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第八話
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第八話
ないわー。まじであり得ない。恥ずかしすぎる。意味が分かってからは尚更恥ずかしい。見た目は17歳、中身はプラス25歳だよ?なんでこの歳になって、男の人とペアルックなの?
お互い両想いですよってアピールしながら出席する夜会が私の社交界デビューだなんて誰が想像できただろう。できることなら目立ちたくない。会場の端っこで小さくなりたいよ。
…正確に言えばペアルックではない。今日のドレスは夜会用なので腰から大きく広がったプリンセスライン。しかし白地に施された刺繍は牡丹や椿、蝶などアスタリオでは見ない柄だ。刺繍は金糸と赤い糸で見るからに豪華だった。
そして馬車の中、目の前に座るシュウ様の白い騎士服にも同じ糸で、同じ柄が刺繍されている。遠目からでも私達の衣装はさぞ目立つことだろう。
「どうした…?」
「いえ…なんでもありません。」
頭を抱えた私をシュウ様は不思議そうに眺めている。私は体を起こし髪を整えた。アスタリオの夜会では髪をまとめあげるのが普通らしいが、今日の私は髪を下ろしたまま。香油で撫でつけた髪は今まで見たことがないくらい輝いていた。
「今日は…ハンカチがある……。」
「ふふふ、ありがとうございます。でも今は大丈夫です。」
ドラガニアにやってきて早一ヶ月が過ぎた。今日は私とシュウ様の婚約お披露目パーティーだ。
* * *
「それでは!我らが英雄シュウ将軍閣下と、リコリス様のご到着です!」
盛大な音楽と拍手に迎えられ、私達は会場に入った。シュウ様の左肘にそっと手を添えると、その大きな体がビクリと震えた。
「あっ、すみません。嫌ですか…?」
「…いや、少し驚いただけだ。」
前に向き直った彼の顔は耳まで真っ赤だった。それを見て私は笑ってしまった。
おめでとうございますという声がかかる中、すっと周りが静かになった。
「シュウ、リコリス殿。今日は本当におめでたいな。」
現れたのは皇太子であるイアン様に手を引かれたドラガニア皇国王陛下であるソジン様。還暦を迎えたばかりだと聞いていたが、その背の高さと威厳あるお姿は年齢を感じさせない。
シュウ様と共に膝を付き頭を下げた。
「本日はご出席いただき誠にありがとうございます。体調はよろしいのですか?」
「シュウの記念すべき日だ。欠席などできまい。ここ最近はだいぶ調子が良いんだ。」
ソジン陛下は心臓病を患っており、体調に波があるそうだ。しかし、今は顔色も良く体調が悪いようには見えない。
「そちらが噂の天女さんだね。」
「…お初にお目にかかります。リコリス・バーミリオンと申します。」
顔を上げると優しげな漆黒の瞳が私を見つめていた。
「本当に美しい。その真紅の瞳は天からの贈り物だ。」
こんなに真っ直ぐに瞳を褒められるのは初めてのことで、ポッと自分の頬が赤くなったのが分かった。
「ハハっ、これはこれは。あの朴念仁のシュウが骨抜きにされるわけだ。」
「…陛下…。お戯れはおやめください。」
陛下から促され立ち上がると、陛下もシュウ様に負けないくらい背が高く体も筋肉質だ。イアン殿下も並び、私だけ子どものように小さい。
「本当になにから何まで可愛らしい人だ。イアン、お前も早くシュウを見習わないとな。」
「父上、私の話はいいですから。」
聞けばイアン殿下には婚約者がいらっしゃらないらしい。シュウ様と同い年ということは28歳?皇太子という立場で婚約者がいないのは珍しい。
「どれ、私はそろそろ下がろう。あとは若い者で楽しみなさい。」
従者の方に手を引かれ、陛下が会場を後にすると私達の周りに人だかりができた。
「リコリス様。お初にお目にかかります、私は」
「将軍閣下。この度はおめでとうございます」
「あぁなんとお美しい…」
一人ひとりと挨拶を交わし、私は彼らの顔と名前を覚えるのに必死だった。
「シュウ。リコリスさん。お疲れ様。」
ひと通り挨拶を終えた頃、イアン殿下が私達に声をかけるとやっと人だかりから開放された。
「普段は怖がって誰も声なんてかけないのに。リコリスさんが隣にいるだけでこんなに違うんだね。」
イアン殿下の優しげな漆黒の瞳はソジン陛下にそっくりだ。美しい赤毛を長く伸ばし、黄金の髪飾りで束ねたその姿は驚くほど整っている。
「シュウ様はそんなに怖がられているのですか?」
「それはもう。戦鬼と呼ばれる将軍閣下ですからね。女性は目も合わせませんし、子どもは泣いて逃げてしまいますよ。」
たしかにシュウ様の鋭い眼光で睨みつけられたら、なにも悪いことをしていなくても謝ってしまいそう。
「だから、私が言ったんです。アスタリオでお嫁さんを探してきたらいいんじゃないかって。」
「えっ?そうだったのですか?!」
ずっと疑問だった。シュウ様と話せば話すほど謎だったのだ。国で一番美しい娘を捧げろという命令を出すような人には思えなくて。
「…そうだ。イアンには感謝している。おかげで…リコリスと出逢えた。」
恥ずかしそうに顔を伏せる彼を見ると私まで恥ずかしくなってしまった。
「あーあ、惚気をご馳走さま。シュウが幸せそうで良かったよ。リコリスさん、どうかシュウをよろしくね。」
そう言って颯爽と会場を後にするイアン様を私たち二人は真っ赤な顔をして見送るしかなかった。
ないわー。まじであり得ない。恥ずかしすぎる。意味が分かってからは尚更恥ずかしい。見た目は17歳、中身はプラス25歳だよ?なんでこの歳になって、男の人とペアルックなの?
