欠陥品の文殊使いは最強の希少職でした。

登龍乃月

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第八章 ロンシャン撤退戦ー後編ー

三七三話 反撃開始

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「せええええい!」

「ちっ……! 生意気な女だ!」

 強化魔法を掛けた騎士達の動きに戸惑い、攻撃を受けた魔人が騎士を忌々しそうに睨みつける。
 形勢逆転とは言えないが、魔人達の表情から余裕の色が抜け始め、イラついているのが分かる。
 教会騎士団を囲む魔人の数は一度減ったものの、すぐさま周りの魔人が嬉嬉として寄ってくる。
 まるで餌をまくと寄ってくる池の鯉みたいだな。
 騎士達はセントプリズムから出る事無く、狂ったように突撃してくる魔人達の攻撃をいなし、捌き、躱し、少なくない手傷を追わせる事に成功していた。
 やはり俺の見立て通り魔人達の実力はさほど高くないようだ。
 俺はと言えば、健闘する教会騎士団の周りを駆け回り寄ってくる魔人を張り倒していた。
 馬鹿の一つ覚えのように突撃する魔人の攻撃パターンは単調で、武器で切るか足で蹴るかのどちらか。
 戦法なんて考えず力任せに戦っているだけなので、初撃を見切り、そのまま頭部を破壊している。
 
「拍子抜けだな」

 慢心しそうになる心持ちだが、しっかりと意識を集中させて立ち回る。
 
「よぉ。派手にやってんな」

 二十体目の魔人を張り倒して一息付いた時、強烈な殺気と共に気だるそうな声が背後から届いた。
 身構えて振り向くと、そこに居たのは赤龍騎士団の甲冑を着込んだスキンヘッドの男が立っていた。

「貴方は?」

「俺ぁシュミットってもんだ。お前の話は聞いてるぜ、ハイエルフの辺境伯さんよ」

「その話……どこで」

「分かってんだろ?」

「ウルベルト、中将ですか」

 シュミットと名乗った男は両腕にバックラーを装着しており、手には節目の多く付いた棍が握られてた。
 棍の先には身幅の広い刃が取り付けられていて、怪しげな光を纏っている。
 見たことの無い武器だが、光を纏う刃から魔法武器である事だけは分かる。
 鋭い眼光と身が引き締まるほどの殺気は、シュミットがただならない存在である事を教えてくれる。

「そういう事だ。ウルベルトさんは……負けたんだな。ラプターとか言うモサモサしたデカいのもいねぇし、な」

「だとしたら……どうだと言うのですか」

「俺はお前に興味がある。天才と謳われたウルベルトさんを倒し、ゼロ参謀長配下の魔人をこうも易々と倒すお前にな」

「興味、ですか」

「ああ。それに……参謀長から施されたこの力も、試してみたいしな」

「まさか貴方も……!」

「察しの通り……魔人だ」

 言葉と共に膨れ上がる殺気と闘気が空気を淀ませ、息苦しく感じる。
 
「赤龍騎士団元副団長、魔人シュミット・ヘッケラーコック。行くぜ」

「ランチア守護王国辺境伯、フィガロ・シルバームーン。お相手仕ります」

 棍を地面と水平に構え、前傾姿勢で地を蹴るシュミット。
 爆発的な加速は他の魔人とは比べ物にならないほど速い。

「くっ……!」

 ダッシュの勢いを乗せた棍が、シュミットの掌を滑るように伸びその先の刃が迫る。
 俺は体を半身にズラして刃を躱し、棍をなぞるようにシュミットへ肉薄するが、下方から膝を打ち込まれて牽制された。
 
「速い。さすがは副団長さんですね」

「ああ。俺は強えぞ? 冒険者上がりの三下魔人と同じと思っていたら……死ぬぜ」

 その場が凹む程の踏み込みで加速し、自らの有利な間合いを保ちつつ棍で攻撃を仕掛けるシュミット。
 リーチが非常に長く、懐に入ったとしても肉弾戦で牽制されて再び間合いを取られる。
 立ち回りが非常に上手く、対人戦闘に慣れているのを感じさせる。
 棍を回転させ、先と後ろを交互に繰り出す速度も速く、突きのも槍魔人とは段違いの速度だ。

「どうしたハイエルフ。お前はそんなものなのか?」

長柄ながえのお相手は慣れていないもので。ご期待に添えず申し訳ございません」

「いや、お前は確かに強い。俺の連撃をここまで綺麗に躱されるのは久しぶりだからな。だからこそ、仕掛けて来ない理由がある」

 シュミットは棍を引き、構えを解かずにそう言った。
 構えには一切の隙もなく、シュミット自体が研ぎ澄まされた刃そのもののようだ。

「高評価ありがとうございます。ただ仕掛けられないだけなんですけどね」

「読んでるな、お前」

「……バレてましたか」

「動きに無駄が無く、目線は常に俺の手元にある。俺の棍の間合いから微妙にズレた位置を常に意識してやがる」

「よく見ていらっしゃいますね」

「伊達に国最強の赤龍騎士団ナンバーツーははってねぇよ」

「読み合いがいつまで続く事やら」

「違いねぇ。世間にゃ雑魚が多すぎて退屈してたんだ、是非とも楽しませてくれよ!」

 シュミットは口を閉じる前に棍をスライドさせ、高速で突きを放った。
 左、右、正面、足元、胸、肩と精度の高い連続突きが繰り出され、刃を避けたと思えば棍が反転して石突が迫る。
 しかも緩急織り交ぜて攻撃を繰り出してくる為非常にやり辛く、攻撃パターンを読ませないつもりなのか、フェイントや棍使い独特のトリッキーな動きで俺を翻弄してくる。

「そらそらそら! 俺のスピードに付いてこれるんだ! もっと楽しもうぜ!」

「実に気持ちのいい戦闘狂ですね! あぐっ!」

 胸元に伸びた刃を弾いて躱し後方に跳躍した瞬間、シュミットは身を翻して棍を反転、刹那に伸びた石突によって俺はさらに後方へ吹き飛ばされた。

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