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15章:王弟の落日

11話:新婚旅行は敵地ですが(シウス)

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 ようやく話は纏まり、ジェームダルも一つ所に向かっていけそうな予感がする。案外良い家臣が残っていた事と、神の子アルブレヒトを民が渇望している事がある。そしてアルブレヒトが腐敗を切り捨てまくった事も一つある。この機会にちゃっかり一掃したのだ。流石抜け目がない。

 何にしても帝国としては同盟国の早い復興は好ましい。これでより経済は回っていく。これから細かな取り決めなどはあるだろうが、ひとまずシウス一人がこれまでの経緯を元に進められる話はこれでほぼしてしまった。

 帝国領内でも争いはあったらしいが、オスカル、ウルバス、キアランがしっかりとやってくれた。残してきた在籍年数の低い隊員達も街の護衛や警備、避難する人々の護衛などで役割を果たしてくれた。
 概ね、帝国への被害はなく既に経済も回り出している。終戦を受けて、あちらは既に活気を取りもどしたらしかった。

 心配されたのはアルブレヒトの様子だった。あのように取り乱した姿は見たことがなかった。
 それだけ、ナルサッハという青年はアルブレヒトにとって大切な……おそらく、特別な感情のある人物だったのだろう。
 エルの森にいた時も、アルブレヒトという人は穏やかで柔らかく、時に悪戯が好きなお茶目な人だった。だがあの当時は広く多くを平等に愛するような部分があった。
 「神とは袂を分かった」と言っていたのは本当なのだろう。今のアルブレヒトは平等性は薄くなり、個人の感情を強く見せる様になっている。それが大きく出ているのが、ナルサッハの事なのだろう。

 アルブレヒトが沈み込んでいる間に、シウスは長年勤めているというエトリムに話を聞いた。そして、二人の絆の深さを感じた。故郷を追われ、更にナルサッハには非人道的な日々があり、傷ついていた。
 アルブレヒトも穏やかな生活をしつつも、故郷の事に心を痛めていただろう。そこで得た唯一の、故郷の話が出来る相手だ。四六時中、二人は互いを支えるように側にいたらしい。
 過去のアルブレヒトは感じられなかったのだろうが、既にこの時依存はしたのだろう。故にナルサッハに起こった悲劇に言葉がなかった。そして今を後悔している。

 それが数日前から吹っ切れた様に穏やかに、そして精力的になった。聞けば「ナルサッハを今度こそ、助け出せた」と言うのだ。魂を救えたと。
 人ならざる者を見るアルブレヒトだからこそ出来る事だ。シウスは精霊を見ても、霊を見る事はできない。ある意味、羨ましくもある。
 何にしてもアルブレヒトがしっかりとした為、数日後には処刑地に向かって行動する事が決まった。


 一日を終えて間借りしている客室へと戻ると、既に湯浴みも終えたラウルが寛いだ様子で待っていた。
 少し、大人びたように見える。背が伸びて、顔立ちも少年から青年へと変わってきた。丸くおおきかった瞳はほんの少し眦が切れ込み、大人の顔をする。手足もスラリと伸びて、愛らしいから美青年といった様子だ。

「お帰りなさい、シウス」
「あぁ、ただいまラウル。待たなくても良かったのだぞ?」
「またそんな意地悪を言って。僕が待ちたかったんです」

 少し拗ねた様に口元を膨らませるラウルはやはり愛らしい。ソファーから立ち上がり、目の前までくると首に腕を絡め、互いに労うようなキスを交わす。
 これに、毎日少しだけ疼く。求めたい気持ちと、他人の領域であるという遠慮がせめぎ合っている。
 困ったように笑うと、ラウルは更に臍を曲げた。

