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10章:二王の邂逅とアルブレヒトの目的
4話:ご褒美は濃厚希望です!(リッツ)
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ようやく王都に戻ってきた。船旅は慣れているとは言え、今回は緊張感が違った。なんせ現在交戦中の敵国への侵入だ。度々使っていたルートだとしても、バレるとヤバイという気持ちは大きかった。
でも、安心感もあった。それは、側についていたグリフィスのおかげだと思う。
「それにしたって、グリフィス凄い格好だったな。あれ、サイズ間違いだろう」
「うっせ。予想以上にピチピチだったんだよ」
ふて腐れた顔で言うグリフィスはほんの少し赤い顔をしている。
侵入時、水夫に化ける為にそれっぽい格好をしたのだが……予想以上にピチピチだった。水夫だってかなりゴツいのだが、その中でもグリフィスは体格が良く全体的に筋肉がついていた。
結果、上腕ピチピチ、胸筋パンパン、腹筋見えそうだった。
「俺的には美味しかったけれど」
「お前のせいで部下にもあれこれバレて……威厳ない」
「それはごめん。ちょっと浮かれてた」
聞かれると恥ずかしいが嬉しい。その為あれこれ話した。出会ってからの初めての夜、再会後、その後のあれこれ。リッツ的にはグリフィスがいかに凄いかを強調したつもりなのだが……結果、アレがでかくて絶倫という事が誇張された。
「巨根絶倫野郎なんて思われたら、俺はいらんないぞ」
「ごめんって!!」
悪いと思っているからこそ、今日はちょっと豪華に外食に誘ったのに道中これだ。本当にどうしよう。思った以上に落ち込んでる。
それに、実は恋人になってから一度もエッチをしていない。
船の上では他の目があるから嫌だと言われ、二人きりになった時にと思ったら「任務中だ」と怒られ、キスを迫れば「キスで止まるのか?」と言われて自信がなかった。
だって、嬉しいんだ! 初めて「恋人」と言ってくれた相手なんだ。そんな人がすぐそばで逞しい体を惜しげもなく見せつけ、汗をかいた雄の匂いを漂わせているのに我慢できない!
でも、嫌われたくないから我慢した。「トイレ」と言って一人になってはグリフィスに手でされたのを思いだして自分で扱いた。バカみたいに出て、それでも足りなくて苦しかった。
アルブレヒトには「邪淫の気がある」と注意されたけれど否定しようがない。それでも今は一人だけを見ている。手当たり次第なんて思っていない。
そう伝えると「良い相手ですよ」とお墨付きをもらった。
ついでに仕立てと生地がいいと言われ、戦場に立つ時の服をお願いされた。他国とはいえ王族に気に入ってもらえたのは嬉しい。平和になって国交が結ばれたら是非とも手を伸ばしておきたい。
そんなこんなで辿り着いたのは下町の奥にある隠れ家的な店。肉料理と魚料理があり、安いが個室がある。雑多な感じで気構えがなく、個室といっても隣の話が聞こえてくる。顔が見えない程度だ。
肩の凝る店が嫌いなグリフィスと一緒にと考えて、あれこれ迷って決めたのだ。
「良い店だな。適度に隔離されてて、でも賑やかで」
「ほんと!!」
「あぁ」
さっきまでのしょんぼりが嘘みたいに、リッツは明るく笑う。最近グリフィスに褒められるのが嬉しい。だから自然と笑顔になる。
そのうちに料理も運ばれてくる。ここは味もいいんだ。大将が拘りのある人で、毎朝新鮮な食材を自分の目で見繕う。気に入ったものがないとメニューが減ったりして安定しないが、その代わり毎度違うものが食べられて面白い。
「リッツは魚が好きなんだな」
「ん?」
グリフィスの皿には肉が、リッツの皿には魚がある。ふと見て、頷いた。
「船暮らしが長いから、魚は口に馴染むんだよ。肉は陸に上がらないとさ」
「あぁ、なるほどな」
「グリフィスは肉だよな」
『グリフィス』と、呼び慣れない名前で呼ぶことにまだ恥ずかしさがある。でも、新鮮な感じがする。
