スノー・ランド~イエティと呼ばれた少年と精霊を宿した姫~

フミナベ

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【炎帝】現れる

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【炎海湾】

「お久しぶりです、アイリスお姉様。」

「お久しぶり、ウル。」

「ん?アイリスお姉様って、アイリスはウル様と親しい関係なのかな?」

「ええ、そうよ。だって、ウルは私達と遠い血縁関係なの。」

「そうなんだ。」

「え!?あの、アイリスお姉様。今、達って?」

「あ、そういえば、ごめんなさいねウル。手紙で伝えていなかったわね。クリスは、お伽噺で登場するクリス本人で、あのアリス様の子供なの。だから、クリスは私達と血縁関係なのよ。」

「そうだったのですね…。」
事実を知ったウルは、ショックを受けた。

「?ところで、クリス。早く、この氷をどうにかしなさいよ。これじゃ、先に進めないわ。」
アイリスはウルの変化を見て疑問に思ったが、話を進めることにした。

「あ、ごめん。すぐに元に戻すよ。よっと…。」
謝罪したクリスは、腰に掛けている剣を抜刀すると同時に高速で何度も振り抜いた。

ウル達を飲み込もうとしていた凍った巨大な津波は小さく無数の氷の塊に切断され、クリスが指を鳴らすと切断された氷だけでなく、凍った周囲の海も何事もなかったように動き出した。

「「おお!」」

「す、凄い…。」
騎士団達が感嘆する中、ウルは驚愕した面持ちで呟いた。


「フフフ…こんなので驚いたら切りがないわよ、ウル。クリスは、もっと凄いのだから!」
アイリスは、自分のことの様に嬉しそうに微笑んだ。



【風の国の船側】

「何だ?今、海が凍ったぞ。それに、何だったんだ?あの異常な膨大な魔力は誰だ?」

「何をやっているの、エアロ。沈めるなら、さっさと沈めなさい。エア・イーグル。」
エアリナは、扇子を取り出して風大魔法を唱えながら仰ぐと巨大な風の鷹が現れ、低空飛行で海水を抉るように飛びウル達の船に襲い掛かる。



【水の国の船側】

クリス達は、エアリナの膨大な魔力を感知しており、風の鷹に気付いていた。

「良いわ、クリス。私が迎撃するわ。わざわざ、これ以上あなたの実力を見せるのは勿体無いから。」
クリスが前に出て迎撃しようとしたが、アイリスが腕を横に出して止めた。

「それに、今、思い出したわ。昔、私を襲った借りがあったから、その借りを返さないといけないわね。フフフ…。」
昔の出来事を思い出したアイリスは、影が差した不敵な笑みを浮かべると同時に普段以上に魔力が増大した。


「アクア・ドラゴン!」
騎士団達がアイリスの放つ威圧感に怯えて左右に避ける中、アイリスは気にせずに船首に歩み寄りながら剣を抜刀し、剣を掲げアクア・ドラゴンを唱えた。

先程、ウルが召喚した水龍よりも二回りも大きい巨大な水龍を召喚した。

「来るなら、正々堂々と来なさい!この卑怯者~!」
アイリスは、怒鳴りながら剣を振り抜くと水龍は大きな口を開けて風の鷹に向かう。

風の鷹と水龍が正面から衝突し、大爆発が起きてお互い消滅した。

その爆風によって、水の国の船と風の国の船が大きく揺らぐ。

そして、暴風が発生してから遅れて短い時間だったが空から水が雨のように降り注いだ。

ゆっくりと船の揺れがおさまった。



【風の国の船側】

「嘘だろ…。あのエアリナ様のエア・イーグルが相殺された…。」

「ば、馬鹿野郎!」
騎士団の一人が呟き、エアロは慌てて大声を出した。


誰もが、エアリナの機嫌が悪くなったと確信し、ここに居たら危険だと思った。

エアリナは、俯いたままの状態で体を震わせていた。

エアリナからは殺気や魔力が暴発していなかったが、それが拍車を掛けて余計に恐かった。

まるで、嵐の前の静けさの様だった。

「ね、姉さん。お、落ち着いてくれ。」
姉のエアリナがキレる前に、宥めようと試みるエアロ。

しかし、顔を少し上げたエアリナの顔を見たエアロは、恐怖を感じた。

「あの魔力は、アイリスだったわ。小娘の分際で、私に楯突くなんて許さないわ。こうなったら、本気を出して後悔させないといけないわね。」
エアリナはドスの利いた声で呟くと同時に、殺気と膨大な魔力を解き放つ。