お互い両想いですよってアピールしながら出席する夜会が私の社交界デビューだなんて誰が想像できただろう。できることなら目立ちたくない。会場の端っこで小さくなりたいよ。
…正確に言えばペアルックではない。今日のドレスは夜会用なので腰から大きく広がったプリンセスライン。しかし白地に施された刺繍は牡丹や椿、蝶などアスタリオでは見ない柄だ。刺繍は金糸と赤い糸で見るからに豪華だった。
そして馬車の中、目の前に座るシュウ様の白い騎士服にも同じ糸で、同じ柄が刺繍されている。遠目からでも私達の衣装はさぞ目立つことだろう。
「どうした…?」
「いえ…なんでもありません。」
頭を抱えた私をシュウ様は不思議そうに眺めている。私は体を起こし髪を整えた。アスタリオの夜会では髪をまとめあげるのが普通らしいが、今日の私は髪を下ろしたまま。香油で撫でつけた髪は今まで見たことがないくらい輝いていた。
「今日は…ハンカチがある……。」
「ふふふ、ありがとうございます。でも今は大丈夫です。」
ドラガニアにやってきて早一ヶ月が過ぎた。今日は私とシュウ様の婚約お披露目パーティーだ。
* * *
「それでは!我らが英雄シュウ将軍閣下と、リコリス様のご到着です!」
盛大な音楽と拍手に迎えられ、私達は会場に入った。シュウ様の左肘にそっと手を添えると、その大きな体がビクリと震えた。
「あっ、すみません。嫌ですか…?」
「…いや、少し驚いただけだ。」
前に向き直った彼の顔は耳まで真っ赤だった。それを見て私は笑ってしまった。
おめでとうございますという声がかかる中、すっと周りが静かになった。
「シュウ、リコリス殿。今日は本当におめでたいな。」
現れたのは皇太子であるイアン様に手を引かれたドラガニア皇国王陛下であるソジン様。還暦を迎えたばかりだと聞いていたが、その背の高さと威厳あるお姿は年齢を感じさせない。
シュウ様と共に膝を付き頭を下げた。
「本日はご出席いただき誠にありがとうございます。体調はよろしいのですか?」
「シュウの記念すべき日だ。欠席などできまい。ここ最近はだいぶ調子が良いんだ。」
ソジン陛下は心臓病を患っており、体調に波があるそうだ。しかし、今は顔色も良く体調が悪いようには見えない。
「そちらが噂の天女さんだね。」
「…お初にお目にかかります。リコリス・バーミリオンと申します。」
顔を上げると優しげな漆黒の瞳が私を見つめていた。
「本当に美しい。その真紅の瞳は天からの贈り物だ。」
こんなに真っ直ぐに瞳を褒められるのは初めてのことで、ポッと自分の頬が赤くなったのが分かった。
「ハハっ、これはこれは。あの朴念仁のシュウが骨抜きにされるわけだ。」
「…陛下…。お戯れはおやめください。」
陛下から促され立ち上がると、陛下もシュウ様に負けないくらい背が高く体も筋肉質だ。イアン殿下も並び、私だけ子どものように小さい。
「本当になにから何まで可愛らしい人だ。イアン、お前も早くシュウを見習わないとな。」
「父上、私の話はいいですから。」
聞けばイアン殿下には婚約者がいらっしゃらないらしい。シュウ様と同い年ということは28歳?皇太子という立場で婚約者がいないのは珍しい。
「どれ、私はそろそろ下がろう。あとは若い者で楽しみなさい。」
従者の方に手を引かれ、陛下が会場を後にすると私達の周りに人だかりができた。
「リコリス様。お初にお目にかかります、私は」
「将軍閣下。この度はおめでとうございます」
「あぁなんとお美しい…」
一人ひとりと挨拶を交わし、私は彼らの顔と名前を覚えるのに必死だった。
「シュウ。リコリスさん。お疲れ様。」
ひと通り挨拶を終えた頃、イアン殿下が私達に声をかけるとやっと人だかりから開放された。
「普段は怖がって誰も声なんてかけないのに。リコリスさんが隣にいるだけでこんなに違うんだね。」
イアン殿下の優しげな漆黒の瞳はソジン陛下にそっくりだ。美しい赤毛を長く伸ばし、黄金の髪飾りで束ねたその姿は驚くほど整っている。
「シュウ様はそんなに怖がられているのですか?」
「それはもう。戦鬼と呼ばれる将軍閣下ですからね。女性は目も合わせませんし、子どもは泣いて逃げてしまいますよ。」
たしかにシュウ様の鋭い眼光で睨みつけられたら、なにも悪いことをしていなくても謝ってしまいそう。
「だから、私が言ったんです。アスタリオでお嫁さんを探してきたらいいんじゃないかって。」
「えっ?そうだったのですか?!」
ずっと疑問だった。シュウ様と話せば話すほど謎だったのだ。国で一番美しい娘を捧げろという命令を出すような人には思えなくて。
「…そうだ。イアンには感謝している。おかげで…リコリスと出逢えた。」
恥ずかしそうに顔を伏せる彼を見ると私まで恥ずかしくなってしまった。
「あーあ、惚気をご馳走さま。シュウが幸せそうで良かったよ。リコリスさん、どうかシュウをよろしくね。」
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