欠陥品の文殊使いは最強の希少職でした。

登龍乃月

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第七章 ロンシャン撤退戦ー前編ー

二七三話 旧知の仲?

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「ドライゼン王とお知り合いなのですか?」

「言ってなかったか? ほれお前さんが初めて王宮に招致された時のことだ」

「ドライゼン王は話せる方だとしか……」

「そうだっけか? まぁいい。俺は昔世界を回ってた、あの森に居座るまでな」

 クライシスはワンドで自分の肩を叩きながら話を続けた。
 ドライゼン王は不思議そうな顔で俺とクライシスのやり取りに聞き耳を立てている、そして聞き耳を立てているのはドライゼン王だけではなく、シャルルとタウルスもさりげなく意識をこちらに向けているのがわかった。

「どこの国だっけかな? 獣人の国だったか亜人の国だったか、とりあえずランチアではないどこかだ。そこでそのドライゼンと色々あったのさ」

「そうなの? お父様」

「ううむ……思い当たる節はあるが……私が諸国を巡っていたのは数十年前の事、その時に出会ったとしても、貴殿は若すぎる。貴殿の御父上と何かしらあったのだろうか?」

「いや? 俺自身だぜ? クックック……」

 クライシスの言葉でますます怪訝な顔をするドライゼン王だったが、俺にはわかる、クライシスは絶対に楽しんでる、断言できる。

「そろそろきちんと説明した方がいいんじゃないですか? クライシス」

「だっはっは! そうだなぁ! 分かるはずねーもんな!」

「く、クライシス!?」

 俺が名前を呼んだことで、ドライゼン王は大笑いをしているクライシスを指さして立ち上がった。
 ドライゼン王の目は大きく開かれ、信じられないという感情が色濃く感じられる。
 そりゃあそうだよな。

「おう。俺がクライシスだ。思い出したか? 坊主」

「ば、ば、ばかな……! 私が知っているクライシス卿はかなりのご高齢、しかも数十年前の話だ。生きているはずがない」 

「歳はとってたが、死んだわけじゃあないんだぜ? ましてや転生術なんかとも違う。ヒントは目の前にいるよく知った小僧とドライゼン、あんたの娘だ」

 クライシスの言葉を受けて、ドライゼン王の視線が俺とシャルルを往復する。
 シャルルも悪乗りしているのだろう、にやにやと楽しそうな微笑みを浮かべ、黙って事の成り行きを見守っている。
 
「わからん……降参だ」

 脱力したように椅子に座り、大きなため息を吐いてドライゼン王は言った。
 
「正解は若返りだよ。フィガロの力の一端だ。どうだ? びっくりしたか?」

「な……だめだ、理解が追い付かん……くくく……夢でも見ているような心地だ」

 口をぽっかりと開け、クライシスを見つめたドライゼン王はやがて小さく笑いだし、力強い眼差しを俺に向けた。

「フィガロよ。お前はどれだけの力を隠し持っているというのだ? 大悪魔を倒し、悪魔の将軍を打ち取り、迷宮を短時間で攻略、そして若返りの秘術だと? もはや笑いうしかあるまい」

「いやあ……はは……」

「お父様が諸国巡りをしていたなんて、私知らないわ? 色々お話聞きたいなー?」
 
 俺を見つめてニヤリと笑うドライゼン王の横にシャルルが近寄り、ニコニコと笑っている。
 
「ぐむ……父上と母上に言いつけられたのだ。世界を回り見聞を広めよとな」

「おじい様とおばあ様ね? 私はお会い出来なかったけど……」

 俯くシャルルの頭を撫で、ドライゼン王は静かに語りだした。
 若き日の王とクライシスとの話を。

 今から約三〇年前、前王と前妃が健在だった頃のことだ
 ランチア魔道王朝から遙か南、海を越えた南方大陸。
 南方大陸にある亜人の国へ渡り、亜人独自の文化や食生活を楽しんでいたドライゼン王は、とある村へ訪れた。
 そこは亜人と人間が混住している村であり、村にいる医者だという老人と話をすることが出来た。
 老人も長い間世界を周っているらしく、老人の話はとても面白い内容ばかりだった。
 老人の名はクライシスと言った。
 彼は村の亜人達にも色々な話を聞かせ、読み書きなども教えており、亜人の子供達も彼を先生、先生、と呼び慕っていた。
 ドライゼン王もその村が気に入り、結構な日数を滞在したという。
 滞在中は亜人の住みようを真似て様々な経験をした。
 畑仕事をしたり、森で狩りをしたり、村の若い衆と湖畔でのんびり釣りに興じたりと実にスローな生活だったらしい。
 
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