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お披露目
料理の講習
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講習の当日。今日から10日かけて登録した料理の全てを作ることになっている。わたしは、恐らく誰も気にも留めていないだろう計量カップや計量スプーン、計りなどを予め幾つか作って持っていった。まず、計ることの大切さを知ってもらうためだ。特にパンやお菓子は必須になってくる。目分量は確実に失敗する。
とはいえ、こういった道具も登録してあるんだけどね。
「ええっと、まずは、これを渡しますね」
計量カップ、計量スプーン、計り、泡立て器大小を取り出した。泡立て器は今後のためだ。それをロイド、クリムト、アーリャ、そしてミーシャに渡していく。今日作るのは卵焼きだけだ。絶体にこれだけで鐘2つ分は費やすと思う。最初にそれを伝えたとき、後3種類はできる!と反発されたけど、無理だと思う。ポトフ、ドレッシングも一応準備はしてきた。
「これはなぁに?」
「分量を量るための器具です。おかず系は慣れれば勘や自分の舌で調整できますけど、お菓子やパンは正確に計量しないと失敗しますから」
あんまりピンときていない顔だね。計量カップや計量スプーンを手に不思議そうな顔をしている。
「まず、私が作るので見ていてください」
卵を割り、登録にある通りに計量し、レシピを正確に再現した。フライパンに油を引き、焼きながらくるくると丸めて・・・・出来上がり。
とても簡単だ。
ちなみにフライパンも四角いわたしの特製。今回はそれも用意した。至れり尽くせりだ。りーぱぱはそこまでしなくていいと言ったけど、ここに来てみたら、案の定、丸いフライパンしか用意されていなかった。ちょっと意地悪かもしれないけど、フライパンは渡していない。聞かれたら渡すつもりでいる。
「さて、どうぞ試食してみてください」
一口サイズの卵焼きをそれぞれ口に運ぶ。ガル、りーぱぱ、ざらぱぱも食べていた。いや、君たちは食べなくていいよ?
「あんな簡単にこの味ができるのか」
「見てる分には私たちの作り方と変わらないわね」
「そうだな。だが、俺たちが作るとこうはならんぞ。形も綺麗だ」
そりゃそうだ。この後作ってもらえば原因ははっきりする。
「では、みなさんも作ってみてください」
どうやら作るのは、ロイド、クリムト、アーリャの3人だけのようだ。ミーシャさんは見学だ。何故ここに居るのかな?暇なのかもしれない。
そして、出来上がったのは・・・・。見た目は、まあ、なんとか。丸いフライパンだからこうなるのは仕方ない。問題の味だけど、作る行程を見ている限り、期待はできない。まず、計量ができていない。小匙1杯の指示に対して、小匙の半分とか山盛りとか。混ぜ方もすごーく雑。あれは絶体に混ざってない。
味見、しないとダメですか?
「それじゃ、試食してみてください」
それぞれ、自分の作った卵焼きを食べてもらう。
「う」
「ぐほ」
「・・・・」
うん。私は食べないでおこう。ガルたちも手を出そうとしない。それが正解だ。
「何が違うんだ?」
「同じように作ったはずだぞ」
「なんでよぅ」
「そうですねぇ。シャナと同じように作っているように見えましたよ?」
ミーシャさんは見ていただけ。そして、彼らの卵焼きには手を出さない。試食した時の顔を見れば、食べたいとは思わないよね。
「分量は正確に計ってください。それと、混ぜるのも。見ていた限り、ちゃんと混ざってないですよ?」
わたしは分量の計り方から教えることになった。そして、道具の大切さも。
「だから、上手く巻けなかったのか」
「計量なんて初めてしたわ」
「ただ混ぜるのにこんなに気を使ったことないぜ」
自分達の大雑把さに気付いてほしい。全てはそこに帰結すると思う。剣や槍、弓矢はあんなに精巧なのに、不思議だ。そういえば、刺繍やレースも手が凝っていて繊細だ。うーん。不思議だ。
さて、説明もしたし、もう一度作ってもらう。
さっきのような大雑把さはなりを潜めた。
「あ、今度は美味しい♪」
「本当だ。シャナが作ったのと変わらない味だ」
「道具ひとつでこうも出来栄えが違うのか」
今度はわたしも少しずつ味見をした。うん。合格。
「まず、このレシピの分量は基本です。もう少し甘めがいいとか塩辛い方がいいとか、あとは料理人のさじ加減次第でお店の味になりますよ」
今度はそれを踏まえて自分の好みの味を探してもらった。3回も作ると自分好みを見つけられたようだ。そして、この日の講習は終わった。
翌日からは、計量もきちんと出来るようになり、1日に3~5品くらいを作ってもらった。おかず系は今後新しいレシピを登録したとしても問題なく作れると思う。ドレッシングやマヨネーズ、ケチャップ擬きは、商業ギルドが大量に作って流通させるようだ。
問題は、お菓子とパン。試しにパウンドケーキを作ってみたけど、惨敗。丸焦げの炭からなかなか抜け出せない。薪釜では、火力の調整が上手くいかないのだ。魔道オーブンもあるけど、高くてなかなか手が出せない。それに、砂糖の扱いに慣れるまでは炭と化すんじゃないかな?
