貴方の隣で私は異世界を謳歌する

紅子

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タルの街

知らない間に着々と

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番の存在を告げた後のふたりは、その言葉を呑み込めず、軽く錯乱していた。判っていて、聞いたんじゃないのかよ・・・・。

「番って、あの番だよな?いや、違うな。・・・・!勘違いか!そうか!」

「その番だよ!」

「番が見つからないからといって、そんな幼子を代わりにするなんてダメですよ。あぁ、犯罪者だなんて、そんな・・・・」

「俺のことをどう思っているんだ!」

ふたりして、言いたい放題だ。

「だから、勘違いでも犯罪者でもなく、俺のつ・が・い・だ!」

その後もふたりともぶつぶつと何か呟いている。

「・・・・、番だな。番だ。・・・・。そうなんだな。・・・・、番・・・・」

「・・・・。番なんですね。・・・・、犯罪じゃなくて、・・・・。そうなんですね。・・・・、番・・・・」





漸くしてようやく理解が追い付いたふたりは、ほっと息をつき、泣き笑いの顔で

「「おめでとう(ございます)」」

と喜んでくれた。

おせーよ!!!!



それから、詳細を詰めた。
簡単にいうと・・・・。

「明日は、そいつらがギルドで魔獣を換金しようとしたところで、捕縛だな。死んだはずのお前が目の前に現れりゃあ、ビックリするぜ。その後は、真実の水晶で吐かせる」

「それでいいでしょう。その子、シャナーリエにも話を聞きたいので、明日は、朝からギルドに来てください」

「わかった。朝4の鐘でいいか?」

ふたりが頷き、今日はのところは解散した。








俺の家は、このタルの街にある。シャナをそのまま家に連れ帰って、ベッドに寝かせると眠るシャナの頭を撫でる。ずっと撫でていたいくらいだ。暫くそうしていたが、目覚めそうにない。仕方ないので、軽く夕食を摂り、シャナを抱き締めて眠りについた。




その頃、ザラムとリールは、ふたりしてバーに来ていた。

「「乾杯!」」

「やっと、やっと番を見つけたか」

「ええ。本当に、間に合ってよかったですよ」

「本当にな」

ふたりともガルドラムの番が見つからないことにずっと焦りとやるせなさを感じていた。あと1年もせずに自分達の弟とも呼べる存在を手放さなくてはならなくなるところだったのだ。ここにきて、ようやく見つかった奇跡に感謝せずにはいられない。



万感の思いの中、ふたりの夜は更けていった。







ゆっくりと意識が浮上していく。ふわふわと優しい感じに顔が緩んでいく。気持ちよくてもっとして欲しくて、その優しいのに擦り寄る。頭の天辺に柔らかい何かが触れて、チュッという音と共に離れていった。

??????
なに????

ぼんやりと目を開けると、壁が目に映る。
いや、筋肉だ。
いい筋肉だなぁ、とペタペタと触っているうちに、だんだんと意識がはっきりしてきた。

ピタリと筋肉をペタペタしていた手を止めて、ゆっくりと胸の前で握りこむ。そして、そおっと身体を反対に向けて離れようとしたところで、ぐっと元の位置に戻された。

「おはよう。さっまであんなにぐいぐいすり寄ってきたのに、なんで逃げるんだ?」

頭の天辺にまた柔らかい何かが触れる。そして、こんどはわざと「チュッ」と大きな音をさせる。

キスされたとわかって、顔は真っ赤になっていく。

「ナンデ 一緒ニ 寝テルンデスカ?」

どうしていいかわからず、いっぱいいっぱいの頭で片言に尋ねる。

「昨日、並んでる途中で寝て起きないから、俺の家に連れて帰ってきた」

そういえば、あのとき背中をポンポンされて気持ちよくなって・・・・、寝ちゃったんだ・・・・。

「すいません。ご迷惑をお掛けしました」

「なんで、敬語?迷惑じゃないから気にするな」

また、チュッとキスがおとされる。ガルから発せられる駄々甘の雰囲気がいたたまれない。

ガルってこんな人だった????

