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19、オダマキの花言葉
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「君は相当愚か者だな。あ、愚か者という意味は分かるかい? つまり、大馬鹿者、救いようのないバカって意味だよ」
彼女も言っていたが誰が呼び出したか、『王都に咲いた麗しきオダマキの花』と言う彼女の呼び名は、的を射ている。麗しきと言う言葉はともかく、オダマキの花言葉を淑女教育で習わなかったのだろうか。彼女の事だから好きな花のモノしか覚えていないのだろうな、まさに『愚か』の花が彼女には似合っている。今だって、
「失礼な人ね! 私にそんな言葉を吐いて許されるとでも思っているの?」
僕を睨みつける彼女。ほら、何も理解していない。彼女の吐いた言葉は僕が言いたい事でもあるのにな。今度は僕が目の前で大げさなほど大きな溜息をついてやる。
「許されるさ。…あぁもしかして僕の事を知らないのかい? 僕は、ルーベン・バーナー。バーナー伯爵家の次期当主だ。所属する派閥は中立派で――」
「それが何だと言うの!? バーナーがなによ、海があるってだけでしょう! 私は国でも有名なキャメル伯爵家の娘で、貴方なんかより高位の方々に愛されて求められている、誰より高貴な存在で重要な立場に居るのよ? 私があの人に頼めば落ちぶれるしかない貴方こそ、己の立場を理解していないのではなくて?」
あぁなるほど、今までの彼女の上から目線はそこから来るのか。
キャメル伯爵家も金山等を保有しているから、北の領地ではかなり裕福で名を馳せている。バーナー伯爵家も裕福だけど、彼女の好きな宝石類とかもたくさん出る山持ちのキャメル伯爵家の方が上だと考えていたようだ。実際の所はそれぞれ得意分野が異なるだけで、豊かさも権威も同等ぐらいなのだけれど。
それだけでなく彼女の根も葉もない自信の根拠の一つが、高位の方々とあの人とはな。貴族派の男性陣にイイように使われていたとは思ってもいないようだ。相手の思惑も読めず唯々一人で踊らされていただけなのに、誰より高貴とか…呆れて笑えてくる。どこまで君は愚かな夢を見ているのだろうか。
「立場、か。それを言うなら君もしっかり今の自分の立場を知っておいた方がいいな、ただのルル」
「はぁ? 何をおっしゃってるのかしら。私は――」
「そう言えば先日、王家主催のパーティーが王宮で開かれたんだ。僕も招待されたから喜んで参加した」
唐突な話題に彼女は口を閉じる。彼女は本当にパーティーが好きだから、参加出来なかった事は悔しいだろうなぁ。特に王宮でのパーティーなんて目立ちたがりの彼女にとって最高の舞台だろう。まぁ今後二度と、どんなパーティーにも参加なんて出来ないだろうが。
何せ、もう貴族籍から除名処分された事実が社交界で広まっている。アンドレア侯爵の怒りを避ける為でもあるせいか、キャメル伯爵夫妻の行動は意外と早かったのだ。どうやら貴族籍からの除名手続きに時間がかかっていただけで、怒りを収めてもらう条件の彼女に対する処分の公表準備はとっくに整っていたらしく、あれからお茶会や夜会等であっという間に情報が拡散されたのだ。それだけではなく、アンドレア侯爵もノリノリで一役買って出たと、ライから聞いた。
「そのパーティーでも聞いたけど、キャメル伯爵家には、一人娘のライラ嬢しか子供はいないんだってさ」
「…本当に意味が分からないわ、きちんと人の言葉を話してくださる?」
「キャメル伯爵家にはライラ嬢しか子供はいない」
「人の言葉を話してちょうだい! 可笑しな事を言わないで!」
気でも狂ったの?! とも叫ばれたが、とても大事な事だから分かりやすい言葉で、繰り返してあげているだけだろう。バカにはこれくらいが丁度いい。
「キャメル伯爵家にはライラ嬢しか子供はいない」
「もうっ! この私が居るでしょう?! 私はルル・キャメルなのよ!」
ついには机をバンバン叩き出した彼女に、僕はわざとゆっくり首を傾げた。
「『ルル・キャメル』? 一体誰の事だ、聞いた事もないな?」
「何をっ! このっ、いい加減にして、この私の事でしょう?!」
「君こそ、いい加減に戯言を口にするのは止めてくれ。もう一度言うが、キャメル伯爵家にはライラ嬢しか子供はいないんだよ。
この事実は、その先日開かれたパーティーの場で恐れ多くも国王陛下御自身が認めておられた。もう、社交界全体で知られている事だぞ」
――最早、『ルル・キャメル』の存在はどこにもないのだと、理解してもらおうか?