魔力は、先程放ったエア・イーグルよりも魔力に重圧感があった。

エアリナは、胸の谷間から七色に光る真珠の様なブレスレットを取り出しキスをした。

このブレスレットは、ただのブレスレットではなく【シルフィの加護】だった。

「姉さん!落ち着いてくれ!あんな奴らに切り札を見せるのは勿体無い!それに、海の上で【シルフィの加護】なんて使ったら、あいつらだけでなく、俺達も沈没しかねないぞ!」
エアロは、慌ててエアリナの前に出て両手を横に伸ばして静止させようとする。

「ねぇ、エアロ。あんたも私に楯突くの?」
エアリナは、殺気を放ちながらエアロを睨みつける。

「うっ、いや、何でもないよ姉さん。」
殺されると思ったエアロは、手を下げて肩を落とした。

「賢いわね、エアロ。流石、私の弟ね。」
エアリナは、すれ違いにエアロの肩に手を置いて囁いた。

「バハード!」
エアロは、すぐに切り替えた。

「ハッ!」

「このままでは船が沈む。俺一人でも、この船を魔法で浮かせれるが魔力の消費が大きい。そこで、お前も加勢しろ。二人で、この船を浮かすぞ!」

「畏まりました!」

「「フライ!」」
エアロとバハードは、お互いの魔力を合成させて風魔法フライを唱え、船に大きな翼が生えて船は宙に浮いた。

船尾についたエアリナは、ブレスレットと扇子を持った右手を掲げて左手で右手首を押さえて全魔力をブレスレットに込める。

ブレスレットは輝き、光が空高く上った。

晴天だった空に暗雲が立ち込み周囲は暗くなり、激しく突風が吹き荒れたことで波が激しくうなり、海のあちらこちらで竜巻が発生して海水を巻き上げていく。


「私を怒らせた代償は大きいわよ。さっさと、私の前から消えなさい。ライトニング・サンダー・ドラゴン。」
エアリナの頭上に風が収束していき、そして、目が眩むほどの眩しい青白い稲妻が迸り、青白い雷龍が生まれた。



【水の国の船側】

エアリナが【シルフィの加護】を使用し、晴天だった空に暗雲が立ち込み周囲は暗くなり、激しく風が吹き荒れたことで波が激しくうなり、海のあちらこちらで竜巻が発生して海水を巻き上げていく。

あちらこちらに竜巻が発生し、方向性のない突風が吹き荒れたことで、波は一方方向ではなく、前後左右に押し寄せ、船は前後左右だけでなく上下にも激しく揺れ、水の国の船は6隻の内3隻が沈没したが、クリス達の船と乗船しているのウルの船はどうにか耐えていた。

だが、いつ転覆しても可笑しくない状況だった。

そんな中、暗くなった海にエアリナ達の船から目が眩むほどの眩しいの閃光が走り、クリス達は視線を向けた瞬間、絶望し言葉を失った。

エアリナの真上に神々しく青白い稲妻を迸せている巨大な雷龍が見えたのだった。

騎士団達が呆然と自失して言葉を失っていた中。

「嘘…。アイリスお姉様、あれは…。」
ウルは、体を震わせながら恐る恐る呟いた。

「……。ええ、世界の四天王が存在していた頃、先代の風の国の国王エアルガンが得意としていた雷禁術魔法ライトニング・サンダー・ドラゴン。一瞬で何もかもを灰にした圧倒的な威力を示したことで四天王の第4席【雷帝】と謂われる様になった伝説の魔法。」
アイリスは、強張った面持ちで答えた。

