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避難場所
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ラウルさんと初めて会ったのは、数年前のこと。
今から7年前。
私が12歳で、ラウルさんが正騎士となった18歳の時だ。
だから、その時もラウルさんの視界の中には私のことなど映らなかったと思う。
領地の屋敷にお父様と訪れたラウルさんのことを、姉の影に隠れて見ていたので、言葉を交わすこともなかった。
でも、その姿は私の目には焼き付いていた。
凛々しい騎士姿は私にとっての王子様そのもので、ラウルさんは私の初恋の人となった。
初恋は実らないものだ。
政略結婚の相手がラウルさんで、密かに浮かれて喜んでいたのは私だけだった。
戦争が始まるって時に不謹慎にもそんなことを思ったから、だから天罰が下ったのだと思っている。
「ごめんね、フィオナ。ずっと移動ばかりだったから疲れているよね?もう少し行ったら宿をとるから、そこまで頑張って」
まだ大丈夫と言うかのように、フィオナは走るスピードを上げた。
街道を漆黒の愛馬が走り抜け、景色はどんどん流れて行く。
領地を出て、次の働き先である王都を目指すつもりだ。
ラウルさんもそろそろ王都に到着するはずだけど、絶対に鉢合わせしない場所に行くから大丈夫。
屋敷を出てから二日。
王都に到着すると、ちょうど凱旋パレードが行われている最中だった。
団長が女性に言い寄って引っ叩かれたなんて事実は誰もが忘れ、皆、英雄達の帰還に歓喜し、また、晴々しく出迎えられたことに誇らしげにしていた。
この時にラウルさんがどんな顔をしていたのかは知らない。
遠くから少しだけ様子を眺めただけだ。
いきなり平手打ちをしたことはとても後悔していて、痕が残っていなければいいけどと、そこだけは心配していた。
突きつけられた現実が悲しくて、感情に任せて人に暴力を向けてしまった。
19にもなって、アレはダメだ。
暴力はよくない。
思い出したら自己嫌悪に陥るから、ぶんぶんと頭を振って、無理矢理無関心を装って、花吹雪が舞い、たくさんの垂れ幕が彩りを添える中、とある公爵家の屋敷を目指していた。
みんなパレードに夢中だから、馬に乗った女のことなどに興味は向かない。
お父様も、良くも悪くも娘のすることには無関心だ。
だから、私がメイドや侍女や給仕や店番や看護士や訓練士や料理番として働いていたって何も言わない。
戦争でそれどころではなかったってのもあるのかも。
勝手に伯爵家の推薦状を作って、仕事を斡旋してもらっていたので、今では公爵家の御令嬢と仲良くしてもらえるまでになっている。
これからはその公爵家のお嬢様のところでしばらくお世話になる予定だ。
お父様には居場所がわかってしまうけど、公爵家だから、無理矢理連れ戻されたりはしないし、外でうっかり騎士団の誰かに会う事もない。
目的地である向こう側が見えないほどの大きなお屋敷の前で、フィオナから降りる。
すでに連絡していたので、顔見知りとなった門番に顔パス気味に通してもらい、厩舎にフィオナを頼んでから本邸の使用人出入り口から中に入った。
すれ違う公爵家の使用人の方々から気さくな挨拶を受ける中、
タタタタタタタタ
軽快な足音が聞こえたかと思うと、
「ミリーナ!待ってたわ!」
ああ、可愛い。
私の癒しの天使だ。
フルーフ公爵家の御令嬢、レジーナ様が飛びつく勢いで抱きついてきた。
「レジーナ様、お久しぶりです。またしばらくお世話になりますね」
綺麗なプラチナブロンドを緩く巻いて、頬を薔薇色に染めてニコニコしながら菫色の瞳が私を見ている。
淑女のマナーとしては色々と指摘しなければならないけど、今だけはいいのです。
可愛いことが全てなのです。
それが正義なのです。
「ミリーナ!貴女がまた来てくれて嬉しい。お世話になるのはこっちの方よ」
もう間も無く16歳となり社交界デビューを迎えるから、全力でそのお手伝いをするつもりだ。
初めて会った時は、レジーナ様は12歳だった。
月日が経つのは早い。
綺麗で可愛らしい、お人形さんのようなレジーナ様が大人の仲間入りをする。
「レジーナ様のレビュタント姿が楽しみです」
