恋を諦めた私の前に突然痛いイケメン王子様が現れましたっ!!

杏仁豆腐

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平穏と実家とエトセトラ

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「ただ今戻りました」

あ、彼が帰って来た。
私はコンロの火を消して台所から玄関口へ向かった。

「お帰りなさい。今日で今週最後ですね」
「はい。疲れました。結構ハードで。今日は昼抜きでお腹ペコペコです」
「あら、そうなんですか。だったら夕食は沢山食べてくださいね」
「有難う御座います。本当に助かります。茜さん」
「いえ。居候している身ですから。これくらい何でもないです。涼太さん」
「あの、居候ではなく同棲です。僕たち付き合っているんですから。茜さん」
「あ、そうでした。すっかり忘れてました。涼太さん」

何なの。
このリア充的な会話はっ!
自分で言っておいてなんなんだが、虫唾が走る……。

で、でもでもでも! これが凄く幸せだったりするのよっ!
はぁ~、こんな毎日がずっと続けばいいのになぁ~。

「あ、あの。茜さん?」
「はっ! 何でもないです。食べましょう。着替えてきてください」
「は、はい……」

私の悪い癖……。
妄想と現実の狭間で揺れ動いている時周りの事が全く察知できず彼に怪しまれてしまう事。
でもいいのだ。
彼はそういう私の事を好きでいてくれる……あれ? そう言えば私って彼に好きって言われたことあったっけ……?

思い出せぇ~私ぃ~言われたこと……あるでしょ……??

「ないよ」
「はい……? 何が、ないんですか? 茜さん」
「はっ……あ、いやぁ~、何でも無いなぁ~って思っただけです。すみません。涼太さん」
「いえ、大丈夫ですか?」
「大丈夫です」

彼は不思議そうな顔で私の顔を見つめる。
つい口走ってしまったが確かに彼に告白はされたことは覚えているけど、好き、とか、愛してる、とかは言われたことが無い気が……する。
無い……と思う。
てか、無いよっ!
一回もないじゃん!!

おかしいよ、これってさっ。
好きでも無い女と付き合ってんのか!? 
このイケメン童貞王子様はっ!

あ、ゲフンゲフン……口が悪いのも私の癖……って言ってる場合じゃねぇぇええ!!
何だか急に目の前が真っ暗になって来たじゃん。
そうだよ、言われたことないじゃんっ!
ああ、何でこんな大事な事気付かないかなぁ~私って。

何か決して開けてはいけないパンドラの箱を開けてしまった感半端ないんすけど。
でも気になるよ、正直言って…。
本当に彼が私の事を好きでいるのかが……そうもやもや考えてたら急に胃が痛くなってきた。

「涼太さん…私ちょっと体の具合が悪くなりましたので自室へ戻ります」
「ええっ!? 大丈夫ですか? 一人で行けますか? 僕が連れていきましょうか?」
「いえっ! 結構、で・す。私は一人で行けます。それより後片付けお願いします」
「はぁ…それは構いませんが。ご自愛なさってください」
「有難う御座います。失礼します」

ご自愛なさって……何を言ってるのよ、こいつめぇっ!
普通は男が女を介抱するときはこう、何て言うの、無理やり? 的な? そういう、強引さってのが無いのかしら。
まぁ、童貞だから仕方ないってことなの?
はぁ、胃がきりきりしてい、痛い。
ちょっと横になろう。




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