32 / 100
平穏と実家とエトセトラ
32
しおりを挟む
「ただ今戻りました」
あ、彼が帰って来た。
私はコンロの火を消して台所から玄関口へ向かった。
「お帰りなさい。今日で今週最後ですね」
「はい。疲れました。結構ハードで。今日は昼抜きでお腹ペコペコです」
「あら、そうなんですか。だったら夕食は沢山食べてくださいね」
「有難う御座います。本当に助かります。茜さん」
「いえ。居候している身ですから。これくらい何でもないです。涼太さん」
「あの、居候ではなく同棲です。僕たち付き合っているんですから。茜さん」
「あ、そうでした。すっかり忘れてました。涼太さん」
何なの。
このリア充的な会話はっ!
自分で言っておいてなんなんだが、虫唾が走る……。
で、でもでもでも! これが凄く幸せだったりするのよっ!
はぁ~、こんな毎日がずっと続けばいいのになぁ~。
「あ、あの。茜さん?」
「はっ! 何でもないです。食べましょう。着替えてきてください」
「は、はい……」
私の悪い癖……。
妄想と現実の狭間で揺れ動いている時周りの事が全く察知できず彼に怪しまれてしまう事。
でもいいのだ。
彼はそういう私の事を好きでいてくれる……あれ? そう言えば私って彼に好きって言われたことあったっけ……?
思い出せぇ~私ぃ~言われたこと……あるでしょ……??
「ないよ」
「はい……? 何が、ないんですか? 茜さん」
「はっ……あ、いやぁ~、何でも無いなぁ~って思っただけです。すみません。涼太さん」
「いえ、大丈夫ですか?」
「大丈夫です」
彼は不思議そうな顔で私の顔を見つめる。
つい口走ってしまったが確かに彼に告白はされたことは覚えているけど、好き、とか、愛してる、とかは言われたことが無い気が……する。
無い……と思う。
てか、無いよっ!
一回もないじゃん!!
おかしいよ、これってさっ。
好きでも無い女と付き合ってんのか!?
このイケメン童貞王子様はっ!
あ、ゲフンゲフン……口が悪いのも私の癖……って言ってる場合じゃねぇぇええ!!
何だか急に目の前が真っ暗になって来たじゃん。
そうだよ、言われたことないじゃんっ!
ああ、何でこんな大事な事気付かないかなぁ~私って。
何か決して開けてはいけないパンドラの箱を開けてしまった感半端ないんすけど。
でも気になるよ、正直言って…。
本当に彼が私の事を好きでいるのかが……そうもやもや考えてたら急に胃が痛くなってきた。
「涼太さん…私ちょっと体の具合が悪くなりましたので自室へ戻ります」
「ええっ!? 大丈夫ですか? 一人で行けますか? 僕が連れていきましょうか?」
「いえっ! 結構、で・す。私は一人で行けます。それより後片付けお願いします」
「はぁ…それは構いませんが。ご自愛なさってください」
「有難う御座います。失礼します」
ご自愛なさって……何を言ってるのよ、こいつめぇっ!
普通は男が女を介抱するときはこう、何て言うの、無理やり? 的な? そういう、強引さってのが無いのかしら。
まぁ、童貞だから仕方ないってことなの?
はぁ、胃がきりきりしてい、痛い。
ちょっと横になろう。
あ、彼が帰って来た。
私はコンロの火を消して台所から玄関口へ向かった。
「お帰りなさい。今日で今週最後ですね」
「はい。疲れました。結構ハードで。今日は昼抜きでお腹ペコペコです」
「あら、そうなんですか。だったら夕食は沢山食べてくださいね」
「有難う御座います。本当に助かります。茜さん」
「いえ。居候している身ですから。これくらい何でもないです。涼太さん」
「あの、居候ではなく同棲です。僕たち付き合っているんですから。茜さん」
「あ、そうでした。すっかり忘れてました。涼太さん」
何なの。
このリア充的な会話はっ!
自分で言っておいてなんなんだが、虫唾が走る……。
で、でもでもでも! これが凄く幸せだったりするのよっ!
