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「……暑い」
カカオ帝国の奥地に広がる、未開のジャングル。
湿度は九十パーセントを超え、気温は体温より高い。
私は、顔を流れる汗を拭いながら、ガナッシュ様の背中を追っていた。
「大丈夫か、スイート。おんぶしてやろうか?」
「いえ、大丈夫です。……ここで倒れたら、伝説のカカオが泣きますから」
私は気力を振り絞った。
私の目的はただ一つ。
この森の最深部に生えているという『ドラゴン・カカオ』。
その実は、一つで国が買えるほどの価値があり、芳醇な香りは千キロ先まで届くと言われている。
「……ん?」
先頭を歩いていたガナッシュ様が、突然足を止めた。
「どうしました?」
「……匂うぞ」
「カカオの香りですか?」
「いや、違う。……『焦げ臭い』匂いだ」
ガナッシュ様が剣を抜き、身構える。
その瞬間。
ズズズズズ……!
地面が激しく揺れ、私たちの目の前の木々が、何者かの力によって薙ぎ倒された。
バキバキバキッ!!
倒れた巨木の向こうから現れたのは、巨大な「影」。
全長二十メートル。
鋼鉄のような漆黒の鱗。
そして、口から漏れ出る赤い炎。
「グルルルルル……!!」
大気を震わせる咆哮。
そこにいたのは、伝説上の生き物――ドラゴンだった。
「……なるほど。『ドラゴン・カカオ』とは、比喩ではなかったのか」
ガナッシュ様が冷や汗を流しながら呟く。
「本物のドラゴンが守っているから、ドラゴン・カカオ……。安直だが、笑えない冗談だ」
「キャーッ! 素敵!」
私は悲鳴ではなく、歓声を上げた。
「見てくださいガナッシュ様! あのドラゴンの足元!」
私が指差した先には、一本の巨大な樹木が生えていた。
その枝には、ラグビーボールのような形をした、虹色に輝く実がたわわに実っている。
「あれこそが……幻のドラゴン・カカオ! 実在したのね!」
「喜んでいる場合か! 来るぞ!」
ブオオオオッ!!
ドラゴンが大きく息を吸い込んだ。
次の瞬間、その口から灼熱の業火(ブレス)が吐き出された。
「危ないッ!!」
ガナッシュ様が私を抱え、横に飛び退く。
ゴオオオオオオッ!!
私たちが立っていた場所が、一瞬で消し炭になった。
「な、なんて火力だ……!」
ガナッシュ様が顔をしかめる。
「スイート、下がっていろ! こいつは俺が引き受ける!」
「待ってください!」
私はガナッシュ様の腕を掴んだ。
「殺さないでくださいね! あの炎……調理に使えますから!」
「はぁ!?」
「あんな高火力のバーナー、人間界にはありません! あれがあれば、中華料理もパラパラに作れます!」
「貴殿は、この状況でまだ料理のことを……!」
ガナッシュ様が呆れている間に、ドラゴンが再びこちらを向いた。
しかし、すぐに攻撃してくる様子はない。
ドラゴンは、イライラした様子で尻尾を地面に叩きつけ、そして足元のカカオの実を一つもぎ取った。
ガリッ、バキッ、グシャッ……。
ドラゴンは、カカオの実を殻ごと口に入れ、咀嚼し始めた。
そして。
「グオオオオッ!!(ペッ、ペッ!)」
口に入れたものを、勢いよく吐き出した。
「グルルッ……(マズイ! 苦い! 殻が硬い!)」
ドラゴンの顔が、梅干しを食べたように歪んでいる。
それを見て、私はピンときた。
「……あの子、お腹が空いているんだわ」
「は?」
「でも、カカオの殻を剥く器用な指がないから、殻ごと食べて苦味に悶えているのよ。……要するに、『不器用な食いしん坊』ね」
私はリュックサックを下ろした。
「ガナッシュ様。少し時間を稼いでください。……あの子に『正しいカカオの食べ方』を教えてあげます」
「……わかった。だが、無理はするなよ!」
ガナッシュ様が剣を構え、ドラゴンの前に飛び出した。
「おい、トカゲ野郎! 相手はこっちだ!」
「グオッ!?」
ドラゴンがガナッシュ様に気を取られている隙に、私は岩陰に隠れて「移動式キッチン」を展開した。
まずは、ドラゴンが吐き出した(あるいは食べ散らかした)カカオの実を回収する。
「素晴らしい……! 殻の上からでも分かる、この濃厚な油脂分!」
私はナイフで素早く殻を割り、中の種(カカオ豆)を取り出した。
白い果肉(パルプ)に包まれた豆。
このままではチョコレートにはならない。発酵と焙煎が必要だ。
しかし、ここには発酵させる時間も、焙煎機もない。
「いいえ、あるわ」
私はドラゴンの口元を見た。
「あの『炎』を使えば……!」
私はフライパンにカカオ豆を入れ、岩陰から飛び出した。
「ガナッシュ様! ドラゴンをこっちへ誘導して!」
「なんだと!? 焼かれるぞ!」
「焼かれるのは豆だけです! 早く!」
「くそっ、知らんぞ!」
ガナッシュ様がドラゴンを挑発し、私の正面へと誘導する。
ドラゴンが私に気づき、口を大きく開けた。
「(今よ!)」
ブオオオオオッ!!
