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第六章「副隊長編」
ひとりごと
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帰って来た早々、面倒な事になりそうだ。
俺は別宮の屋根に登って考えていた。
ウィル奪還の旅は本当、考え無しに飛び出したから仕方がないとはいえ、これをどう説明するかは考えなくてはならない。
王子が動いたとなると、俺にそれなりの理由がなければならない。
だが、竜の谷の事を考えると、そのまま話す訳にはいかない。
あそこは絶対にあのまま守らなければならない。
だいたい、事の発端である竜の血の呪いは誰が起こしたのかって話だ。
シルクの小瓶に痕跡があったなら、西の砂漠の国、もしくはその近くにヴィオールは監禁され、痛めつけられたんだとは思う。
だからといって、西の国が主犯だと決めつける事は出来ない。
1国を滅ぼす呪いになるものを、自分の国でどうこうしようとは、俺なら思わない。
自国とは離れた場所でやるだろう。
だが、竜などという伝説の力を捕らえたなら、秘密が漏れないよう、自国から出さないという選択も確かにあり得る。
つまり、何もわからないと言うことだ。
「この辺は、俺には無理だな~。話がでかすぎる。多分、魔術本部の方には少しは情報が集まってると思うし……。相談だな。」
俺の持っているガードで今、一番強力なものは竜の血の呪いの件だ。
だが、谷の秘密は守りたいし、ウィルが谷の民な事も明かしたくない。
呪いだって、どこかに実害が出た訳ではないから、呪いが起こったと話したところで通用するとも思えない。
「何で呪いになった竜をわざわざ谷に連れ帰ったのかと思ったけど、そういうことなんだな~。」
呪いが起こらなければ竜がいた証拠はない。
呪いにした者たち以外は、呪いがあったと話したところで信じる訳がない。
そこまでの危険を侵しても、竜を、谷を、彼らは守るのだろう。
竜の血の呪いのカードは強力だが、使い所と使い方を考えないと、逆効果になってしまう。
今回、シルクを残して行ったのは、良い流れを掴んだ。
シルクが来た時点では半信半疑だっただろうが、実績を残したからには今はシルクに興味を持っているだろう。
演舞の使い手である情報はすでに伝わっているはずだ。
シルクは俺のカードでもあり、シルク自身のカードでもある。
地盤は整ったので、ここで大きく動かせると思う。
「でもそうなると、やっぱり、俺にシルクを従わせていられるだけの理由が必要になるんだよな~。」
シルクの立場を確立するのは大事だが、俺がそれに追い付いて行かないと、何だかんだ理由をつけて、王宮側でシルクだけを囲い込もうとするだろう。
それは俺もシルクも望んでいない。
そんな事になるなら、いっそ、立場なんぞどうでもいいから別の人生ルートを考えた方がいい。
「なんか……面倒くさいな~。マジでウィルとシルク連れて、冒険者になりたいわ~。」
楽しいだろうな~と思う。
ウィルにもシルクにも、俺は難しく考えすぎだとよく言われる。
もっと簡単に考えて、思うように生きてもいいのかもしれない。
「ま、駄目だったら自由に生きよう。今は色々土台ができてきているし、もう少しここで踏ん張ってみるか。」
ウィルに関しては、これからどうするかが問題だ。
本人は特に立場を戻して騎馬隊に戻ろうとは思っていない。
あまり拘らず、平民として暮らしていくつもりだろう。
しかし、ウィルは優秀すぎた。
王族の逃走拠点の守護のひとりにまでなったのだ。
あの馬小屋がそんな重要なものだとは思っていなかったのでビックリだ。
ウィルが常にあそこには来るなと言ったのも今となれば納得だ。
むこうとしては、ウィルをおいそれと平凡な生活をさせる事ような真似は出来ないだろう。
ギルの言う通り、自分たちの目の届くところに置くか、面倒なら殺してしまう方がいい。
不安を残すより、切れたとかげの尻尾は潰してしまった方がいい。
ま、それはさせないけれども。
「となると、まずはむこうの目の届くところに置くのが一番面倒が少ないって事だよな~。」
ギルの提案はありがたい。
とりあえずどんな形でも、組織の中に入れた方が無駄な危険からウィルを遠ざける事ができる。
そうすればむこうがどう出てくるかも見えるだろう。
「そうすると、やっぱり、俺にウィルを守れるだけの立場が必要なんだよな~。」
立場、つまり肩書きだ。
ウィルを守る為にも、シルクを守る為にも、今の俺にはそれが必要だ。
使えるカードは二つ。
シルクと竜の血の呪いの件だ。
俺の魔術の件もあるが、それは既に魔術本部からの加護を受ける事に使用しているから切り札として用いるには弱い。
だが、シルクの件も血の呪いの件も、どちらも使い方を間違えば状況を悪くする。
上手く使うためには有利な補助カードが必要だ。
悶々と考えていても仕方がないので、とりあえず昼飯を食おうと、俺は廊下を歩いていた。
別宮の食堂は久しぶりだ。
ガツンと唐揚げを食べるか、大盛パスタセットを食べるか……。
何を食べようか考えながら歩いていると、突然、脇から腕を引っ張られた。
「へ!?」
そのまま奥まったところに連れ込まれる。
何なんだ?いったい!?
「サーク!ちょっと話したいの!今、平気!?」
切羽詰まった感じで、小声でそう言ってきたのは副隊長だった。
少し顔を赤らめ、必死な表情で俺を見ている。
と言うか、何でまた副隊長もこっちにいるんだ?
ただそれを聞ける雰囲気はない。
「どうしたんですか?副隊長??」
副隊長は少しいい淀んでから言った。
「ふたりだけで話したいの……。」
何だ?
いったい??
