞ……」
アルテも汗がたらりと流れる。さすがにカロリーがヤバそうです。ごめんね、エリーナ。私、あなたのもとの体重知らない……。
心の中で謝りながら、目の前に並ぶケーキにフォークをさした。
「美味しい!」
「だなぁ」
口にいれたそれらはやっぱり美味しくて、幸せな気持ちになる。
念のため、お店に確かめたら、手をつけてないものはお持ち帰りokだったので、ホールは最悪、皆で食べよう。
もぐもぐと食べ進めていると、アルテが笑顔で聞いてきた。
「エリナは向こうでも甘いものは好きか?」
「ん? 好きに決まってるじゃない! よく行くのはアーリー。シャルも好きね。あとは、うーんとグースとか!」
「そうか、色々行ってるんだな」
「ナホと一緒に……」
よく行ってた。お喋りするために。
「ナホと話して、むこうに帰って――、また行けるかなあ」
たはは、と笑いながら私は次のケーキを口にいれる。ブルーベリーののったチーズケーキ。少し甘酸っぱい。
「俺もはっきりと伝えないとなぁ」
アルテが笑いながら言う。
「何を?」
聞くと、んーと口を曲げながら彼が微妙な顔をする。
「むこうに戻って、言わないといけない事がある。絶対に負けられないヤツが現れたから、ソイツに持っていかれる前に、急がないと――」
「はい?」
「まあ、こっちのことだ」
そう言って、彼もチーズケーキの半分を口に運んでいた。もしかして、アルテには、向こうに好きな人がいるのかな。
だったら、戻りたくて当たり前なのかな。負けたくない――か、誰だか知らないけど、私だって、負けたくないよ。
次に手を伸ばすのは、少しほろ苦いザッハトルテ。
◇
「何だか久しぶりな気がするね」
「本番は俺だけだからな。もしかしたら、これが最後になるかもな」
ケーキ制覇後、テスト飛行中の私達。
これが、きっとアルテと二人で乗る最後のハイエアート。前と違って、風のガードがついているし、私の座席は前になった。後ろの座席をメインに変えたそうだ。
何だろう。後ろから話しかけられる事や背中越しに感じる彼の存在がすごくドキドキして恥ずかしい。
前に反対に座っていた時、彼もこんな気持ちだったらいいのにな。なんて、思ってしまう。
「ねえ、アルテ。ナホはどこに行ったと思う?」
「さぁ、わからない。ただ、もう一人と言っていた。その相手が誰なのかわかれば……」
「もう一人ってどういう意味なのかな……」
あまり思い出したくないけれどあの時の事を思い出す。
彼女の言った言葉、今回は、効いているつまり彼女は魅了の効かない相手を言っていた? もしかして、神様から何かもらったものを身につけていたら効果がないとか?
ナホは、「月城君」がこの世界にいることを知っていて探してる?
それじゃあ、ルミナスとグリードの事を確かめるつもりなのかな? でも、ナホは「もう一人」と言っていた。それがどちらをさしていたんだろう。
「グリードかルミナスか」
アルテも同じ考えのようだ。
「弟王子の動向も気になるらしいな。グリードが言っていた」
「あー、あの小悪魔キャラかぁ。ナホに魅了されてるのかなぁ」
「めんどくさい魔法だな。アイツは何を考えてこんなアイテムを渡してるんだか」
「ほんと、何だろうね」
ただただ、攻略の為だと思ってた。ユウは何か思ってそれぞれ渡したりしてたのかな。気まぐれに姿を見せたり隠れたりする彼の気持ちなんてわかるわけないけれど、考えてみる。
うん、わからない!
「見ろ! 綺麗だぞ」
日が傾き、オレンジ色にほんのりと染まりだす。雲と雲の隙間からまぶしいくらいの光が覗いていて、すごく綺麗。
アルテの瞳と幸運の宝石、二つと同じ色だ。
「夕焼けなら、明日も晴れるな」
「そうだね」
「明日、俺は――」
「ん?」
振り返ると、苦笑いを彼は浮かべていた。
二人きりの時間が終わる。伝えるなら今しかない?
「アルテ、私、あなたのこと――」
「エリナ! 口を閉じろ!」
「へ?」
いざっ! と心に決めたのに、アルテがいいタイミングで口を閉じろとか言う。なんなの? 嫌がらせ?
言われた通り口を閉じると、いつぞやのレース中にしたような急降下急上昇をされた。
話そうすると、何度も何度も同じ事をされて、さすがに私は凹んだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
50
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる