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4章
王都 その13
しおりを挟むむー、確かに地位のある人だからそれなりの回復師や教会関係者にも治療はお願いしているだろうしな。うん?教会?あ、そうだ良い事思いついた。
「じゃあ、こんなのどうですか?女神様のご神託を受けて森に神薬を取りに行って治ったって言うのは?」
言っておいてなんだがなんか幼稚な感じが‥‥‥
俺の話を聞いて考えていた若様が口を開いた。
「フム、いいかも、将軍は敬虔な女神信仰者だし、確か家にも礼拝堂を持っていたね」
「はい、小さなものですが持っています」
「よし、こうしよう。将軍は直ぐに自宅の礼拝堂に行くように女神様の天啓を受けた。直ぐに戻るためにテレポートのスキルを持っている僕の所に来て直ぐに将軍を送り、将軍は女神の信託を受け森に向かった。うーん、人に会わない方が良いのだけど、将軍の家の人に証人がいれば真実味が増していいかもだけど」
考えこむ若様を見ていたが、ふと老騎士に目を向ける。
その顔は苦痛に耐えているような感じがした。
ん?なんだろ?治したところが痛み出したとかじゃないよな?俺が問いかけようとした時若様が先に話しかけていた。
「んー、やっぱり女神様の名前を騙るのは気が引けるかい?」
「はっ、い、いえ、‥‥‥いや、はい、申し訳ございません。やはり私事で女神様を騙るのはどうしても、ヒデ様には危険な真似をさせておいて我儘な事を言っているのは重々承知しているのですが」
最後の方は頭を下げおじぎしたような感じになり大きな身体が一回り小さくなったような錯覚を受けたほどだった。
まあ、あのチョロイン女神様だったらいいような気もするが、信仰とかの重さは人それぞれ違うものだしね。
俺は一つの案が浮かんだ。今、俺の中で眠っている守護獣のベンテンだ、姿は女神様に似ているし(どちらかと言うとチョロイン女神さまの方に似てるんだけどね)女神様に姿替えられないかな?
そう思って自分の中にいるベンテンに話しかける。
≪ベンテン、ベンテン起きてる?≫
『起きてるの、今の話もちゃんと聞いてたの、夢の中で女神様には会っているからキチンと姿をマネできるの』
≪おお、凄いな。一応聞いておくけどチョロイン‥‥‥ゲフンゲフン大きい時の女神様の方だよな?≫
『もちろんなの。女神様優しいの』
ふむ、そうか優しいとか言うなら間違いないだろ。チョロイン女神さまを知っていたら優しいとかの単語は出てこないだろうしな。
確認はとれたので若様に相談してみよう。あとベンテンは光属性だし今回の天啓を受けた時の演出なんかにも使える魔法とかもあるかもだしな。そう思って若様に目で合図して老騎士から少し離れて話す。
「若様、俺の守護獣の中に光属性の子がいるんだけど、その子って女神様に似てるんだ。それで姿かたちを女神様に似せられるらしいんだ。それでね本当に女神様を降臨した事にしちゃえばいいかなとか思ったんだけど」
「ん?守護獣?ああ、まだ近くで見た事は無かったけど凄い力があるとだけ聞いている」
実際見てもらった方が早いかな?そう思って若様と二人だけで隣の部屋に入ってからベンテンだけに呼び掛け、出てきてもらった。俺の感覚だとみんなほぼ回復しているみたいだし。
出てきたベンテンはいつもの様に寝ぼけ眼で周りを見渡す。そしてミラがいないのに気付いて不満そうな顔をしながら俺の肩に乗っかって丸まり寝息を立てる。
「ま、まあ、こんな感じですけど言えばきちんとやってくれますので。ハ、ハハ」
ベンテンの自由気ままな行動に頬を引きつらせながら若様の反応を見る。
若様の方は興味津々で覗き込んでいる。
「ベンテン、さっき言てた女神様に代わるのやって見せてよ」
俺が肩に乗っているベンテンに話すと眠そうな目をこすって答える。
「はーい」
