死んだことにした悪役令嬢、 辺境で騎士団長に溺愛されつつ帝国を建て直します

桃我タロー

文字の大きさ
10 / 70
第一章 ヴァルム試験国家編

第八話 死人文官の処方箋(1)

しおりを挟む
 翌日。

 日が傾き始めた頃のヴァルム砦は、昼とも夜ともつかない灰色に沈んでいた。雲と石壁の色がほとんど同じで、境目だけが冷たい風の筋になっている。中庭では、兵たちがだらけた掛け声を張り上げながら木剣を振っていた。訓練と呼ぶには形ばかりだが、昨日よりはわずかに、剣先の高さと足の運びが揃っているように見える。

(昨夜の「七割」の数字が、どこか別の形になって伝わったのでしょうね)

 直接口にしたのは団長一人に対してだけだ。だが、指揮官の顔つき一つで、部下の空気は変わる。数字には載らない波及効果だと、シュアラは中庭を斜めに横切りながら観察する。

 風が頬を掠める。その冷たさで、昼から何も口にしていないことをようやく思い出した。胃のあたりが、空気だけで膨らんでいるような、変な軽さを訴える。

(交渉の前には水を飲め、何かひとくちでも食べておけ──)

 脳裏で、父の声が一瞬だけよぎる。帝都の会議室に入る前、廊下で何度か聞かされた忠告だ。

(……忘れました。申し訳ありません)

 心の中でだけ返事をして、執務棟の扉を押した。

 石の廊下は、日中よりひんやりしていた。靴底から這い上がる冷たさが、ふくらはぎの途中で止まりきらず、膝の裏にまで届いてくる。燭台の炎はところどころ間引かれていて、灯りの届かない箇所には、夜の影が細長く貼り付いていた。

 突き当たり、一番奥の扉の前で足を止める。帳簿の束は昨夜ほど重くないが、その代わり胸のあたりが妙に詰まっている。息を一度、ゆっくり吐き出し、指先でマントの襟を直してから、二度ノックした。

 短い沈黙のあと、内側から声が落ちてくる。

「……シュアラだ。入れ」

 昨夜より、わずかに声に張りがある。数字にすれば一割増し、といったところだろうか。意味のある変化として扱うには足りないが、ゼロではない。

 扉を開ける。

 部屋の中には昨日と同じ燭台の火が揺れていたが、空気の匂いが少し違っていた。酒の匂いはまだ残っているものの、鼻を刺すほどではない。机の上の書類の山も空き瓶の数もさほど減っていないが、カイ・フォン・ヴォルフは椅子にもたれかかってはいなかった。背もたれから身を起こし、片肘を机につき、真正面からこちらを見ている。

 視線がぶつかり、短い沈黙が落ちる。蝋燭の炎が一度ふっと揺れ、机の上に残ったワインの輪染みの影が、血溜まりのように長く伸びた。

「……昨夜の続きだな」

 先に口を開いたのはカイだった。喉の奥にまだ酒の掠れを残しつつも、言葉の芯はぶれていない。

「七割ってやつ。あれで話が終わる顔じゃなかった」

(顔で判断されるのは、あまり好ましい検査方法とは言えませんが)