吐き出された炎。
私は逃げずに、フライパンを掲げた。
「強火、感謝します!」
ゴオオオッ!!
炎がフライパンを包む。
私は超高速でフライパンを振り続けた。
中の豆が、ドラゴンの業火で一気に焙煎されていく。
パチッ、パチパチッ!
香ばしい香りが立ち上る。
「……グルッ?」
ドラゴンが鼻をひくつかせた。
さっきまでの焦げ臭い匂いとは違う。
芳醇で、食欲をそそる、極上のロースト香。
「まだよ! 次は粉砕!」
私は焙煎された豆を石臼(持参)に放り込み、ガナッシュ様に投げた。
「ガナッシュ様! 挽いて!」
「戦闘中に!?」
ガナッシュ様は文句を言いながらも、飛んできた石臼を受け止め、怪力でハンドルを回した。
ゴリゴリゴリゴリッ!!
一瞬で豆がペースト状(カカオマス)になる。
「ナイス筋肉!」
私はペーストを受け取り、そこに持参していた砂糖と粉ミルクを投入。
再びドラゴンの炎にかざして練り上げる。
「仕上げよ! テンパリング(温度調整)!」
本来は大理石の上で行う作業だが、今はジャングルの川の水を使う。
ボウルを川に浸して急冷し、再び炎で温める。
ドラゴンの熱気と、川の冷気。
大自然の温度差を利用した、ダイナミックな調理。
「完成!」
私は出来上がった液体――ホットチョコレートを、巨大な樽(なぜかあった)に注ぎ込んだ。
「さあ、飲みなさい! これが貴方の守っている実の、本当の姿よ!」
私は樽をドラゴンの足元に転がした。
「グルッ……?」
ドラゴンは警戒しながらも、樽の中の液体を覗き込んだ。
艶やかな褐色。
甘い香り。
ドラゴンは長い舌を伸ばし、ペロリと舐めた。
瞬間。
カッ!!
ドラゴンの瞳孔が縦に開いた。
「グ……グオオオオオオッ!!(ウマァァァァァイッ!!)」
ドラゴンが歓喜の雄叫びを上げた。
そして、樽を両手で抱え込み、ゴクゴクと一気飲みし始めた。
「グルルッ、グルニャ~ン……(甘い……温かい……ママの味がする……)」
飲み干したドラゴンは、その場にゴロンと寝転がった。
そして、猫のように喉を鳴らしながら、私にお腹を見せてきた。
「……手懐けた」
ガナッシュ様が剣を収め、呆然と立ち尽くす。
「伝説の守護竜が……ただの甘えん坊になったぞ」
「ふふっ。美味しいものを知れば、種族なんて関係ありません」
私はドラゴンの硬い鱗を撫でてあげた。
「いい子ね。お礼に、その木のカカオを少し分けてくれる?」
「グルッ!(全部持っていけ!)」
ドラゴンは尻尾で木を揺らし、完熟した実をボトボトと落としてくれた。
「ありがとう! 最高のカカオだわ!」
私は実をリュックに詰め込んだ。
これで目的は達成された。
「……さて、帰ろうか」
ガナッシュ様が私の肩を抱く。
「ああ、だがその前に」
ガナッシュ様は、私の鼻の頭についたチョコレートを指で拭い、自分の口に入れた。
「……うん。ドラゴンが惚けるのも無理はない。最高に甘いな」
「もう、人が見てますよ(ドラゴン含む)」
私は顔を赤くした。
こうして、私たちは『ドラゴン・カカオ』を手に入れた。
しかも、強力な「火加減担当(ドラゴン)」というオマケ付きで。
「ねえ、ガナッシュ様」
帰り道、私は提案した。
「あの子も連れて帰りませんか? テーマパークの『バーベキューコーナー』の担当として」
「……却下だ。あんなのがいたら、客が黒焦げになる」
「チェッ」
私たちは笑い合いながら、ジャングルを後にした。
手に入れたカカオと、二人の愛。
そして、ほんの少しの火傷(勲章)と共に。
カカオ帝国の奥地に広がる、未開のジャングル。
湿度は九十パーセントを超え、気温は体温より高い。
私は、顔を流れる汗を拭いながら、ガナッシュ様の背中を追っていた。
「大丈夫か、スイート。おんぶしてやろうか?」
「いえ、大丈夫です。……ここで倒れたら、伝説のカカオが泣きますから」
私は気力を振り絞った。
私の目的はただ一つ。
この森の最深部に生えているという『ドラゴン・カカオ』。
その実は、一つで国が買えるほどの価値があり、芳醇な香りは千キロ先まで届くと言われている。
「……ん?」
先頭を歩いていたガナッシュ様が、突然足を止めた。
「どうしました?」
「……匂うぞ」
「カカオの香りですか?」
「いや、違う。……『焦げ臭い』匂いだ」
ガナッシュ様が剣を抜き、身構える。
その瞬間。
ズズズズズ……!
