チャラ孫子―もし孫武さんがちょっとだけチャラ男だったら―

神光寺かをり

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謀攻篇 第三

謀攻篇その2・彼を知りて己を知れば、百戦して危うからず、っす。

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 あ、そうそう。
 突然ですけど、北斗七星のの方の端っこから二番目の星の横っちょに、ちょこっと、ちっちゃい星がくっついてるの、ご存じっすか?

 そう、チョウセイ……って、違ぁう! いや、一部の人達の間ではそーとも言いますけど、今日はの話では違うンですって!

 あのお星様には「せい」っていう名前が付いてるんですわ。
 この「」ってのは、荷車トラックの荷台のあおりのことっすね。荷物が落っこちないように荷台の四方を囲ってるアレです。
 中華な星座の世界では、北斗七星ってのは、お空で一番偉い天帝カミサマのおクルマってことになってます。その天帝カミサマの横っちょでそっと輝いている小さな星だから、あのコ「輔星ほせい」って名前で呼ばれてるんですよ。
 偉い人が車から落っこちないように、付き添って支えてるお星様、ってことですねー。結構重要な役目のお星さまデスヨ、このコは。
 いやぁ、昔の人は面白いことを考えるもんだ。

 あ、この星の話そのものは、今日の兵法ハナシとはあんまカンケーないです。
 ただの説明、予備知識、ってヤツ? みたいな。

 で、カンキューダイして本題に戻りますよ。

 将軍リーダーっていうのは、国や王様にとっての「」みたいなもンだと思って下さい。
 国が滅びちゃわないように、王様が座ってるトコから落っこちないように、体を張ってヘルプするのが、将軍リーダーのお仕事ですからネ。

 この「」である人を、車に乗ってる人……つまり国で一番偉い王様が、ガッツリ信頼していて、どんなときにも仲良しな国、これもうめちゃくちゃ強い。
 逆に「」と王様の間にスキマッカゼがピューピューしてるようだと、ハッキリ言っちゃってゲロ弱い。

 それで、ですね。
 王様は「信頼している将軍リーダー」が取り仕切ってる「軍隊チーム方針ホーシン」に余計な口出ししちゃいけないンです。だって、信頼してるんでしょ? だったら任せとけば良いんですよ。
 現場から離れた所にいる王様が、戦場のことを考えないで適当な命令なんか出しちゃったら、ロクな事になンないですよ。むしろ、大惨事発生しちゃう、みたいな?

 特に、これから言う三つの余計な口出しだけはホントにダメ。ダメ、絶対。

 一つ目。
 チームが前へ行っちゃ駄目なタイミングってときに「ドンドン行け」って言っちゃうのと、逆に、下がっちゃ駄目なタイミングで「帰ってこい」って言っちゃうの。
 こういうのを、軍隊チームに首輪付けてリードで縛り付けちゃってる、っていうんですよ。
 縛られてたら動けなくなっちゃうでしょ?

 二つ目。
 現場のシフト決めたり、兵隊メンバーさんを個別に褒めたり叱ったりってのは、実際に現場を見てて、それぞれの人のコトがよくわかってる将軍リーダーのお仕事。それなのに、遠くにいてチームの事情や状態がワカンナイ王様がしゃしゃり出てやっちゃう。
 こういうコトすると、兵隊メンバーさんたちが誰の言うことを聞いたら良いのかわかんなくなって、混乱しちゃいますよ。

 三つ目。
 現場を見てる将軍リーダーが、現場の状況に応じてリンオーヘンに考えて出さなきゃいけないメーレーを、チームの指揮系統も戦況もまるっと無視して、現状がこれっぽっちも判ってない王様が自分勝手に出しちゃう。
 コレやられると、兵隊メンバーさんたちは、
「ウチの将軍様リーダー、もしかして王様に信頼されてななくなくない? 将軍リーダーの資格、ないンじゃね?」
 ってなっちゃいますよ。
 味方のことを疑うようになっちゃうのは、ゲロマズイっしょ。

 こんな風に、縛られちゃって身動き取れないーの、命令系統ぐちゃぐちゃになって混乱しーの、仲間を疑って弱気になっちゃいーので、もうチーム内がぐっちゃぐちゃになってるってー時に、他の国から、

「お、アイツんとこ、今ラリってンじゃん? ちょっと突いたら簡単にやっつけられるんじゃね?」

 って、カジュアルに攻め込まれたら、どうなるか判りますヨネー?
 自分が種蒔いた炎上案件でド派手に自爆。
 おかしいったらありゃしない。

 そんなこんなで、結局、勝つためのポイントってのは、五つぐらいにまとめられるんじゃないないかって思う訳ですよ。

 第一に、
「ゴーゴー、ガンガン行っちゃえ!」
 って時と、
「ステイ、ステイ、ダメダメ」
 って時の区別か付ついた方が勝っちゃう。

 第二に、メンツが多いときと少ないときでやり方違うって事をちゃーんと理解して、且つアンド、それぞれの時にそれぞれの方法で対処できちゃえば、勝てちゃう。

 第三に、上の人と実際動く人が、おンなじ目標を目指してがっちり団結していられれば勝っちゃう。

 第四に、相手さんチームがまだ全然準備出来てないうちに、こっちがは全部きっちり整えちゃって、ヘイヘイ、カモーンなんちって待ち構えちゃっていれば、勝ち確定。

 第五に、とびっきり優秀ユーシュー将軍リーダーがいて、その人を王様が圧倒的に信頼する。そして現場のコトはぜーんぶ将軍リーダーに任せておいて、王様は余計なコトに口出ししない。そうすれば勝つ。

 この五つがビクトリーロードの案内板キロポストっすね。


 故に曰く、彼を知りて己を知れば、百戦してあやうからず。

 あ、まーたオレ良いこと言っちゃったかも。

 ざっくり言うと、ですね。
 相手チームの状態や内情をよーく知った上で、自分達の状況もよく理解していれば、たとえ、ヒャッペン喧嘩バトルになっちゃったりしても、絶対ヤバいことにならないンで、全然心配することないです。

 もしこれが、相手チームの実情はよくわからなないけど、自分達のことはバッチリわきまえてる、ってことなら……そうですね、まあ勝ったり負けたり五分五分フィフティフィフティのトントン、ってとこですかね。
 そーゆー状態で戦争を始めちゃうのは、あんま、お薦めしませんけどね、俺は。

 え? 相手チームのことは全然知らない、自分達の能力もこれっぽっちも解ってない?
 そりゃ何度やっても無駄ですよ。
 断言しちゃいますよ。
 何度やっても勝てません。何回やっても負けます。
 マジでそういう無駄なことやっちゃ絶対ダメです。
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