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第5章 聖女、聖の精霊と次期龍神
次期龍神は激昂する
しおりを挟む腸が煮えくり返っている。
上手く酸素が吸えない。
思考が回らない。
_____前世の私は、いつも全てのことを「仕方ない」で片付けていた。
虐待をされても、この親の子供に生まれたのだから仕方ない。
いじめられても、自分が悪いんだから仕方ない。
漫画で見たことがある。
「この世の不利益は全て当人の能力不足だ」
その通りだと思った。
実際、"私の世界"ではそれが当たり前だった。
それなのに。
私、今、ありえないくらい怒っている。「仕方ない」と、心の中で何度も何度も唱えても全く効かない。聖女の戯言を上手く流せない。
______殺してやる。
_______殺せ。
________奪え。
_______嬲れ。
頭の中がそればっかりだ。「仕方ない」が塗り潰されていく。
_______わかった。
アルティアは、黒ずんでいく視界の中、"想像"する。
それと同時に、地面に黒く大きな魔法陣が生まれる。禍々しく光る魔法陣の上から鎖状のクレーンが落ちた。魔法陣を通過してゴゴゴ、と大きな音を立てて………………………祈るように鎖に縛られ、硬い甲羅に覆われた大きな生き物が現れた。
* * *
「な………………………ッ!」
龍神が何かを唱えたと思ったら、不気味な生き物が現れた。カーバンクルと同じ登場の仕方なのに、こんなに格差があるものだろうか。
『……………な、なにあれ…………………!』
私を守るように覆い被さるカーバンクルも震えている。女は激昂した直後とは打って変わって、静かに言った。
「…………………………………………………死の母・"マリア"よ。私の作り出した幻獣。
私の可愛いマリア、____貴方はあの白い獣を相手しなさい」
『キェエエエエエエエッ!』
マリアと呼ばれた化け物の瞳が白く光った。それを見るなりカーバンクルは私を突き飛ばす。その瞬間、パァン!と音を立ててカーバンクルを吹き飛ばした。
『グァアッ!!!!』
「カーバンクル!」
カーバンクルは壁に叩きつけられた。パァン、パァンと同じ攻撃を淡々と繰り返しているのに、カーバンクルは躱す所か滅多打ちにされている。正直、何をされているか分からなかった。
いや!考える前に守らなくちゃ!
「聖なる守_「させないよ」_ッきゃあ!!」
震える足を抑えて、防御魔法を唱えようと口を開いた………………が、それは許されなかった。遠くにいた龍神が一瞬で私の目の前に来て、風魔法を纏った掌で吹き飛ばされた。ズザザ、と身体が地面を滑る。
『ッ、フラ____ッアァッ!!』
カーバンクルは駆け寄ろうとするも、マリアの攻撃に阻まれる。龍神は手に黒い風を纏いながら、冷たい声でぶつぶつと何かを呟いている。
「……殺す………殺す………壊す………壊す…………」
「ひっ…………!」
目の焦点が合っていない。先程自分が言ったことは間違ってなかった。
この女は____魔王だ。倒さなきゃ、やられる!
「___ッ、聖魔法・神聖!」
聖なる力を最大限使って上位魔法を唱えた。沢山の魔法陣が生まれる。この魔法は命を削る………………けど、何もしなかったら殺される!
然し龍神は微動だにせず、呟くように言った。
「マリア_______"母の愛"」
「_____!」
言葉と同時に、私の身体は地面をすり抜けた。
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