この世界の平均寿命を頑張って伸ばします。

まさちち

文字の大きさ
74 / 185
1章

その後 side ヒカリ

しおりを挟む
 
 キャロラインがこの国を出てから少しばかりの年月が過ぎた。以前よりは下火になってきたお家騒動だが完全には消えていない顔を合わせれば、嫌味の言い合いになり、最後には口汚く罵り合うのが日常になっていた。

 これだけトップが揉めていても他国の侵略を許さないのは、この国の優れた将軍あっての事、最初の頃は諫めもしたが聞き入れない王族に嫌気がさしサッサと辺境守備の任務に勝手に就き他の国に睨みを効かしている。

 この国は議会制なので王の意見でも議会を通し可決されないと実行できない。前王の時はほとんど機能していなかった議会制だが前王妃様が「いつか必要になる時が来る」と言って議会制を導入して議会を月一で開き、当時はほとんどお茶会のようになっていたのが、今は王族の暴走を食い止める唯一の武器となって王国崩壊を食い止めている。


*********************
sideヒカリ

私はこの世界に来る前は日本で高校生をしていた。どうやら、事故に巻き込まれて死んだらしい。そして女神様にお願いして大好きだった乙女ゲームの世界に行かせてもらった。

乙女ゲームの物語の始まりはこうだった。

 私は街の端にある一軒家に母と私だけの母子家庭で育った。貧しいながらも楽しく暮らしていたが母が病気で亡くなってしまう。悲しみの淵に沈んでいた時男爵である父が迎えに来てくれて物語が始まる。

 しかし、微妙に違う所がポツポツある。まず、国の名前が違う。なに?ノース・ゴッドケン国って?私が知ってるのはノース・ローズ王国のはず。そして、母が亡くなったのに男爵が迎えに来ない、これでは物語が始まらない。しかたないので必要な物と男爵の娘である証拠の手紙を持って男爵の屋敷に乗り込んだ。証拠があるので何とか認めさせ学園に入れてさえくれれば後は何もいらないという条件で養女になった。

 やっとの思いで学園に入学してみればまた微妙に違う。ピエール王子にちょっかい出しても婚約者であるキャロラインが意地悪をしてこないのだ。しかたないのでその辺にいた女子生徒に意地悪役に仕立て上げ好感度稼いだ。

 あれやこれやなんとかゲームの知識を使って三年間を乗り過ごし最後のイベントである卒業パーティーまでこぎ着けた。

 ここでも色々違っていた。キャロラインが悔しがり私を罵り衛兵に引きずられていくはずなのに、私の事を褒めだして、見惚れるほどの淑女の礼をしてから悠然と去っていく、まるでこっちが取り残されてしまったかの様に思えたほどだった。

 色々あったが何とか入り込んだ王族では、寝る暇もないほど忙しかった。王族の振る舞い、しぐさ、言葉遣い等々覚える事が山ほどあった。こんな大変な思いをしているのに五人みんなの相手もしないといけないし流石にあの時は大変だった。

 ピエール様のお母様である王妃様に最後の授業と言われて話しをした。

「んー、まあ、ギリギリだけど及第点をあげるわ。これで、出来る事は全て終わったかな?」
「ありがとうございます。これからも精進いたしますわ」

「まあ、それは当然ね。貴方に力が無かったのは残念だけど、逆に考えれば何も出来ないのだから安心ね。それに、国民には少しつらい時期になってしまうけど、その後の王国の繁栄は計り知れない物があるみたいだし少しだけ我慢してもらいましょう。息子達の事は自業自得のとこもあるから仕方ないわね」

「何の事ですの?」
「ウフフ、気にしないでこっちの事よ」

 この後、王様は第一王子に王座を譲って王妃様とどこかに行かれてしまった。まさか、譲って直ぐに旅に出たと聞いた時は無責任なとも思ったが、何でもこの国の人は何故だか流浪したがる傾向があるらしい。何じゃそれ?まあ、うるさく言う人間が減るのは良い事だ。

 義兄夫婦は嫌悪感しかないのだが、王妃なんてやるより今の方が楽に動ける事に気付いた。ピエール様はなんとか王になろうと躍起になっているが議会制が邪魔して何も出来てないのが現状だ。


 まあ、せっかくの異世界生活なんだから楽しまないとね、とか思ってたらピエ-ル様の子供を授かった。うん、間違いないっと思う。逆算しても合ってるはず。
 生まれてきたら金髪だったのでピエール様の子で間違いないわね。
 そんな心配をしてたら産婆さんから、冗談交じりで生まれてすぐなら髪の色が変えられる魔法があるという話しを聞いた。調べて見たら本当にあった。流石に目の色は仕方ないけど髪さえ一緒なら平気でしょう。