がっちり抱き寄せられ、頭を撫でられたり、すりすりと頬を寄せられたり。羞恥に固まったままどうすることもできない。ごりごりと精神だけが削られていく。

ぐう~。
きゅるきゅるきゅる。

「・・・・・・」

雰囲気を全く読まないその音に、今がチャンス!

「お腹すいた!」

憮然と言い放つ。
もう、さっきみたいなのは御免だ。

「ククク。そうだな、起きて飯にしよう」

やっと解放された、ほっ。



昨日までの残り(余ったんだよ、奇跡的に)で朝食を済ませ、今日の予定とあいつらの動向を確認する。

「今日は、朝4の鐘までにギルドへ行く。そこで、ギルマスと衛兵隊長と最終確認だ。シャナにも聞かれると思うが、知っていることは話してくれ。子供の常識を外れないでくれよ?ステータスがばれないように気を付けろ。それと気配と魔力は、消すな」

「気配と魔力????わかった。でも、ステータスは、難しいよ。絶対にぼろが出る。無理だよ」

「・・・・、だよなぁ。」

かわいそうな子を見る目で見ないでよ!
こっちの常識も子供の感覚もわからないんだよ!
プンプン。

ガルは、顎に手をあてて、何かを考えている。

「そうだな。できるだけ、単語で答えろ。長い文章は話すな。単語で答えられないときは、俺を見ろ」

「わかった」

それなら、なんとかなる!・・・・、かもしれない。

「・・・・。まあ、いい。あいつらが今何処に居るか判るか?」

わたしはマップを確認する。

「少し周りが拓けたところにいて、止まったまま動いてない。昨日出発したところとこの街の中間くらい。この街のほうがだいぶ近いかな」

「ああ。だいたい居場所はわかった。本当に、この街にくるんだな」

呆れたようにそう洩らした。

「ねえ、今は何の鐘くらいなの?」

「ん?朝2の鐘が鳴って少ししたくらいだな」

ついでに、鐘について教えてもらった。



朝1の鐘が最初で、朝6の鐘がお昼。
その後は、1の鐘となって、6の鐘で門が閉まる。

朝1の鐘が6時で、朝6の鐘が昼の12時、1の鐘が13時で、6の鐘が18時かぁ。
体感としては、鐘ひとつが2時間くらいに感じるんだよね。
ともあれ、これで時間のことはわかった。



ガルから許可をもらい、早速、料理開始!
もともと料理は好きだけど、今は魔法で簡単楽チン手間いらず。

楽しくてしょうがない♪

次々と作っては、インベントリーに入れることを繰り返す。もちろんおやつやデザートも作った。
初めは、なんとも言いがたい顔をして見ていたガルだったが、わたしの作ったフィナンシェを味見して、あまりの美味しさに目を見開いていた。

「こんな食べ物は初めてだ」

「ん?砂糖は、貴重品?」

「いや、普通に出回っている。ちょっと高いが、食べられないわけじゃない。そうじゃなくて、この柔らかい感じが、初めてなんだ」

「じぁ、どんなお菓子があるの?」

「そうだな、固いお菓子だな。クッキー、ビスケット、飴、あとは、クッキーやビスケットにジャムを挟んだものとか干した果物の砂糖漬け、干した果物を砂糖で固めたやつ」

レパートリー少な!

「じゃあ、柔らかいお菓子は作らない方がいい?」

「いや、作っていい。ここでなら、食べても問題ない」

満面の笑みで許可がおりた。

気に入ったんですね。
ここ限定で食べるんですね。

結局、作ったお菓子は、味見と称して、次々とガルの胃の中に納まり、更に気に入ったものをリクエストされて作り続けるはめになった。
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