恋人と言ってもらってからこの呼び名にしたいと言ったら受け入れられた。まだ慣れないけれど、これからもっと近づきたい。そう、思うようになっている。
「これでも脂身は控えてるんだぞ」
「拘り?」
「まぁ、体の為にな。野菜は適度、肉もその日の運動量に合わせてだな。だから、今日は少し控えめだ」
そう言われてみると、今日はいつもより控えめかもしれない。訓練後に会うとかなりの量を食べるのに。
「気遣ってるんだ」
「そりゃ、体が基本だからな」
「そっか」
不意に、戦い後の姿を思いだした。ドキドキして、いつもより強く見えた。全身から立ち上る気配みたいなものが雄々しくて、檄を飛ばしている姿がワイルドでかっこよくて。
あの直後に、興奮のままに抱かれたらきっともの凄く気持ち良かったのにな……
残念な気持ちがあると同時に、そんな事を言える雰囲気ではなかった。一人熱くなる体を持て余して、切なさに苦しくなっていった。
「どうした?」
「あぁ、うん。戦ってるグリフィスを初めて見たなって」
「あぁ。あんなん、戦ったに入らないぞ」
「それはそうだけどさ。でも、興奮したの思いだした」
内側で燻る熱がジワジワ広がっている。苦しくなる熱なんて今まで感じた事がない。当然だ、やりたい時にやって発散していたんだから。我慢なんてした事がない。
グリフィスがニヤリと、男らしく厚い唇に笑みを作る。獲物を見るようなワイルドな視線を感じると途端に体が反応する。触られてもいないのに犯されている気持ちになって、肌がザワザワしてしまう。
「欲しかったか?」
「え?」
「任務後の俺に、散々に犯されて興奮したかったか?」
「それは! ……したかった」
偽れないまま素直に言えば、グリフィスは豪快に笑い頭をポンポンと撫でる。子供扱いで誤魔化された気分だが……実際、子供なのかもしれない。
「欲しいか?」
「え?」
「随分我慢させたからな。俺も少し休みがあるし、外泊届は出してある。それに、俺も我慢してたしな」
「我慢、してたの?」
信じられない気分で見ていると、前髪を片手で上げて悩ましい目をしているグリフィスがいる。厚い唇を舐める、そんな仕草に捕食されたい自分がいて、リッツはまた体の熱を上げた。
「人目があるところで堂々とイチャコラする趣味はねーんだよ。秘め事は秘めてこそだろ。それに一応は任務中だ。俺は切り替えが下手だから、気持ち作ったらそれを崩したくねーんだよ」
「悪かったな」と語尾につけられて、欲望の熱とは違う温かなものが宿っている。同じく熱くなるのに、こっちは全然辛くない。嬉しくなってくる。
「俺、求められたい」
「そのつもりだ」
「貪ってくれる?」
「お前、もう少し言いようがあるだろうが」
「骨の髄まで食われたい。出るものなくなって干からびるまでしたい。我慢した分滅茶苦茶のグチャグチャにされたい」
「あのなぁ……」
グリフィスはガックリと肩を落とすが、次にはパンッと膝を叩いて目の前の皿を片付け始める。どうして突然。
「お前も食っておけ。体力つけて腹満たしとけよ。抱き潰されたいってなら、簡単に潰れんなよ。俺だって溜まってるんだ」
「あ……」
なんだ、一緒なんだ。
思ったら、嬉しかった。
「俺の腹、パンパンになるほどグリフィスが詰めればいいよ」
「……言いやがったな」
ギラギラした目に見られて、リッツは嬉しいやら興奮するやらで顔を赤くした。
少しはムードとか思ってたのに、結局欲望に勝てなかった。店舗の裏に作った生活スペース、その二階に早々と引きこもったリッツはいきなり情熱的に求められて既に喘ぐしかできない。背中から抱きしめられたまま上半身を捻るようにしてキスをする。苦しいけれど、これ好き。
「んぅふ……あぁ、触ると出ちゃうよ」
片方の手が服の上から股間に触れる。優しく触られるのではなく、硬い指でしっかりと触るから腰が痺れる。欲しかった刺激をもらえて歓喜でピクピクしてる。
「しっかり反応して、随分硬くしてるじゃないか」
「欲しかったんだもん、しかたないじゃん。っ! あぁ、はぁぁ!」
「こらえ性がないな、ったく。まぁ、そんなお前に今日はプレゼントがあるからな」
「プレゼント?」
なんだろう?