「僕達、新婚ですよね?」
「分かっておるよ、ラウル。私が欲しいのかえ?」
「……流石に少し、寂しくなってきました」

 しょんぼりとされると余計にいたたまれない。シウスだって求める気持ちは十分にあるのだ。ただ今までは、仕事の事があって切り替えが上手くできなかった。

「ランバートやゼロスは、沢山愛されたのに」
「奴等め、かような所で恥ずかしげもなく……」
「シウスにはもう少し大胆さが必要だと思います」
「ラウル……」

 ビシッと嫁にこうまで言われては、勝てる気がしない。まぁ、元々彼に勝つ気などないのだけれど。

「風呂くらい行ってはならぬか?」
「そのままがいいです」
「汗ぐらい流したいのだがの」
「シウスの匂い、僕は好きですよ」

 こう言われてしまうと嬉しい気持ちが大半だ。
 甘える愛し子が、再び首に腕を回す。今度はシウスも受け入れて、細くともしっかりとした腰を抱き寄せ唇を塞いだ。

「んっ……ふぅ……」

 鼻にかかる甘え声を発するラウルの頬が、ほんのりと桜色に染まる。キスに夢中になるように何度も求めて舌を絡める子を、シウスは受け入れてたっぷりと可愛がった。

「シウスとのキス、久しぶりです」
「毎日しているであろう?」
「挨拶のキスではなくて、疼く様なキスです。体が、トロトロになるような」

 至近距離で見つめるトロリと甘い瞳を覗き込むとたまらない。
 シウスはラウルを抱き上げて、足早にベッドへと向かった。

「重いですよ!」
「なに、其方一人抱えられぬほど弱くはないぞ。まぁ、このまま長く運べと言われればたまらぬが、ベッドまでじゃ」

 ギュッと首に抱きつくのが、また愛おしい。丁寧にベッドへと運ぶと、シウスは自らの服の上を全て脱ぎ捨て、次いでラウルのローブも解いた。

 細いが、しっかりとした体だ。知り合った時はあんなにも子供らしく思ったのに。柔らかな皮膚と薄い脂肪の下に、しっかりとした筋肉を感じる。これ見よがしなものではなく、自然とついたものだ。
 太股にいたってはよりしっかりと筋が浮いている。暗府は足が資本だ、当然一番使うのだ。ここが他よりも発達するせいか、暗府に太めな者はない。

「んぅ、くすぐったいです」
「ラウルは内股が弱いからの。皮膚が薄く、昂ぶりが近いからか?」
「そんな事を言わないで。あっ、あぁぅ」

 ほっそりとしつつも筋肉のついた右膝を持ち上げ、内股にキスをする。途端、甘い声が柔らかく上がり、白魚の体がヒクリと震えた。

「初やつじゃ、ラウル。いつまでも慣れぬな」
「慣れるほど抱いて下さらないじゃないですか」
「そうか?」
「そうですよ。ランバートとファウスト様が仕事でドライな関係だと知って、自重しようなんて言って。もう何ヶ月も触れてくれていません。忘れてしまいますよ、旦那様」
「それは困るな、愛しい妻よ。だが、行軍中は仕方がないではないか。とてもそのような空気ではなかっただろ?」
「そうですが、この城に着いてからはお時間もあったのに」
「どれほど待ちわびたのじゃ?」
「貴方にお帰りのキスをする回数分くらいです」
「……かなりじゃな」

 可愛い顔をぷんすかさせるラウルに苦笑して、シウスは両の頬、そして唇に愛しさを込めてキスをしていく。普段は困らせるからと自重しがちなラウルは、その間にすっかり拗ねていたようだ。

「では、今日はしっかりと思い出させてあげようぞ。私の指が、唇が、お前をどのように愛するのかをその体と心でしっかり感じるのだぞ」

 ニヤリと笑ったシウスは、額にも一つ愛しくキスをして、一つずつ確かめるようにラウルの体に触れていった。


 甘い声はどんな甘露よりも酔わせ、吸い付くような肌は手や唇にしっとりと馴染む。可愛らしく誘ったのにすっかり熱を帯びた体は少しでも快楽を逃がそうと、もがくようにシーツを蹴る。
 片腕は声を小さくしようと口元に。もう片方の手は強い快楽を耐えるようにシーツを握る。濡れたライトブラウンの瞳から、滲んだ涙が薄ら頬を濡らした。

「んぅぅ! ふぅ、ふぅぅ」

 首筋を、鎖骨を、そして胸の愛らしい果実を唇で摘まみ、手で体のラインを確かめている。感覚が鋭敏故か、体のラインを指先でなぞるだけでほっそりとした体は小さく反応を示してくれる。
 腹筋の少し割れた部分や、小さく愛らしい臍の窪みをクルリと撫でると、「んぅぅぅ」というくぐもった声が上がった。

「もっと声を聞かせておくれ、ラウル。お前の可愛い声が聞きたい」
「はぁ……恥ずかしいですっ」
「夫婦だぞ? なんぞ隠す事があろうか」
「あぁぁ!」

 不意打ちに先走りを溢し立ち上がった昂ぶりの先端をクチュリと指で穿ると、高く震えた声が上がる。
 これに欲情するのだから、苦笑が漏れる。「少年が好きなのか」と言われて否定しきれなくなってしまう。別に少年が好きなのではなく、ラウルが好きなのだが。
 そんな子も、二十歳を超えた。これからきっと、もっと美しく花開くだろう。

