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第10章 後宮
第398話 憔悴
「皇后宮の女官達の証言と、皇后の証言、そして劉妃の書状の内容と……大まかな部分は一致していると考えていいだろうな」
それぞれの報告書を見比べて、雪稜は大きく息を吐いた。
最初こそ、証言を濁していた皇后も、数日続く取り調べの後に、自身の関わった事を話し始めた。
もともと頭の回転が早い人だ、中には何気なく濁した部分もあるようだが、それに関しては女官達の証言で話は繋がっている。
「知れば知るほど、皇太后の執念深さが恐ろしいな」
呟いた冬隼の隣では皇帝が疲れた顔で座って宙を見つめていた。
その横顔を翠玉は心配そうに眺める。
「結局のところ、俺たちの因縁に妻達を巻き込んでしまった形だな」
ようやく口を開いたと思えば、消え入りそうな声で、そこに一国の皇帝の威厳はない。
無理もない。
この数ヶ月のうちに、2人の子供が病に倒れ、側室が自害し、寵妃が毒を盛られたのだ。そしてその手引きをしていたのが自身が最も信頼し、頼りにしていた皇后だったというのだ。
この人の心を労わる事も必要なのではないかと思うほどに憔悴している。
「まぁ、劉妃は自業自得、皇后もまぁ唆されたにしても、なかなかえげつないことしてますからねぇこの2人に関しては同情の余地はありません」
そんな皇帝の様子に全く遠慮がないのは雪稜である。
彼はいつでも淡々と情報を処理しており、実質的に調査の指揮を行っているのも彼だ。
調査の中で出てきたのは、皇后と東左が随分と長い期間男女の関係であった事や、東左の子を身篭り、おそらく秘密裏に処理したらしい事だ。あの凛として清廉なイメージのある彼女が、不気味な雰囲気を纏った東左と情を通わせていたということがいささか信じられない。
しかし、東左を信用していたからこそ、皇后は皇太后のいいように利用されていたのだろう。
「とりあえず調査はこれで打ち切ります。皇后の処罰を考えねばなりませんが、秋官からも伺いが来ております」
「彼等に好きに裁けと言うのも酷な話だからな」
憂鬱そうに眉をよせる皇帝に、雪稜は頷くと今度は翠玉に視線を向けた。
「泉妃の様子はどうです?」
ここに来る前に、翠玉は泉妃を見舞ってきたのだ。
「今日は随分と調子が良さそうでした。治療薬が優秀なようで……随分と浮腫も落ちてきて医師の話ではこのまま薬が効いて毒素が抜けてくれば、出産にはなんとか間に合うだろうとの事です」
子供達の養育を成り代わりたいがために、自身の命が狙われていた事や、それを企んでいた輩が自身が心から信頼していた皇后であったことには随分と衝撃を受けていた様子ではあったが、それでもやはり母親である。
「今後子供達の命が危険に晒される恐れが無いことが何よりだと言っておられました」
「そうか……」
皇帝が少しだけ安堵したように息を吐いた。
「とにかく、皇太后のように次の代に禍根を残すことだけは避けなければならない。皇后の処遇もそうだが、子供達へも十分な配慮が必要だ」
報告書を置いた雪稜は真っ直ぐ翠玉に向き直った。
「翠玉殿と泉妃にはまだ苦労をかけてしまうだろうが、よろしく頼みます」
そう頭を下げられて、翠玉は慌てる。
いくら義兄とはいえ、一国の宰相と皇帝までが自分に向かって頭を下げている光景は心臓にとてつもなく悪い。
それぞれの報告書を見比べて、雪稜は大きく息を吐いた。
最初こそ、証言を濁していた皇后も、数日続く取り調べの後に、自身の関わった事を話し始めた。
もともと頭の回転が早い人だ、中には何気なく濁した部分もあるようだが、それに関しては女官達の証言で話は繋がっている。
「知れば知るほど、皇太后の執念深さが恐ろしいな」
呟いた冬隼の隣では皇帝が疲れた顔で座って宙を見つめていた。
その横顔を翠玉は心配そうに眺める。
「結局のところ、俺たちの因縁に妻達を巻き込んでしまった形だな」
ようやく口を開いたと思えば、消え入りそうな声で、そこに一国の皇帝の威厳はない。
無理もない。
この数ヶ月のうちに、2人の子供が病に倒れ、側室が自害し、寵妃が毒を盛られたのだ。そしてその手引きをしていたのが自身が最も信頼し、頼りにしていた皇后だったというのだ。
この人の心を労わる事も必要なのではないかと思うほどに憔悴している。
「まぁ、劉妃は自業自得、皇后もまぁ唆されたにしても、なかなかえげつないことしてますからねぇこの2人に関しては同情の余地はありません」
そんな皇帝の様子に全く遠慮がないのは雪稜である。
彼はいつでも淡々と情報を処理しており、実質的に調査の指揮を行っているのも彼だ。
調査の中で出てきたのは、皇后と東左が随分と長い期間男女の関係であった事や、東左の子を身篭り、おそらく秘密裏に処理したらしい事だ。あの凛として清廉なイメージのある彼女が、不気味な雰囲気を纏った東左と情を通わせていたということがいささか信じられない。
しかし、東左を信用していたからこそ、皇后は皇太后のいいように利用されていたのだろう。
「とりあえず調査はこれで打ち切ります。皇后の処罰を考えねばなりませんが、秋官からも伺いが来ております」
「彼等に好きに裁けと言うのも酷な話だからな」
憂鬱そうに眉をよせる皇帝に、雪稜は頷くと今度は翠玉に視線を向けた。
「泉妃の様子はどうです?」
ここに来る前に、翠玉は泉妃を見舞ってきたのだ。
「今日は随分と調子が良さそうでした。治療薬が優秀なようで……随分と浮腫も落ちてきて医師の話ではこのまま薬が効いて毒素が抜けてくれば、出産にはなんとか間に合うだろうとの事です」
子供達の養育を成り代わりたいがために、自身の命が狙われていた事や、それを企んでいた輩が自身が心から信頼していた皇后であったことには随分と衝撃を受けていた様子ではあったが、それでもやはり母親である。
「今後子供達の命が危険に晒される恐れが無いことが何よりだと言っておられました」
「そうか……」
皇帝が少しだけ安堵したように息を吐いた。
「とにかく、皇太后のように次の代に禍根を残すことだけは避けなければならない。皇后の処遇もそうだが、子供達へも十分な配慮が必要だ」
報告書を置いた雪稜は真っ直ぐ翠玉に向き直った。
「翠玉殿と泉妃にはまだ苦労をかけてしまうだろうが、よろしく頼みます」
そう頭を下げられて、翠玉は慌てる。
いくら義兄とはいえ、一国の宰相と皇帝までが自分に向かって頭を下げている光景は心臓にとてつもなく悪い。
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