 心配のタガが外れたら、三人も生んでしまった。まあ、多い方が将来安心だしいいでしょう。髪の色もちゃんと金髪にしたし問題ないわ。



 それから数年間何もなく過ぎ去った。王家の人気が今や無いに等しいとも知らずに。




 周りの将軍達や大臣たちに長男であるピートが優秀であると褒められる。母親としては嬉しいのだが十歳の子供に顔を見るたびにこう言われる。
「母上、父上、もう少し生活を見直し下々の者の模範となって下さい」
 流石に、言われ続けると疎ましくなってくる。いい加減うるさくなってきたのでほかの国の学校に入れてしまおうと計画していたら。

「母上、父上、残念です。何とか立ち直っていただきたかったのですが」
 こういった後、将軍達と衛兵が入ってくるなり私とピエール様を拘束した。

「ちょっと、貴方の母である私に何をするのです?貴方達も直ぐに私と殿下の拘束を外しなさい王族に対して無礼な」
「母上、もう遅いのですよ。現国王の伯父様も今頃同じ様に拘束されています」

「なんですって、それは朗報ですね」

「こんな時まで、そのような事を言われるのですか?もうこんな母上は見たくない連れてってください」
「はあ?何を言ってるのです?これを外させなさい。母親にこの様な仕打ちをこの親不孝者」

 ピートの隣にいた将軍が鼓膜が破れるかと思う程の大声で叱咤した。

「黙れ!ピート様がどれ程王族を思い何とか建て直そうと、頑張ってらしたのも知らない痴れ者が。この様な幼子でさえ国を憂えてるのに貴様らは何をした?自分たちの要求がある時しか顔を出さず王族の責務も果たさずに、このような時ばかり母だの王族だのどの口が申されるのか?今ここでその素っ首を切り落とされたいか」

「ひっ、な、何よ、わ、私が何をしたというのです?何もしてない者をこのようなーー」
「母上、王族は何もしてないでは済まされません、国民の為に働いてこそ王族でいられるのです。さようなら母上、父上、連れていけ」
 ピエール様も何か言っていたが衛兵に殴られて気絶していた。

 その後、牢屋に入れられた。

「ちょっと何で王族の私が地下牢に入れられるのよ」

 牢番がめんどくさそうにやって来て鉄格子を蹴る。

「うるせーな。何が王族だ。あんた巷でなんて言われてるか知ってるか?」
「な、何です?そのような事興味御座いませわ」
「なーにが、御座いませんわだ。気取りやがって薄本夫人様がよ」
「な、何ですのその呼び名は?」
「あんたネタにつきないからね、旦那がいるのに宰相の息子、親衛隊長の息子、大臣の息子、司祭様の息子だろ?まあみんな今は勘当されたり他の国に飛ばされたり、ああ、親衛隊長の息子は新兵と一緒に最前線おくりにされたな。あとは、昔、自分の家を訴えた奴は修道院送りにされたらしいな」
「なんですって?どうも最近会えないと思ったら」
「ハッ、自分で認めやがった。薄本夫人様がよ」

 ヒマなのかもう一人やって来て蔑む目で見ながら話し出す。

「しっかし、あんたら王族は本当にどうしようもないな。王様は趣味の剣収集で勝手に国費横領するし、あんたの旦那は片っ端から女口説いて妾にして国費を無駄遣いするしよ、一番許せないのがレア王妃だ。あの女あろう事かピート様のお命を狙いやがって。処刑じゃなくて俺が殺してやりてえよ」

「そんなことしてたのあの女」
「まあ、あんたのも似たようなもんだ。小さい頃からピート様を無視して孤独にしてきたのはどこ母親だ、それだけでも殺す理由になるぜ」

「私が何したと言うのよ。処刑されるような事何もしてないわよ?」
「はあ?姦通罪は処刑の中でも火焙りの重い罪だぜ?」
「なんでよ、ただの浮気でしょ?なんでそんな重いのよ?」
「そんなことも知らないでやってたのかよ。クソッこんな奴が王族やってりゃ国だっておかしくなるぜ」
「う、うそでしょ?だって妾とかみんな作ってるじゃない?何で女はダメなのよ?」

「知るかバカが本当にバカだな。でもな、あんたの事一つだけ感謝してるんだよ」
「感謝してるなら今すぐここを開けて私を逃がしなさいよ」

「ハハ、感謝している事っていうのはピート様を生んでくれた事だよ。ピート様はとてもお優しい方だよ、こんな牢番の俺達にまでお声をかけて下さる」

「あんたの事も随分庇ってたがもう限界だったんだろうな。あんたの事どーでもいいが、ピート様が心を痛めてると思うと辛くなるぜ」


こののち、サント王、レア王妃、ピエール殿下、ヒカリ夫人は処刑される。


 その後、ピートが王座に就く。他の兄弟もピート王を助け王家は強固なものに変わっていく。ピート王は善政を行い、建国以来の問題であった北の蛮族との友好を説得のみで行うなど数々の逸話を作っていく。
しおりを挟む
感想 621

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。