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第37話 誰がための愛
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重い沈黙が横たわる。
「リベリオ、なぜ、なぜあの時に真実を言わなかったのだ……」
「陛下、それは私への情けです。彼を責めることはおやめください」
「情け? なにが情けなのだ! リベリオを寝取るつもりかと、貴様にもそう言ったはずだ! なぜあの時真実を言わなかったのだ!」
胸が痛む。しかしここまで来て黙るわけにもいかなかった。後ろでじっと俺を見つめるミオがどんな気持ちで聞いているのかと思うと焦燥感が前に出た。
「認めたくなかったからです。陛下が私を愛することはないという事実を、信じたくなかった。卑怯者です」
皇帝は青ざめ、前髪が少し揺れていた。その表情は俺が1番見たくなかったもののような気がする。完全なる拒絶から視線を逸らし、リベリオの方を向いた。
「皇紀リベリオ、貴方の見た未来は私が皇帝陛下と結ばれ、そして嫉妬に狂い陛下を暗殺する。そういう未来だと聞いた。それ以外の未来はわからなかったという理解でよろしいか」
「はい……」
「ではなぜ、アデルを側近にしたのだ」
リベリオはビクッと体を揺らした。
「私の見た未来でもアデルは国の中枢を担いました。レジーが皇帝を暗殺し、国を傾かせた罪の呵責でどこかへ消えた後、国を立て直したのはアデル、その人です」
だから反乱軍に身を寄せたアデルに都合よく歪めた事実を吹聴し、味方につけたというわけか。リベリオはアデルに吹聴した内容を公表されることを恐れてか、カタカタと震えていた。
「皇妃リベリオ、私は感謝しています。貴方が運命を変えたい、そう願わなければここに居る者の数が違ったでしょう。私も皇帝陛下を失わずに済み、弟アデルも反乱軍で後悔する選択をせずに済んだ」
リベリオは顔をあげる。その拍子に涙が散った。ミオと同じくらい、あどけない顔だった。彼もまた無我夢中でどうしたらいいのかわからなくなってしまったのだ。
「陛下、アデルに腕を返してもらうまでの間、しばし裁量をいただきたく存じます」
「な……なぜ……」
「それが陛下への忠義だからです」
皇帝は後ろの玉座にストンと座った。
「アデル、下の領主と和解する。ついてきてくれ。メア、ユキ、手加減はできるか?」
「なんだい、さっきは戦争には足手纏いだと言ったくせに! こちとら名を馳せたタンクなんだよ! 守りに徹しろと言われれば守り通すさ!」
「姉様、その大剣では手加減できません。姉様は後列で」
「私に指図しようなんて百年はやいんだよ!」
メアとユキが痴話喧嘩している間を、アデルが通り抜け、そして俺の前で俯き立ち止まった。
「なぜ、なぜ。リベリオが私に吹聴したことを責めないのです」
アデルが声を振り絞るその光景で、ミオの言葉が脳裏を駆け巡る。
「アデルはそれを信じなかったではないか。だから海を渡って来てくれたのだろう?」
肩を震わせるアデルの頬に片手をそっと寄せる。そして冷たい頬を包んで何度もさすった。1年前、2度と温めてやることができないと絶望した冷たい頬に触れると、こみ上げるものがあって奥歯を噛んだ。
「信じてくれてありがとう……迎えに来てくれて……」
ありがとう、そう言う前にアデルが俺の胸に飛び込んできた。冷たい甲冑に頬を寄せ、アデルはおいおいと泣いた。頭を撫でた時、やはり両腕がないと不便だと、ミオの方を向いた。
ミオは、その青い目から涙を流していた。
「アデル、金や近況を送り続けられたと言っていたな。あれは彼が送ってくれていたのだ。兄弟の行く末を案じ、ずっと俺たちを守ってくれた竜神という種族の者だ」
顔を上げたアデルの頬に、おっかなびっくりミオの大きな手が近づく。どう触っていいかわからないのか、ミオの手が宙を彷徨う。その指をアデルはしっかり握った。
「ミオもついて来れるか? 途中挟まってしまったら、そこで待機してくれ」
メアとユキに合図を送り、アデルの手を引いて走り出す。
「な、なんで!? え? なんでそんな扱いなの? なんで、待ってレジー!」