思っても、「まだ秘密だ」と言われると仕方がない。待つしかない。
そのまま立ったまま、グリフィスに一枚ずつ服を剥ぎ取られる。ズボンを落とされ、下着も。チュニックの裾から手が入り込んで乳首を捏ねられる。興奮で感度が増しているからか、既に痛いくらいに尖って硬くなっている。
「いっ、んぅぅ」
「どれだけだよ、リッツ」
「はぁん! だって欲しかったんだもん! 沢山、我慢したのぉ!」
「だろうな。たまに一人で消えてたろ」
……バレてる。
途端に恥ずかしくなった。素知らぬふりで帰ってきたし、服は乱れてないし、息も整えてきたのに。
「どうして、バレて」
「抱かれたいって顔して、物欲しそうに俺を見てただろうが」
「そんな! あぁ、でも一人でしたよ。ちゃんと……んぅ!」
「偉いぞ、リッツ」
「んぁあ! 切なくて苦しくて辛かったんだからな! 俺、あんなにセックス我慢したの初めてなんだからな!」
ご褒美と言わんばかりに、グリフィスの大きな手が玉を揉み込む。ヒクンと反応して、トロトロになっていく。チュニックの下、剥き出しの昂ぶりがもの凄く主張しているのは恥ずかしく思った。グリフィスはまだ服を着たままなのに。
「脱いでよ……匂い、嗅ぎたい」
「お前好きだよな」
「んっ、好き」
手を離してもらって、手ずから服を脱がせていく。そうして現れた逞しい胸筋を撫でて匂いを吸い込む。これだけで頭の中が熱くなる。
「グリフィス、欲しい……すぐ、欲しい」
「バカか、慣らさないと流石に壊れるぞ」
「その時間が勿体ないよ」
もどかしいったらない。手を引いてベッドに座らせて、ズボンも下着も脱がせてしゃぶりついた。カリ高で筋が浮いて濃い味がする。口いっぱいに頬張って扱きながら、自分の指で後ろを暴いた。
「焦るなよ、リッツ」
「焦るよ。だって、俺我慢したんだもん」
「しょうがない奴だな……」
グリフィスの腕が伸びてリッツの体をベッドに押し上げる。そしてまんぐり返しにして腰を高く持ち上げ、そのまま太い指で中を掻き回し始めた。
「あぁぁ! それ、凄く気持ちいいっっ」
「相変わらずド変態だぞ」
呆れながらもそこにローションをドボドボ投入してくれる。くぱっと口を広げた後孔はたっぷりローションを飲み込んで途端に中がドロドロになる。そこをまた指でされるんだ。
「はぁん! イクっ! イッちゃうよぉ!」
一切の抵抗がなくなった中を蹂躙されていく。硬くて強くて太い指が心得たように良い場所を擦り上げる。パンパンに筋を浮かせたリッツの昂ぶりからはトロトロの先走りが溢れ出て腹の上を汚して垂れてくる。
「一度イッとけ」
グリッと快楽のツボを押し込まれ、リッツはあっけなく白濁を吐き出した。まんぐり返しだから、吐き出したものが胸や顔にもかかってしまう。
そうして自身が吐き出した臭いにまた、興奮してしまう。
「よし、一度しぼんだな」
グリフィスはそう言うと、自分のポケットから何かを取り出す。銀色に光る細い金属の輪だ。真ん中からパカンと開くようになっていて、一部がCのように開いている。
グリフィスはリッツの亀頭の根元にそのリングをはめ、筋に当たらないように開いている部分を調整した。
急速に締め付けられる感覚がして、窮屈になる。まだ射精感はあるのに、堰き止められているような感じがある。
「んぁ、イケ、ないよぉ」
「その為につけたんだよ。お前、出し過ぎて最後ドライばかりで痛そうだからな。知り合いに頼んでおいたんだ」
銀の輪っかがはまったまま亀頭の敏感な部分を撫でられる。駆け上がるような強い刺激が脳みそまで揺らすけれど、締めつけが邪魔をして吐き出せない。痛みに似た感覚があるけれど、筋の部分は開いているから凄く痛いわけじゃない。単に窮屈なんだ。
「いい感じだな。これを付けててもイケる。それに、これなら最後までもつだろう」
「なにも、よくな! いあぁぁぁ!」
ジュブジュブ音をさせて、中で泡立ったローションが溢れ出てくるほどに解されていく。指が三本、四本入り込んでいる。括約筋が伸びて、大きく広がっていった。
「さて、もらうぞ」
「んぁあああああああ!」
ジュブッと音をさせ、肉も全部巻き込んで太く熱いグリフィスの肉杭が埋まる。まんぐりのまま、垂直に突き刺さる肉棒を見て興奮して心臓が壊れそうなのに、昂ぶりは太く育ったままダラダラ涎を溢すだけ。達しそうな瞬間はあるものの、吐き出せない。驚く程玉が持ち上がってビクビク震えている。
「美味しそうに飲むな、お前のここは」
「と、取ってくれよぉ!」
「駄目だ。それに、我慢してからのほうが気持ちいいぞ」
干からびるほど吐き出すつもりだったのに!
