【完結】君の記憶と過去の交錯

翠月 歩夢

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記憶を巡って

九話

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「ところで義雄おじさん、少し聞きたいことがあるんですけど……」

「何かね? もしかして恋の悩み、かの?」

「ちっ、違いますよっ!」


  妙なことを聞いてくる義雄おじさんに大袈裟に怒ったふりをして一蹴する。昔はこんなお茶目じゃなかったのに。人はこんなにも変わってしまうものなのか。


「そっ、そんなに怒らなくてもよかろう……?」


 若干肩を落として落ち込んでいるが、それは無視をすることに決めた。手早く昔の春ヶ咲高校のことについて質問しよう。私が通っている学校について聞くのは何ら不自然では無いだろう。上手くいけば、春ヶ咲高校の生徒だったという零を知る手掛かりになるかもしれない。


「そういえば桜空は春ヶ咲に入ったんじゃったっけ?」

「へっ? ……あっ、はい!」


 息を吸い込んで話そうとした瞬間に義雄おじさんから話を振られ、出鼻をくじかれた形になる。


「そーかそーか……懐かしいのう」

「懐かしい、ですか?」


 昔の記憶を記憶を思い出しているのか、遠い目をしている。目を細めているため、元よりシワの多い目尻には小さいシワが更に寄っていた。


「ここの近所にもそこに通っとった子がいたんじゃよ」

「へぇ……」

「制服が変わる前じゃから……えーと、十年くらい前じゃのう」


 え、春ヶ咲の制服が十年前に変わった? それが本当なら、今の制服と見比べれば零が亡くなったのは十年以内かどうかが分かるかもしれない。いつ亡くなったのか、具体的に分かれば調べるのも簡単になる。何とかして、その十年前の制服がどんなのだったか知る方法はないだろうか。


「ちょうど桜空が引っ越してすぐに変わったんじゃったなあ」

「私が、引っ越してすぐ……?」

「そうじゃよ」

「その、前の制服ってどんなのですかっ!」


 私は義雄おじさんに詰め寄る。義雄おじさんは突然詰め寄られ、気圧されたのか後退りした。おろおろとしながらも、ほつれたズボンの中をごそごそと漁る。しばらくして、シワが寄ってクシャクシャになった色褪せた古い写真がポケットから出てきた。

 その写真を手に取り、食い入るように見つめる。今の制服と違う箇所は何処だ? 女子の制服はスカートが無地からチェック模様に変わったと分かったが、男子はぱっと見は特に変化はないように見える。だが、目を凝らして見ると細部が違うと気づけた。

 これは、紛れもなく……零が着ている制服だ。これまで特に意識して見ていなかったせいで制服が違うと気づけなかったんだ。

 ――つまり、零は十年以上前に死んでいる。
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