お姉ちゃんが僕のことを構い過ぎて色々困ってますっ!―続

杏仁豆腐

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第2話 愛する弟を守りたいお姉ちゃん

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 引越しを終えて数日間が過ぎた。慣れ親しんだ家を出て少しはホームシックになるんじゃないかと思っていたのだが、全くそうならなかった。なぜならお姉ちゃんがずっと僕の傍にいたからだ。春休み中はずっとお姉ちゃんが僕の傍にぴったり引っ付いて離れてくれない。

 もう何を言っても僕から離れようとしないお姉ちゃん。諦めてお姉ちゃんのペースで春休みを過ごしてしまった所為で落ち着かないし勉強も出来ない。まぁ、勉強の方はするつもりがないって言うのもあるのだが、本当に大変な休みだった。

 短い休みもあと少し。いつも通り自分の部屋で過ごしていると当然のようにお姉ちゃんがマグカップを手に持って入って来た。

「真ちゃん、コーヒー飲まない?」
「あ~、うん。貰うよ」

 はい、と渡されたカップを口元に運んだ。少し甘めのブラックコーヒー。お姉ちゃんの好みの甘さだ。一口飲んでカップを机の上に置くとお姉ちゃんが僕の真横に立ち止まった。すらっと細く透き通った人肌が綺麗な太ももが目の前に……。

「ねぇ……真ちゃん。私って真ちゃんにとってどんな存在なんだろうね」
「……何言ってんだよ。お姉ちゃんはお姉ちゃんでしょ。それがどうしたのさ」
「むぅ……そこまではっきり言わなくても……」

 何が言いたいのかさっぱりだ。また『愛してる』とか言って僕を揶揄うつもりなのか、それとも僕をまたこの間のように誘惑するつもりなのか。お姉ちゃんの考えてえいることが全く分からない。

「真ちゃんってさぁ……可愛い顔してるから、高校入ったらモテそうよねぇ~」
「何を……そんなことないって。僕が今までモテたことがある?」
「あるよぉ~。美海や舞とか……あと亜子ちゃん! もう私がどれだけ肝を冷やした事か……」
 
 おいおい、どんな視点だよ、それ……。亜子……先輩はまぁ、迫られたのは事実だけれどそれ以外の名前は全てお姉ちゃんの友達だし、それにその人達は本気で僕に迫っていた訳じゃ……ないんだから……気にする必要もないでしょうに。

「ん……真ちゃん? 何黙り込んでるの?」
「あ……いや……何でもないよ。それより何その恰好……」

 ああ、とお姉ちゃんが身に着けている服装を自分で確認した。黒地で白のストライプが入った大き目のトレーナーで下は何も履いていないような恰好をして、黒のソックスを履いていた。長細い両脚が露出している。

「これはファッションよ。それに……」
 
 そう言いがら裾をゆっくり捲るとデニムのショーパンを履いていた。少し驚いたがそういう事かと胸を撫で下ろした。全く、未だ外は寒いってのになんて格好してんだよ、お姉ちゃん。

「そんなに驚くことでもないでしょ? まぁ足は少しすうすうするけど。でも楽だし、この格好。それよりもさっきの話の続きなんだけど……」

 続きがあるんだ。どんな話を僕としたいのだろうか。妙な事を言わないでほしいが、多分それは望めないだろうなぁ。

「うん。それでどんな話?」
「えっと……だから、真ちゃんを取られ……じゃなくて、心配だからどうしようって話っ」

 今取られるとか言いかけてなかったか…お姉ちゃんよ。

「そんなこと言われても……僕にどうしろってのさ」
「そうなんだよねぇ……GP……じゃなくて、一応どこにいるか分かるようになっているんだけど、それだけじゃ心配なのよねぇ」

 おい、GPSで監視してんじゃねーか……それで何を心配することがある…お姉ちゃんよ。

「それだけで十分です」
「それだけじゃ心配ですっ」

 はぁ……お姉ちゃんの弟離れがどんどん進行かと思いきや、どんどん悪化してるじゃないか。僕は本当にこのままお姉ちゃんに纏わりついて人生を終わらせてしまうのだろうか。青春、謳歌したい……。

「でもさ、それ以外だと、お姉ちゃんが僕の通う学校に来ることしか出来ないけど。まぁ、そんな事出来るわけないけどさぁ…」
「……なるほどねぇ……学校に行くって手があったわね」
「え……? じょ、冗談だよっ。お姉ちゃん」
「あ、そうよねぇ……出来るわけ、ないよね」

 あっぶねぇ~……お姉ちゃんが本気で学校に行くとか言わんでくれてよかったぁ……。朝からこんな話をしているとは、僕も本当にシスコンが悪化したんじゃないかと自分を歌だってしまう。

「お昼ご飯、どうしよっか?」

 突然話題を変えたお姉ちゃん。何か裏があるナじゃないかと疑う僕。ここ数日はずっと家でインスタントラーメンばっかりだからそろそろ飽きてきた頃なのは間違いない。

「たまには外食でもする?」
「いいねぇ~。真ちゃんは何が食べたい?」
「そうだなぁ……無難にファミレスかな」
「そうよね。それじゃ、お昼前に出掛けよ」

 お姉ちゃんはそう言って僕のベッドの上に座り僕の漫画を読み始めた。自分の部屋にくわけじゃないんだ……。僕はため息をつきながら机の上の置いていたカップに手を伸ばした。


 午前中はほぼ僕の部屋で過ごした後昼前にアパートを出た。歩いて数分の所にファミレスがありそこに向かった。お姉ちゃんは楽しそうに笑いながら僕の腕にしがみつきながら歩く。当然ぴったりくっついてくるのでお姉ちゃんの大きな胸が腕に当たっている。

「あんまりくっつかないでくれよ……」
「何でよ。いいじゃない。弟とこうして歩くのが好きなんだから」
「そうですか…」

 同じ背丈の僕とお姉ちゃん。やはり歩く人たちから誤解された視線が僕に向けられている。これは僕のお姉ちゃんです。だからそんな目で見ないでください。僕の心の中でそう叫びながらファミレスへ向かった。


「どれにする?」
「パスタ」
「私も」

 ファミレスに到着するとすぐに席に案内された。客も多くなく昼時の時間帯をずらして正解だった。僕もお姉ちゃんも待たされるのが好きじゃない。出来れば人の少ない時間帯が良いのだ。それはお互い一致した意見だった。

 注文してから数分で目の前にパスタが到着。僕はトマトのパスタを頼み、お姉ちゃんはカルボナーラを頼んだ。定番な食事。ランチセットでパンとコンソメスープがついており、ドリンクバーの横に置いてあるスープジャーからスープを取り行った。

「ここのスープ美味しいんだよ。真ちゃん、お変わり自由だからねっ」
「知ってるよ」

 うふふ、と笑顔で僕の顔を見つめるお姉ちゃん。まるで子ども扱いなんだから。もう僕も高校生になるんていうのに本当にブラコンなんだからなぁ……。

 お互い食事をしていると横に座っていたお姉ちゃんが僕の太ももに手を置いて触って来た。驚いだ僕は黙ったままお姉ちゃんを見るとトロンとした瞳で僕を見つめるお姉ちゃんが……。

「あのさ……こんな所でなにやってるの、お姉ちゃん」
「だって……寂しいんだもん…我慢できなくって」
「我慢してよ。ていうか他の人に見られるから止めてっ」
「え~……じゃ、続きはお家でしてくれる?」
「続きって……何をさ」
「ちゅ~とか、ぎゅってしてくれるとか……」
「し、しないよっ。そんな事出来ないって……」

 僕が断るとお姉ちゃんが頬を膨らませながら僕を睨みつけてきた。僕はお姉ちゃんの顔を数秒見てから俯いて肩を落とした後、お姉ちゃんの耳元で、分かったよ、と囁いた。それを聞いたお姉ちゃんは嬉しそうな表情に変わって僕の腕に抱き着いた。

 食事を済ませファミレスからアパートに着くとお姉ちゃんが僕の目の前に立って両手を広げてた。ああ、そうか……抱きしめるって言ったんだっけ……仕方ない。僕はそのままお姉ちゃんを抱きしめた。

「真ちゃんっ。大好きだよ」
「…僕もだよ、お姉ちゃん」
「ありがとう、真ちゃんっ」

 お姉ちゃんはそう言うと僕の首筋にちゅっとキスをした。その後手を繋いで僕の部屋に行くと今度はベッドに座るように言われた。僕は素直にベッドに座ると僕の太ももにお姉ちゃんが座った。

「ちょ、ちょっとぉ……なんで向き合って座るんだよ。しかも僕の上に……」
「こっちの方がいいんだもん」

 僕の首に腕を伸ばしてお姉ちゃんの顔がゆっくりと近づく。完全にロックされた僕はそのまま何も抵抗せずにお姉ちゃんのキスを受け止めた。ちゅ、ちゅ、と音を立ててするキスの後、今度はお姉ちゃんの舌が僕の塞ぐ唇をこじ開けて奥にある僕の舌に絡みつく。

 お姉ちゃんが僕の舌を吸ったり舌を絡ませたりするだけで水音が僕の耳に残る。更に下唇を軽く吸われてしまった。もう限界だ……これ以上は……生理現象が……。

「もういいでしょ……お姉ちゃん」
「ええ~……まだしたいよぉ~」
「もうこれ以上は無理……」
「何で?」
「だって……」

 僕は俯いた。お姉ちゃんも僕の視線の先にあるものを見た。

「ああ~、そういう事か……エッチしたいの?」
「もうっ。馬鹿じゃないのっ!! そういうこと言わないでよ」
「ごめん、ごめん~」

 お姉ちゃんを下ろして僕は部屋を出た。そのままトイレに向かってなんとか理性を取り戻し、口の中を水で濯いだ。

「お姉ちゃん…もう何てこと、弟にするんだよ……」

 僕はそう小さく呟いた後部屋に戻った。部屋ではお姉ちゃんが何もなかったかのような表情で僕の帰りを待っていた。僕は部屋の隅っこに体育座りをしてお姉ちゃんと距離を取る。しかしお姉ちゃんは僕の傍に腰掛けると僕の腕を掴んで黙ったままだった。

 
 お姉ちゃんが僕に構い過ぎてこれ以上一緒に居るとマジで姉弟の垣根を超えてしまいそうで怖いのですっ!!

 お姉ちゃんの強度なブラコンを誰か止める方法を教えてくださいっ!
 ああ、早く学校始まってほしい……。
 お姉ちゃんの居ない時間帯を過ごしたいぃ――!!



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