苦しい体位。だけれど、その苦しさが気持ちいい。ドクドクさせながらグリフィスが中で育って、気持ちのイイ部分を抉っていく。その度に飛んだ。飛ばしながら、激しさに悶えた。
「しっかり飲めよ」
ニヤリと笑い、唇を舐めるグリフィスが一気にズブリと奥まで入れる。瞬間、頭の中が真っ白になってリッツは二度目を吐き出した。二度目なのに、とても濃い臭いがする。
そして中に流し込まれた熱いものが奥深くまで染みこんでいく。ドクドクさせながら最後の一滴まで注ぎ込むみたいだ。
「あっ、あっ……ぁ、はははっ」
「大丈夫か?」
「腹のなか、熱くて気持ち、いい……奥まで、飲み込んで犯されてる……」
いつも溢れさせてしまうものが、溜まって行く。苦しいけれど、その苦しさが愛しくなる。狂ってるかもしれないけれど、もっと欲しい。
「無事にイケたな」
再び力を弱めたリッツの昂ぶりは、それでもまだ欲しそうに芯が残っている。
ベッドに普通に寝かされ、抜かないまま二回戦目が開始される。グリフィスはとても大事に抱いてくれた。吐き出したリッツの白濁も気にせず、むしろ舐めとる様に厚い舌で乳首を転がし、吸い上げ、指でも優しく摘まみ上げていく。
抽挿も緩やかで、全体をたっぷりの時間で馴染ませるように擦り上げていく。
緩い快楽は嫌いだった。どっちかといえば一瞬で焼き切れるような快楽が好きだ。
けれどグリフィスがくれる緩慢な交わりは好きだ。体の全部で愛してくれる。強い快楽では味わえない、体の芯がジワジワ痺れながら温まるような心地よさに酔わされていく。
「気持ちいいか?」
「すごく、いい。グリフィスは、いい?」
「あぁ、勿論だ」
初めて気にした。いつもは相手が気持ちいいなんて、考えてもいない。自分が気持ちよければそれでいいと思っている。
でも今は、グリフィスが「気持ちいい」と言ってくれるのが嬉しい。自然と力のない顔で笑ってしまう。
「少し、速くするぞ」
「あっ! はぅ、あぁ!」
高まる射精感はリングによって邪魔される。けれどその分長く感じていられる。濃厚なキスをしながら何度も何度も求めて、リッツは言葉通り骨の髄まで痺れるような夜を過ごした。
それでも結局最後は沈む。喘ぎすぎて喉は痛いし、最後の方は飛んでしまって記憶があやふや。
それでも隣で眠る人がいるから、不安や不満はない。
ベッドサイドには、亀頭にはめられていた銀のリングがある。まさか指より早くちんこに指輪はめられると思わなかった。
「これが嬉しいって、俺って本当にビッチだな……」
邪淫の気がある。否定しようのない事実だ。
「今度、グリフィスにフル勃起してもらって型取りできないかな? ディルドでも暫く我慢できる」
「お前、朝っぱらからえらいこと言ってるな」
「うわぁ!」
気付かないうちに起きていたグリフィスに赤面して、リッツは愛想笑いを作る。でも、もろに言葉に出ていたので今更取り繕うことができない。
「……作らせてやろうか?」
「え?」
「俺のディルド。それでお前が我慢するってなら、この際多少の恥は耐えてやる」
「ほんと!」
「そのかわり、型取りはお前がしろよ」
起き上がる凜々しい体、筋肉の逞しさ、男の臭い。全部に興奮しながら同時に満たされて、リッツは満面の笑みで抱きついた。
でも、安心感もあった。それは、側についていたグリフィスのおかげだと思う。
「それにしたって、グリフィス凄い格好だったな。あれ、サイズ間違いだろう」
「うっせ。予想以上にピチピチだったんだよ」
ふて腐れた顔で言うグリフィスはほんの少し赤い顔をしている。
