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第一部『序章』

第十話

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次の日の昼。


皆、昨日のどんちゃん騒ぎで夜更かししてしまい昼に成ってしまった。


元親「昨日はさすがに飲みすぎた!って、おっ!師匠!」
「起きるのが遅いな。元親殿。」

元親「師匠!その、「殿」はよしてくれ!弟子に対して「殿」は良くねぇぜ?」
「まったく… 何の師匠なんだか… あい分かった!」

元親「でよ、早速なっだが後一刻過ぎに評定があるんで出席してほしいんだけど?」
「は?ワシは今日帰るつもりだったのだがな。」

元親「そう言わずに!頼む!この通り!」


元親は信長に土下座し頭を地面に擦れつけるが、それを見た信長が
「おい!元親!一城の主がそんな態度を気安く取るでないわ!!」

と、信長が元親を叱り付けた!


元親「やはり、某の見込んだ通りの御仁じゃ!」
「何じゃ?おぬし、この信長を試したのか?」

と、元親を睨み付けた。


元親「わりぃ。改めて、この長宗我部元親。織田信長様を師匠と仰ぎ生涯の忠誠を誓いまする!」
「生涯の忠誠じゃと?!おぬし、まだ酔いが醒めてないのではないか?」

元親「いえ、某は正気です。昨日、皆が寝静まってから考えた末の結論です。」
「ほう。案外頭は良いではないか!うむ。合格じゃ。」

元親「合格?」
「うむ。馬鹿なら使い潰してやろうと思っていたが、おぬしなら四国を任せられる!ワシはな、この日ノ本から戦をなくたいのじゃ。その為には全てを滅ぼしては、またどこかで火種が燻り戦乱に逆戻り成ってしまう。ワシの考えに同調して理解してくれる仲間が必要なのじゃ。それが長宗我部元親、お前じゃ。」

元親「おお!それはそうと、師匠は「天下布武」を掲げていると親父から聞いた事があるが、それって矛盾してやしねえか?天下を武力で支配するって意味だろ?」
「矛盾?どこが?戦に勝つには武力しかないではないか?」

元親「たしかに… 何も矛盾して… ない… でござるな… (あれ?)」
「そうじゃろう?(こやつは頭良いのか悪いのか分からんところがあるな。)まぁ、良い。それよりそろそろ始まるのではないのか?評定。」

元親「あっ!師匠も来て下され!重要な事も師匠に話さなくては成らないので!」


元親は信長の腕を引っ張り、無理やり評定に連れて行ったのであった。



評定の間に入った信長は物々しい雰囲気に
「おい!軍評定ではないか?」

親泰「これは織田殿!我らはこれより一条兼定居城・中村城を攻めようと、こうして軍評定を開いたのですが、一つ問題がありまして…」
「ほう。問題とは何じゃ?」

元親「ここからは某が、話します。我らの留守中に一条家支城・安芸城城主の安芸国虎が、この城に攻めてく可能性があるので、師匠にこの城を守ってほしいと…」
「何じゃ。そんな事か…」

親泰「兄上いや殿、織田様が承知するはずがございませんよ…」

元親「そうじゃな。無理を言って申し訳ない。」
「おまえらな!話は最後まで聞け!あのな、受けてやるわ!」

元親「え?!本当でござるか?」

親泰「織田様!?頼んでおいて何ですが、織田様に得な事が何一つ無いのですよ?何故そこまで…」
「もっと素直に言えんのか?おまえらは!」


親泰と元親は顔を見合わせ、そうかと言わんばかりに
「「織田信長様、どうかこの城をお願い致します!」」

信長「この城を?ワシらが、どうして守らなければ?」
「へ?この話の流れで断るとか… 師匠…」

信長「話は最後まで聞けと言っておろうが!あのな、その安芸城をワシらが落とせば問題なかろう?違うか?」
「は?安芸城を落とす?」

信長「そうじゃ!おまえら、馬鹿じゃのぅ。」

親泰「しかし、織田様の軍勢は三好との戦いで疲労しているのでは?」
「忘れたか?昨日の弟子の大盤振る舞いで疲労など消し飛んだわ!それに得な事が何一つ無いのは事実じゃが、昨夜奢って貰ったお返しで一つ手を打とうではないか!のぅ!わっはっはっは!」


