欠陥品の文殊使いは最強の希少職でした。

登龍乃月

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第八章 ロンシャン撤退戦ー後編ー

三八八話 異能の力

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「フィガロ様! 無事で本当に良かったです!」

「だぁら言ったろ! 旦那は殺したって死なねぇお方だ!」

「その言い方はどうなんだ?」

 突如現れたドンスコイとコブラにアーマライト王やヘカテー、ドライゼン王の視線が集中するが、二人はそんな事はお構い無しに口を開く。
 コブラは俺の体をぺたぺたと触りまくるし、ドンスコイは謎の発言をする。
 
「ふ、フィガロよ……この者達は……?」

「すみません、この二人は俺の部下でして、クライシスの秘術によりランチアから急遽来て頂きました」

「そ、そうか。あの方の仕業であれば納得だ。っぐぅ……! また強力な攻撃を貰ったようだ……! このままでは……!」

「どっどどドライゼン陛下!? なぜここに!?」

「陛下ァ! お初にお目にかかりやす! 旦那のドンスコイでさぁ!」

 俺の横にいたドライゼン王の存在にやっと気付いた二人は慌てふためいて跪き、頭を下げた。
 旦那のドンスコイってなんだよ。

「良い、今は見ての通り非常事態だ。略式を許す、楽にせよ」

「「は!」」

 立ち上がり、休めの姿勢でバッチリ立ち尽くす二人の目は笑えるほどに泳いでおり、どうしようどうしよう、という混乱が如実に現れていた。
 いきなりここに飛ばされたと思えば俺が居て、さらには自国の王が居る。
 とんだビックリ場面だろう。
 二人の心境は痛いほど分かる。
 だけどコレで戦況はこちらに大きく傾いた。

「コブラ、力を貸してくれ」

「わっ私!? ですかっ!? えと! はい! 喜んで!」
 
「旦那ァ! 俺もいますぜ!」

「分かってるよ! ドンスコイはちょっと落ち着け!」

 混乱する二人を宥め、状況をざっくりと説明してなぜコブラの力が必要なのかを伝えた。

「分かりました。私の異能、お役に立てるならば好きなだけお使い下さい」

「なんてヤロウ共だ……! 魔人だかなんだか知らねぇが俺がぶっ潰す!」

 俺の前で跪き、真剣な瞳を向けるコブラと掌に拳を打ち付けて気合い充分なドンスコイ。
 先んじてはコブラを俺とドライゼン王の間に立たせる。
 俺はコブラの手を握り、コブラはドライゼン王の肩に手を乗せた。
 
「失礼致します陛下」

「うむ。フィガロよ、これは一体何の真似だ?」

「説明するより体感して頂いた方が早いです。いきます!」

 クーガとラプターに全魔力を注ぎ込んだが、魔力は既に全回復しているので問題は無い。
 コブラ曰く、俺は何もしないでいいらしい。
 そしてその言葉の通り意識を集中させないでも、俺の体内から魔力が抜けていく感覚があり、ドライゼン王は驚きに目を見開いている。
 コブラの体は薄らと光を纏い、髪の毛はゆらゆらと浮いて揺らめいていた。

「こ、これは……! なんという事だ! 魔力が! 魔力プールが満たされていくぞ!」

「これがコブラの力。俺の魔力をドライゼン王に流しているのです。どうかご内密にお願いします」

「馬鹿な……! 他者の魔力をだと……! 信じられんが……確かに力強い魔力が注ぎ込まれてくるぞ!」

「私は便宜上【マナエクスチェンジ】と呼んでおります」

 目を閉じながら静かに語るコブラと、興奮の渦中にあるドライゼン王の態度は対極的だった。
 驚くのも無理はないよな、俺だってビックリしたもん。

「これであれば一時間どころか数時間は保つぞ! 素晴らしい! コブラとやら、素晴らしい力を持っているな!」

「は、ありがとうございます。恐悦至極にございます」

 魔力の受け渡しは数分程で終わり、もしまた魔力が尽きかけたらアーマライト王やヘカテーから魔力を受け取るという話で纏まった。

「フィガロ様……とんでもない隠し球ね」

「ランチアは素晴らしい人材を抱えておりますなぁ……」

 一部始終を見ていたヘカテーとアーマライト王は、どこか呆れたような顔でそう言った。
 魔力の受け渡しを終えたコブラは肩身が狭そうに小さくなっており、ドライゼン王から褒められまくった結果、顔を真っ赤にしてニヤついていた。

「よし、ドンスコイ」

「っしゃキタアアア!」

「まだ何も言ってない!」

「っしゃあああ!」

「はぁ……気合い充分なのはありがたいけど、少しは話を聞け!」

「あだっ!」

 一人猛々しく騒ぐドンスコイの背中をひっぱたいてから、掻い摘んで要件を伝える。

 「俺がドンスコイに強化魔法を掛け、苦戦する騎士達の手助けをしてもらう。一箇所に留まらなくていい、走り回ってぶちのめして来い。好きなだけ暴れていいからな」

「それはつまり……あっしに期待している、という事ですかい!?」

「まぁ、そうなる。ハインケルが認めるほどの男なんだろ? 頼むぞ」

「しゃああ! 聞いたかコブラ! 兄ちゃん頑張るかんなぁ!」

「良かったね! でも張り切りすぎてやられないでね!」

 ドンスコイは右手に握りしめたバトルアックスを高々と掲げ、左手に持つ鋼鉄の板のような巨大な剣を振り回し、コブラは満面の笑みでそれに返す。
 キメラルクリーガー隊と合流させようかと思ったが、一度ドンスコイの実力をしっかり見ておこうと思ったので単騎突入を指示した。
 しかしヤル気に満ち溢れるドンスコイを見ると、逆に単騎で良かったのかも知れない、とこの時思った。
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