侵入時、水夫に化ける為にそれっぽい格好をしたのだが……予想以上にピチピチだった。水夫だってかなりゴツいのだが、その中でもグリフィスは体格が良く全体的に筋肉がついていた。
結果、上腕ピチピチ、胸筋パンパン、腹筋見えそうだった。
「俺的には美味しかったけれど」
「お前のせいで部下にもあれこれバレて……威厳ない」
「それはごめん。ちょっと浮かれてた」
聞かれると恥ずかしいが嬉しい。その為あれこれ話した。出会ってからの初めての夜、再会後、その後のあれこれ。リッツ的にはグリフィスがいかに凄いかを強調したつもりなのだが……結果、アレがでかくて絶倫という事が誇張された。
「巨根絶倫野郎なんて思われたら、俺はいらんないぞ」
「ごめんって!!」
悪いと思っているからこそ、今日はちょっと豪華に外食に誘ったのに道中これだ。本当にどうしよう。思った以上に落ち込んでる。
それに、実は恋人になってから一度もエッチをしていない。
船の上では他の目があるから嫌だと言われ、二人きりになった時にと思ったら「任務中だ」と怒られ、キスを迫れば「キスで止まるのか?」と言われて自信がなかった。
だって、嬉しいんだ! 初めて「恋人」と言ってくれた相手なんだ。そんな人がすぐそばで逞しい体を惜しげもなく見せつけ、汗をかいた雄の匂いを漂わせているのに我慢できない!
でも、嫌われたくないから我慢した。「トイレ」と言って一人になってはグリフィスに手でされたのを思いだして自分で扱いた。バカみたいに出て、それでも足りなくて苦しかった。
アルブレヒトには「邪淫の気がある」と注意されたけれど否定しようがない。それでも今は一人だけを見ている。手当たり次第なんて思っていない。
そう伝えると「良い相手ですよ」とお墨付きをもらった。
ついでに仕立てと生地がいいと言われ、戦場に立つ時の服をお願いされた。他国とはいえ王族に気に入ってもらえたのは嬉しい。平和になって国交が結ばれたら是非とも手を伸ばしておきたい。
そんなこんなで辿り着いたのは下町の奥にある隠れ家的な店。肉料理と魚料理があり、安いが個室がある。雑多な感じで気構えがなく、個室といっても隣の話が聞こえてくる。顔が見えない程度だ。
肩の凝る店が嫌いなグリフィスと一緒にと考えて、あれこれ迷って決めたのだ。
「良い店だな。適度に隔離されてて、でも賑やかで」
「ほんと!!」
「あぁ」
さっきまでのしょんぼりが嘘みたいに、リッツは明るく笑う。最近グリフィスに褒められるのが嬉しい。だから自然と笑顔になる。
そのうちに料理も運ばれてくる。ここは味もいいんだ。大将が拘りのある人で、毎朝新鮮な食材を自分の目で見繕う。気に入ったものがないとメニューが減ったりして安定しないが、その代わり毎度違うものが食べられて面白い。
「リッツは魚が好きなんだな」
「ん?」
グリフィスの皿には肉が、リッツの皿には魚がある。ふと見て、頷いた。
「船暮らしが長いから、魚は口に馴染むんだよ。肉は陸に上がらないとさ」
「あぁ、なるほどな」
「グリフィスは肉だよな」
『グリフィス』と、呼び慣れない名前で呼ぶことにまだ恥ずかしさがある。でも、新鮮な感じがする。
恋人と言ってもらってからこの呼び名にしたいと言ったら受け入れられた。まだ慣れないけれど、これからもっと近づきたい。そう、思うようになっている。
「これでも脂身は控えてるんだぞ」
「拘り?」
「まぁ、体の為にな。野菜は適度、肉もその日の運動量に合わせてだな。だから、今日は少し控えめだ」
そう言われてみると、今日はいつもより控えめかもしれない。訓練後に会うとかなりの量を食べるのに。
「気遣ってるんだ」
「そりゃ、体が基本だからな」
「そっか」