元親は信長の言葉に打ち震え
「師匠… あ、有り難き幸せ!恩に切りまする!」

信長「そうと決まれば打ち合わせじゃな。我が軍に猿に良く似た奴が居るから、誰ぞを下に行って連れて来てくれ!」
「某が行って参ります!師匠!」


こうして、一条家を滅ぼす算段を長宗我部家一同と信長、猿とで作戦の打ち合わせをする事になった。



                   ★




信長は元親との間で取り交わした案件は、四国を統一した後、長宗我部家は織田家の属国に成るが領地はそのまま長宗我部家の物とする。この一点。


信長「ワシらは安芸城を落とし帰路に着く。後の事は全て任せる事になるが良いな?」
「分かりました!師匠!某は出来るだけ早く統一を成し遂げ、毛利、大友攻めに間に合うよう軍備を整えまする。」

信長「そう慌てる事はない、ゆっくり確実に地盤を固めて行けば良い!四国全体を一つの砦のような国造りを目指せ!」
「それは凄い発想ですな!さすが師匠!分かり申した!」


そして、元親と別れ一条兼定居城・中村城へ向い、織田軍は一条家支城・安芸城へ向った。



【一条兼定(イチジョウカネサダ)。家督を継いで外交や合戦に身を投じていたが酒に溺れ追放された。】



籐吉郎「元親殿は面白い御仁でしたな、大殿。」
「うむ。ワシに似て野心家でもあるが、ワシの様に「うつけ」を演じる感じではないな。」

籐吉郎「馬鹿ではなさそうですが、侮れない存在といったところでござるな。」
「ふ。まぁ良い。ワシらは安芸城を落とし岐阜に戻るが、また船じゃな!」

籐吉郎「また船ですか…」


織田軍は安芸城を落とし城主の安芸国虎を討ち取り、その首を岡豊城に送り帰国の途に着いたのだった。



【安芸国虎(アキクニトラ)。元親に誘われたが断り、謀略で内部崩壊が起き自害した。】




その後、長宗我部家は四国を統一する為に奮闘する。



岐阜に帰った信長は、翌年の西暦1568年に石山本願寺を訪れて
「顕如殿久しいな。息災か?」

顕如「これは信長様。お陰さまで、変わりございません。」
「うむ。それは何より。実はな、我が織田家の宗派を浄土真宗にしたいと思い来たのじゃ。」

顕如「おおお!!それはそれは、どうぞどうぞ!浄土真宗は誰でも入信出来る仏教です!」
「それは有り難い。そこで、ワシの菩提寺を尾張に作って欲しくてな!何、資金はワシが寄付する。」

顕如「おおお!!それは良い事でございます!!尾張に我が本願寺の大寺院を建造しましょうぞ!」
「うむ。もっともっと、浄土真宗を広めて死者の供養をして欲しいのじゃ。」

顕如「まさか、そのような事をお考えとは?!この顕如、感服致しました!」
「ワシが天下統一し、浄土真宗の寺院を全国に建て国の宗教にすれば良いと考えている。」

顕如「その考えに同意します!是非、信長様に天下を治めて貰うため我らも如何なる事でもお手伝い致します。織田家の敵は我らの敵として全国の門徒衆に通告しておきます。」
「それは有り難いが、前の加賀の時みたいに成るのは困るぞ?」

