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3章 異世界技能編

第39話 マッサージ

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 家に着いてからというもの、お布団に寝転がり寝ようとするが、体の痛みでうまく眠りに入る事が出来ないでいた。

 眠ってさえしまえば、体力も回復すると思うのだが、チート布団の思わぬ弱点を発見してしまったようだ。

 太ももを自分でグリグリと押したり、足を曲げてストレッチをしていると、ルリアがこちらを覗き込んでくる。

「だーいじょーぶぅ?」

「体痛いのが気になってなかなか眠れない感じ。だからストレッチして体ほぐしてる」

「ふぅん…」

 相変わらず自分で聞いておいて興味の無さそうな返事をするなと感じていると、ルリアが俺の体をうつ伏せにさせようとしてくる。

「ボクが、眠れるようにマッサージしてあげよっかぁ?」

「え………、あぁ、すまん。頼むわ」

 少し返事に悩むも、お願いすることにする。
 悩んだのは、悪いという気持ち半分、何か変なことをしてくるんじゃないかという勘ぐり半分であった。

 体を回転させ、うつ伏せになると、早速ふくらはぎを横からグニグニと両の手で揉みほぐしてくれる。

 少しばかり物足りなさを感じ、もっと強くてもいいぞと伝えると、グッと先程までより力が入り、丁度よい力加減となった。
 思わず、おぉ…と声が漏れると、ルリアはにひひと嬉しそうに笑った。

 右から左へとまんべんなく、ふくらはぎから太腿へと、入念にマッサージしてくれる。
 人にやってもらうのと、自分でやるのとでは、気持ちよさが段違いである。
 しばらく心地よい感覚に浸っていると、太ももから手が離れる。

「じゃあ次は足裏ふみふみするねー」

 ルリアは立ち上がると、履いていた靴下を脱いで裸足になり、足のかかとでつちふまずを踏み始める。

 ちょうど良い重さで踏んでくれるので、とても痛気持ちい。
 どんどんと足先に貯まった疲れが取れていく。

「どーですかーお客さん、気持ちいいですかぁ?」

「あぁ…、ちょうどいいよ」

 こんな感じで、下半身の筋肉を全体的にほぐしてもらった後は、上から跨がられた状態から、腰や背中周り、さらには腕のマッサージまでしてくれた。

 おかげで次第に心地のよい眠気が襲ってきて、正直後半はうる覚えである。
 そして、いつのまにか眠ってしまっていたようだ。





 目が覚めると、仰向けになっており、辺りを見渡すと部屋も窓の外も暗くなっている。
 身動きを取ろうと腕を動かそうとすると、何かに固定されているような感覚を受ける。
 というより、何かに抱きつかれているような気がする。

 なんとなく予想はつきつつも、かけ布団をめくると、すやすやと心地よさそうな寝息を立てながら、俺の半身に抱きついて眠っているルリアがいた。

 コイツの事だ、マッサージをしている間に眠ってしまった、という訳ではないような気がする。
 とはいえ、何とも気持ちよさそうに眠っており、さらにはマッサージをしてもらった借りもある為、いつもなら叩き起こすのだが、少し躊躇われた。

 しばし悩んだ末、今日に関しては目をつぶる事に決める。
 となると動くに動けないので、仕方なくそのまま再び眠りにつく事にしたのだった。



 ちゅんちゅんという可愛らしい鳥の鳴き声と、何かが頬に触れる感触で目が覚める。
 目を開けると、カーテンの合間から差し込む陽の光によって、部屋はいくらか明るくなっており、朝を迎えたという事が分かる。

 そして先程から、頬に感じる謎の感触の原因と目で追うと、にへにへとだらしのない笑みを浮かべながら俺の頬を指先でつついて楽しんでいる輩がいた。

「おい、つつくのやめろ」

「えへへ、おはよぉレイちゃん」

「おはよう、じゃなくてだな。そもそも何でこっちで寝てるんだ」

「んー、ちょっとぉ試してみようかなって思ってぇ」

 恐らく、睡眠スキルの同…、添い寝効果について言っているのだろう。

「ったく、俺が先に寝落ちしたのを良いことに…」

「そんなに嫌だったなら、途中起きた時に起こしても良かったんだよぉ?」

 こいつ…、あの時起きてやがったのか。

「…マッサージしてもらった借りもあったし、寝てると思ってたから起こさなかったんだよ」

「本当はボクと一緒に同衾出来て嬉しかったから黙っいっったぁい!」

 眼の前にあった額に向かって、思いっきりデコピンを食らわせてやると、ゴロゴロと布団から転げ落ちるようにして悶え回っている。

「さてと。疲れもしっかり取れたし、スキルの確認でもしてみるか。ほら、分析スキル使ってくれよ」

「うぅ…都合の良い時だけ使って…ボクは都合の良い女じゃないんだからね!」

「そうだな、男だもんな」

「そういう事じゃなぁいー!」

 横になったまま地団駄を踏むが、相手にしても長引くだけなので、無視して布団を畳み、顔を洗ったりと最低限の身支度を整えた。

 そのまましばらく放っていた為ついに諦めたのか、溜息をつきながらゆっくりと起き上がり、少し意地けつつも、スキルチェックをしてくれた。
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