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「異世界に行ってある伯爵のお嬢さんになって暮らしてほしいんじゃ」

それが頼み事らしい。
異世界…?
お嬢さん…?

行き成りそんなことを言われても困る。
それにこの世界に何も不満もないし、これから先普通に暮らしていく、生きていく、と思っていたので。
私が黙り込んで考えていると爺さんが話しかけてくる。

「大丈夫じゃ。まずこの世界の其方の存在自体の記憶が抹消される。なので今の家族も何も問題ない。それに新しい世界で暮らしていけるんじゃ。楽しいことも沢山あると思うぞよ」
「そんな、勝手に決めないでください。まだ行くとは言ってないんですから」
「頼まれてくれんか。もう既に100名もの女性たちに断られ続けておるんじゃよ。私もこのことだけをやっているわけにはいかん。死人たちの魂の浄化、書類整理、下界の観察、祭事の参加、他の神たちとの会合……諸々詰まっておる。なぁ、頼まれてくれんか?最後の頼みじゃ!!」

勝手な事を言っている神と自称している爺さんの気持ちを理解するには時間がかかると思いました。
でも異世界に行けるのは楽しいかもしれないと思いました。
令嬢になって何不自由なく暮らしていくのも悪くない。
もしかしたら今よりはいい暮らしが出来るかも知れない。
そんな甘い事を考えていると爺さんがにこにこして話しかけてきました。

「そうじゃよ、そうじゃよ。楽しい事が沢山あるぞよ。なぁ、悪いようにはせんから、頼む…!」
「……分かりました。異世界に行けばいいんですね?」
「有難う!あと日本語は通じる世界じゃから問題なしじゃよ」
「そうなんですか。異世界ってどんな世界なんですか?」
「中世ヨーロッパの世界に似ておるな。現在王国と帝国の二つの体制によって支配された世界じゃ」
「なるほど…おとぎ話みたいな話ですね」
「大丈夫じゃ。私は神、悪いようにはせんて」
「頼みますよ? 変に巻き込まれたりするのは嫌ですからね??」
「安心せい。何かあったらこれを使って私を呼び出せばよい」

そう言うと爺さんはガラケー携帯を私に渡してきた。
どうやらこの携帯と爺さんと電話が出来るらしい。
便利な携帯だな…てか、ガラケーって……。

「そろそろ準備も出来ておる。異世界に飛ばしてよいか?」
「ちょっと待ってください。まだ準備が…友達にもばいばいしないといけないし、両親や弟にも挨拶が」
「その辺は記憶がなくなるので問題ないぞよ。では…あとは異世界で頑張って来るんじゃよ」

そう言うと爺さんは持っていた杖を振りかざし、念仏を唱えながらくるくると杖を回し始めた。
光が濃くなっていくと私は吸い込まれるように光に包まれて行ってしまったのだった。

続く……
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