154 / 298
第七章 ロンシャン撤退戦ー前編ー
三一五話 不意打ち
しおりを挟む
ウルベルトと対峙する少し前、俺は作戦の第二段階区画の上空を飛んでいた。
東西南北を不規則に回っていた所で一度状況を見るために滞空した。
止まったのはほんの十秒ほどだったと思うのだけど、突如腹部に激痛が走り、一瞬遅れて小規模の爆発が起きた。
何がどうなったのか全く分からなかったけど、フライを発動した時に生じる風の障壁のようなもののおかげで爆発と爆風の影響は全く受けなかった。
ただ腹部には直径三センチほどの穴が空いており、激痛のあまりフライが解けてしまった。
穴の周囲は高熱で焼かれたように焼け爛れていたのだけど、そのお陰で大量出血をする事はなかった。
キュアを掛けさえすれば治癒は可能だったが、キュアを発動すれば高速で地面に叩きつけられるのは目に見えていた。
激痛によりフライを発動出来るようなコンディションでは無く、脂汗が噴き出るのを感じながら【シルフィードブレス】を発動。
シルフィードブレスを発動出来たのは地面から約五十メートルほどのギリギリラインであり、結構本気でヤバイと思った。
俺が落ちたのは住宅街の一角であり、落下の衝撃で半分壊れていた家屋を完全に崩壊させてしまった。
落下の衝撃はシルフィードブレスが完全に無効化してくれたので俺自身に傷はなく、腹部に開いた穴だけが山盛りの激痛を届けてくれる。
瓦礫と粉塵が舞い、上から建材の破片やら木片がバラバラと落ちてくるのを見ながら腹部にキュアをかけた。
痛みが引いてくるのを感じながら、俺が落としたガバメントの事を考える。
落下した時間は短く、ぐんぐんと近付いてくる地面は恐怖そのものであり生きた心地がしなかった。
彼もこんな気持ちで死んでいったのだろうか、と変な感傷に浸ってしまった。
服は直しようがないけど、腹部の傷は多少の盛り上がりがあるけれど無事に治ってくれた。
「しかし……何だったんだ。一体どこから……」
傷跡を擦りながら瓦礫の山から出ると、爆発音が一定間隔で聞こえてきた。
音の方向へ急ぐと無残な姿のロンシャン兵達が転がっていた。
ある者は頭部が弾け、ある者は胸に穴が開いていたり、いずれも身体が焼け焦げていて、中には頭部と四肢が無い焼け焦げた胴体もあった。
「貫通痕と……爆発……これ魔法だよな、でも魔法を撃たれた気配はなかったのに……」
腹部に手を当てて俺自身に起きた事を振り返ってみたが、なんの手掛かりも見付けられない。
気付いたら腹部に穴が開いていて爆発が起きたのだ。
唐突に体を貫通し、爆発を起こす魔法なんて俺は知らない。
そしてロンシャン兵達を襲ったのも同じ魔法なのだろう、と胸に穴を開けたロンシャン兵の傷跡を見ながら確信すると同時に戦慄した。
術者の場所も距離も全く分からず突如飛来する殺傷能力の高い魔法、必死に記憶の中の魔導書やスクロールを思い起こしてみたが無駄だった。
何度考えてみても思い当たる節が一ミリもない。
完全にお手上げ状態であり、対抗策すら思い付かない。
思考がグルグルと螺旋を描き掛けてきた時、蹄の音が聞こえ数体のスケルトンホースが現れた。
勿論上に乗る者はいない。
「お前らは無事か」
スケルトンホースは俺の周りで立ち尽くし、乗り手か指示を待っているようにも思えた。
「お前らは王城に引き返せ、って言っても分からないよな……」
答えの出ない考えを振り払うべくスケルトンホースに話しかけると、スケルトンホースは一同に踵を返し王城方面へ歩き出したのだった。
「言葉……分かるのかよ」
新たに発覚した事実を目の前に、半笑いになりながら骨のお尻を目で追った。
闇の眷属とやらの実態が知りたくもあるけど、今はそれどころじゃあない。
ウィスパーリングを起動し、アーマライト王に事実と結果を伝え、次にリッチモンドへと思念を繋ぐ。
「という訳なんだけど……そっちはどうだ?」
「コッチも同じような有様だよ。まさか君が撃ち落とされるとは思わなかったけどね。どこから攻撃が来るのか検討もつかない、とりあえず屋内に避難しているけど、かなり厄介な相手だ」
「そうか……」
「今はブラックが外に出て囮になってる。勿論僕が言ったんじゃないよ? 彼が自ら進み出たのさ。俺は頑丈だからな、ってね」
「お、おう……」
「いずれブラックから連絡が入ると思うよ? それまでフィガロも警戒する事だ」
「分かった、所でスケルトンホースが俺の言葉を理解して王城に帰って行ったぞ?」
「そりゃそうだよ。骨の馬といったって知能は高い」
「ア、ソウデスカ」
「それじゃあ健闘を祈るよ」
「お前もな」
ウィスパーリングを切り、さも当たり前のように言われた事実を反芻してもちょっとよく分からない。
分からない事尽くし。
勘弁して欲しいもんだよ。
とりあえずゴーストのように神出鬼没な攻撃をどうにかしないとな。