不意に、戦い後の姿を思いだした。ドキドキして、いつもより強く見えた。全身から立ち上る気配みたいなものが雄々しくて、檄を飛ばしている姿がワイルドでかっこよくて。
あの直後に、興奮のままに抱かれたらきっともの凄く気持ち良かったのにな……
残念な気持ちがあると同時に、そんな事を言える雰囲気ではなかった。一人熱くなる体を持て余して、切なさに苦しくなっていった。
「どうした?」
「あぁ、うん。戦ってるグリフィスを初めて見たなって」
「あぁ。あんなん、戦ったに入らないぞ」
「それはそうだけどさ。でも、興奮したの思いだした」
内側で燻る熱がジワジワ広がっている。苦しくなる熱なんて今まで感じた事がない。当然だ、やりたい時にやって発散していたんだから。我慢なんてした事がない。
グリフィスがニヤリと、男らしく厚い唇に笑みを作る。獲物を見るようなワイルドな視線を感じると途端に体が反応する。触られてもいないのに犯されている気持ちになって、肌がザワザワしてしまう。
「欲しかったか?」
「え?」
「任務後の俺に、散々に犯されて興奮したかったか?」
「それは! ……したかった」
偽れないまま素直に言えば、グリフィスは豪快に笑い頭をポンポンと撫でる。子供扱いで誤魔化された気分だが……実際、子供なのかもしれない。
「欲しいか?」
「え?」
「随分我慢させたからな。俺も少し休みがあるし、外泊届は出してある。それに、俺も我慢してたしな」
「我慢、してたの?」
信じられない気分で見ていると、前髪を片手で上げて悩ましい目をしているグリフィスがいる。厚い唇を舐める、そんな仕草に捕食されたい自分がいて、リッツはまた体の熱を上げた。
「人目があるところで堂々とイチャコラする趣味はねーんだよ。秘め事は秘めてこそだろ。それに一応は任務中だ。俺は切り替えが下手だから、気持ち作ったらそれを崩したくねーんだよ」
「悪かったな」と語尾につけられて、欲望の熱とは違う温かなものが宿っている。同じく熱くなるのに、こっちは全然辛くない。嬉しくなってくる。
「俺、求められたい」
「そのつもりだ」
「貪ってくれる?」
「お前、もう少し言いようがあるだろうが」
「骨の髄まで食われたい。出るものなくなって干からびるまでしたい。我慢した分滅茶苦茶のグチャグチャにされたい」
「あのなぁ……」
グリフィスはガックリと肩を落とすが、次にはパンッと膝を叩いて目の前の皿を片付け始める。どうして突然。
「お前も食っておけ。体力つけて腹満たしとけよ。抱き潰されたいってなら、簡単に潰れんなよ。俺だって溜まってるんだ」
「あ……」
なんだ、一緒なんだ。
思ったら、嬉しかった。
「俺の腹、パンパンになるほどグリフィスが詰めればいいよ」
「……言いやがったな」
ギラギラした目に見られて、リッツは嬉しいやら興奮するやらで顔を赤くした。
少しはムードとか思ってたのに、結局欲望に勝てなかった。店舗の裏に作った生活スペース、その二階に早々と引きこもったリッツはいきなり情熱的に求められて既に喘ぐしかできない。背中から抱きしめられたまま上半身を捻るようにしてキスをする。苦しいけれど、これ好き。
「んぅふ……あぁ、触ると出ちゃうよ」
片方の手が服の上から股間に触れる。優しく触られるのではなく、硬い指でしっかりと触るから腰が痺れる。欲しかった刺激をもらえて歓喜でピクピクしてる。
「しっかり反応して、随分硬くしてるじゃないか」
「欲しかったんだもん、しかたないじゃん。っ! あぁ、はぁぁ!」
「こらえ性がないな、ったく。まぁ、そんなお前に今日はプレゼントがあるからな」
「プレゼント?」
なんだろう?