顕如「はっ!分かり申した!」
「それとな、三好の半分は滅ぼしておいたぞ!」

顕如「は?半分とは?」
「四国の三好じゃ。」

顕如「そういえば、ここ最近。四国の三好と摂津の三好との船での物流がありませんね。」
「それは我が水軍、九鬼水軍が淡路水軍を滅ぼしたせいだ。」

顕如「なんと!?まさか九鬼水軍を手中に収め、淡路水軍をも滅ぼしていたとは!!」
「まぁの。何はともあれ、今年中に三好を滅ぼすつもりじゃ。」

顕如「それは有り難い事です。我らも三好家には手を焼いていましたから、大助かりです。」
「そう言ってくれると、滅ぼし甲斐があるな。しかし、死んだ者には罪が無いので供養だけはしてやってくれ。」

顕如「信長様… 分かり申した!この本願寺顕如が責任を持って供養致しまする。」
「頼む。それと、寺院の件だが尾張、美濃、三河、遠江、駿府、伊勢志摩、紀伊、淡路、阿波、讃岐、土佐に建てて欲しい。尾張が最優先だがな。もちろん建造費は全て織田家が負担する。」

顕如「ひえぇぇぇぇ?!わ、分かり申した!(織田様に足を向けて寝ないようにしないと…)」
「では我が織田家の本願寺で宜しいですかな?」

顕如「やはり、そう来ましたか… 良いでしょう!但し、我が石山本願寺はこのまま住める様にお願いし、織田家の墓を建てて頂く事になりますが良いですかな?」
「それはお願い致す!それと石山本願寺の方ですが、三好を滅ぼした暁には摂津を丸ごと差し上げますので好きに統治して下され!」


顕如は驚き過ぎて言葉がつまった。


顕如「は?へ?え?あの、我らは大名では無いので…」
「顕如殿、そこもとは僧兵も養っておるのでしょう?なら領地は必要かと。」

顕如「しかし、摂津の国一つとは…」
「少ないと?」

顕如「いえ、逆です!貰い過ぎです!」
「摂津を本願寺一色に染める事が出来るし、ここに全ての門徒衆が参拝に来るように成れば…」


顕如の顔が見る見る内に狂気に満ちた笑い顔に変貌し
「全てが潤うと… その話、承りましょう!!」

信長「では、今後共末永くお願い申し上げる!」
「それは、こちらこそですぞ!織田様、もう我らは一蓮托生の間柄ですからな!」


こうして、織田家の菩提寺を尾張の清洲城付近に顕如が監修の元、建造する事に成り、本願寺は織田家の本願寺になったのだった。


三好家は三好長慶が死に、義継が後を継いで居城を高槻城から飯盛城に移していたので、摂津の高槻城、有岡城、和泉・岸和田城の四つの支城しか存在していなかった。



【三好義継(ミヨシヨシツグ)。長慶の甥。入京した信長に降伏したが義昭を匿った為、信長に攻撃され敗死した。】



織田は大和の筒井家と畠山家を調略し、筒井家の島清興に寝返りを促し城主・筒井順慶を暗殺し大和郡山城、伊賀上野城を手中に収め、畠山家は降伏し軍門に下った事により、信貴山城城主・松永久秀に岸和田城を落とすように命を下した。



【筒井順慶(ツツイジュンケイ)。父の死後二歳で家督を継いだ。信長死後、秀吉に従った。】

【島清興(シマキヨオキ)。島左近と言った方が有名かな。関ヶ原の戦いでは石田三成の腹心を勤めた。】

【畠山高政(ハタケヤマタカマサ)。畠山家当主。】



そして、南近江・朽木谷城の六角攻めを観音寺城城主・丹羽長秀に命令し、摂津の有岡城を河内・高屋城城主の畠山高政と日野城城主・水野信元と共同で落とすように命を下した。


信長の率いる本体は三好義継居城・飯盛城を攻める為、軍評定を大和郡山城で行っていたのだった。



                   ★




信長は三好の各支店城の戦況報告を受けて三好義継居城・飯盛城に攻め込む算段をしていた。


籐吉郎「大殿!岸和田城を攻めてる松永の報告では飯盛城から兵3000の援軍が来て少々苦戦してるとの事です。
「うむ。なら信包!2000の騎馬隊を率いて松永の援軍に向かい、三好の援軍の後方から攻め立てよ!」