「大丈夫ですよ、ウル様。ねぇ、アイリス。」
クリスは、強張って震えているアイリスの肩に手を置いて微笑んだ。

「クリス…。でも、あれは私達が大魔法を合成魔法で強化しても防げないわ。」

「アレをやってみようよ。」

「アレって?え、まさか…。」
思い当たったアイリスは驚愕したが、クリスは頷いた。

「確かにアレが成功すればふせぐできるかもしれないけど。でも、まだ一度も成功してないのよ。」
 アイリスは、不安を顕(あら)わにした。

「大丈夫、今度は絶対に成功するよ。僕は、心の底からアイリスを信じているから、アイリスも僕のことを信じて欲しい。」
クリスは、アイリスの手を強く握り微笑んだ。

「……わかったわ。やるわよ!クリス。」
暗かったアイリスの表情は一変し、自信に満ち溢れていた。

「良かった、無事に元の元気なアイリスに戻ったね。」

「あ、あれは、そ、その…うう~。み、見なかったことにして。もう!笑わないで!」
アイリスは、顔を真っ赤にして恥ずかしさを誤魔化す様に大声を出した。

危機が迫っている中、ウル達は呆然とクリスとアイリスのやり取りを眺めていた。

「じゃあ、やろうアイリス。」

「ええ、あの自己中心的な風の国の人達を驚かせるわよ!」
クリスは隣にいるアイリス手を伸ばし、アイリスはクリスの手を取る。

クリスとアイリスは瞳を閉じ、ゆっくりと魔力を解き放ちながら手を繋いでる手に魔力を集中させる。

「アイリスお姉様、あの、申しにくいのですが…合成魔法でも…。」

「ウル様、あれは合成魔法ではありません…。信じられませんが、更にその上の極僅かな一握りのペアしか使えないとされている幻のユニゾン魔法です…。」
チャリーは、信じられない表情を浮かべながらクリスとアイリスの後ろ姿を見ていた。


合成魔法はお互いの魔力を合わせて放つのに対し、ユニゾン魔法はお互いの魔力を合わせるだけでなく共鳴させてお互いの魔力を更に上の領域に導き、絶大な威力を発揮する。

その代わり、失敗すると暴発が起きて死ぬ者が続出して試みる者はいなかった。

クリスとアイリスは全魔力を共鳴させずに少量の魔力で共鳴させていき、成功したら少しずつ魔力の量を増やしていこうとしていたが、少量の魔力でも暴発していた。

だが、少量の魔力なので命には別状にないが、毎回、焦げていた。

「「アクア・ドラゴン!」」
クリスとアイリスは、ゆっくりと目を開き、魔法を唱えながら握っている手を上に挙げると巨大な水龍が現れた。


「凄い…。」
ウルは、目を輝かせながら両手を胸元で握り締めた。



【風の国の船側】

「くっ、小娘が…。」
巨大な水龍を見たエアリナは、額に青筋を立てて歯を食い縛った。

「エアロ様!あれは…。」
バハードは、余裕の表情から驚愕した面持ちに変わった。

「う…嘘だろ…。あれは間違いない、あの幻のユニゾン魔法だ…。しかも、俺や姉さんと同じ精霊を宿しているにしても、俺よりも年下なのに、この膨大な魔力…ありえないだろ…。姉さん!」

「良いわ、やってやろうじゃないの!」
エアリナは、雷龍を放とうとした。


その時、ウルの船とエアリナの船の間に巨大な炎が走った。

炎が走ったと同時に海水が蒸発して高温の蒸気が発生し、ウルはアクア・ウォールを唱え、エアロとバハードは船を更に上昇させて回避した。


お互いの船は、炎を放った巨大な船に視線を向けた。

「おいおい!人の領土で、ど派手に暴れるんじゃねぇよ!まだ、暴れたりねぇなら、代わりに今から俺が相手になるが。どうだ?お二人さんよ。いや、三人か?」
船の船首に紅蓮の鎧を纏い、右目は炎魔法に長けている証拠の紅蓮の瞳で、左目はクリスと同じく悪魔の瞳と言われている金色をした巨漢の男が腕を組んで大声で話す。


巨大な水龍と雷龍は霧散して消滅し、両者の船は静寂になった。

「わぁ~。凄いな、あの人。アイリス、知っている人?」

「【炎帝】…。」
アイリスが呟いた。
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