6 / 8
高2・春・女の子・前編
しおりを挟む
新学期が始まってすぐ。
桜の花が散るのと一緒に、私の小さな恋も散った。
まあ、恋は恋でも小さな恋だった。
ちょっといいなと思っていた程度だ。
私と違って陽気でサッパリした性格が眩しくて、目を惹かれていた。
それだけ。
それでも、下校しようと下駄箱で靴を履き替えている時は、ついA川君のスニーカーを見てしまう。
そして少し、ほんの少しションボリする。
その程度だ。
さあ、テストも近いし、さっさと家に帰って勉強しよう。
そんなことを考えながら校門に向かっていると、後ろから声をかけられた。
「ねえ!待って!」
声変わりして、以前ほど高音ではないけど、それでも聞き慣れた声。
振り返ると、幼馴染の彼が、私に小走りで近付いてきた。
校門近くで立ち止まっていても他の生徒の邪魔になる。
彼が私の傍まで来ると、私達は自然に2人で歩き出した。
「何よ?何の用?」
「一緒に帰ろうと思って」
私の疑問に、彼はサラリと答える。
「…なんで?」
本当になんでよ。
一緒に帰った事なんて、中1のあの日1回きりじゃない。
「いや、なんか具合悪そうに見えるから。大丈夫かなって思って」
「え?別にどこも悪くないけど」
「でも…元気無さそうに見えるよ?」
「…!」
鋭い。
さすが幼馴染。
最近の私のことなんて何も知らないはずなのに、私の心理状態を言い当てるなんて。
図星を突かれてしまったし、私は素直に白状した。
「…別に、体調が悪いわけじゃないわ。
ただ…最近少し嫌なことがあって、ちょっと落ち込んでるだけ」
「嫌なこと?」
「うん」
「…」
「…」
詳しくは聞いてこないでいてくれるのは、ありがたい。
久し振りに喋る男の幼馴染に恋愛関係の話はやりにくい。
そのまま私達は会話もせずに2人で一緒に帰る。
いや、一緒に帰るっていうか…どうせ途中まで方向は同じだし。
隣の彼をチラリと見上げる。
いつの間にか身長を抜かれてしまった。
小学生の頃は私の方が大きくて、中学生の時でも同じ位だったのに。
結局ロクに話もしないうちに私の家に着いた。
「じゃあまた明日。学校でね」
「あ、うん…」
中1の時もこうして家まで送ってくれたことがあったな。
あの時は、変な男につけられてる私を助けるために。
今日は元気のない私を心配して。
…今日こそ言うべきじゃない?
あの日は言えなかった一言を。
心臓が早くなる。
顔も熱くなってる。
でも、言おう。
「…今日はありがとう」
彼はキョトンとした顔で私を見つめた。
なんだか、恥ずかしい。
でも彼はニコリと微笑み
「どういたしまして、じゃあね」
それだけ言うと、行ってしまった。
今日の私、何か変じゃなかったかな。
いや、変だったかも。
桜の花が散るのと一緒に、私の小さな恋も散った。
まあ、恋は恋でも小さな恋だった。
ちょっといいなと思っていた程度だ。
私と違って陽気でサッパリした性格が眩しくて、目を惹かれていた。
それだけ。
それでも、下校しようと下駄箱で靴を履き替えている時は、ついA川君のスニーカーを見てしまう。
そして少し、ほんの少しションボリする。
その程度だ。
さあ、テストも近いし、さっさと家に帰って勉強しよう。
そんなことを考えながら校門に向かっていると、後ろから声をかけられた。
「ねえ!待って!」
声変わりして、以前ほど高音ではないけど、それでも聞き慣れた声。
振り返ると、幼馴染の彼が、私に小走りで近付いてきた。
校門近くで立ち止まっていても他の生徒の邪魔になる。
彼が私の傍まで来ると、私達は自然に2人で歩き出した。
「何よ?何の用?」
「一緒に帰ろうと思って」
私の疑問に、彼はサラリと答える。
「…なんで?」
本当になんでよ。
一緒に帰った事なんて、中1のあの日1回きりじゃない。
「いや、なんか具合悪そうに見えるから。大丈夫かなって思って」
「え?別にどこも悪くないけど」
「でも…元気無さそうに見えるよ?」
「…!」
鋭い。
さすが幼馴染。
最近の私のことなんて何も知らないはずなのに、私の心理状態を言い当てるなんて。
図星を突かれてしまったし、私は素直に白状した。
「…別に、体調が悪いわけじゃないわ。
ただ…最近少し嫌なことがあって、ちょっと落ち込んでるだけ」
「嫌なこと?」
「うん」
「…」
「…」
詳しくは聞いてこないでいてくれるのは、ありがたい。
久し振りに喋る男の幼馴染に恋愛関係の話はやりにくい。
そのまま私達は会話もせずに2人で一緒に帰る。
いや、一緒に帰るっていうか…どうせ途中まで方向は同じだし。
隣の彼をチラリと見上げる。
いつの間にか身長を抜かれてしまった。
小学生の頃は私の方が大きくて、中学生の時でも同じ位だったのに。
結局ロクに話もしないうちに私の家に着いた。
「じゃあまた明日。学校でね」
「あ、うん…」
中1の時もこうして家まで送ってくれたことがあったな。
あの時は、変な男につけられてる私を助けるために。
今日は元気のない私を心配して。
…今日こそ言うべきじゃない?
あの日は言えなかった一言を。
心臓が早くなる。
顔も熱くなってる。
でも、言おう。
「…今日はありがとう」
彼はキョトンとした顔で私を見つめた。
なんだか、恥ずかしい。
でも彼はニコリと微笑み
「どういたしまして、じゃあね」
それだけ言うと、行ってしまった。
今日の私、何か変じゃなかったかな。
いや、変だったかも。
0
あなたにおすすめの小説
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
幼馴染の許嫁
山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。
彼は、私の許嫁だ。
___あの日までは
その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった
連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった
連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった
女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース
誰が見ても、愛らしいと思う子だった。
それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡
どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服
どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう
「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」
可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる
「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」
例のってことは、前から私のことを話していたのか。
それだけでも、ショックだった。
その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした
「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」
頭を殴られた感覚だった。
いや、それ以上だったかもしれない。
「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」
受け入れたくない。
けど、これが連の本心なんだ。
受け入れるしかない
一つだけ、わかったことがある
私は、連に
「許嫁、やめますっ」
選ばれなかったんだ…
八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。
隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり
鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。
でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる