あの日、北京の街角で4 大連デイズ

ゆまは なお

文字の大きさ
81 / 95

13-1

しおりを挟む
「明日、仕事終わってからちょっとつき合ってくれる?」
「いいよ、買い物?」

「いや、下見」
 そう言って孝弘は仕事のあとにタクシーで大連駅前に祐樹を連れて行った。

「ここ?」
 今は中華のファーストフード店が入っているその場所は、櫻花珈琲店の出店予定地だ。

 間もなく今の契約が終了するのでその後を借りることになっている。孝弘の説明に祐樹はぐるりと店内を見渡した。

「へえ。わりと広いね」

「日本のコーヒーチェーンみたいな内装にしようかと思ってて。ビジネス街にあるコーヒーショップのイメージで、ちょっと落ち着いた感じの」

「ああ、うん。みやげ物は置かないんだっけ?」

「そう。大連はそんなに観光客も多くないし、手工芸品が売れる地域でもないだろうって。でも、珈琲豆とドリップセットを売る予定」

「いいね。自宅でも飲む習慣がつけば豆も買うよね」

 コーヒーを飲む習慣がほとんどないので、ドリッパーは持ってないのが普通だ。飲むとしたら瓶入りのインスタントコーヒーだが、それが絶望的においしくない。

「こっちのインスタント、マズイからなー。それしか飲んだことないから知らないだけで、一度ドリップしたの飲んでもらったら、気に入る人も多いと思う」

 櫻花珈琲店は上海三店舗、北京二店舗がすでに開店していて、売り上げは順調に伸びている。大連では二店舗が開業予定だ。

「もう五店舗だもんね。あと昆明と大連、瀋陽だっけ?」
「そう。実は上海は年明けに追加で二店舗オープンしたんだ。うちを気に入って誘致してくれた人がいて、そうなるとあっという間に話が進むよ」

「へえ、評判いいんだ」
「ああ、やっぱ最初の店が成功すると後が出やすい。上海は立地も客層もいいしコーヒーも浸透してるし」

「すごいね、地域によってだいぶ違う?」
「違う。上海店はレオンの友人のデザイナーに店作ってもらったんだ。都会的で高級志向な感じで、置いてる商品も螺鈿細工の家具とか壁掛けとか両面刺繍とかシックな雰囲気だし」

 上海店はそういうコンセプトで店内を作って国内の富裕層からかなり注目された。観光客も多いが、日常の売上は中国人の比率が高い。

「いい仕入れ先が見つかったから、フードメニューも出したのが大きいんだと思う」
「そうなんだ。仕入れ先次第ってあるよね。大連はどうするの?」

「開発区の店はそんなに広くないんだ。けどほとんどオフィスで飲むだろうから、駐在員向けにテイクアウトメインでいこうかって。パンかサンドイッチくらい置きたいところだな」

「へえ。店できたら買いにいこ」
「家で同じのが飲めるのに」

「店で買いたいの。孝弘だって行くでしょ?」
「まあな。売上げあげたいし。ぞぞむも言ってたんだけど、こうして店舗持つと今までと感覚が変わるよ」

「どう違う?」
「んー、経営してるって感じが強くなった、かな」

 今までは櫻花貿易公司という名前の通り、貿易会社として商品の売買がメインだった。孝弘が任されていたのは買付け交渉や発注関係が多かった。でも店舗を持ったら経営戦略が変わるのは当然で、意識が変わるのも当然だ。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

甘くてほろ苦い、恋は蜜やかに。

米粉あげぱん
BL
紅い唇は、物足りなさそうに震えるーー。 御堂 和樹(みどう かずき)と三神峯 景(みかみね けい)は、都内の大手有名製薬会社に勤める営業部の主任と薬事研究課で日々研究を重ねる薬剤師。 普段の業務ではなかなか関わらない二人だが、大阪での仕事で一緒になったことがきっかけで互いに惹かれ合う。 同じ会社の社員同士で、男同士。これ以上踏み込んではいけないと思いつつ、その感情は止まることを知らない。感情のままに噛みついた唇は、拒まれればすぐに離すつもりだった。 彼に会うたび、触れるたび、夢中になっていく。 ーー嬉しいことも辛いことも、一緒に背負っていきたい。 甘くほろ苦い、二人だけの秘密の恋。 ※表紙は漫画家の星埜いろ様に描いていただきました!!

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

宵にまぎれて兎は回る

宇土為名
BL
高校3年の春、同級生の名取に告白した冬だったが名取にはあっさりと冗談だったことにされてしまう。それを否定することもなく卒業し手以来、冬は親友だった名取とは距離を置こうと一度も連絡を取らなかった。そして8年後、勤めている会社の取引先で転勤してきた名取と8年ぶりに再会を果たす。再会してすぐ名取は自身の結婚式に出席してくれと冬に頼んできた。はじめは断るつもりだった冬だが、名取の願いには弱く結局引き受けてしまう。そして式当日、幸せに溢れた雰囲気に疲れてしまった冬は式場の中庭で避難するように休憩した。いまだに思いを断ち切れていない自分の情けなさを反省していると、そこで別の式に出席している男と出会い…

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

死ぬほど嫌いな上司と付き合いました【完結】

三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。 皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。 涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥ 上司×部下BL

相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~

柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】 人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。 その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。 完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。 ところがある日。 篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。 「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」 一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。 いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。 合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)

処理中です...