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08.不撓不屈の精神
「御許しいただけるのであれば、来年の採用試験に挑戦したいと思っております」
シュテルン王国は毎年試験によって採用する役人を選別している。受験資格は貴族、平民を問わず実施されているが、平民の合格率は貴族に比べて低い。両者の教育格差はまだまだ埋められていないという表れでもあるが、その一方で貴族が合格枠を金で買っているという話もディアナは父から聞いたことがあった。そういった不埒な輩を取り締まるには証拠が足りないらしい。
とにかく平民にとって役人採用試験は狭き門であり、ましてキャサリンという破廉恥な身内がいるとなれば評価は下がるはずだ。
「私はこの国からキャサリンの母のように、困窮して身を売る人々を減らしたいのです。その志を、このようなことで諦める気はございません」
頑固一徹なレオンハルトは己の意志を貫く為に、何度でも採用試験を受け続けるだろう。落ちたとしても、次の試験に向けての勉強と日々の糧を稼ぐ為に邁進するのだ。もしかしたら両親や妹の為に仕送りしようとするかもしれない。出会って一刻も経っていないというのに、馬鹿真面目に生きる未来のレオンハルトの姿がまざまざとディアナの脳裏を過る。
全く説得に応じない部下をこれ以上引き留めることは出来ないと、公爵は彼の退職を渋々と受け入れたのだった。そうして彼はディアナの足許に跪き、深く頭を垂れた。
「この度は愚かな妹のせいで、モーント公爵家の御嬢様には多大な御心労をお掛けいたしましたことを深くお詫び申し上げます」
男爵家の人間の割に随分と様になった姿だった。彼が幼い頃から親元から離れて一人で懸命に身に付けた努力は、その所作にさえ表れていたのだ。自らの力だけで身を立てて来た男が、このような馬鹿げた茶番一つで夢を諦めなければいけないのだ。何と理不尽なことだろうかとディアナは憤りを募らせた。
「貴女様の努力と王国への献身は、下々の者にも伝わっております。今後の御活躍を心よりお祈り申し上げます」
婚約破棄を言い渡された女に、その言葉は皮肉にも聞こえる。けれどもレオンハルトは本気でディアナの行く末を案じ、それと同時に活躍を期待してくれているのだろう。何よりもずっと堅く張り詰めた表情をしていた彼が優しく微笑んだから、心の内はともかくディアナは彼の言葉をそのままに信じようと思ったのだった。
「私も、公爵家の一員として、国民の為に何が出来るか改めて考えたいと思います」
ディアナもまた、この先がどうなるかは分からない。しかし道半ばで王宮を去るレオンハルトの意志を継ぐことはできると伝えたかった。伝わったかどうかは分からないが、彼はとても穏やかな表情で一つ頷いた。
そしてレオンハルトは蹲ったままでいる妹の手を取る。
「さぁ、立ちなさい。父上と義母上が、お前の帰りを待っている」
反抗する気も起きないのか、キャサリンは無言のままに立ち上がった。あれだけ罵られ、自分に夢を諦めさせた人間だというのにレオンハルトは気遣うようにキャサリンを支えたのだった。
それからモーント公爵の指示によって、メテオーア兄妹と王太子、取り巻き達は王宮へと連れていかれ、この場は解散するように命じられたのだった。
シュテルン王国は毎年試験によって採用する役人を選別している。受験資格は貴族、平民を問わず実施されているが、平民の合格率は貴族に比べて低い。両者の教育格差はまだまだ埋められていないという表れでもあるが、その一方で貴族が合格枠を金で買っているという話もディアナは父から聞いたことがあった。そういった不埒な輩を取り締まるには証拠が足りないらしい。
とにかく平民にとって役人採用試験は狭き門であり、ましてキャサリンという破廉恥な身内がいるとなれば評価は下がるはずだ。
「私はこの国からキャサリンの母のように、困窮して身を売る人々を減らしたいのです。その志を、このようなことで諦める気はございません」
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全く説得に応じない部下をこれ以上引き留めることは出来ないと、公爵は彼の退職を渋々と受け入れたのだった。そうして彼はディアナの足許に跪き、深く頭を垂れた。
「この度は愚かな妹のせいで、モーント公爵家の御嬢様には多大な御心労をお掛けいたしましたことを深くお詫び申し上げます」
男爵家の人間の割に随分と様になった姿だった。彼が幼い頃から親元から離れて一人で懸命に身に付けた努力は、その所作にさえ表れていたのだ。自らの力だけで身を立てて来た男が、このような馬鹿げた茶番一つで夢を諦めなければいけないのだ。何と理不尽なことだろうかとディアナは憤りを募らせた。
「貴女様の努力と王国への献身は、下々の者にも伝わっております。今後の御活躍を心よりお祈り申し上げます」
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「私も、公爵家の一員として、国民の為に何が出来るか改めて考えたいと思います」
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そしてレオンハルトは蹲ったままでいる妹の手を取る。
「さぁ、立ちなさい。父上と義母上が、お前の帰りを待っている」
反抗する気も起きないのか、キャサリンは無言のままに立ち上がった。あれだけ罵られ、自分に夢を諦めさせた人間だというのにレオンハルトは気遣うようにキャサリンを支えたのだった。
それからモーント公爵の指示によって、メテオーア兄妹と王太子、取り巻き達は王宮へと連れていかれ、この場は解散するように命じられたのだった。
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