思っても、「まだ秘密だ」と言われると仕方がない。待つしかない。
そのまま立ったまま、グリフィスに一枚ずつ服を剥ぎ取られる。ズボンを落とされ、下着も。チュニックの裾から手が入り込んで乳首を捏ねられる。興奮で感度が増しているからか、既に痛いくらいに尖って硬くなっている。
「いっ、んぅぅ」
「どれだけだよ、リッツ」
「はぁん! だって欲しかったんだもん! 沢山、我慢したのぉ!」
「だろうな。たまに一人で消えてたろ」
……バレてる。
途端に恥ずかしくなった。素知らぬふりで帰ってきたし、服は乱れてないし、息も整えてきたのに。
「どうして、バレて」
「抱かれたいって顔して、物欲しそうに俺を見てただろうが」
「そんな! あぁ、でも一人でしたよ。ちゃんと……んぅ!」
「偉いぞ、リッツ」
「んぁあ! 切なくて苦しくて辛かったんだからな! 俺、あんなにセックス我慢したの初めてなんだからな!」
ご褒美と言わんばかりに、グリフィスの大きな手が玉を揉み込む。ヒクンと反応して、トロトロになっていく。チュニックの下、剥き出しの昂ぶりがもの凄く主張しているのは恥ずかしく思った。グリフィスはまだ服を着たままなのに。
「脱いでよ……匂い、嗅ぎたい」
「お前好きだよな」
「んっ、好き」
手を離してもらって、手ずから服を脱がせていく。そうして現れた逞しい胸筋を撫でて匂いを吸い込む。これだけで頭の中が熱くなる。
「グリフィス、欲しい……すぐ、欲しい」
「バカか、慣らさないと流石に壊れるぞ」
「その時間が勿体ないよ」
もどかしいったらない。手を引いてベッドに座らせて、ズボンも下着も脱がせてしゃぶりついた。カリ高で筋が浮いて濃い味がする。口いっぱいに頬張って扱きながら、自分の指で後ろを暴いた。
「焦るなよ、リッツ」
「焦るよ。だって、俺我慢したんだもん」
「しょうがない奴だな……」
グリフィスの腕が伸びてリッツの体をベッドに押し上げる。そしてまんぐり返しにして腰を高く持ち上げ、そのまま太い指で中を掻き回し始めた。
「あぁぁ! それ、凄く気持ちいいっっ」
「相変わらずド変態だぞ」
呆れながらもそこにローションをドボドボ投入してくれる。くぱっと口を広げた後孔はたっぷりローションを飲み込んで途端に中がドロドロになる。そこをまた指でされるんだ。
「はぁん! イクっ! イッちゃうよぉ!」
一切の抵抗がなくなった中を蹂躙されていく。硬くて強くて太い指が心得たように良い場所を擦り上げる。パンパンに筋を浮かせたリッツの昂ぶりからはトロトロの先走りが溢れ出て腹の上を汚して垂れてくる。
「一度イッとけ」
グリッと快楽のツボを押し込まれ、リッツはあっけなく白濁を吐き出した。まんぐり返しだから、吐き出したものが胸や顔にもかかってしまう。
そうして自身が吐き出した臭いにまた、興奮してしまう。
「よし、一度しぼんだな」
グリフィスはそう言うと、自分のポケットから何かを取り出す。銀色に光る細い金属の輪だ。真ん中からパカンと開くようになっていて、一部がCのように開いている。
グリフィスはリッツの亀頭の根元にそのリングをはめ、筋に当たらないように開いている部分を調整した。
急速に締め付けられる感覚がして、窮屈になる。まだ射精感はあるのに、堰き止められているような感じがある。
「んぁ、イケ、ないよぉ」
「その為につけたんだよ。お前、出し過ぎて最後ドライばかりで痛そうだからな。知り合いに頼んでおいたんだ」
銀の輪っかがはまったまま亀頭の敏感な部分を撫でられる。駆け上がるような強い刺激が脳みそまで揺らすけれど、締めつけが邪魔をして吐き出せない。痛みに似た感覚があるけれど、筋の部分は開いているから凄く痛いわけじゃない。単に窮屈なんだ。
「いい感じだな。これを付けててもイケる。それに、これなら最後までもつだろう」
「なにも、よくな! いあぁぁぁ!」
ジュブジュブ音をさせて、中で泡立ったローションが溢れ出てくるほどに解されていく。指が三本、四本入り込んでいる。括約筋が伸びて、大きく広がっていった。
「さて、もらうぞ」
「んぁあああああああ!」
ジュブッと音をさせ、肉も全部巻き込んで太く熱いグリフィスの肉杭が埋まる。まんぐりのまま、垂直に突き刺さる肉棒を見て興奮して心臓が壊れそうなのに、昂ぶりは太く育ったままダラダラ涎を溢すだけ。達しそうな瞬間はあるものの、吐き出せない。驚く程玉が持ち上がってビクビク震えている。
「美味しそうに飲むな、お前のここは」
「と、取ってくれよぉ!」
「駄目だ。それに、我慢してからのほうが気持ちいいぞ」
干からびるほど吐き出すつもりだったのに!
