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後編

役立たずと雑な人、それから

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「なんだ、アルベルト」
「僕は!!」

 アナスタシアの手がアルベルトへと伸びる。そして、呟いた。
 せっかくきてくれたのに、いきなりの役立たずフラグが立つ。
 彼は何が言いたくて、ここにきたのかな。やっぱり、エリーナを返せ、なのかな?

「こいっ! グリード!」

 まるで変身ヒーローのように手を高く掲げてポーズする彼からは思っていたのと違う言葉がでる。その言葉が部屋に響くと、銀色の髪の魔術師と、緑色の髪の大剣を振り回す大男が姿を現した。

「エリナっ!!」
「アルテ!!」

 アルテは私のところに駆け寄ってくると、大剣で枷を破壊した。って、怖すぎ!! 何するの!!
 サラマンデルの魔法がかかっていたのか、枷だけがきれいに焼け落る。

「大丈夫か?」
「雑すぎ!! ちょー怖かった!!」

 すまん、すまんと笑いながら言う彼からは、悪いことをしたという気がまったく感じられない。
 ぐぃと手を引っ張られアレンから引き離される。

「こいつは?」

 動かないアレンに、アルテが首を傾げる。

「たぶん、魅了の魔法」
「あぁ、俺がかかったやつか。なら……、おらよっ!」

 私はアルテに担がれた。何で?! そのままグリードのとこまで持っていかれた。

「動きにくいだろ! その服じゃ」

 かかっと笑われた。失礼しちゃうわ。これぐらい……、お世話になります。

「で、グリード、このたぶん全員敵っぽいのをなんとか出来るのか?!」
「えっ! まさかの無計画ノープラン
「いや、少しは話したんだぞ?」

「僕を無視するなぁぁぁ!」

 そういえば居たね、アルベルト。でも、体の向きは私達に敵対してますよ?

「……アナスタシア! いや、佐藤さん!」

 グリードの言葉にアナスタシアが眉をひそめる。

「帰ろう! 一緒に!」
「あなたグリードじゃないの? 誰? 私は月城君を見つけないといけないの……。あれ、あなたなんで魅了がとけて」

 アルテに目をやり、アナスタシアが固まる。

「やっぱり、あなたなの? 月城君?」

 アルテは一度目を閉じて、パッと開きアナスタシアを見る。

「そうだ、佐藤菜穂さとうなほ。俺は月城だ」

 嬉しそうに、アナスタシアが笑う。

「やっと見つけた! ねぇ、一緒にここで遊ぼうよ! むこうになんて帰らないで。この腕輪があれば、何だって出来るんだよ! ほら!」

 腕輪を煌めかせると、王がアナスタシアにひざまづいた。それを見たアルテは不愉快そうに眉をひそめる。

「人の気持ちを押さえつけて楽しいか? お前、そんなヤツだったのか?」

 目を見開いて、アルテを見る彼女は、悲しそうな顔を浮かべていた。もしかして、泣いてる?

「だって、しょうがないじゃない。月城君が、私に振り向いてくれなかったのが悪いんだよ――。私、頑張って告白したのに……。だから、神様にお願いしたの!! あなたと、好きな人が結ばれませんようにって!! なのに、なんで――」

 アルベルト、ルミナス、アレンや騎士達、魅了にかかった人間が私達に敵意を向けてくる。

「あなたがこの世界にいるなら、私の魅了で手に入れると決めたの! 取り押さえて!!」

 アナスタシアが命令を下した人形達が動き出した。
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