「あんぅ、意地悪です」
「恥ずかしいか?」
「自分の感じてる声って、ちょっと恥ずかしくないですか?」
「そういうものかえ? 私は愛らしく、欲情するのだがの」

 ほんの少し睨まれるが、笑ってかわした。そして愛しく目元や口の端にキスをしつつ、指でぷっくりと赤く尖った乳首を捏ねた。

「んぅぅ! あっ、それダメですっ」
「赤く硬く尖って、美味しそうに育っておるのだがの」
「ひゃうぅ! あっ、あぁ!」

 クリクリと押し込み、摘まんで捻るように捏ねるとビクビクッと腰がうねり背が跳ねる。ほんの少ししなったせいで、まるで胸を突き出すようになっている。こうなると差し出された供物のようで、溜まらず噛みつくように愛でてしまう。

「あぁう! やっ、やぁシウス!」
「もっとと、差し出されたようではないか。とても美味しそうじゃぞ」
「差し出したなんて! あっ、あぁ……それダメですぅ……」

 背に触れた手にも感じているのが伝わる。気持ちよくて力が入らないのだろう、くたりとした。

「くくっ、初のぉ」
「そんなに初々しくなんてないじゃないですか」
「愛しい。という意味も含めてじゃ。あぁ、可愛いもかの?」

 クスクス笑いながら伝えれば、ラウルの顔は更に赤くなっていく。
 余計に止まらない。ぷっくりとした胸を揉みながら、片方は唇で愛し、片手でトロリと蜜をこぼす昂ぶりを柔らかく包む。扱くと早いから先端の丸みを包み込み、撫でていると更にトロリと手が濡れていく。

「やうぅ! あっ、イッちゃいますぅ!」
「まだ平気じゃ」
「平気じゃ! あっ、あぁぁ! イッ……んぅぅ!」

 ブルリと震えながら、突如ビクンと力が入るラウルが次には細かな痙攣を起こす。息が荒くなり、短く「あっ、あっ……」と余韻に飲まれるような声を上げている。
 驚くべきは前からはまったく出していないのだ。それでも、達しているのが分かる。太股の根元を撫でると「あぁぁ」と甘い声を上げて股を開いたラウルの後孔は誘うようにヒクヒクと蠢いていた。

「なんと、中で達したのかえ?」
「だから、イッちゃうってぇ」

 泣きそうな……実際に少し泣きながらラウルは真っ赤になって訴えている。
 参った、完全にスイッチが入ってしまった。我が妻はいつの間にかこんなにも愛らしく、そして淫らになっていた。

「あっ、ダメ! 今イッたばかり! あぁんぅぅ!」

 嫌々と緩く首を振るラウルの申し出は聞き入れられない。シウスは後孔にツプリと指を一本含ませ、中で円を描くように広げた。
 絶頂の余韻から背がしなり、やはり突き出される胸に食らいつく。我慢した分欲望は深いのだろう、欲しくてたまらない。歯で少し引っかけるだけで、細い体はビクビクと震える。

「痛くはないかえ?」
「気持ちいぃ……あぁ、そこダメですぅ!」
「硬くなっておるな。可愛がってやろうぞ」
「はうんぅぅ!」

 指先に感じるコロコロとした硬い部分を薄く撫でると、ラウルは気持ちよく声を上げ、昂ぶりからはトロリと甘露が滴る。舌で舐めとり、吸い上げれば更に溢していく。

「はぁ、イッ……ちゃう……あぁ、だめぇ」
「存分にイッてよいぞ。たっぷりと愛そうぞ」

 掠れながらヒクヒク蠢く内部が、キュゥと指を締め付ける。既に誘われているようだ。

 香油を垂らし、指を二本に増やして更に広げた。柔らかな蕾は一度受け入れてしまえば拒む事なく開いていく。指を広げ、中に直接オイルを垂らし、掻き回していけばラウルは何度も中で快楽を貪り、強ばるように動きを止めて痙攣する。指だけで、何度達したのだろう。

「愛らしい顔をして、熟れた体をしておる。私が欲しくてたまらぬか?」

 耳の柔らかな部分を舐り、そこに言葉を吹き込めばそれだけでビクンと体が震えている。腕の中のこの子は、もうどのような刺激にも軽い絶頂を味わっているようだ。

「沢山、焦らすからぁ」
「それはすまぬの。その分、今日返そう」
「一括はだめですぅ……あぁ、もう……はぁん!」

 グチュグチュにしていた内壁が、キュウゥと抱きしめる様に締まっていき、奥がヒクヒク誘うように蠢く。何度目かの絶頂で愛らしい丸みの先端からはクプリと蜜が多めに溢れて腹を汚した。

