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1章
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しおりを挟む各国からの王族を迎えた晩餐会も恙無く終わり、ジェイドと軽く言い合いをした以外は、本当に、順調に婚姻の儀のメインとなる日を終えた。
晩餐会を終えた私が陛下に手を引かれて戻ったのは、昨日までの客間ではなく、王妃の部屋だった。
それは、歴史あるこの城の最上階、陛下の部屋と執務室のあるフロアの、一角。とはいえ、ここはごくごく限られたものしか入れない王のプライベート空間。フロアにあるのはその3部屋のみである。
そして私にあてがわれた王妃の部屋は、大変名誉なお部屋なのである。
というのも、歴代の王妃の中で、輿入れ直後からこの部屋に入る事を許された王妃はほんの一握りなのである。
この部屋は国王の居室と扉を隔てて行き来が出来る構造になっている。故に、王の最大のプライベート空間に自由に出入りができる上、寝首を斯く事も可能なのである。
ここに住まう事を許されたという事は
私が陛下にとって大切な存在であり、信頼が厚い妃である証なのだ
感激のあまり涙目で見上げる私に陛下は少し困ったように笑いながら「アルマは私の無二の妻だからね」と言ってくださったのだ。
もう死んでもいい!
しかし死んでもいられない。部屋に入るなり、私は先日顔合わせを済ませていた、王妃付きの侍女達につかまり、王妃の私室のバスルームに連行されるとすぐに服をひん剥かれて全身のお手入れがスタートした。
そう、本日残っている私の最後の仕事のために、いまからピカピカに磨き上げられていく。
長年恋焦がれた美しい陛下との閨のために。
あぁ、どうしよう
考えるだけで鼻血が出そう
香油を身体に塗り込まれながら、私は恍惚とその時に想いを馳せた。
あのお美しい殿下と、あんな事やこんな事を、、、
普段から甘やかな殿下は、どんな熱いお言葉をかけてくださるのだろうか
今夜はきっと忘れられない夜になる。
そんな予感しかしない。
胸の高鳴りとともに、私が寝室に1人残される頃には、夜も更けて随分と良い時間になっていた。
いけない、緊張してきたわ。
ガチャリと、寝室の扉が開いて、陛下が姿を現した。
慌てて立ち上がって礼を取った私を見て、陛下は顔を上げるように言う。
言われた通り顔を上げてみて、私はあれと首を傾ける。
殿下が身につけているのは、首から下をすっぽりと隠した長く分厚いローブで
どちらかというと、身体を隠すのが目的であるそれは、色気とか艶かしさとかは皆無
あれ?私の想像していたお姿と随分違うな、、、
そう思いながらも、そんな姿でも素敵とか頭の端でどこか思っていた私の手を取って陛下は優しく微笑んで
「少し話をしよう」
と、寝台に誘った。
陛下と寝台!
すごくいやらしいわ
言われるままに陛下のエスコートで並んで寝台に座ると、胸の高鳴りが一層激しくなる
胸を落ち着かせながら、ゆっくりと陛下を見上げる。
澄んだグリーンの瞳が、切な気に私を見つめていて、
なんでこんなに悲しそうなのかしら?
ズッと鳩尾の辺りが重くなった。
そこでようやく私はこの状況が、あまり浮かれてていいものではないのではないかと不安になった。
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