 そう評しつつ、シュアラは小さく頭を下げる。即答は避け、一拍置いてから机の端に紙束をそっと置いた。

「昨夜お伝えしたのは、診断の骨子だけです」

 一番上の一枚を指先で押さえる。赤い印のついた箇所が、ところどころ傷口のように点在している。

「今日お持ちしたのが、その後の処置──本題になります」

 カイはこめかみを押さえていた指を離し、椅子の背にもたれ直した。かすかに背板が軋む。

「……もう一度、数字を聞かせろ」

 重さを測るような目だ。紙の上の数字ではなく、それを読み上げる人間の方を量っている。

 シュアラは視線を紙に落とし、指先で行をなぞった。

「この砦と、周辺三村の数字です」

 項目を一つずつ拾い上げていく。

「砦の兵数。村ごとの人口。今ある穀物と塩と干し肉の量。過去十年分の冬の長さの平均値。帝都からの補給予定日と、その遅延実績」

 昨夜と同じ列挙だが、今日は確認として、一拍ずつ置いて読み上げる。紙の右下、小さな一行に視線を落とした。

『現状維持の場合 冬の終わりまでの死亡率:七割前後』

「このまま何も変えなければ、冬が明けるまでに──」

 舌の上が、妙に乾いている。言葉が紙やすりみたいに舌を擦っていく。

「ここにいる十人のうち七人前後が、帳簿から消えます」

 その瞬間。

 カイの手が、マグカップの縁で止まった。

 数秒後。

 がん、と鈍い音がした。

 マグが机に叩きつけられたのだ。中身が跳ね、紙の端を濡らす。インクの痕の上に、薄い酒が染みを作っていく。

「七割だと?」

 低い声だった。怒鳴り声ではない。むしろ静かすぎて、背筋が冷える類の声。

「十人のうち七人が死ぬって、そんなに簡単に言うか、普通」

 シュアラは、飛び散った酒の染みを見つめた。紙の上で数字が滲んでいく。さっきまでくっきりしていた『七』の文字が、ゆっくりと溶けて広がった。

「……必要な説明です」

 出た声は、自分が思っていたより小さかった。

「必要?」

 カイが椅子から立ち上がる。ぎしり、と嫌な音がする。机を回り込んでくる気配。

「お前、俺の部下が七割死ぬって話を、『必要な説明』で済ませるのか」

 至近距離で見下ろされる。影と体温の圧がある。

 シュアラは、一度だけ唾を飲み込んでから、顔を上げた。

「はい。説明しなければ、団長はこの砦がどれほど──」

「分かってる」

 遮られた。

「分かってるから、聞きたくなかったんだ」

 握りしめた拳の骨が、ごき、と鳴る。

「……で? それで終わりか」

「いえ」

 膝の上で重ねた指先が、わずかに震える。

「次の話があります」

 カイはしばらく彼女を睨んだまま立っていたが、やがて小さく舌打ちし、椅子に腰を下ろした。マグを乱暴に引き寄せ、残っていた酒を一息にあおる。

「座れ。続けろ」

 許可とも投げやりともつかない声に、シュアラは小さく頷き、改めて腰を下ろした。心臓の鼓動が、いつもよりひとつ多く鳴っている気がする。

 彼女はペンを指に挟み直し、机の上を見回した。空の酒瓶。皿の上に残された乾きかけのパンの欠片。ペーパーウェイト代わりの小石。帝都の会議室なら、ここに金色の印章や細工入りの砂時計が並ぶのだろう。

「第一の条件」

 パンの欠片を一つ摘もうとして──指先が滑った。

 欠片が机の端から転がり落ちる。

 しまった、と心の中で短く呟きながら、慌てて身を乗り出して拾い上げる。指先に張り付いたパン屑を払い落とす動作が、ほんのわずかにぎこちない。

「三ヶ月間、砦と三村の──」

 言葉が喉でつかえる。

(落ち着け。父なら、こんなところで噛まない)