「はぁ、あぁ……もっ、入れてください……」
「指二本では足りぬよ。もう少しお待ち」
「我慢できません。それに、体力が持ちません」
「困った事を言うでない。痛むのだろ? 今日は私も我慢できぬぞ」

 困った事に愚息はいつもより臨戦態勢らしい。自分でも少し痛いくらいに張りつめてしまっているのだ。

 涙目のラウルがこちらを見て、スルリと体を起こす。自然と指が抜けていく。

「とにかく、休ませてください。このままじゃ貴方を受け入れる前に僕が気をやってしまいます」
「ダメか?」
「久しぶりの夫婦の営みなんですよ? 僕にも、シウスを愛させてください」

 睨まれて、ラウルはそのままシウスの前に体を倒す。すっかり立ち上がった愚息の根元を握られ、小ぶりな唇が先端に触れた。

「っ! あぁ、久しぶりじゃの」

 ラウルの髪を撫で、走る刺激に息を吐く。甘美だが、少し強い快楽は下肢に鋭く、腰骨に響く。

「シウスの、いつもより大きい?」
「お前に求められ、あれだけ痴態を見ては興奮もする」
「そう、か」

 嬉しそうに頬を染めて微笑むラウルが可愛い。そして小さな口の中に男の昂ぶりを一生懸命咥え込む淫らな映像に、理性はあっという間に焼き切れてしまいそうだ。

「んぅ、ぐっ……」

 時折コツコツと喉奥を突くのだろう。くぐもった声をさせながらも唾液と先走りを混ぜて飲み込んでいく。嚥下される舌の感触、擦れる上顎の刺激に頭の芯がぼやけていく深い快楽が襲ってくる。
 何よりもこの行為に、ラウルが興奮していると分かる。細い背をしならせ、時折お尻を揺らめかせて、まるで誘っているようだ。

 誘っているのか?

「はうぅ! シウス、悪戯しないでください」
「だが、これは……」

 思わず手を伸ばし、ぷっくりとした尻を撫で、左右に割り開いてしまう。丸く形のよい尻はそのくせ弾力がある。それを手の平で揉んでいると、ラウルは我慢できないのか甘い声を上げながら、それでもシウスの股座に顔を埋め、懸命に熱を出させようと舌と口内で刺激してくる。

「一度出してしまわねば、流石にこれを埋めるのは忍びないな」
「くださってもいいですよ」
「傷つけてしまうよ。どれ、口を離しなさい」

 尻を遊んでいた手をどけ、ラウルの肩を僅かに押して、シウスは自らを握り込む。そうして思うままに自らを扱いていく。

「んぅ、あっ……はぁ……」
「シウス、色っぽい顔をしています」
「これ、そう見るでない。なかなか恥ずかしいのだぞ?」
「色っぽいです」

 見られていると認識しての自慰というのは、妙な羞恥心があるものだ。これは夫婦となって、時折思っている。あまりに欲望が溜まりすぎて傷つけてしまいそうなとき、こうして先に一度抜く事もあるのだが。

 ラウルの瞳がほんの少し、悪戯っぽく輝く。そしてそっと、蜜をこぼす先端を撫でた。

「んぅぅ!」

 ビリビリと痺れた体と一瞬カッと熱くなる体。脳天まで響くような刺激に息を吐き出す。
 ラウルはそんなシウスの姿が気に入ったのか、自分がされたのと同じように先端を撫で回している。

「これ……はぁ……悪戯するでない」
「シウスはするじゃないですか」
「……申し開き出来ぬ」

 確かに可愛くて、ついついしてしまうのは事実なのだし。

 味をしめたラウルが先端を愛撫する。多少拙くもある動きがもどかしくてたまらない。背を這うようなゾクゾクする感覚に息が乱れ、体が前のめりになっていく。自ら根元を扱く手に、知らず力が入ってしまう。

「そろそろ、出そうですね」
「余裕が出てきたの。波は引いたのかえ?」
「はい、お陰様で少し戻ってきました。でも、貴方を見ているだけで欲望が疼くようです。お腹の奥が切ないです」
「沢山、してやろうぞ」
「はい」