信包「はっ!すぐに出立致しまする!」
「頼んだぞ!朽木谷城の六角攻めはどうなっておる?」

籐吉郎「はっ!丹羽様の報告では順調との事でございます!」



この頃、本来は山城国に足利義昭の居城・二条城と勝龍寺城が存在していたが、この世界には存在せず京の町と天皇が住まう皇居と宮勤めの各屋敷しか無かった。



信長「長秀に、朽木谷城を落とした後、京に入り治安向上に努めよと伝えよ!」

籐吉郎「はっ!」
「有岡城の方はどうか?」

籐吉郎「飯盛城から同じく、兵3000の援軍が来たみたいですが畠山高政様が一隊を率い対処しているとの事です。」
「うむ。では飯盛城の兵はかなり減ったな。よし今が好機だな!飯盛城に向け全軍突撃!!」


”おおおぉぉぉぉぉぉぉぉ”


その頃、三好義継居城・飯盛城では
「実休殿と連絡はどうした?」

兼仲「淡路水軍と連絡を取ろうにも石山本願寺の糞坊主どもが武装して摂津の各港を封鎖されてる為、無理だと報告があがって来ています!」
「何じゃと?!くそ!!あの生臭坊主共め!なんとかならんのか!」

兼仲「本願寺の僧兵が火縄銃で武装し、各港に近付く事すら出来ないとの事です。」
「むうぅ。この城には後、何人の兵が居るのだ?」

兼仲「はっ!約12000程かと。しかし、物見の知らせでは各城に信長が居ないとの事なので、この城に攻めてくるのは時間の問題でしょう。どうしますか?」
「どうもこうもう、篭城しか… いや、撃って出る!!」

兼仲「は?しかし、殿は合戦の経験がありません。如何するつもりですか?」
「そこは家臣に任せるしか無い。このまま篭城しても負けるのを待つしか無いではないか!違うか?」

兼仲「分かりました。では殿は城の大手門前で陣を構え動かずに指揮するふりをしていて下され!後は我らが!」
「そうか!この不甲斐無いワシを助けてくれ!」


こうして、三好義継は織田軍相手に篭城ではなく野戦にて決戦する事に成ったのだった。


三好義継が野戦の構えという報告を受けた信長は
「なんと?!野戦とな!是非もなし!」

籐吉郎「我らは攻城戦には比類なき力を発揮して来ましたが、野戦は…」
「何を怯む事があるのだ!これは良い機会ではないか?」

籐吉郎「良い機会?」

「そうじゃ!野戦でも強いと諸国に知らしめられるではないか!それに、野戦は武田とやりあった事もあるしな。あちらの兵はどうせ5000か6000が関の山じゃ!こちらは3万の軍勢、負ける要素が何処にあるというのじゃ!」

籐吉郎「それもそうですな。武田に比べたら、へのカッパでござるな。」
「陣形は魚鱗の陣で構成し、織田軍の攻撃力を前面に押し出し勝つ事にしようではないか!」

籐吉郎「では陣の構築に堀秀政を起用しては?」
「ほう。猿の推薦に断る理由もない。すぐに手配しろ!」



織田信長は、三好側の各支城の援軍で飯盛城の駐留兵力が少ないと判断し魚鱗の陣で一気に勝負をつけようとした。



【魚鱗之陣(ギョリンノジン)。防御よりも攻撃に徹した陣形。正三角形の形に近い。】



信長は堀秀政に指示を出し
「後方右翼に信盛の騎馬隊2500、後方左翼に池田の騎馬隊2500、後方中央はワシの15000、中右翼に坂井の新式鉄砲足軽隊1000、中左翼に猿の大筒隊1000、名誉ある前方には村井の鉄砲騎馬3000、小荷駄隊5000は平手に任しワシの後方に位置しろ!」



【堀秀政(ホリヒデマサ)。名人久太郎と称され、文武両道に優れていた。】



そして、信長率いる織田軍3万は飯盛城が見える平野部に陣を構えた。


対する、三好軍は織田軍の陣形を見てすぐ鋒矢の陣に成り、織田軍に向け進軍を開始した!