地面が激しく揺れ、私たちの目の前の木々が、何者かの力によって薙ぎ倒された。
バキバキバキッ!!
倒れた巨木の向こうから現れたのは、巨大な「影」。
全長二十メートル。
鋼鉄のような漆黒の鱗。
そして、口から漏れ出る赤い炎。
「グルルルルル……!!」
大気を震わせる咆哮。
そこにいたのは、伝説上の生き物――ドラゴンだった。
「……なるほど。『ドラゴン・カカオ』とは、比喩ではなかったのか」
ガナッシュ様が冷や汗を流しながら呟く。
「本物のドラゴンが守っているから、ドラゴン・カカオ……。安直だが、笑えない冗談だ」
「キャーッ! 素敵!」
私は悲鳴ではなく、歓声を上げた。
「見てくださいガナッシュ様! あのドラゴンの足元!」
私が指差した先には、一本の巨大な樹木が生えていた。
その枝には、ラグビーボールのような形をした、虹色に輝く実がたわわに実っている。
「あれこそが……幻のドラゴン・カカオ! 実在したのね!」
「喜んでいる場合か! 来るぞ!」
ブオオオオッ!!
ドラゴンが大きく息を吸い込んだ。
次の瞬間、その口から灼熱の業火(ブレス)が吐き出された。
「危ないッ!!」
ガナッシュ様が私を抱え、横に飛び退く。
ゴオオオオオオッ!!
私たちが立っていた場所が、一瞬で消し炭になった。
「な、なんて火力だ……!」
ガナッシュ様が顔をしかめる。
「スイート、下がっていろ! こいつは俺が引き受ける!」
「待ってください!」
私はガナッシュ様の腕を掴んだ。
「殺さないでくださいね! あの炎……調理に使えますから!」
「はぁ!?」
「あんな高火力のバーナー、人間界にはありません! あれがあれば、中華料理もパラパラに作れます!」
「貴殿は、この状況でまだ料理のことを……!」
ガナッシュ様が呆れている間に、ドラゴンが再びこちらを向いた。
しかし、すぐに攻撃してくる様子はない。
ドラゴンは、イライラした様子で尻尾を地面に叩きつけ、そして足元のカカオの実を一つもぎ取った。
ガリッ、バキッ、グシャッ……。
ドラゴンは、カカオの実を殻ごと口に入れ、咀嚼し始めた。
そして。
「グオオオオッ!!(ペッ、ペッ!)」
口に入れたものを、勢いよく吐き出した。
「グルルッ……(マズイ! 苦い! 殻が硬い!)」
ドラゴンの顔が、梅干しを食べたように歪んでいる。
それを見て、私はピンときた。
「……あの子、お腹が空いているんだわ」
「は?」
「でも、カカオの殻を剥く器用な指がないから、殻ごと食べて苦味に悶えているのよ。……要するに、『不器用な食いしん坊』ね」
私はリュックサックを下ろした。
「ガナッシュ様。少し時間を稼いでください。……あの子に『正しいカカオの食べ方』を教えてあげます」
「……わかった。だが、無理はするなよ!」
ガナッシュ様が剣を構え、ドラゴンの前に飛び出した。
「おい、トカゲ野郎! 相手はこっちだ!」
「グオッ!?」
ドラゴンがガナッシュ様に気を取られている隙に、私は岩陰に隠れて「移動式キッチン」を展開した。
まずは、ドラゴンが吐き出した(あるいは食べ散らかした)カカオの実を回収する。
「素晴らしい……! 殻の上からでも分かる、この濃厚な油脂分!」
私はナイフで素早く殻を割り、中の種(カカオ豆)を取り出した。
白い果肉(パルプ)に包まれた豆。
このままではチョコレートにはならない。発酵と焙煎が必要だ。
しかし、ここには発酵させる時間も、焙煎機もない。
「いいえ、あるわ」
私はドラゴンの口元を見た。
「あの『炎』を使えば……!」
私はフライパンにカカオ豆を入れ、岩陰から飛び出した。
「ガナッシュ様! ドラゴンをこっちへ誘導して!」
「なんだと!? 焼かれるぞ!」
「焼かれるのは豆だけです! 早く!」
「くそっ、知らんぞ!」
ガナッシュ様がドラゴンを挑発し、私の正面へと誘導する。
ドラゴンが私に気づき、口を大きく開けた。
「(今よ!)」
ブオオオオオッ!!
