ついてくる男の子

ハツカ

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高2・春・女の子・前編

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新学期が始まってすぐ。
桜の花が散るのと一緒に、私の小さな恋も散った。
まあ、恋は恋でも小さな恋だった。
ちょっといいなと思っていた程度だ。
私と違って陽気でサッパリした性格が眩しくて、目を惹かれていた。
それだけ。
それでも、下校しようと下駄箱で靴を履き替えている時は、ついA川君のスニーカーを見てしまう。
そして少し、ほんの少しションボリする。
その程度だ。
さあ、テストも近いし、さっさと家に帰って勉強しよう。
そんなことを考えながら校門に向かっていると、後ろから声をかけられた。
「ねえ!待って!」
声変わりして、以前ほど高音ではないけど、それでも聞き慣れた声。
振り返ると、幼馴染の彼が、私に小走りで近付いてきた。
校門近くで立ち止まっていても他の生徒の邪魔になる。
彼が私の傍まで来ると、私達は自然に2人で歩き出した。
「何よ?何の用?」
「一緒に帰ろうと思って」
私の疑問に、彼はサラリと答える。
「…なんで?」
本当になんでよ。
一緒に帰った事なんて、中1のあの日1回きりじゃない。
「いや、なんか具合悪そうに見えるから。大丈夫かなって思って」
「え?別にどこも悪くないけど」
「でも…元気無さそうに見えるよ?」
「…!」
鋭い。
さすが幼馴染。
最近の私のことなんて何も知らないはずなのに、私の心理状態を言い当てるなんて。
図星を突かれてしまったし、私は素直に白状した。
「…別に、体調が悪いわけじゃないわ。
ただ…最近少し嫌なことがあって、ちょっと落ち込んでるだけ」
「嫌なこと?」
「うん」
「…」
「…」
詳しくは聞いてこないでいてくれるのは、ありがたい。
久し振りに喋る男の幼馴染に恋愛関係の話はやりにくい。
そのまま私達は会話もせずに2人で一緒に帰る。
いや、一緒に帰るっていうか…どうせ途中まで方向は同じだし。
隣の彼をチラリと見上げる。
いつの間にか身長を抜かれてしまった。
小学生の頃は私の方が大きくて、中学生の時でも同じ位だったのに。
結局ロクに話もしないうちに私の家に着いた。
「じゃあまた明日。学校でね」
「あ、うん…」
中1の時もこうして家まで送ってくれたことがあったな。
あの時は、変な男につけられてる私を助けるために。
今日は元気のない私を心配して。
…今日こそ言うべきじゃない?
あの日は言えなかった一言を。
心臓が早くなる。
顔も熱くなってる。
でも、言おう。
「…今日はありがとう」
彼はキョトンとした顔で私を見つめた。
なんだか、恥ずかしい。
でも彼はニコリと微笑み
「どういたしまして、じゃあね」
それだけ言うと、行ってしまった。
今日の私、何か変じゃなかったかな。
いや、変だったかも。
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