東西南北を不規則に回っていた所で一度状況を見るために滞空した。
止まったのはほんの十秒ほどだったと思うのだけど、突如腹部に激痛が走り、一瞬遅れて小規模の爆発が起きた。
何がどうなったのか全く分からなかったけど、フライを発動した時に生じる風の障壁のようなもののおかげで爆発と爆風の影響は全く受けなかった。
ただ腹部には直径三センチほどの穴が空いており、激痛のあまりフライが解けてしまった。
穴の周囲は高熱で焼かれたように焼け爛れていたのだけど、そのお陰で大量出血をする事はなかった。
キュアを掛けさえすれば治癒は可能だったが、キュアを発動すれば高速で地面に叩きつけられるのは目に見えていた。
激痛によりフライを発動出来るようなコンディションでは無く、脂汗が噴き出るのを感じながら【シルフィードブレス】を発動。
シルフィードブレスを発動出来たのは地面から約五十メートルほどのギリギリラインであり、結構本気でヤバイと思った。
俺が落ちたのは住宅街の一角であり、落下の衝撃で半分壊れていた家屋を完全に崩壊させてしまった。
落下の衝撃はシルフィードブレスが完全に無効化してくれたので俺自身に傷はなく、腹部に開いた穴だけが山盛りの激痛を届けてくれる。
瓦礫と粉塵が舞い、上から建材の破片やら木片がバラバラと落ちてくるのを見ながら腹部にキュアをかけた。
痛みが引いてくるのを感じながら、俺が落としたガバメントの事を考える。
落下した時間は短く、ぐんぐんと近付いてくる地面は恐怖そのものであり生きた心地がしなかった。
彼もこんな気持ちで死んでいったのだろうか、と変な感傷に浸ってしまった。
服は直しようがないけど、腹部の傷は多少の盛り上がりがあるけれど無事に治ってくれた。
「しかし……何だったんだ。一体どこから……」
傷跡を擦りながら瓦礫の山から出ると、爆発音が一定間隔で聞こえてきた。
音の方向へ急ぐと無残な姿のロンシャン兵達が転がっていた。
ある者は頭部が弾け、ある者は胸に穴が開いていたり、いずれも身体が焼け焦げていて、中には頭部と四肢が無い焼け焦げた胴体もあった。
「貫通痕と……爆発……これ魔法だよな、でも魔法を撃たれた気配はなかったのに……」
腹部に手を当てて俺自身に起きた事を振り返ってみたが、なんの手掛かりも見付けられない。
気付いたら腹部に穴が開いていて爆発が起きたのだ。
唐突に体を貫通し、爆発を起こす魔法なんて俺は知らない。
そしてロンシャン兵達を襲ったのも同じ魔法なのだろう、と胸に穴を開けたロンシャン兵の傷跡を見ながら確信すると同時に戦慄した。
術者の場所も距離も全く分からず突如飛来する殺傷能力の高い魔法、必死に記憶の中の魔導書やスクロールを思い起こしてみたが無駄だった。
何度考えてみても思い当たる節が一ミリもない。
完全にお手上げ状態であり、対抗策すら思い付かない。
思考がグルグルと螺旋を描き掛けてきた時、蹄の音が聞こえ数体のスケルトンホースが現れた。
勿論上に乗る者はいない。
「お前らは無事か」
スケルトンホースは俺の周りで立ち尽くし、乗り手か指示を待っているようにも思えた。
「お前らは王城に引き返せ、って言っても分からないよな……」
答えの出ない考えを振り払うべくスケルトンホースに話しかけると、スケルトンホースは一同に踵を返し王城方面へ歩き出したのだった。
「言葉……分かるのかよ」
新たに発覚した事実を目の前に、半笑いになりながら骨のお尻を目で追った。
闇の眷属とやらの実態が知りたくもあるけど、今はそれどころじゃあない。
ウィスパーリングを起動し、アーマライト王に事実と結果を伝え、次にリッチモンドへと思念を繋ぐ。
「という訳なんだけど……そっちはどうだ?」
「コッチも同じような有様だよ。まさか君が撃ち落とされるとは思わなかったけどね。どこから攻撃が来るのか検討もつかない、とりあえず屋内に避難しているけど、かなり厄介な相手だ」
「そうか……」
「今はブラックが外に出て囮になってる。勿論僕が言ったんじゃないよ? 彼が自ら進み出たのさ。俺は頑丈だからな、ってね」
「お、おう……」
「いずれブラックから連絡が入ると思うよ? それまでフィガロも警戒する事だ」
「分かった、所でスケルトンホースが俺の言葉を理解して王城に帰って行ったぞ?」
「そりゃそうだよ。骨の馬といったって知能は高い」
「ア、ソウデスカ」
「それじゃあ健闘を祈るよ」
「お前もな」
ウィスパーリングを切り、さも当たり前のように言われた事実を反芻してもちょっとよく分からない。
分からない事尽くし。
勘弁して欲しいもんだよ。
とりあえずゴーストのように神出鬼没な攻撃をどうにかしないとな。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。