 こうなると早くよこせとせっつくように、ラウルが先端を咥える。途端、ビリリと腰骨が痺れる。口腔の中で舐め回されて吸われると、目の前がチカチカした。

「ラウルっ!」

 ドクンと心臓が強く脈打ち、下肢が蕩ける様に甘く甘く痺れていく。ラウルの口の中に吐精しながら、シウスはクシャリとラウルの頭を撫でた。

 ラウルは吐き出したものを飲み下し、それでもまだ求めるように口腔で育てようとする。これには腰が抜けてしまいそうで、シウスは困って顔を上げさせた。

「これ、お前を満足させるまえに骨抜きになってしまうぞ?」
「それは困ります」
「だろ? それなら、もう口は外しておくれ。悪戯はそこまでじゃ」

 ほんの少し不満そうな顔をされて苦笑してしまう。どれだけコレを咥えておきたかったんだ。

 仰向けに倒し、改めて指を二本香油を垂らして解すが、これはもう簡単に飲み込む。切なげな声を上げるものの、強すぎる快楽の波は確かに引いている。やわやわと食むが、誘い込むように蠢いたりはしていない。
 指を増やし、乳首を唇に拭くんで転がし。少しずつ熱せられて行くラウルを十分に愛でながら、再び欲情がこみ上げてくる事にシウスは苦笑した。
 こんなに何度も求める程に愛しい人を得られた事は、幸せだ。多少困る事もあるが、日常も気力が出てくる。

「もっ、くださいっ! 奥が切ないです」
「ふふっ、確かにの」

 腰を緩く揺する姿に笑い、指で広げて香油を垂らして引き抜いた。そしてヒクヒクとしているそこに自らの昂ぶりを押し当て、グッと腰を進めていった。

「くうぅぅ! はぁ、あぁぁ!」
「くっ、狭いの」

 傷つけぬよう、少し埋めては引き、再び埋める。入口は柔らかいが、そこから先はやはり狭い。体格的にも大きくなったとはいえ、小柄だから。

「あっ、くる……しぃ」
「しばし耐えておくれ」

 少しでも負担が減ればと、汗に濡れた髪をかき上げそこにキスをし、唇にもキスをした。舌を絡めて吸い上げていけばそこに夢中になって力が抜ける。その間に腰を進め、時間をかけて全てを埋めた。

「はぁ……」
「苦しいかえ?」
「お腹いっぱいで、満足です」
「ならば良かった」

 体をたて、膝を抱えて押し上げる。全て挿入した状態で更に奥を押し上げると、敏感な部分にコリッとした部分が触れる。

「んぅぅ!」

 ピンと背に力が入り、気持ち良さそうに震えるラウルの体を存分に味わいながら、交わりを深くしていく。たっぷりと中を擦りながら、体にも触れて。

「どこがよい? 入口の辺りも好きであろ?」
「あぁ! だめ、それは気持ち良すぎる!」

 浅い部分を細かく擦るとビクビクっと震えながら高い声を上げたラウルが、キュッと中を締め付ける。中も僅かに痙攣しているのを感じる。ここをされるとあっけなく達するのは知っている。

「イッたかえ?」
「ダメって、言ったのに……」
「では、次は奥だなえ」
「へ? ひゃっ! あぁぁ、ダメぇ! イッちゃいます!!」

 一気に奥まで突き通し、よがる部分も刺激しながら突き上げていく。奥が蠢き、キュウキュウと吸い付いてくる。これはシウスもたまらない。あっという間に交わりは深くなっていく。

「はっ、あっ、あぁ!」
「良いよ、ラウル……っ、これは長くしてやれぬな」
「いっ! あぁ、シウスぅ!」

 涙目になって両手を広げるラウルの誘いを、どうして無視できよう。抱きしめ、欲望のままに穿ち、互いにグチャグチャに舌を絡めたままシウスはラウルの中に熱を吐き出した。
 その刺激にラウルもようやく自らを解放する。たっぷりと腹の上に吐き出したラウルは、しばし身を震わせながら悶え、僅かに動くだけでも愛らしい声を上げている。

「大丈夫かえ?」
「んっ、大丈夫です……気持ち、よくて」
「それほどかえ?」
「それほどです」

 断言し、甘えてまたキスをして。抜け出ると、少し寂しそうにされる。

「抜かなくても……」
「腹を壊すぞ。全身ドロドロじゃ、湯を貰おうか」

 体中、汗やら何やらで汚れてしまった。湯を貰おうとローブを纏おうとした背に、ぴたりとラウルが身を預けた。

「寂しいです。明日ではいけませんか?」
「それは……」

 こう甘えられると甘くなるのもまた、愛しいが故。シウスは着かけたローブを脱ぎ、隣へと寝転がった。

「寂しい思いをさせてすまぬな、ラウル」
「大丈夫です、分かっていますから。ただ、あんまり放置されると寂しくなります」
「分かった。帝国に戻ったら少し楽もできる。たっぷり、甘えさせてやろう」
「それは楽しみですね」

 ピッタリと体を寄せ合い、抱きしめ合って眠る夜。忙しい夜を忘れ、シウスは穏やかに眠りに落ちた。
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