 脳裏に浮かんだ声を振り払い、息を吸い直す。

「砦と三村の財政権限の一部を、私に預けてください」

 カイが、じっとこちらを見ている。

「……緊張してるのか?」

「いえ」

 即答してから、少し後悔した。自分の声が、明らかに張り詰めている。

「……少し」

 言い直すと、カイの口元がわずかに緩んだ。怒りの縁が、ほんの少しだけ鈍る。

「正直でいいじゃねえか。続けろ」

 半ば皮肉、半ば本音。そう判断して、シュアラは説明を続けた。

「全部ではありません。最終的な決裁権は団長のままで構いません。ただ、『予算案を組む権利』と、『倉庫の鍵を開けさせる指示権』が必要です」

 数字を並べるのと同じ調子で、要求を並べる。

「いま、倉庫と出納は担当ごとに細かく分かれ、誰も全体を見ていません。それでは止血の前に、どこから血が漏れているかも分からない」

 砦の四角の端に、小さく斜線を足していく。倉庫、兵舎、厩舎。いくつもの小部屋に分断された血管。

「この盤面を、一枚の帳簿として扱う権利を、三ヶ月だけ貸してください」

「……つまり」

 カイは指先でこめかみを押さえたまま、低く言う。

「砦の金庫と倉庫に、好きなだけ出入りする許可を寄越せって話か」

「好きなだけ、ではありません」

 シュアラは小さく息を吸い直す。

「団長に報告し、了承を得た上で動きます」

「それを世間じゃ『勝手』って言うんだがな」

 吐き捨てるような言葉だが、完全な拒絶の温度はない。呆れと迷いと、少しの興味が混ざった音だ。

「二つ目の条件です」

 シュアラはペン先をくるりと回した。ほんの一瞬、指先が震える。冷えだけでは説明できない震えだ。

「その三ヶ月の間、理由も告知もなく、私を解任しないこと」

「おい」

 カイの眉間に皺が寄る。

「お前、自分の首の心配をする前に、砦の心配をしろ」

 言葉は正しい。だが順番の問題でもある。

「砦の心配のためです」

 即答し、胸元に手を当てる。布越しに、死亡届の封筒の角が当たった。

「止血の最初の段階では、見かけの数字が悪化します。倉庫から物が出ていく。兵に追加の配給が必要になる。あるいは、村への支援を増やす必要が出てくる」

 パンの欠片を指で押しつぶし、砦の四角の脇に小さな粉の山を作る。

「その途中で、上から『やめろ』と言われれば、そこで全部止まります。中途半端な止血は、かえって傷を広げる」

 父の声が、ふと耳の奥で蘇る。

『途中で手を離すくらいなら、最初から触るな』

 帝都の帳簿を前に、何度か聞かされた言葉だった。

「もし、私に明確な不正行為や裏切りの兆候があったなら、そのときはいつでも斬ってください。それは団長の権限です」

「物騒なことをあっさり言うな」

「死人文官ですので」

 淡々と返す。

「ただ、『数字が気に入らない』という理由だけで途中で手を離されると、患者が死にます。それだけは、最初に線を引かせてください」

 カイは口を閉じたまま、机の上の簡易盤面を見下ろした。燭台の明かりが彼の横顔に影を落とす。目の下の薄い隈と浅い呼吸から、ここしばらくまともに眠れていないことが、改めて確認できる。

「三つ目」

 シュアラは最後の条件を口にする前に、一度だけ深呼吸した。肺の奥に冷えた空気が入り、少しだけ頭が冴える。

「砦の兵と村人を、『切り捨て可能な数字』としては扱わないこと」

 カイの眼が、ゆっくりと彼女を向いた。

「……さっき自分で、十人のうち七人死ぬって言ったのはどこの誰だ」

「必要な説明です」

 微かに首を傾げる。

「ですが、その七という数字を、『どこかで誰かが勝手に消してもいい余剰』として扱うか、『どうしても削れない駒』として扱うかで、盤面の組み方は変わります」

 ペン先で、小石を一つ叩く。カチ、と乾いた音がした。

「私は、兵をユニット──動かせる駒として数えます。でも、『余り』としては見ません。生きている限りは、全部、必要な駒です」

「戦場じゃ、人は死ぬ」

 カイの声が低くなる。

「どれだけ守ろうが、どれだけ計算しようが、誰かは死ぬ」

「分かっています」

 炎上する馬車列と、崖下の暗さと、帝都の帳簿に並んだ戦費と負傷兵の処理費用。そのどれもが一瞬だけ頭をよぎる。

「だから、ここを戦場にしない前提で話しています」

 はっきりと言った。

「ここは盤面の一マスです。最前線ではありますが、『最後の防衛線』ではない」

 砦の四角の外側に、小さな×印をいくつか描く。

「ここで安易に人を切り捨てると、その空白を埋めるために、他のマスがさらに削られます。帝都の帳簿のように」

 数字だけがきれいに揃い、現場の死体だけが積み上がる帳簿。あれをもう一度書き写す気にはなれない。

「三ヶ月のあいだだけで構いません。兵と村人を、『死んでも構わない枠』としてではなく、『できる限り生かす前提の駒』として扱ってください」

「できる限り、ねえ」

 カイの口元が僅かに歪んだ。笑っているのか苦笑なのか、自分でも判別しきれない表情だとシュアラは観察する。

「お前の『できる限り』と、俺の『できる限り』は、同じか?」

「違うと思います」

 即答した瞬間、言い過ぎたかもしれないという感覚が、半拍遅れて胸に刺さる。

「だからこそ、調整が必要です」

 誤魔化すように、白紙を一枚引き寄せ、簡単な表を描き始める。

「条件を飲んでいただいた場合の、『見返り』を提示します」

「見返り?」

「はい」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」 魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。 鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。 (な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?) 実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。 レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。 「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」 冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。 一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。 「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」 これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。

なぜ、私に関係あるのかしら?

シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」 彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。 そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。 「…レオンハルト・トレヴァントだ」 非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。 そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。 「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」 この判断によって、どうなるかなども考えずに… ※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。 ※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、 ※ 画像はAIにて作成しております

王子、おひとり様で残りの人生をお楽しみください!

ちゃっぴー
恋愛
「ラーニャ、貴様との婚約を破棄する!」 卒業パーティーの真っ最中、ナルシストな第一王子ウィルフレッドに身に覚えのない罪で断罪された公爵令嬢ラーニャ。しかし、彼女はショックを受けるどころか、優雅に微笑んで拍手を送った。 なぜなら、ラーニャはとっくに王子の無能さに愛想を尽かし、この日のために完璧な「撤退準備」を進めていたからだ。

お前のような地味な女は不要だと婚約破棄されたので、持て余していた聖女の力で隣国のクールな皇子様を救ったら、ベタ惚れされました

夏見ナイ
恋愛
伯爵令嬢リリアーナは、強大すぎる聖女の力を隠し「地味で無能」と虐げられてきた。婚約者の第二王子からも疎まれ、ついに夜会で「お前のような地味な女は不要だ!」と衆人の前で婚約破棄を突きつけられる。 全てを失い、あてもなく国を出た彼女が森で出会ったのは、邪悪な呪いに蝕まれ死にかけていた一人の美しい男性。彼こそが隣国エルミート帝国が誇る「氷の皇子」アシュレイだった。 持て余していた聖女の力で彼を救ったリリアーナは、「お前の力がいる」と帝国へ迎えられる。クールで無愛想なはずの皇子様が、なぜか私にだけは不器用な優しさを見せてきて、次第にその愛は甘く重い執着へと変わっていき……? これは、不要とされた令嬢が、最高の愛を見つけて世界で一番幸せになる物語。

勘当された悪役令嬢は平民になって幸せに暮らしていたのになぜか人生をやり直しさせられる

千環
恋愛
 第三王子の婚約者であった侯爵令嬢アドリアーナだが、第三王子が想いを寄せる男爵令嬢を害した罪で婚約破棄を言い渡されたことによりスタングロム侯爵家から勘当され、平民アニーとして生きることとなった。  なんとか日々を過ごす内に12年の歳月が流れ、ある時出会った10歳年上の平民アレクと結ばれて、可愛い娘チェルシーを授かり、とても幸せに暮らしていたのだが……道に飛び出して馬車に轢かれそうになった娘を助けようとしたアニーは気付けば6歳のアドリアーナに戻っていた。

『外見しか見なかったあなたへ。私はもう、選ぶ側です』

鷹 綾
恋愛
「お前のようなガキは嫌いだ」 幼く見える容姿を理由に、婚約者ライオネルから一方的に婚約を破棄された 公爵令嬢シルフィーネ・エルフィンベルク。 その夜、嫉妬に狂った伯爵令嬢に突き落とされ、 彼女は一年もの間、意識不明の重体に陥る――。 目を覚ました彼女は、大人びた美貌を手に入れていた。 だが、中身は何ひとつ変わっていない。 にもかかわらず、 かつて彼女を「幼すぎる」と切り捨てた元婚約者は態度を一変させ、 「やり直したい」とすり寄ってくる。 「見かけが変わっても、中身は同じです。 それでもあなたは、私の外見しか見ていなかったのですね?」 静かにそう告げ、シルフィーネは過去を見限る。 やがて彼女に興味を示したのは、 隣国ノルディアの王太子エドワルド。 彼が見ていたのは、美貌ではなく―― 対話し、考え、異論を述べる彼女の“在り方”だった。 これは、 外見で価値を決められた令嬢が、 「選ばれる人生」をやめ、 自分の意思で未来を選び直す物語。 静かなざまぁと、 対等な関係から始まる大人の恋。 そして―― 自分の人生を、自分の言葉で生きるための物語。 ---

処理中です...