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067 オルセイア編:戦闘フェイズ③

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 俺達に反応したのか、それとも元から待機していたのか。
 とにかく城壁の上にも雑魚の大群が待ち受けていた。

「邪魔だ」

「「「グェエエエ」」」

 俺が〈ソニックブレード〉で一掃する。
 このスキルは本当に使い勝手がいい。
 狙い通りのところへ飛ばせる上に、雑魚をまとめて倒せる。
 戦闘の幅がグッと広がった。
 再使用時間も1分と短いので、ガンガン使っていこう。

「えいやーっ!」

 新手は志乃亜が担当する。
 彼女の放ったサーブは大きく外れ、適当な建物に当たった。
 被弾した建物は爆音と共に砕け散る。
 テントと違い、城内の建物には攻撃が通用するようだ。

「うぅぅぅ、難しいよ! テニス!」

「全力で打つからだろ。ゆっくり下から打てばいい」

「それで威力は大丈夫なの?」

「多少は落ちるかもしれないが、どうせ着弾すれば爆発する」

「分かった、やってみる!」

 時計塔までは結構な距離がある。
 城壁の上を走っていることで、直線ルートを進めていない。

 今はようやく最初の角を曲がったところ。
 ここから長々と伸びる城壁の上を走っていく必要がある。
 最後に突き当たりの角を曲がってほどなく到着だ。

「ゴッブゥ!」

 ゴブリンの群れが前方に現れた。

「やってみろ、志乃亜」

「りょーかい!」

 志乃亜が〈ホーリーボール〉を発動。
 光の球を丁寧に下から打つ。
 球はこれまでと違い、放物線を描きながらゆっくり飛ぶ。
 そして、群れの真ん中に着弾した。
 スピードこそ出ていないが、コントロールは抜群だ。

 ドカァン!

 光の球が勢いよく爆発する。
 爆発の仕方や威力は全力のサーブとそう変わらない。
 ゴブリンは派手に吹き飛んで死んだ。

「いけるじゃん!」

 志乃亜がグッと握りこぶしを作る。

「すごいです、志乃亜さん」

「この威力ならわざわざサーブに固執する必要はないな」

「ふっふっふ、ついに私も戦闘で輝く時が来たね!」

 その後も俺と志乃亜が交互にスキルを使う形で進む。
 俺と志乃亜が並んで前を走り、梨菜と奏が後ろに続く。

「この様子だと、私の出番はボス戦までなさそうですね」

 梨菜は少し寂しそうだ。
 自分も散弾銃を連射したいのだろう。

「梨菜の連射はボスや中ボスとの戦いで活躍するからな。出番が少ないのはむしろいいことだ。銃弾を温存できるわけだし」

「それはそうですが……私も悠一さんのお役に立ちたいです。それで、今度は私のことを旅行に……」

「こらー! 上手いこと誘導しようとしない!」

 志乃亜が割って入る。
 梨菜は「ふふーん」と笑って流す。

「旅行はかまわないけど、学校があるとなかなか行けないだろう」

「悠一さんが連れていってくださるなら休みますよ」

「なら来週にでも行くか?」

「是非! 2泊3日と言わず、7泊8日くらいしましょう! そのくらいなら休んでも平気です! 二人きりで温泉に浸かったり、美味しい料理をたくさん食べたり、それに夜は悠一さんの思うがままに私をめちゃくちゃにしてください!」

「おお……それはすばらしい……! 特に最後のがいいな……!」

 俺は旅館のワンシーンを妄想する。
 布団の上に座る梨菜。
 彼女の着ている浴衣は少しはだけている。
 俺はそこへ近づき、ゆっくりと浴衣を脱がしていく。
 露わとなった彼女の胸にむしゃぶりつき……。

「あああああああ、たまらん! それいい! 採用!」

 妄想が暴走し、俺は勃起しながら叫んだ。

「ちょいちょいちょい! 私! 私と旅行するんだから! 明日! 私のことだってめちゃくちゃにしていいんだよ! って、なに言ってるんだ、私」

 志乃亜が自分で自分に突っ込み、顔を赤くする。

「おっと」

 話しているとまたしても雑魚が登場。

「志乃亜、そろそろ〈サーチ〉を使え。ここからなら宮殿全体を範囲に含んでいるはずだ」

 今回の行動可能区域はこれまでよりも広い。
 4倍ないしは5倍近い広さだ。
 〈サーチ〉で宮殿を捉えるには、発動場所を考える必要があった。

「了解!」

 俺が斬撃の衝撃波を飛ばすと同時に志乃亜が魔法〈サーチ〉を発動する。

「ボスは宮殿にいるよ!」

 雑魚の消滅を確認してから、志乃亜がスマホを見せてくる。
 たしかに宮殿内にボスを示す点があった。

「このボス、かなり強いかもな」

 〈地図〉を見た俺の感想だ。

「えっ、なんでそう思うの?」

 志乃亜と梨菜は首を傾げている。

「見ろ、宮殿にはボスの反応しかない」

「たしかに」

「これまでの敵はどいつもこいつも雑魚とセットになっていたが、今回のは完全な独立タイプだ。コピーキャットのように魔物を召喚する可能性もあるが、それだったら宮殿付近の雑魚を呼び寄せればいい。おそらく雑魚や中ボスを足手まといと思っているのだろう」

「そう考えると……かなり怖いね」

「攻める時は用心しないとな」

 俺達は気を引き締めた。

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