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繋がる記憶
十話
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次の日、私は駆け足で零のいる公園へと向かった。もちろん、昨日得た情報をいち早く知らせるためである。
公園内へ入るといつもは枝の間で寛いでいる零が出口付近に立って、何かを探している様子でキョロキョロとしていた。
「零っ!」
「あ、桜空。そんなに急いでどうし……」
言い終える前に、私は走ってきた勢いで零にぶつかってしまった。ドンッと衝撃が伝わり、零がよろけたのが分かった。足元の砂が土煙をあげる。
「痛い……」
「ご、ごめんね!」
私がぶつかった箇所なのか、胸付近を手で押さえて不機嫌さを隠すことなく、零は私を見た。その視線に多少の罪悪感を感じつつ、謝罪もなあなあに本題を切り出した。
「実はね、零について分かったことがあるの!」
「……え、分かったことって?」
さっきの不機嫌さは何処へやら、いつも通りの空気を纏った零は優しく聞き返す。例の如く首を傾げ、話の先を促している。
「零は十年以上前に死んでるの」
「どうしてそんなことが分かったの?」
おっとりしている零が珍しく早口になっていた。普段はあまり話に口を挟まず相槌を打っているだけなのだが、今の零は鬼気迫るものがある。
「えっとね、今から十年前に制服が変わったんだって」
「制服?」
「そう。零の制服は私たちの制服よりも前のなの」
私の言葉を聞くと、零は「あっ」と短く呟いて、なんでもないようにさらりと重要なことを言い放った。
「そういえば、俺達の翌年……次の代は制服が新しいものになるって話題になっていた気がする」
「えっ、翌年!?」
翌年に新しい制服になるということは、今から丁度十年前に零は死んだということになる。十年前に春ヶ咲高校に通う一年生だったのなら……もし生きていれば今頃は二十五歳。その時の私は五歳で今は十五歳。零は死んだ時から時間が止まっているから姿は高校生のままだけれど本当は私と十歳も離れている。
「十年前……」
零がいつになく真剣な面持ちで顎に手を当ててぼそりと呟く。数秒後、はっとした彼は何かを確信したかのような表情だった。
「ねぇ、零。何か思い出した?」
「……いいや。何も」
肩を竦めてお手上げだとでも言うような仕草をして見せた。彼の口調はさっきの鬼気迫る様子とは打って変わってどこかさっぱりしていた。
「ああでも、俺が死んだのが十年前って分かって納得したよ」
「えっ……どうして?」
「街の風景が俺の覚えているものとは少し違ったから。十年も経ってたら街も変わってるよなって」
公園内へ入るといつもは枝の間で寛いでいる零が出口付近に立って、何かを探している様子でキョロキョロとしていた。
「零っ!」
「あ、桜空。そんなに急いでどうし……」
言い終える前に、私は走ってきた勢いで零にぶつかってしまった。ドンッと衝撃が伝わり、零がよろけたのが分かった。足元の砂が土煙をあげる。
「痛い……」
「ご、ごめんね!」
私がぶつかった箇所なのか、胸付近を手で押さえて不機嫌さを隠すことなく、零は私を見た。その視線に多少の罪悪感を感じつつ、謝罪もなあなあに本題を切り出した。
「実はね、零について分かったことがあるの!」
「……え、分かったことって?」
さっきの不機嫌さは何処へやら、いつも通りの空気を纏った零は優しく聞き返す。例の如く首を傾げ、話の先を促している。
「零は十年以上前に死んでるの」
「どうしてそんなことが分かったの?」
おっとりしている零が珍しく早口になっていた。普段はあまり話に口を挟まず相槌を打っているだけなのだが、今の零は鬼気迫るものがある。
「えっとね、今から十年前に制服が変わったんだって」
「制服?」
「そう。零の制服は私たちの制服よりも前のなの」
私の言葉を聞くと、零は「あっ」と短く呟いて、なんでもないようにさらりと重要なことを言い放った。
「そういえば、俺達の翌年……次の代は制服が新しいものになるって話題になっていた気がする」
「えっ、翌年!?」
翌年に新しい制服になるということは、今から丁度十年前に零は死んだということになる。十年前に春ヶ咲高校に通う一年生だったのなら……もし生きていれば今頃は二十五歳。その時の私は五歳で今は十五歳。零は死んだ時から時間が止まっているから姿は高校生のままだけれど本当は私と十歳も離れている。
「十年前……」
零がいつになく真剣な面持ちで顎に手を当ててぼそりと呟く。数秒後、はっとした彼は何かを確信したかのような表情だった。
「ねぇ、零。何か思い出した?」
「……いいや。何も」
肩を竦めてお手上げだとでも言うような仕草をして見せた。彼の口調はさっきの鬼気迫る様子とは打って変わってどこかさっぱりしていた。
「ああでも、俺が死んだのが十年前って分かって納得したよ」
「えっ……どうして?」
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