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ここからが、本当の転生物

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 あの時、俺を転生させようとした女神様が俺の前に着地すると、見下すように俺を睨みつけてきました。

 そんな女神様の足を小っちゃい神様が指先ですうっとさすります。

 そうした途端、女神様は、矯正のような声を上げ、小っちゃい神様を睨みつけました。

 けれども、途端に、なぜか、冷や汗のようなものもかき始めました

「なぜ、ここに……?」

「だって、わし、丈の神様じゃし?」

「あの……、太もも触るのやめてくれません……?」

「主は毎回ここが弱いのう」

「ひゃっ!? だからやめてくださいってば!!」

 女神様が逃げると、それを追うように小っちゃい神様が追いかけます。

「もしかして、二人とも知り合いですか?」

「そらそうじゃ。わしら神様じゃし。こいつは、わしの妹じゃよ」

「は!?」

「主め。まーた転生に失敗したな。そんな半人前だから、神としての心構えも理解できんのじゃ」

「す……すみません……」

「さて、こやつの代わりに、わしが責任を持って転生をさせよう」

「転生ですか?」

「そのことについてじゃが、主の罪は、わしが魂の全てを幸せな来世へと持っていくことで帳消しにする。生き物はいずれ死ぬ。失ったものばかり数えていてもしかた無い。だから、来世での幸せが約束できれば、罪も軽くなるというもの。丈は、わしを神としての力を高めてくれたからの。これは、ほんのお礼じゃ」

「でも、転生先はランダムなはずですよね? それで大丈夫なんですか?」

「そりゃあ、こやつが半人前だからそうなる。薄っすらとしか信仰を持たないこやつに比べ、わしほどとなれば、そんなこと簡単じゃ」

「あの、それぞれ罪とかの計算ってどうなるんですか? 一律でそんなことできるんですか? もし、凶悪な殺人鬼とかを記憶を持ったまま生まれ変わらせたりとかしたら……」

「そこはうまく調整しとくわ。何せ、わしの得意とするのは調和もそうだからな」

「魔法の神の見えざる手ですか……?」

「そうじゃ。あとは、せっかくだから、主もやり直しがしたいじゃろ? 気が向いたらわしに話しかけてこい。老衰とかでくたばったら、また転生させてやる」

 そう言って小っちゃい神様が踵を返そうとします。

「待ってください。俺はまだ何も状況が飲み込めていませんよ」

「主は意外に阿呆じゃなあ……。主がわしを最大の宗教、つまりは最強の神格へと持ち上げてくれたのじゃから、そのお礼に望みを叶えてやろうと言うのじゃ。主が殺した全ての魂は浄化されて再び転生をして、今度は幸せに暮らせるようになる。つまりじゃ、主はただ殺したのではなく、現世の罪から人々を救済したという言い方になるのじゃ。そういうことで、主の人を殺したという罪はそもそも無かったことになるというわけじゃ。どうだ? 理解したか?」

「ええ……」

「まあ良いさ。そのうち理解すれば。では、死ぬまで今の人生を楽しめ、死んだら再び転生をさせてやるからのう」

 そう言って、ちっちゃい神さまは、しょんぼりとした女神を様を連れて笑顔で消えました。

 まあ、俺は実感は良く分かりませんでしたが、まず初めに帰ってからしたことは、家族を抱きしめることでした。
 
 カレンさんの顔を見ただけで、俺はもう涙が止まりませんでした。それに、ロレーヌちゃんに、モナちゃんにも抱き着いて、生きている幸せを精いっぱい噛み締めました。



 それからのことですが、俺は生きていた間に、技術の向上と地方独立と治安維持に努めました。

 特に魔法に差分が無くなるように、あらゆる色の魔法を、信教の違いを超えて使えるようにしたというのが大きいでしょう。

 術式の詠唱と魔法陣によって組み合わせ、自由自在となった魔法は、魔法言語学という体系に至り、その人の想像次第でいくらでも自由発現させることができるようになったのです。

 魔法言語学が完成してからというもの、建築物は高層化し、科学技術も飛躍的に進化していきました。

 特に俺の最高傑作は、魔法言語学を用いた複合魔道装甲というものでした。

 複合魔道装甲はあらゆる攻撃を弾き、筋力を補助する仕組みで、一回飛び跳ねるだけで、使用者は山すらも簡単に越えられるという代物です。
 
 戦車の装甲技術を身体尺にまで下ろし、防刃防弾防魔性能を備えつつ、その装甲を、身体強化の魔法と、移動の魔法で、自在に動かすという発想から生まれたのです。

 この複合魔道装甲技術は作ったはいいものの、残念ながら強力すぎて秘匿情報にし、徹底的に外に漏らさないことにしました。この複合魔道装甲にはステルス機能も備えさせたため、奪われてしまえば、防衛に大きな欠陥を抱えることになってしまうと考えたからなのです。

―――

 魔族討伐から8年の歳月を経つと、モナちゃんも大人になり、すっかり落ち着いた女性らしく、気品のある佇まいをするようになりました。昼の日差しを受けながら、紅茶を飲む姿は、やはり、お嬢様だと、改めて認識させてくれる気品さがあります。

 それに、ロレーヌですが、ロレーヌは、俺の秘書として最後まで常に一緒に仕事をしてくれました。

 ロレーヌは家事こそできないものの、仕事はできるし、スーツをちゃんと着こなせるようにもなりましたし、綺麗でカッコいい女性に育ってくれました。
 普段の俺の仕事のスケジュール管理はロレーヌに任せておけば、だいたい間違うことなどありません。
 まあ、たまに飛んでくる飛び膝蹴りが未だに厄介ではありますが……。

 カレンさんのことですが、あの後、カレンさんは出産をして俺との第一子をちゃんと育ててくれました。俺も父親にならないとけないはずなのに、俺はそんなカレンさんに随分と甘えてしまって、いつまでも父親らしい振る舞いができませんでした。そんな俺が言うわがままを、いつだってカレンさんは優しく聞いてくれました。

 みんな大好きな俺の家族です。

 しかし、俺はまだ、やるべきことがあったのに、流行り病に倒れてしまい、若いうちに死んでしまいました。

 最後に差別だけは無くしておこうと思っていたのですが、力及ばず、俺の魂は再びあの女神のところにたどり着いたのです。

 そこではちっちゃい神様が代わりに椅子に座って、あの女神様はしくしくと床に倒れていました。

「久しぶりじゃな」

「ええ、久しぶりです」

「して、人生をやり直すのはどこの世界が良い?」

「あの、そのことなんですが、俺の家族のことも気になるんですよね」

「じゃあ、お前の家族ごと転生させてやるか」

「いや、待ってください。殺すのはちょっと……」

「移動と言う形だよ。ちょっとした旅行だよ」

「そんなことができるんですか!?」

「今の私には簡単じゃ。さて、じゃあ、びびびっと」

 神様の光に包まれると、俺は赤ん坊になっていました。優しくて甘い香りに気づくと,、俺はモナちゃんの乳房にしゃぶりついていたのでした。
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