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第2章 主人公の心、揺れ動く

デートイベント!

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 週末、デート当日。


 「…………………………うう」


 公爵家の正装をしたセオドアはヴァリアース城に自分の家の馬車で向かっていた。いくら誘われた身とはいえ、こういう時は紳士が迎えに行くのが定石だ。でも、こんな普通の馬車にアミィール様を乗せるのは不敬ではないか…………?


 それに、今日の服装。レイやメイドが似合う、相応しいものを選んでくれたけど、この服でよかったのかがひたすら不安だった。藍色の控えめな色はデートに相応しくなかっただろうか……………学園の制服であればこんなことを気にする必要はなかったのだろうが、そんな格好でデートなど言語道断である。



 と、いうか!それ以前に心の準備ができてない!何を話せばいい?どうすれば喜んで頂ける?

 そして、どう婚約のお断りを切り出すか…………………



 今日、俺は婚約を断るつもりだ。何日も何日も考えた結果、やはり主人公といえど自分のスペックは高くないのだから相応しくないという結論に至ったのだ。



 ……………やはり、悲しい顔をなされるだろうか。でも俺が仮に好きだとしても、これはゲームの世界。シナリオを変えられない。マフィンルートではなくなったが、未だに攻略対象キャラは俺を見ている。正直どの相手も嫌だけど、物語を変えてしまうのは良くない。



 そう思っても……………心は痛かった。




 「セオドア様、ヴァリアース城に着きました」



 「ああ、ありがとう」




 俺は馬車が止まったのを確認して、降りる。降りると…………城門の前に、優しい黄色のドレスを着たアミィール様が立っていた。


 ぐおお、アミィール様の私服…………!フリルやリボンは少ないけれど、細々とした所についている小物がとても可愛い!




 「セオドア様、お迎えありがとうございます」



 「は、はい!………では、行きましょう」



 「はい」




 俺はハッ、と我に返って手を差し出す。アミィール様は学校で見せないような柔らかい笑みを浮かべて俺の手を取った。


 ……こんな緊張するエスコートは初めてだ………




 手を取って馬車に乗った俺達は、アミィール様の指示通りに動き出した。その間、アミィール様が他愛のない話をして下さったけれど、密室に二人きりという状況であんまり思考は働いてなかった。




 *  *  *






 「…………………ここは…………」





 アミィール様のご指示通り来た場所は、小さな泉のある場所。大木を中心に、草木、花が囲んでいる。冬なのに、ここだけ季節を無視して花が咲き乱れているのは不思議だった。すごく静かで、美しい場所だ。16年生きてきたけど、こんな場所がヴァリアースにあるとは知らなかった。


 エスコートをしよう、と俺が手を差し出す前に、アミィール様が手を差し出していた。


 「ここからはわたくしがエスコート致します。デートを提案したのはわたくしですし。

 紳士の役割など忘れて、楽しんで頂ければ幸いです」



 「…………で、では……………」




 アミィール様の小さく白い手に、自分の手を置く。う、うわ…………俺が男なのに、なんで女子の扱いを受けているんだ………いや!憧れていたけど!



 花で彩られた道を歩くと、大木の前に来た。そこにはすでに、シンプルなシーツが敷かれていて、ティーカップや菓子が並べられていた。…………準備が周到過ぎる……………流石皇女……………




 「では、セオドア様、座りましょう」



 「ええ…………あ」



 セオドアはアミィールが座るのを待っている。上位の貴族より先に座るのはダブーだ。先に座ったアミィールは、再び手を差し伸べた。





 「御手を」




 …………………………どちらが女なのか分からないな。


 セオドアは顔を紅くしながらその手を取った。










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