人生に疲れて南の島へ

ゆまは なお

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「ん……、あっ……」
 大倉の大きな手で背中を撫で下ろされて、陽斗はぼんやりと目を開けた。文化祭後のほどよい疲れと酒の酔いでふわふわしている。
「かわいいな、好きだよ」
 スタンドライトだけに照らされて、上半身裸の大倉がほほ笑んだ。男らしい色っぽさにドキドキする。
 袖を抜いた浴衣が纏わりついた状態で、陽斗はベッドに横たわっていた。
「僕も、好き……」
 熱に浮かされたように陽斗は言った。酔っていて気分が高揚している今なら素直に言える気がした。

「ねえ修二さん、最後までして。泣いてもやめないで」
 あの嵐の夜からこれまで何度かベッドで触れ合ったが、まだ体を繋いだことはなかった。途中で陽斗が泣いてしまうからだ。
「わかった。でも無理やりする気はないけど?」
「本当に嫌じゃないんです。びっくりしちゃうと涙が出るだけで」
 今まで誰ともこんな触れ合い方をしたことがないから知らなかったが、自分は性的な興奮が涙になってしまうらしい。
 泣くと大倉は手を止めて陽斗をなだめてくれるから、本当は泣きたくないのだが、気が昂ると涙が勝手に出てきてしまうのだ。

「本当はしたかった?」
「うん」
 正直にうなずくと大倉はしゅっと浴衣の帯を抜いた。
「すこしだけ、巻いてていい?」
 そう言って陽斗の手首にかるく巻きつけた。
「シチュエーション変えると気分変わるだろ。今日は浴衣だし、ちょっとだけ、な?」
 大倉が安心させるように笑ったので、うなずいた。ドキドキするけど嫌じゃない。

「今日の陽斗、カッコよかった」
「ホント? 修二さんのおかげだよ。ありがとうございました」
 文化祭は盛況だったし、盆踊りにもたくさんの人が来てくれた。
 浴衣を着た日本語学科の学生たちは、楽しそう写真を撮りあっていた。
 和太鼓は大満足という出来には遠いけれど頑張って練習したかいはあったし、何より学生が挑戦して楽しんでくれたことが嬉しかった。
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