王宮の殿下の警護を置いてまでこっちに来たくらいだ。
ただ事ではないのかもしれない。
俺は突然の状況に目を瞬たかせた。
俺は別宮の屋根に登って考えていた。
ウィル奪還の旅は本当、考え無しに飛び出したから仕方がないとはいえ、これをどう説明するかは考えなくてはならない。
王子が動いたとなると、俺にそれなりの理由がなければならない。
だが、竜の谷の事を考えると、そのまま話す訳にはいかない。
あそこは絶対にあのまま守らなければならない。
だいたい、事の発端である竜の血の呪いは誰が起こしたのかって話だ。
シルクの小瓶に痕跡があったなら、西の砂漠の国、もしくはその近くにヴィオールは監禁され、痛めつけられたんだとは思う。
だからといって、西の国が主犯だと決めつける事は出来ない。
1国を滅ぼす呪いになるものを、自分の国でどうこうしようとは、俺なら思わない。
自国とは離れた場所でやるだろう。
だが、竜などという伝説の力を捕らえたなら、秘密が漏れないよう、自国から出さないという選択も確かにあり得る。
つまり、何もわからないと言うことだ。
「この辺は、俺には無理だな~。話がでかすぎる。多分、魔術本部の方には少しは情報が集まってると思うし……。相談だな。」
俺の持っているガードで今、一番強力なものは竜の血の呪いの件だ。
だが、谷の秘密は守りたいし、ウィルが谷の民な事も明かしたくない。
呪いだって、どこかに実害が出た訳ではないから、呪いが起こったと話したところで通用するとも思えない。
「何で呪いになった竜をわざわざ谷に連れ帰ったのかと思ったけど、そういうことなんだな~。」
呪いが起こらなければ竜がいた証拠はない。
呪いにした者たち以外は、呪いがあったと話したところで信じる訳がない。
そこまでの危険を侵しても、竜を、谷を、彼らは守るのだろう。
竜の血の呪いのカードは強力だが、使い所と使い方を考えないと、逆効果になってしまう。
今回、シルクを残して行ったのは、良い流れを掴んだ。
シルクが来た時点では半信半疑だっただろうが、実績を残したからには今はシルクに興味を持っているだろう。
演舞の使い手である情報はすでに伝わっているはずだ。
シルクは俺のカードでもあり、シルク自身のカードでもある。
地盤は整ったので、ここで大きく動かせると思う。
「でもそうなると、やっぱり、俺にシルクを従わせていられるだけの理由が必要になるんだよな~。」
シルクの立場を確立するのは大事だが、俺がそれに追い付いて行かないと、何だかんだ理由をつけて、王宮側でシルクだけを囲い込もうとするだろう。
それは俺もシルクも望んでいない。
そんな事になるなら、いっそ、立場なんぞどうでもいいから別の人生ルートを考えた方がいい。
「なんか……面倒くさいな~。マジでウィルとシルク連れて、冒険者になりたいわ~。」
楽しいだろうな~と思う。
ウィルにもシルクにも、俺は難しく考えすぎだとよく言われる。
もっと簡単に考えて、思うように生きてもいいのかもしれない。
「ま、駄目だったら自由に生きよう。今は色々土台ができてきているし、もう少しここで踏ん張ってみるか。」
ウィルに関しては、これからどうするかが問題だ。
本人は特に立場を戻して騎馬隊に戻ろうとは思っていない。
あまり拘らず、平民として暮らしていくつもりだろう。
しかし、ウィルは優秀すぎた。
王族の逃走拠点の守護のひとりにまでなったのだ。
あの馬小屋がそんな重要なものだとは思っていなかったのでビックリだ。
ウィルが常にあそこには来るなと言ったのも今となれば納得だ。
むこうとしては、ウィルをおいそれと平凡な生活をさせる事ような真似は出来ないだろう。
ギルの言う通り、自分たちの目の届くところに置くか、面倒なら殺してしまう方がいい。
不安を残すより、切れたとかげの尻尾は潰してしまった方がいい。
ま、それはさせないけれども。
「となると、まずはむこうの目の届くところに置くのが一番面倒が少ないって事だよな~。」
ギルの提案はありがたい。
とりあえずどんな形でも、組織の中に入れた方が無駄な危険からウィルを遠ざける事ができる。
そうすればむこうがどう出てくるかも見えるだろう。
「そうすると、やっぱり、俺にウィルを守れるだけの立場が必要なんだよな~。」
立場、つまり肩書きだ。
ウィルを守る為にも、シルクを守る為にも、今の俺にはそれが必要だ。
使えるカードは二つ。
シルクと竜の血の呪いの件だ。
俺の魔術の件もあるが、それは既に魔術本部からの加護を受ける事に使用しているから切り札として用いるには弱い。
だが、シルクの件も血の呪いの件も、どちらも使い方を間違えば状況を悪くする。
上手く使うためには有利な補助カードが必要だ。
悶々と考えていても仕方がないので、とりあえず昼飯を食おうと、俺は廊下を歩いていた。
別宮の食堂は久しぶりだ。
ガツンと唐揚げを食べるか、大盛パスタセットを食べるか……。
何を食べようか考えながら歩いていると、突然、脇から腕を引っ張られた。
「へ!?」
そのまま奥まったところに連れ込まれる。
何なんだ?いったい!?
「サーク!ちょっと話したいの!今、平気!?」
切羽詰まった感じで、小声でそう言ってきたのは副隊長だった。
少し顔を赤らめ、必死な表情で俺を見ている。
と言うか、何でまた副隊長もこっちにいるんだ?
ただそれを聞ける雰囲気はない。
「どうしたんですか?副隊長??」
副隊長は少しいい淀んでから言った。
「ふたりだけで話したいの……。」
何だ?
いったい??
王宮の殿下の警護を置いてまでこっちに来たくらいだ。
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