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Episode1「別れ」
第4話
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千奈津さんが押したのだ。一軒家の家の中でインターホンがよく響いているのが、玄関の外からでも分かった。ダークブラウンの色調と白い壁で造り建てられた一軒家の玄関前には小さなガレージと控えめな草地の庭があり、小人やうさぎのファンタジックなガーデンピックが刺さった色とりどりの花が咲いた鉢植えやプランターが並んでいる。その中央にねずみ色の長方形の石畳が玄関に向かって敷き詰められており、私と千奈津さんは花や草を踏む心配をすること無く、さくさくと玄関にたどり着いていた。
「アカリー!」
インターホンを押しても一向に現れない家の主に業を煮やし、千奈津さんが玄関の扉に向かって友人である「明里さん」の名を呼んだ。すると———。
バタバタとようやく人の足音が響いて聞こえ、ガチャリ、と扉が開いた。
現れたのは千奈津さんと同い年の北盛明里さん。千奈津さんの高校時代の友人だそうだ。数日前、千奈津さんから連絡が来た。
―――数日前。
自宅のあるマンションの3階の一室で、出来上がった料理の皿をスマホで撮影すると、料理アプリに画像をアップし、私は、「よし!完成」と声を出していた。スマホの画面には様々な料理のレシピが画像と共に記載され、フォロワーの表示数には42.4万人との表示がある。完成した料理には目もかけず、やがて私は首を回してその場でストレッチをした。
「…うーん」
トマトと塩レモンのパスタは先週作っちゃったし、今度は何を素材にしようかな。などと考えていた時に、その電話が掛かったのである。
テーブルの上に置いていたスマホが震え、私は手に取ると画面を見た。画面には「お姉さん」の文字。何だろう。
通話ボタンをタップすると、はい、と声を出した。
『あ!久しぶり!ゴメンね、なっちゃん、突然。』
「いえ!大丈夫ですけど…お久しぶりですね。どうかされたんですか?」
彼女の声は電波の向こうで、心なしか神妙なトーンへと変わる。
『ちょっと折り行ってなっちゃんにお願いがあって。今…大丈夫かな?』
その声色に、私はテーブルの傍に置いてある椅子に腰掛ける。
『大丈夫ですよ?』
彼女はホッとしたのか、少し安堵した息遣いを受話器越しに漏らすと答えた。
『高校時代の知り合いがね、私に学生時代ぶりに連絡よこして来てね?相談したいことがあるらしいんだけど、その子と……その、あんまり仲良くなくてね?でも何か断りにくかったんだ。だからね?なっちゃん、もし予定が空いてたら一緒に付き合ってくれないかなぁ、って思って。6月の3日なんだけど……ダメかな?』
意外なお誘いに一瞬目を丸くするも、私は快諾した。
「あぁ…良いですよ。大丈夫です」
『ホント!?助かったぁ!ありがとう!』
久々に聞く明るい彼女の声に、私の頬は緩む。
「アカリー!」
インターホンを押しても一向に現れない家の主に業を煮やし、千奈津さんが玄関の扉に向かって友人である「明里さん」の名を呼んだ。すると———。
バタバタとようやく人の足音が響いて聞こえ、ガチャリ、と扉が開いた。
現れたのは千奈津さんと同い年の北盛明里さん。千奈津さんの高校時代の友人だそうだ。数日前、千奈津さんから連絡が来た。
―――数日前。
自宅のあるマンションの3階の一室で、出来上がった料理の皿をスマホで撮影すると、料理アプリに画像をアップし、私は、「よし!完成」と声を出していた。スマホの画面には様々な料理のレシピが画像と共に記載され、フォロワーの表示数には42.4万人との表示がある。完成した料理には目もかけず、やがて私は首を回してその場でストレッチをした。
「…うーん」
トマトと塩レモンのパスタは先週作っちゃったし、今度は何を素材にしようかな。などと考えていた時に、その電話が掛かったのである。
テーブルの上に置いていたスマホが震え、私は手に取ると画面を見た。画面には「お姉さん」の文字。何だろう。
通話ボタンをタップすると、はい、と声を出した。
『あ!久しぶり!ゴメンね、なっちゃん、突然。』
「いえ!大丈夫ですけど…お久しぶりですね。どうかされたんですか?」
彼女の声は電波の向こうで、心なしか神妙なトーンへと変わる。
『ちょっと折り行ってなっちゃんにお願いがあって。今…大丈夫かな?』
その声色に、私はテーブルの傍に置いてある椅子に腰掛ける。
『大丈夫ですよ?』
彼女はホッとしたのか、少し安堵した息遣いを受話器越しに漏らすと答えた。
『高校時代の知り合いがね、私に学生時代ぶりに連絡よこして来てね?相談したいことがあるらしいんだけど、その子と……その、あんまり仲良くなくてね?でも何か断りにくかったんだ。だからね?なっちゃん、もし予定が空いてたら一緒に付き合ってくれないかなぁ、って思って。6月の3日なんだけど……ダメかな?』
意外なお誘いに一瞬目を丸くするも、私は快諾した。
「あぁ…良いですよ。大丈夫です」
『ホント!?助かったぁ!ありがとう!』
久々に聞く明るい彼女の声に、私の頬は緩む。
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