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第4章
全てを受け止めて
しおりを挟む誓いのような触れるだけのキスの後、レオナルドは名残を惜しむどころか、さらに深く唇を重ねてきた。
決して、病み上がりのユリウスに無理はさせないように身体を支えてくれているが、大きな掌で後頭部を固定され、角度を変えて深くキスされる。
唇が割られ、熱い舌が滑り込んでくる。
くちゅ、と卑猥な水音が静かな病室に響き、ユリウスはレオナルドの唾液をその口内で感じた。
甘くて、美味しい。
かつて、レオナルドに迷惑だからと、決してこの気持ちを伝えてはいけないと自制していた時に、盗むように味わった時の何倍も、甘美で美味しく感じる。
ユリウスの目はとろんと熱を持ち、潤んだ瞳で見つめ返すと、レオナルドの黒曜石の瞳もまた、隠しきれない欲情で熱く濡れていた。
レオナルドの手が、ユリウスの華奢な身体をシャツの上から愛おしげに撫でる。
その指先が、腹部に残る傷跡――ルシエルに貫かれた痕――に触れた。
深々と身体に残っているその傷は、もう触れても痛まない程度には回復していたが、確かにそこに存在していた。
(……抱きたい)
レオナルドの瞳がそう訴えている。
だが、まだ回復途中のユリウスをこのままベッドに押し倒すわけにはいかない。
レオナルドは、キスだけで蕩けて、無防備に身体を預けてくるユリウスを見て、自分の中で理性と獣が殴り合っているような気持ちになった。
一度唇を離し、銀の糸を引く距離で、レオナルドは荒い息を吐きながら呟いた。
「……ユーリ……あの夜、あんな中途半端な状態で君を抱いたこと……後悔と喜びで、ずっとおかしくなりそうだった」
カイエン奪還の前夜のことだ。
「気持ちを言葉で伝えられないのに、本能のままに最後まで貪ってしまって……俺は、不誠実だ」
「……いや、あれは私が望んだことだ。……嬉しかったんだよ」
ユリウスは首を振った。
「だが、……君が望まないことを、無理やりさせたと……そう思われているかもしれないと、虚しくて、悲しくて……」
ユリウスは、その時の張り裂けそうな孤独な気持ちを思い出して、また目を潤ませた。
レオナルドに後ろめたく思ってほしくないのに、彼に愛されていると分かった今だからこそ、あの時の寂しさが溢れてしまう。
「あの一夜を思い出に、死んでもいいと思った。
本当は、君にならあのまま殺されたいとさえ……」
はっとして、ユリウスは口をつぐんだ。
伝えなくてもいいと思っていた、暗く重たい気持ちまで言葉にしてしまったからだ。
こんな、依存的で重たい感情を知られたいとは思っていなかったのに。
ユリウスは後悔して視線を逸らそうとした。
だが、レオナルドは逃がさなかった。
改めてユリウスを至近距離で見つめるその顔は、それも全て受け止めるという決意に満ちていた。
「……あの時、君が抱えた感情も、絶望も、全て受け止めたい」
レオナルドが低く、甘く囁く。
「その上で、これから……君の心も身体も、俺の愛だけで満たしてあげたい。
死にたいなんて思わせないくらいに」
その言葉に、ユリウスは強く頷いた。
レオナルドは、全部受け止めてくれる。
あの時抱えていたユリウスの自己犠牲的な考えも、死への願望も、……そして今、レオナルドのことをあの時よりももっと欲して、愛して欲しいと思っている強欲な欲望も。願いも。
「……ああ。満たして欲しい。……私も、貴方をそれ以上に愛したい」
飾らない言葉で、素直にそう答えられた。
その答えを聞くや否や、レオナルドの唇がまた、ユリウスの唇を塞いだ。
先程よりも情熱的で、けれど慈しむような深い口づけ。
そして、また結局レオナルドの腕の中で、ユリウスが体力の限界を迎え、気絶するように眠りに落ちてしまうまで、その口づけは延々と続けられた。
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