【鋒矢之陣(ホウシノジン)。魚鱗の陣に似ているが一点突破するのに適した陣形。】



しかし、信長の本体は後方にあるのでそれに気付かず、兵達の声だけが聞こえるだけであった。


信長「やたら兵達の声が聞こえるが、どうなっておる?」
「はっ!前方が見えにくいので分かりません。」

信長「馬鹿者!!すぐ物見に確認させ、連絡を取れ!(平野部に陣取ったのが悪かったか!)」


前方の村井隊との距離が遠かった為、戦況が分からなかった。


村井隊はというと
「あれは、鋒矢の陣ではないか?しかも兵の数が大殿の予想していた数より多い!すぐ、大殿に伝令を送れ!」


そして、村井隊が三好軍との距離が縮まり村井隊の鉄砲が火を吹き、開戦した!


信長「今のは鉄砲の音?!ええい!前方はどうなっておるのだ!!」


そこに村井隊の伝令が
「信長様に報告!敵・三好軍ですが、信長様が予想した兵力より多く鋒矢陣形で突撃して来たとの事です!」

信長「なんだと?!これは、してやられたわ!信盛!恒興!ワシの兵5000と、貴様らの兵で村井の援護に向え!そして戦況が落ち着きそうになったら撤退を装い、敵を誘引しワシの陣まで引っ張って来い!」

信盛・恒興「「はっ!直ちに!」」
「残りは一度下がって陣形を再編成する!中央右翼・左翼に伝えい!」


信長は敵の兵力を誤信したが、すぐに別陣形の再編成を試みた!


信長「鶴翼の陣に陣を改めよ!!」



【鶴翼之陣(カクヨクノジン)。敵を本体近くまで誘い込み包囲して叩く陣形。】



信長は村井、信盛、恒興を待ちつつ堀秀政に陣形の構成を指示するのだった。


この一連の発言を聞いていた光秀は秀吉に耳打ちする。


光秀「木下様、大殿は何処でこのような戦法を身に付けたのでしょうな。」
「大殿は「うつけ」と世間では呼ばれていた時期があった。しかし、それは諸国に対する演技であった。その事から大殿は、かなりの切れ者とワシは見ている。だから、幼少の頃に孫子の兵法を学んだやも知れんな。」

光秀「織田信長様か… 凡人には理解不能ではあるが、あのお方に付いて行けば本当に天下統一するかも知れませんな。」
「あのな、光秀。するかもではなく、天下統一する御仁じゃぞ!ワシはそう思っている!」

光秀「しかし、某は木下藤吉郎殿に付いて行きますので、早く一国一城の主に成って我らを養って下され!」
「言われなくても、ワシは頑張るわい!今に見ておれよ!」

光秀「誰に向って言ってるのやら…」




                   ★





村井の援護に向った信盛と恒興は信長の指示通りに撤退を装い、敵を誘引する事に成功した。


兼仲「敵の増援が引き始めたぞ!我らの方が優勢だ!追いかけろ!」


”おおおぉぉぉぉ!”