喚くミオの両手をメアとユキが握り、一同で、宮殿入り口に急行した。
「リベリオ、なぜ、なぜあの時に真実を言わなかったのだ……」
「陛下、それは私への情けです。彼を責めることはおやめください」
「情け? なにが情けなのだ! リベリオを寝取るつもりかと、貴様にもそう言ったはずだ! なぜあの時真実を言わなかったのだ!」
胸が痛む。しかしここまで来て黙るわけにもいかなかった。後ろでじっと俺を見つめるミオがどんな気持ちで聞いているのかと思うと焦燥感が前に出た。
「認めたくなかったからです。陛下が私を愛することはないという事実を、信じたくなかった。卑怯者です」
皇帝は青ざめ、前髪が少し揺れていた。その表情は俺が1番見たくなかったもののような気がする。完全なる拒絶から視線を逸らし、リベリオの方を向いた。
「皇紀リベリオ、貴方の見た未来は私が皇帝陛下と結ばれ、そして嫉妬に狂い陛下を暗殺する。そういう未来だと聞いた。それ以外の未来はわからなかったという理解でよろしいか」
「はい……」
「ではなぜ、アデルを側近にしたのだ」
リベリオはビクッと体を揺らした。
「私の見た未来でもアデルは国の中枢を担いました。レジーが皇帝を暗殺し、国を傾かせた罪の呵責でどこかへ消えた後、国を立て直したのはアデル、その人です」
だから反乱軍に身を寄せたアデルに都合よく歪めた事実を吹聴し、味方につけたというわけか。リベリオはアデルに吹聴した内容を公表されることを恐れてか、カタカタと震えていた。
「皇妃リベリオ、私は感謝しています。貴方が運命を変えたい、そう願わなければここに居る者の数が違ったでしょう。私も皇帝陛下を失わずに済み、弟アデルも反乱軍で後悔する選択をせずに済んだ」
リベリオは顔をあげる。その拍子に涙が散った。ミオと同じくらい、あどけない顔だった。彼もまた無我夢中でどうしたらいいのかわからなくなってしまったのだ。
「陛下、アデルに腕を返してもらうまでの間、しばし裁量をいただきたく存じます」
「な……なぜ……」
「それが陛下への忠義だからです」
皇帝は後ろの玉座にストンと座った。
「アデル、下の領主と和解する。ついてきてくれ。メア、ユキ、手加減はできるか?」
「なんだい、さっきは戦争には足手纏いだと言ったくせに! こちとら名を馳せたタンクなんだよ! 守りに徹しろと言われれば守り通すさ!」
「姉様、その大剣では手加減できません。姉様は後列で」
「私に指図しようなんて百年はやいんだよ!」
メアとユキが痴話喧嘩している間を、アデルが通り抜け、そして俺の前で俯き立ち止まった。
「なぜ、なぜ。リベリオが私に吹聴したことを責めないのです」
アデルが声を振り絞るその光景で、ミオの言葉が脳裏を駆け巡る。
「アデルはそれを信じなかったではないか。だから海を渡って来てくれたのだろう?」
肩を震わせるアデルの頬に片手をそっと寄せる。そして冷たい頬を包んで何度もさすった。1年前、2度と温めてやることができないと絶望した冷たい頬に触れると、こみ上げるものがあって奥歯を噛んだ。
「信じてくれてありがとう……迎えに来てくれて……」
ありがとう、そう言う前にアデルが俺の胸に飛び込んできた。冷たい甲冑に頬を寄せ、アデルはおいおいと泣いた。頭を撫でた時、やはり両腕がないと不便だと、ミオの方を向いた。
ミオは、その青い目から涙を流していた。
「アデル、金や近況を送り続けられたと言っていたな。あれは彼が送ってくれていたのだ。兄弟の行く末を案じ、ずっと俺たちを守ってくれた竜神という種族の者だ」
顔を上げたアデルの頬に、おっかなびっくりミオの大きな手が近づく。どう触っていいかわからないのか、ミオの手が宙を彷徨う。その指をアデルはしっかり握った。
「ミオもついて来れるか? 途中挟まってしまったら、そこで待機してくれ」
メアとユキに合図を送り、アデルの手を引いて走り出す。
「な、なんで!? え? なんでそんな扱いなの? なんで、待ってレジー!」
喚くミオの両手をメアとユキが握り、一同で、宮殿入り口に急行した。
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