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第二十七話 鉱石の価値
しおりを挟む「なんていいますか、随分と庶民的な場所ですわね」
はっきりボロいといえばいいのに。中央商店街とは建物の作りが全然違うからな。もちろん通りを歩く人々の服装も貧相だ。
「とっても賑わっていて私は楽しいよ!」
「なあ、兄貴! これ見てくれよ!」
「ん? 何を被ってるんだお前』
「アンチヒートストロークハットだってさ! これ凄いんだぜ。日差しを完全カット。さらに熱が頭に籠らない超通気性。それにもかかわらず極限まで軽量化された究極の防具なんだ!」
「ほう、それでいくらだったんだ?」
「十万ギルだよ。ちょっと高かったけど掘り出し物だってそこの店で――。い、痛ぇえ!? 兄貴いきなり何するんだよ!」
「麦藁帽子に大金はたいてんじゃねーよ! どんだけ騙されやすいんだお前は。おい、アクア!」
「は、はい!」
「レッドの金は全てお前が管理しろ」
「そんな兄貴!」
「こいつが持っているとあっという間に破産だ。そして残されるのはただのガラクタだ」
「はい分かりました! 私もそう思っていたんです。ほらお兄ちゃん! ギルドカードを出しなさい。私が預かります」
「うぅぅ……」
「レッド、気を落とさないで! ルイスはあーいってるけど、私はとっても似合っていると思うわ!」
似合う似合わないという話をしているわけじゃないんだけど。
「ルイスさん、あそこで手を振っているのってビバティースさんじゃないですか?」
「あいつ店の外でなにやっているんだ」
「ルイス! 遅いっすよ!」
「あ? もしかして俺が来るのを待っていたのか」
どんだけ暇な店なんだよ。
「いいから早く店に入るっす!」
「初めてお茶なんか出されたな」
ずずっと啜る。お、案外旨い。香りもいいな。まるでジャスミンティーのようだ。
「いつもは冷やかしだからっす! それでそちらの方々――。いや、なんでもないっす。仕事の話をするっす!」
どうやら一瞬で悟ったようだ。しかし誰もが知ってるけど誰もが絡みたくない相手ってどうなんだ。俺からすると頭がちょっとお花畑の可愛い妹みたいな存在なんだけどな。
ああそっか。
Eランクへの昇格試験を思い出した。アンヘレスと初めて出会ったあの日。彼女が何時間も待てされていたのはそういうことだったのか。
知っている人とは昇格試験のパーティを組めないといってたもんな。アンヘレスは知らなくてもこの町の住人はみな知っていると。通常はギルドに登録してから暫くはFランクで過ごす。その間に知ってしまうのだろう。
他所から来て登録後すぐ昇格試験を受けるような新人がなかなか見つからなかったのだ。
「ルイス聞いているっすか?」
「ああなんだっけ?」
「だから例の鉱石の件っす。ほんとに五パーセントも貰っていいっすか!? 想像以上に高値で売れたっすよ!」
「高値で売ったのもお前の成果だ。問題ない」
「そ、そっすか……」
「カイトさんは何を売ったのかしら?」
「ああボス部屋で取れた鉱石だよ。なんだっけかな。たしかチラリズムだったか」
「ノンジウムっす!」
「なっ――」
目を見開くレオーラ。やはり珍しい鉱石だったようだ。
「それでいくらになった?」
「に、二億四千万ギルっす……」
「ビバティースも冗談なんて言うんだな。面白くないけど」
「いやマジっす! マジでその値段で売れたっす。ほらこれを見てくださいよ!」
ビバティースが掲げたカード。どうやら商人ギルドのカードのようだ。そこには確かに二億四千万と端数が印字されていた。
端数はおそらくビバティースの持ち金なのだろう。いやこれ倒産寸前だったんじゃないのか?
「なんでそんな馬鹿みたいな値段で売れるんだよ。金持ちにもレッドみたいな奴がいるのか」
「兄貴それどう言う意味だ? 俺が金持ちっぽいってことか? やっぱ昨日買ったこのブレスレットのお陰かな」
いやそれパチもんって言われただろ。まだ着けていたのかよ。
「本当にノンジウムでしたら、それくらいの値打ちはありますわよ」
「そうなのか? 確かに強力な魔導具になるとは聞いたけどさ。そんな高かったら誰も買えないだろ」
だって鉱石だけで日本円相当で二十四億だよ。
「ノンジウムを使用した魔導具の平均販売価格は確か五百万ギルほどっす」
「まあ、その程度なら買えなくないか」
だめだ。なんか金銭感覚が麻痺してきたかも。十分高いよな。
「魔導具一つにつき使われるのは十グラム程度っす。あの鉱石のノンジウム純度は二十パーセントもあったっす。なのであれ一つから何百個もの魔導具が作れるっすよ」
「まじかよ……」
「最終的な商品になるまで様々な経費がかかるとしても、鉱石の販売価格としては妥当っす!」
「数年に一度しか採掘されないと言われていますわ。しかも小ぶりの鉱石ですわ」
どうしよう。あと同じものを十個は持ってるとは到底言えない雰囲気だ。
「ふうう……。やっと移し替えることができたっす! こんな大金を抱えていたから落ち着かなかったっす。店に来た客にすられるとも限らないっすから」
ビバティースが安堵のため息をつく。だから外にでて待っていたのか。でも、店内の方が安全だったと思うぞ。なんていったって客が来ないからな。
「さて、個人のカードをだしてくれ。皆で等分しよう。これでみんな一気に富豪の仲間入りだな」
「え!? わたしそんな大金むりです!」
「なんでだよ。肉食べ放題――。ぐぅ…ぅ……ぁ」
「お兄ちゃんは黙ってて!」
うわぁ、あれは痛そうだ。なにをされたかは想像にお任せする。
「ルイスさん。こんな大金を個人で持っていても仕方ないですわ。パーティカードで管理をしてはいかがかしら。ちょうどテントとかも買いにいきますわよね」
「そうだな。俺も一人じゃ使いきれんし」
「これを機会にメンバーの装備も魔導具に替えてはいかがかしら。わたくしの行きつけのお店を紹介しますわ」
「ああそれはいいかも」
ダンジョンの魔物もかなり強力になってきたしな。前回の竜は異常としても、命の危機に瀕したのは事実だしな。
「じゃあいくか」
「あ、ルイス、ちょっと待つっす!」
ビバティースが慌ただしく店の奥へと消えていった。
「これが依頼の品っす」
山のような調味料を抱えてきた。おお! あれは……。
「ありがとな。代金はいくらだ?」
「今回十分に儲けさせてもらったからサービスでいいっす!」
ただより高いものはないんじゃなかったのかよ。
あ、待てよ。
五パーセントということは手数料で千二百万ギルにもなるのか。百倍返しだろうが十分にお釣りが来るな。
「わかった。また頼みたいことがあったら来るわ」
「まいど――っす!」
ビバティースに見送られた俺らは中央商店街を目指す。さて何を買おうかなー。
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