信盛と恒興隊は…

信盛「負傷した村井殿と部隊はかなり離れたな。それより敵は付いて来てるな、恒興?」
「はっ!罠とも知らずに馬鹿な奴らですな。」

信盛「うむ。大殿の陣営が見えたら左右に散るぞ!」
「はっ!しかし、敵は大殿に気付くでしょうか?」

信盛「そこは大殿に任せておけば万事上手くいくわ!って、おい!見えて来たぞ!」
「あれは織田家の家紋旗!あれなら、あそこが織田本陣だと分かりまするな。」


信盛と恒興には大きな家紋旗が見え、左右に各部隊を散らせた。


兼仲「ここに来て、左右に分散するとは!?ええい、ここで我らが分散するのは不味い右の部隊が若干手薄だ!左の部隊を無視して…」

そこに兼仲の部下が
「兼仲様、目の前に別の部隊が!!」

兼仲「何だと?!あ、あれは織田木瓜の家紋!!織田信長本陣だ!ここで会ったが百年目じゃ!左右の部隊は無視して織田本陣に突撃しろ!!目指すは信長の首じゃ!!」


”おおおぉぉぉぉ!”


兼仲達、三好軍は織田本陣へ向け突撃したのだが、織田軍はすでに鶴翼の陣に再編成を終えていたのだった。


信長「信盛、恒興!良くやった!!褒めてつかわす!それにしても馬鹿なのは三好だ。三間槍隊を前に出し敵の騎馬隊の突撃を食い止めろ!!いけーい!」


”わあぁぁぁぁぁぁ!!”


三間槍隊が敵の騎馬隊を押さえてる間に先程左右に散った信盛、恒興の部隊が反転して敵軍の後方に移動したのを見た物見が信長の陣に対して狼煙をあげ報告した。


信長「あの合図は?!よし、おい!坂井隊に後方より伝令を送り短銃を斉射し突撃し敵を分断しろと伝えろ!」
「はっ!」

信長「次に、猿へ伝令を送りそちらの方に逃げて来た敵兵のみ至近距離から大筒で狙い撃てと伝えろ!」
「はっ!直ちに!」



四半刻後、物見から
「信長様!坂井様が敵を見事分断に成功しました!」

信長「よし!すぐに後方の信盛、恒興隊に伝えて分断した後ろ全てを殲滅するように伝えるのじゃ!」
「はっ!」

信長「三間槍隊!中央を少し開けよ!」


三好軍では分断された上に織田軍の三間槍隊に手間取っていた。


兼仲「くそう!隊が分断されたが、構わん前方の織田本陣の槍部隊はどうにかならないのか!」


すると、織田軍の三間槍隊の中央が開いて行くのが見えた。


「兼仲様!敵が左右に移動し始めました!」

兼仲「よし!開いたところに突撃し…」

と、号令がかかる前に信長自ら大軍を率いて突っ込んで来たのだ!


信長「そこに見えるは三好の大将と見たぁぁぁ!ワシが織田信長じゃあぁぁぁ!!」

兼仲「馬鹿め!ワシは三好の大将なぞでは無いわ!ワシは三好家臣・七条兼仲じゃ!大殿は飯盛城の大手門前に今もおるわ!信長覚悟!!」
「なんと?!しかし、馬鹿はお主じゃ!ワシがお前みたいな下郎と刀を交わすと思うか!」


”ババァァァァンン!!”


信長の持っていた二連式馬上短銃が火を吹き、七条兼仲が馬から落ち信長の後方から来た騎馬隊に踏みつけられ体は見るも無残な状態になったのは言うまでもない。


残りを猿達に任せ、信長達・織田本軍は飯盛城に向け突き進んで行った。


信長「敵は前にも出て来れない臆病者じゃ!一気に城諸共、完膚無きまでに滅ぶしてやろうぞ!!」


”おおおぉぉぉぉ!”