吐き出された炎。
私は逃げずに、フライパンを掲げた。
「強火、感謝します!」
ゴオオオッ!!
炎がフライパンを包む。
私は超高速でフライパンを振り続けた。
中の豆が、ドラゴンの業火で一気に焙煎されていく。
パチッ、パチパチッ!
香ばしい香りが立ち上る。
「……グルッ?」
ドラゴンが鼻をひくつかせた。
さっきまでの焦げ臭い匂いとは違う。
芳醇で、食欲をそそる、極上のロースト香。
「まだよ! 次は粉砕!」
私は焙煎された豆を石臼(持参)に放り込み、ガナッシュ様に投げた。
「ガナッシュ様! 挽いて!」
「戦闘中に!?」
ガナッシュ様は文句を言いながらも、飛んできた石臼を受け止め、怪力でハンドルを回した。
ゴリゴリゴリゴリッ!!
一瞬で豆がペースト状(カカオマス)になる。
「ナイス筋肉!」
私はペーストを受け取り、そこに持参していた砂糖と粉ミルクを投入。
再びドラゴンの炎にかざして練り上げる。
「仕上げよ! テンパリング(温度調整)!」
本来は大理石の上で行う作業だが、今はジャングルの川の水を使う。
ボウルを川に浸して急冷し、再び炎で温める。
ドラゴンの熱気と、川の冷気。
大自然の温度差を利用した、ダイナミックな調理。
「完成!」
私は出来上がった液体――ホットチョコレートを、巨大な樽(なぜかあった)に注ぎ込んだ。
「さあ、飲みなさい! これが貴方の守っている実の、本当の姿よ!」
私は樽をドラゴンの足元に転がした。
「グルッ……?」
ドラゴンは警戒しながらも、樽の中の液体を覗き込んだ。
艶やかな褐色。
甘い香り。
ドラゴンは長い舌を伸ばし、ペロリと舐めた。
瞬間。
カッ!!
ドラゴンの瞳孔が縦に開いた。
「グ……グオオオオオオッ!!(ウマァァァァァイッ!!)」
ドラゴンが歓喜の雄叫びを上げた。
そして、樽を両手で抱え込み、ゴクゴクと一気飲みし始めた。
「グルルッ、グルニャ~ン……(甘い……温かい……ママの味がする……)」
飲み干したドラゴンは、その場にゴロンと寝転がった。
そして、猫のように喉を鳴らしながら、私にお腹を見せてきた。
「……手懐けた」
ガナッシュ様が剣を収め、呆然と立ち尽くす。
「伝説の守護竜が……ただの甘えん坊になったぞ」
「ふふっ。美味しいものを知れば、種族なんて関係ありません」
私はドラゴンの硬い鱗を撫でてあげた。
「いい子ね。お礼に、その木のカカオを少し分けてくれる?」
「グルッ!(全部持っていけ!)」
ドラゴンは尻尾で木を揺らし、完熟した実をボトボトと落としてくれた。
「ありがとう! 最高のカカオだわ!」
私は実をリュックに詰め込んだ。
これで目的は達成された。
「……さて、帰ろうか」
ガナッシュ様が私の肩を抱く。
「ああ、だがその前に」
ガナッシュ様は、私の鼻の頭についたチョコレートを指で拭い、自分の口に入れた。
「……うん。ドラゴンが惚けるのも無理はない。最高に甘いな」
「もう、人が見てますよ(ドラゴン含む)」
私は顔を赤くした。
こうして、私たちは『ドラゴン・カカオ』を手に入れた。
しかも、強力な「火加減担当(ドラゴン)」というオマケ付きで。
「ねえ、ガナッシュ様」
帰り道、私は提案した。
「あの子も連れて帰りませんか? テーマパークの『バーベキューコーナー』の担当として」
「……却下だ。あんなのがいたら、客が黒焦げになる」
「チェッ」
私たちは笑い合いながら、ジャングルを後にした。
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そして、ほんの少しの火傷(勲章)と共に。
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