はぁ~、こんな毎日がずっと続けばいいのになぁ~。
「あ、あの。茜さん?」
「はっ! 何でもないです。食べましょう。着替えてきてください」
「は、はい……」
私の悪い癖……。
妄想と現実の狭間で揺れ動いている時周りの事が全く察知できず彼に怪しまれてしまう事。
でもいいのだ。
彼はそういう私の事を好きでいてくれる……あれ? そう言えば私って彼に好きって言われたことあったっけ……?
思い出せぇ~私ぃ~言われたこと……あるでしょ……??
「ないよ」
「はい……? 何が、ないんですか? 茜さん」
「はっ……あ、いやぁ~、何でも無いなぁ~って思っただけです。すみません。涼太さん」
「いえ、大丈夫ですか?」
「大丈夫です」
彼は不思議そうな顔で私の顔を見つめる。
つい口走ってしまったが確かに彼に告白はされたことは覚えているけど、好き、とか、愛してる、とかは言われたことが無い気が……する。
無い……と思う。
てか、無いよっ!
一回もないじゃん!!
おかしいよ、これってさっ。
好きでも無い女と付き合ってんのか!?
このイケメン童貞王子様はっ!
あ、ゲフンゲフン……口が悪いのも私の癖……って言ってる場合じゃねぇぇええ!!
何だか急に目の前が真っ暗になって来たじゃん。
そうだよ、言われたことないじゃんっ!
ああ、何でこんな大事な事気付かないかなぁ~私って。
何か決して開けてはいけないパンドラの箱を開けてしまった感半端ないんすけど。
でも気になるよ、正直言って…。
本当に彼が私の事を好きでいるのかが……そうもやもや考えてたら急に胃が痛くなってきた。
「涼太さん…私ちょっと体の具合が悪くなりましたので自室へ戻ります」
「ええっ!? 大丈夫ですか? 一人で行けますか? 僕が連れていきましょうか?」
「いえっ! 結構、で・す。私は一人で行けます。それより後片付けお願いします」
「はぁ…それは構いませんが。ご自愛なさってください」
「有難う御座います。失礼します」
ご自愛なさって……何を言ってるのよ、こいつめぇっ!
普通は男が女を介抱するときはこう、何て言うの、無理やり? 的な? そういう、強引さってのが無いのかしら。
まぁ、童貞だから仕方ないってことなの?
はぁ、胃がきりきりしてい、痛い。
ちょっと横になろう。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
君を探す物語~転生したお姫様は王子様に気づかない
あきた
恋愛
昔からずっと探していた王子と姫のロマンス物語。
タイトルが思い出せずにどの本だったのかを毎日探し続ける朔(さく)。
図書委員を押し付けられた朔(さく)は同じく図書委員で学校一のモテ男、橘(たちばな)と過ごすことになる。
実は朔の探していた『お話』は、朔の前世で、現世に転生していたのだった。
同じく転生したのに、朔に全く気付いて貰えない、元王子の橘は困惑する。
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
うっかり結婚を承諾したら……。
翠月るるな
恋愛
「結婚しようよ」
なんて軽い言葉で誘われて、承諾することに。
相手は女避けにちょうどいいみたいだし、私は煩わしいことからの解放される。
白い結婚になるなら、思う存分魔導の勉強ができると喜んだものの……。
実際は思った感じではなくて──?
見た目の良すぎる双子の兄を持った妹は、引きこもっている理由を不細工だからと勘違いされていましたが、身内にも誤解されていたようです
珠宮さくら
恋愛
ルベロン国の第1王女として生まれたシャルレーヌは、引きこもっていた。
その理由は、見目の良い両親と双子の兄に劣るどころか。他の腹違いの弟妹たちより、不細工な顔をしているからだと噂されていたが、実際のところは全然違っていたのだが、そんな片割れを心配して、外に出そうとした兄は自分を頼ると思っていた。
それが、全く頼らないことになるどころか。自分の方が残念になってしまう結末になるとは思っていなかった。
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる