後宮の棘

香月みまり

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第10章 後宮

第385話 完璧

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とう芙艶ふえんは響透国の第3皇女として生まれた。

上にはすでに皇太子とされる兄が2人いて、姉が2人いた。

何も期待されていない子供だった。 
ただただ、皇后の産んだ末の娘として可愛がられていれば良かった。

生来、容姿には兄姉の中で誰よりも恵まれていた事もあり、皆が美しい末姫を称えた。


実際、幼少期の芙艶は何の疑いもなく、自らの事を完璧な子どもだと思っていた。

それが崩れ去るのは、10を超える前。
勉学や作法に取り組み、他の近習の子ども達と机を並べるようになってからだ。

美しいだけでは、完璧にはなれないのだ。学をつけ、才を磨き外見だけでなく内面も美しくなければならないのだと気がついた。


その頃の芙艶は、すでに完璧にこだわりすぎていた。完璧と称えられなければすでに彼女は満足できなくなっていたのだ。

だからそのために努力をする事は苦ではなかった。姉や母には「女が何もそこまでしなくとも」と呆れられはしたものの、学をつければつけるほど、ただ美しく着飾り遊び暮らす彼らこそ、もっと恥ずべきだとすら思うようになった。

私は違う!男と同じように賢く、それでいて女性としての艶やかさを持つ完璧な女性になるのだ。
そしてゆくゆくは、それに見合った相手に嫁ぎ然るべき立場になるのだ。

実際、芙艶は優秀だった。勉学や作法、楽器に歌、芸術、どれをとっても人並み以上にできてしまった。

そんな彼女を父王をはじめ家臣達も称えた。
そしてその噂は民にまで広がり、響透の王室にその人ありと言われるほどに成長した。

またしても完璧を手に入れたのだ。

そんな芙艶に縁談が舞い込んだ。

相手は長きに渡っての同盟国の湖紅国の皇帝だった。
すでに皇帝には側室が3人おり、皇子が1人産まれたばかりだったが、皇后の座は空位だった。


芙艶の才を見込んで、是非皇后として嫁いで欲しいとの打診だったのだ。

ややこしそうな後宮に後からその長として嫁ぐなど、とてつもなく骨が折れそうな話だった。

しかし、その頃すでに国内での羨望を欲しいままにしていた芙艶は、次の場所を欲していた。

めんどくさい問題を抱えた後宮を皇后としてまとめあげたら、どれほど称賛されるだろう。

そして、この優秀な素質を持って皇帝を助け、その子を産み、他の妃の子どもも分け隔てなく育て上げ、次世代の皇帝を育てあげる。


素晴らしい成果ではなかろうか。


この頃にはすでに姉達も嫁いで子を成していた。
1人は碧相皇太子の側室として、もう1人は臣下の妻としてで、皇后になれる者は芙艶だけだ。それも誇らしかった。

二つ返事で、湖紅へ嫁ぐ事を快諾した。
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