恋を諦めた私の前に突然痛いイケメン王子様が現れましたっ！！

同棲生活

19

私は心の中でそう呟きながら彼が美味しそうに私の作った料理を食べる様を見ながら勝利の美酒を愉しんだ。


食事を終えて私は自室へ戻りパソコンでBLチェックしていた。
彼があんなに楽しそうに食事をしていたことに頑張った甲斐があったと内心満足だった。
彼はリビングでテレビを観ながらお酒を飲んでいるに違いない。
もうすぐお風呂が沸く時間だから私に、お風呂どうぞ、と言いに来る。
そのぎりぎり迄BLで頭の中をピンク色に満たすんだ。



『コンコン』



もうお風呂沸いたのかな？
いつもより早くないか？



「茜さん……すみません。ちょっといいですか？」
「ちょっと待ってください。今出ますから」



私は慌ててウェブ画面を消してパソコンの電源を切った。
ふぅ～、と息を吐いた後に部屋の扉を開けた。



「もうお風呂沸きましたか？」
「いえ、そうじゃ無いのです。ちょっとこちらに来てもらえませんか？」
「はぁ……」



彼は私をリビングのソファに腰掛けるよう言った。
私がソファに腰かけると彼が私の隣に座った。

えぇっ。何々。どうしたの？
ちょっと心臓がドクンと波打つ。
彼は私の顔を見つめながらゆっくりと口を開けた。



「本当に急で申し訳ないのですが、明後日の土曜日、もう一度僕の両親の家に一緒に来てもらえませんか？」
「はぁ？　何でですか？」
「はぁ……実は今日、親父から連絡があって、同棲生活が1か月過ぎたところで色々聞きたいことがあるとか言われて。最初は断ったんです。お互い忙しいからって。でも納得してくれなくて……」



なんでだぁぁああ！
私はまたあの家に行ってこいつの親たちに色々聞かされるってことなの？
そんなの嫌っ！！
あそこだけは行きたくない。



「本当にすみません。でも行かないと……嘘だってバレる気がして」
「もう……本当に貴方の親御さんって貴方の事信じてないんですね」
「はぁ……言い訳も出来ません」
「私、行きたくないんですけど」
「そこを何とかなりませんか？」



彼は困った表情で両手の平を合わせて私に懇願していた。
その姿は格好が悪い。
でも、私も今ここを出て行けと言われても行くところが無いのもまた事実。
仕方がないのかな……もう……最悪だわ。

「……分かりました。行きます。行けばいいのでしょう？」
「あ、有難う御座います！！　本当に有難う御座います」
「ああ、もう、分かりましたから。お話はこれで終わりですか？」
「はいっ。あ、そろそろお風呂が沸くころですね。お先にどうぞ」
「……頂きます」

何だか癪しゃくだが私はソファから立ち上がり自室へ戻って着替えを取りに行きその足でお風呂場へ向かった。
1人リビングに居る彼をチラ見すると、嬉しそうな表情でテレビを観ながらビールをおいしそうに飲んでいた。