その声と共に肩から飛び上がると俺の斜め後ろで一回転する。そこに女神様が浮いていた。
若様息をのんでベンテンに向かって膝をついてお祈りのポーズをとっている。
次の瞬間隣の部屋にいたはずの老騎士がドアを激しく開け放って入って来た。
「王子、ご無事か?何事が‥‥‥」
老騎士はきっと何か異変を感じて飛び込んできたのだろう。若様の呼び方が王子に変わっていた。
しかし、俺の後ろにいるベンテンの姿を見た瞬間息をのんで老騎士は何か神々しいものを見るような顔になり感嘆の声を洩らしていた。
「おお、何と言う事だ女神様が我が目の前に」
そう言って若様の後ろで同じ様にお祈りのポーズをとっている。
俺もそそくさと老騎士の後ろに回ってお祈りのポーズをとる。
ベンテンは首をかしげて俺によって来ようとするのだが、急いでそこに居ろといろとジェスチャーで伝える。
仕方なさそうに戻るベンテンだがキョロキョロしていて今にも偽物とバレそうだ。
どうするかなとか思っていた時、聞き覚えのある声が頭に直接語りかけてきた。
『フフフ、助けてあげましょう』
その声に驚いていると目の前の女神様に化けたベンテンが一旦首がガクッと落ちてから再起動したような感じになった。
「我が子ダールよ」
ダール?老騎士の名前か?そんな事を考えていたら老騎士の返事が聞こえてきた。
「はっ、はい。女神様が私の洗礼名を呼んでくださるとは」
なんか涙ぐんでる。
俺はみんなの後ろからベンテンを見る。いや、さっきの頭に聞こえた声あれって女神様のだよな?何で出てきてるの?
そんな事を考えていると話はドンドン進んで行っていた。
「我が使徒より施しを受けましたね?貴方にはまだこの地にてしてもらわなければいけない事があります」
「は、はい、何なりとお申し付けください。必ず我が名にかけてやり遂げて見せます。して私は何をすればよいのでしょう」
「フフ、その時が来たら解ります」
「はい、女神様に感謝を」
「わが使徒を残して二人は下がりなさい」
女神様の言葉に若様と老騎士は祈りの体勢のままススッと後ろに下がり扉から出ていった。
その途端目の前の女神様は一回転してチョロイン女神さまになる。
「あー、やっぱりこっちの方が魔力使わなくていいわね」
「チョロ‥‥‥ゲフンゲフン、女神様なんで来てるんですか?」
「いやー、前に貴方に降臨させられたでしょ?あれでさー、なんかこの守護獣達通したら行けるかなーとか思ったら出来ちゃったわ。あ、やばっ、天使ちゃんが来ちゃった。私戻るから、じゃあね」
って、なんなんだよいきなり来て帰るのか?もう少し説明が欲しかった。
チョロイン女神さまがいた場所には魔力切れでフラフラなベンテンが丸まっていた。急いで俺の中に戻した。
その後部屋に戻ると若様と老騎士だけでなくゲン達の他にキャリーさんやシオンさん、それに扉の前で護衛をしていてくれた人達や文官の服を着ている人もいる。まあ、あれだけの魔力が出てれば不審に思うかもね。
そこで若様がみんなに状況を説明しているみたいだった。
俺の事を伏せて、老騎士が女神様の天啓を受けてなす事をする為にと、女神の祝福を受け身体の傷や怪我が治った。
と伝えていた。まあ、俺が治したとこ以外は間違ってないし。
俺の事を知っている人は俺の顔を見ていたが目線を合わせない様に横を向いておく。
後日、この件はこう伝えられた。
敬虔な女神信仰者の老騎士が礼拝堂で祈りをささげていた時突如女神が現れ怪我を治し、これから起きる試練を乗り超えなさいと言われたとの事。
老騎士はその試練を乗り越える為により一層女神信仰者としても、騎士としてもさらに高見を目指しているらしい。
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毎度更新が遅くてすいません。
_(_^_)_
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