                   ★




信長は本隊約一万の兵を従い三好義継居城・飯盛城に向うと、大手門前に三好義継が物凄い形相で仁王立ちしていた。


信長「三好家の臆病者、三好義継!!この信長自ら、貴殿の首を頂きに参上じゃあぁぁぁぁ!!」


義継は臆病者ではないと言おうとしたが、電光石火の速さで馬上の信長の刀の方が若干早く義継の頭が宙に浮いた。


それを上手く受け取った信長は義継の首を高らかと掲げ
「敵総大将・三好義継を討ち取ったぞぉぉぉぉぉぉぉ!!」

と、敵味方に向け大声で言い放った。


それを見た三好軍の残兵達は気力を失い、織田軍に蹂躙されて行き一刻ほどで皆殺しにされた。


信盛と恒興が信長に駆け寄って来た。


信盛「大殿!三好の支城が後一つございますが、如何致しましょう?」
「お前達二人で攻め、先に本丸を落とした者を、高槻城城主に据える事とするというのはどうじゃ?」

恒興「は?しかし、あの城は差ほど重要な城では無いような…」
「馬鹿者!あの城は重要だぞ?京の町も近いし波多野家を滅ぼす為の拠点に成るからの。」

信盛「恒興がいらんのなら、某が貰い受けるが?」

恒興「今の大殿の話で、気が変わり申した!佐久間様には負けませんよ!」
「では二人に任せるとしよう!後処理を猿に任せ、ワシは岐阜に帰還する。吉報を待っているぞ!」



そして、岐阜に帰った信長は早速、次の標的の関東攻略の為、越後の上杉謙信の元に送る書状をしたため、三河の義弟・徳川家康を岐阜に呼んだのだった。






*これまでの織田家と徳川家と上杉家と本願寺と長宗我部家の領地と各城主一覧*




織田家

尾張【織田信秀居城・清洲城、名古屋城・鳴海城・小牧山城は信長の支城】

美濃【織田信長居城・岐阜城、大垣城・曽根城・岩村城は信長の支城】

上野【厩橋城仮城主・柴田勝家】

越前【金ヶ崎城仮城主・前田利家】

伊勢志摩【河尻秀隆居城・安濃津城、大河内城は信長の支城、滝川一益居城・鳥羽城】

紀伊【織田家家臣・滝川一益の配下の熊野水軍頭の九鬼嘉隆居城・新宮城】

大和伊賀【信貴山城・多聞山城・大和郡山城・伊賀上野城は信長の支城】

河内和泉【畠山高政居城・高屋城、松永久秀居城・岸和田城】

摂津【佐久間信盛居城・高槻城、水野秀隆居城・有岡城】

近江【丹羽長秀居城・朽木谷城、森可成居城・佐和山城、観音寺城・日野城・今浜城・小谷城は信長の支城】


徳川家

三河【国主徳川家康居城・岡崎城、長篠城・吉田城は家康の支城】

遠江【曳馬城・二俣城・高天神城は家康の支城】

駿府【駿府城・興国寺城は家康の支城】

相模【小田原城仮城主・織田家家臣でもあり徳川家家臣でもある榊原康政】


上杉家

上野【箕輪城・沼田城は謙信の支城】

越後・信濃・能登・越中【全ての城は謙信の支城で、上杉謙信居城は越後・春日山城】

甲斐【躑躅ヶ崎館には上杉家家臣の鬼小島弥太郎、岩殿城・下山城は謙信の支城】

越前【北ノ庄城仮城主・上杉家家臣の色部勝長】


本願寺

摂津【石山本願寺・飯盛城は本願寺が所有で領地は本願寺領】

伊勢志摩【長島は本願寺領】

紀伊【雑賀城は本願寺が所有で領地は本願寺領】

加賀【尾山・小松・大聖寺は本願寺が所有、領地は上杉領】


長宗我部家

阿波淡路・讃岐・土佐【全ての城は長宗我部家の支城で、長宗我部元親居城は土佐・岡豊城】

伊予【川之江城は長宗我部家の支城】



*城と城主の変更*

森可成大垣城→佐和山城、丹羽長秀観音寺城→朽木谷城、水野秀隆日野城→有岡城

松永久秀信貴山城→岸和田城、金ヶ崎城仮城主→前田利家、池田恒興岩村城城主→信長
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