彼女も言っていたが誰が呼び出したか、『王都に咲いた麗しきオダマキの花』と言う彼女の呼び名は、的を射ている。麗しきと言う言葉はともかく、オダマキの花言葉を淑女教育で習わなかったのだろうか。彼女の事だから好きな花のモノしか覚えていないのだろうな、まさに『愚か』の花が彼女には似合っている。今だって、
「失礼な人ね! 私にそんな言葉を吐いて許されるとでも思っているの?」
僕を睨みつける彼女。ほら、何も理解していない。彼女の吐いた言葉は僕が言いたい事でもあるのにな。今度は僕が目の前で大げさなほど大きな溜息をついてやる。
「許されるさ。…あぁもしかして僕の事を知らないのかい? 僕は、ルーベン・バーナー。バーナー伯爵家の次期当主だ。所属する派閥は中立派で――」
「それが何だと言うの!? バーナーがなによ、海があるってだけでしょう! 私は国でも有名なキャメル伯爵家の娘で、貴方なんかより高位の方々に愛されて求められている、誰より高貴な存在で重要な立場に居るのよ? 私があの人に頼めば落ちぶれるしかない貴方こそ、己の立場を理解していないのではなくて?」
あぁなるほど、今までの彼女の上から目線はそこから来るのか。
キャメル伯爵家も金山等を保有しているから、北の領地ではかなり裕福で名を馳せている。バーナー伯爵家も裕福だけど、彼女の好きな宝石類とかもたくさん出る山持ちのキャメル伯爵家の方が上だと考えていたようだ。実際の所はそれぞれ得意分野が異なるだけで、豊かさも権威も同等ぐらいなのだけれど。
それだけでなく彼女の根も葉もない自信の根拠の一つが、高位の方々とあの人とはな。貴族派の男性陣にイイように使われていたとは思ってもいないようだ。相手の思惑も読めず唯々一人で踊らされていただけなのに、誰より高貴とか…呆れて笑えてくる。どこまで君は愚かな夢を見ているのだろうか。
「立場、か。それを言うなら君もしっかり今の自分の立場を知っておいた方がいいな、ただのルル」
「はぁ? 何をおっしゃってるのかしら。私は――」
「そう言えば先日、王家主催のパーティーが王宮で開かれたんだ。僕も招待されたから喜んで参加した」
唐突な話題に彼女は口を閉じる。彼女は本当にパーティーが好きだから、参加出来なかった事は悔しいだろうなぁ。特に王宮でのパーティーなんて目立ちたがりの彼女にとって最高の舞台だろう。まぁ今後二度と、どんなパーティーにも参加なんて出来ないだろうが。
何せ、もう貴族籍から除名処分された事実が社交界で広まっている。アンドレア侯爵の怒りを避ける為でもあるせいか、キャメル伯爵夫妻の行動は意外と早かったのだ。どうやら貴族籍からの除名手続きに時間がかかっていただけで、怒りを収めてもらう条件の彼女に対する処分の公表準備はとっくに整っていたらしく、あれからお茶会や夜会等であっという間に情報が拡散されたのだ。それだけではなく、アンドレア侯爵もノリノリで一役買って出たと、ライから聞いた。
「そのパーティーでも聞いたけど、キャメル伯爵家には、一人娘のライラ嬢しか子供はいないんだってさ」
「…本当に意味が分からないわ、きちんと人の言葉を話してくださる?」
「キャメル伯爵家にはライラ嬢しか子供はいない」
「人の言葉を話してちょうだい! 可笑しな事を言わないで!」
気でも狂ったの?! とも叫ばれたが、とても大事な事だから分かりやすい言葉で、繰り返してあげているだけだろう。バカにはこれくらいが丁度いい。
「キャメル伯爵家にはライラ嬢しか子供はいない」
「もうっ! この私が居るでしょう?! 私はルル・キャメルなのよ!」
ついには机をバンバン叩き出した彼女に、僕はわざとゆっくり首を傾げた。
「『ルル・キャメル』? 一体誰の事だ、聞いた事もないな?」
「何をっ! このっ、いい加減にして、この私の事でしょう?!」
「君こそ、いい加減に戯言を口にするのは止めてくれ。もう一度言うが、キャメル伯爵家にはライラ嬢しか子供はいないんだよ。
この事実は、その先日開かれたパーティーの場で恐れ多くも国王陛下御自身が認めておられた。もう、社交界全体で知られている事だぞ」
――最早、『ルル・キャメル』の存在はどこにもないのだと、理解してもらおうか?
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※短編です。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
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表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
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バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
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※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
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