パンは、ドライイーストを使ったバージョンと自家製の果物なんかから作ったイーストを使ったバージョンで作ってもらった。ドライイーストは、採れる場所があまりなく使い道もわからないため流通はしていないそうだ。自家製のイーストも特許登録済だから大丈夫。さて、このパン作りにも問題が・・・・。うん。膨らまないんだよ。第一発酵に成功するまでに1日かかった。ま、そのあとの第2発酵で失敗したけどね。温度管理が出来ないのが原因。やっぱりさ、薪釜は難しいね。魔道オーブンなら楽にできたけど、持ってる平民はなかなかいないから、薪釜で出来るように頑張るそうだ。
そんなこんなで、上手く出来る出来ないはともかく、一通り教え終えた頃、皇宮からざらぱぱに衛兵の緊急連絡用の魔道具を通して連絡が入った。その内容は・・・・。りーぱぱの予想が当たった。皇帝陛下から特許登録したレシピを城の料理人に教えてほしいというもの。理由は、今度のわたしのお披露目に是非とも出したいから。りーぱぱが言っていたそのままの内容だった。これは、当初の予定通りタルの商業ギルドに丸投げした。商業ギルドのいいように対処するだろう。
はあ、よかったぁ。わたしが教えると色々面倒になるもん。りーぱぱ様様だ♪
とはいえ、こういった道具も登録してあるんだけどね。
「ええっと、まずは、これを渡しますね」
計量カップ、計量スプーン、計り、泡立て器大小を取り出した。泡立て器は今後のためだ。それをロイド、クリムト、アーリャ、そしてミーシャに渡していく。今日作るのは卵焼きだけだ。絶体にこれだけで鐘2つ分は費やすと思う。最初にそれを伝えたとき、後3種類はできる!と反発されたけど、無理だと思う。ポトフ、ドレッシングも一応準備はしてきた。
「これはなぁに?」
「分量を量るための器具です。おかず系は慣れれば勘や自分の舌で調整できますけど、お菓子やパンは正確に計量しないと失敗しますから」
あんまりピンときていない顔だね。計量カップや計量スプーンを手に不思議そうな顔をしている。
「まず、私が作るので見ていてください」
卵を割り、登録にある通りに計量し、レシピを正確に再現した。フライパンに油を引き、焼きながらくるくると丸めて・・・・出来上がり。
とても簡単だ。
ちなみにフライパンも四角いわたしの特製。今回はそれも用意した。至れり尽くせりだ。りーぱぱはそこまでしなくていいと言ったけど、ここに来てみたら、案の定、丸いフライパンしか用意されていなかった。ちょっと意地悪かもしれないけど、フライパンは渡していない。聞かれたら渡すつもりでいる。
「さて、どうぞ試食してみてください」
一口サイズの卵焼きをそれぞれ口に運ぶ。ガル、りーぱぱ、ざらぱぱも食べていた。いや、君たちは食べなくていいよ?