レジーナ様の前でだけは、ラウルさんの事は忘れておこうと心に決めていた。
今から7年前。
私が12歳で、ラウルさんが正騎士となった18歳の時だ。
だから、その時もラウルさんの視界の中には私のことなど映らなかったと思う。
領地の屋敷にお父様と訪れたラウルさんのことを、姉の影に隠れて見ていたので、言葉を交わすこともなかった。
でも、その姿は私の目には焼き付いていた。
凛々しい騎士姿は私にとっての王子様そのもので、ラウルさんは私の初恋の人となった。
初恋は実らないものだ。
政略結婚の相手がラウルさんで、密かに浮かれて喜んでいたのは私だけだった。
戦争が始まるって時に不謹慎にもそんなことを思ったから、だから天罰が下ったのだと思っている。
「ごめんね、フィオナ。ずっと移動ばかりだったから疲れているよね?もう少し行ったら宿をとるから、そこまで頑張って」
まだ大丈夫と言うかのように、フィオナは走るスピードを上げた。
街道を漆黒の愛馬が走り抜け、景色はどんどん流れて行く。
領地を出て、次の働き先である王都を目指すつもりだ。
ラウルさんもそろそろ王都に到着するはずだけど、絶対に鉢合わせしない場所に行くから大丈夫。
屋敷を出てから二日。
王都に到着すると、ちょうど凱旋パレードが行われている最中だった。
団長が女性に言い寄って引っ叩かれたなんて事実は誰もが忘れ、皆、英雄達の帰還に歓喜し、また、晴々しく出迎えられたことに誇らしげにしていた。
この時にラウルさんがどんな顔をしていたのかは知らない。
遠くから少しだけ様子を眺めただけだ。
いきなり平手打ちをしたことはとても後悔していて、痕が残っていなければいいけどと、そこだけは心配していた。
突きつけられた現実が悲しくて、感情に任せて人に暴力を向けてしまった。
19にもなって、アレはダメだ。
暴力はよくない。
思い出したら自己嫌悪に陥るから、ぶんぶんと頭を振って、無理矢理無関心を装って、花吹雪が舞い、たくさんの垂れ幕が彩りを添える中、とある公爵家の屋敷を目指していた。
みんなパレードに夢中だから、馬に乗った女のことなどに興味は向かない。
お父様も、良くも悪くも娘のすることには無関心だ。
だから、私がメイドや侍女や給仕や店番や看護士や訓練士や料理番として働いていたって何も言わない。
戦争でそれどころではなかったってのもあるのかも。
勝手に伯爵家の推薦状を作って、仕事を斡旋してもらっていたので、今では公爵家の御令嬢と仲良くしてもらえるまでになっている。
これからはその公爵家のお嬢様のところでしばらくお世話になる予定だ。
お父様には居場所がわかってしまうけど、公爵家だから、無理矢理連れ戻されたりはしないし、外でうっかり騎士団の誰かに会う事もない。
目的地である向こう側が見えないほどの大きなお屋敷の前で、フィオナから降りる。
すでに連絡していたので、顔見知りとなった門番に顔パス気味に通してもらい、厩舎にフィオナを頼んでから本邸の使用人出入り口から中に入った。
すれ違う公爵家の使用人の方々から気さくな挨拶を受ける中、
タタタタタタタタ
軽快な足音が聞こえたかと思うと、
「ミリーナ!待ってたわ!」
ああ、可愛い。
私の癒しの天使だ。
フルーフ公爵家の御令嬢、レジーナ様が飛びつく勢いで抱きついてきた。
「レジーナ様、お久しぶりです。またしばらくお世話になりますね」
綺麗なプラチナブロンドを緩く巻いて、頬を薔薇色に染めてニコニコしながら菫色の瞳が私を見ている。
淑女のマナーとしては色々と指摘しなければならないけど、今だけはいいのです。
可愛いことが全てなのです。
それが正義なのです。
「ミリーナ!貴女がまた来てくれて嬉しい。お世話になるのはこっちの方よ」
もう間も無く16歳となり社交界デビューを迎えるから、全力でそのお手伝いをするつもりだ。
初めて会った時は、レジーナ様は12歳だった。
月日が経つのは早い。
綺麗で可愛らしい、お人形さんのようなレジーナ様が大人の仲間入りをする。
「レジーナ様のレビュタント姿が楽しみです」
レジーナ様の前でだけは、ラウルさんの事は忘れておこうと心に決めていた。
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