苦しい体位。だけれど、その苦しさが気持ちいい。ドクドクさせながらグリフィスが中で育って、気持ちのイイ部分を抉っていく。その度に飛んだ。飛ばしながら、激しさに悶えた。
「しっかり飲めよ」
ニヤリと笑い、唇を舐めるグリフィスが一気にズブリと奥まで入れる。瞬間、頭の中が真っ白になってリッツは二度目を吐き出した。二度目なのに、とても濃い臭いがする。
そして中に流し込まれた熱いものが奥深くまで染みこんでいく。ドクドクさせながら最後の一滴まで注ぎ込むみたいだ。
「あっ、あっ……ぁ、はははっ」
「大丈夫か?」
「腹のなか、熱くて気持ち、いい……奥まで、飲み込んで犯されてる……」
いつも溢れさせてしまうものが、溜まって行く。苦しいけれど、その苦しさが愛しくなる。狂ってるかもしれないけれど、もっと欲しい。
「無事にイケたな」
再び力を弱めたリッツの昂ぶりは、それでもまだ欲しそうに芯が残っている。
ベッドに普通に寝かされ、抜かないまま二回戦目が開始される。グリフィスはとても大事に抱いてくれた。吐き出したリッツの白濁も気にせず、むしろ舐めとる様に厚い舌で乳首を転がし、吸い上げ、指でも優しく摘まみ上げていく。
抽挿も緩やかで、全体をたっぷりの時間で馴染ませるように擦り上げていく。
緩い快楽は嫌いだった。どっちかといえば一瞬で焼き切れるような快楽が好きだ。
けれどグリフィスがくれる緩慢な交わりは好きだ。体の全部で愛してくれる。強い快楽では味わえない、体の芯がジワジワ痺れながら温まるような心地よさに酔わされていく。
「気持ちいいか?」
「すごく、いい。グリフィスは、いい?」
「あぁ、勿論だ」
初めて気にした。いつもは相手が気持ちいいなんて、考えてもいない。自分が気持ちよければそれでいいと思っている。
でも今は、グリフィスが「気持ちいい」と言ってくれるのが嬉しい。自然と力のない顔で笑ってしまう。
「少し、速くするぞ」
「あっ! はぅ、あぁ!」
高まる射精感はリングによって邪魔される。けれどその分長く感じていられる。濃厚なキスをしながら何度も何度も求めて、リッツは言葉通り骨の髄まで痺れるような夜を過ごした。
それでも結局最後は沈む。喘ぎすぎて喉は痛いし、最後の方は飛んでしまって記憶があやふや。
それでも隣で眠る人がいるから、不安や不満はない。
ベッドサイドには、亀頭にはめられていた銀のリングがある。まさか指より早くちんこに指輪はめられると思わなかった。
「これが嬉しいって、俺って本当にビッチだな……」
邪淫の気がある。否定しようのない事実だ。
「今度、グリフィスにフル勃起してもらって型取りできないかな? ディルドでも暫く我慢できる」
「お前、朝っぱらからえらいこと言ってるな」
「うわぁ!」
気付かないうちに起きていたグリフィスに赤面して、リッツは愛想笑いを作る。でも、もろに言葉に出ていたので今更取り繕うことができない。
「……作らせてやろうか?」
「え?」
「俺のディルド。それでお前が我慢するってなら、この際多少の恥は耐えてやる」
「ほんと!」
「そのかわり、型取りはお前がしろよ」
起き上がる凜々しい体、筋肉の逞しさ、男の臭い。全部に興奮しながら同時に満たされて、リッツは満面の笑みで抱きついた。
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