「あんな簡単にこの味ができるのか」
「見てる分には私たちの作り方と変わらないわね」
「そうだな。だが、俺たちが作るとこうはならんぞ。形も綺麗だ」
そりゃそうだ。この後作ってもらえば原因ははっきりする。
「では、みなさんも作ってみてください」
どうやら作るのは、ロイド、クリムト、アーリャの3人だけのようだ。ミーシャさんは見学だ。何故ここに居るのかな?暇なのかもしれない。
そして、出来上がったのは・・・・。見た目は、まあ、なんとか。丸いフライパンだからこうなるのは仕方ない。問題の味だけど、作る行程を見ている限り、期待はできない。まず、計量ができていない。小匙1杯の指示に対して、小匙の半分とか山盛りとか。混ぜ方もすごーく雑。あれは絶体に混ざってない。
味見、しないとダメですか?
「それじゃ、試食してみてください」
それぞれ、自分の作った卵焼きを食べてもらう。
「う」
「ぐほ」
「・・・・」
うん。私は食べないでおこう。ガルたちも手を出そうとしない。それが正解だ。
「何が違うんだ?」
「同じように作ったはずだぞ」
「なんでよぅ」
「そうですねぇ。シャナと同じように作っているように見えましたよ?」
ミーシャさんは見ていただけ。そして、彼らの卵焼きには手を出さない。試食した時の顔を見れば、食べたいとは思わないよね。
「分量は正確に計ってください。それと、混ぜるのも。見ていた限り、ちゃんと混ざってないですよ?」
わたしは分量の計り方から教えることになった。そして、道具の大切さも。
「だから、上手く巻けなかったのか」
「計量なんて初めてしたわ」
「ただ混ぜるのにこんなに気を使ったことないぜ」
自分達の大雑把さに気付いてほしい。全てはそこに帰結すると思う。剣や槍、弓矢はあんなに精巧なのに、不思議だ。そういえば、刺繍やレースも手が凝っていて繊細だ。うーん。不思議だ。
さて、説明もしたし、もう一度作ってもらう。
さっきのような大雑把さはなりを潜めた。
「あ、今度は美味しい♪」
「本当だ。シャナが作ったのと変わらない味だ」
「道具ひとつでこうも出来栄えが違うのか」
今度はわたしも少しずつ味見をした。うん。合格。
「まず、このレシピの分量は基本です。もう少し甘めがいいとか塩辛い方がいいとか、あとは料理人のさじ加減次第でお店の味になりますよ」
今度はそれを踏まえて自分の好みの味を探してもらった。3回も作ると自分好みを見つけられたようだ。そして、この日の講習は終わった。
翌日からは、計量もきちんと出来るようになり、1日に3~5品くらいを作ってもらった。おかず系は今後新しいレシピを登録したとしても問題なく作れると思う。ドレッシングやマヨネーズ、ケチャップ擬きは、商業ギルドが大量に作って流通させるようだ。
問題は、お菓子とパン。試しにパウンドケーキを作ってみたけど、惨敗。丸焦げの炭からなかなか抜け出せない。薪釜では、火力の調整が上手くいかないのだ。魔道オーブンもあるけど、高くてなかなか手が出せない。それに、砂糖の扱いに慣れるまでは炭と化すんじゃないかな?
パンは、ドライイーストを使ったバージョンと自家製の果物なんかから作ったイーストを使ったバージョンで作ってもらった。ドライイーストは、採れる場所があまりなく使い道もわからないため流通はしていないそうだ。自家製のイーストも特許登録済だから大丈夫。さて、このパン作りにも問題が・・・・。うん。膨らまないんだよ。第一発酵に成功するまでに1日かかった。ま、そのあとの第2発酵で失敗したけどね。温度管理が出来ないのが原因。やっぱりさ、薪釜は難しいね。魔道オーブンなら楽にできたけど、持ってる平民はなかなかいないから、薪釜で出来るように頑張るそうだ。
そんなこんなで、上手く出来る出来ないはともかく、一通り教え終えた頃、皇宮からざらぱぱに衛兵の緊急連絡用の魔道具を通して連絡が入った。その内容は・・・・。りーぱぱの予想が当たった。皇帝陛下から特許登録したレシピを城の料理人に教えてほしいというもの。理由は、今度のわたしのお披露目に是非とも出したいから。りーぱぱが言っていたそのままの内容だった。これは、当初の予定通りタルの商業ギルドに丸投げした。商業ギルドのいいように対処するだろう。
はあ、よかったぁ。わたしが教えると色々面倒になるもん。りーぱぱ様様だ♪
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