貴方の隣で私は異世界を謳歌する

紅子

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攻防

乗っ取られました

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わたしはジャイを目標に聖剣保持者を連れて転移した。とは言っても、他の人に見つかるわけにはいかないから、神殿の裏側だ。チラホラとアンデッドが彷徨っている。それを屠りながら、神殿に駆け込んだ。

「ジャイ!迎えに来たよぉぉぉぉぉ」

地下にいるジャイたちに向かって大声で呼びかけた。わたしたちの到着を知らないジャイたちに要らぬ緊張をさせないためだ。

「シャナか!!!」

あちらも大声で答えた。

「うーん!!!みんな一緒だよぉぉぉぉ」

「今そっちに行く!!!」

ジャイの大声のあと、暫く待っていると、カタンと音が鳴った。そして、ゆっくりと祭壇脇の床がスライドして地下へと続く階段が現れた。そこからのっそりと顔を出したのはジャイだ。

「ジャイィィィィ!」

わたしはジャイに思いっきり飛びついた。

「うおっ!」

「よかったよぉ。怪我ない?」

猪のような突撃にもジャイは危なげなくわたしを受け止めた。

「大丈夫だ」

「ジャイ、説明を」

りーぱぱもほっとしているが、その声はとても緊迫感がある。ジャイはそっとわたしを下ろすと、りーぱぱたちに向き直って巨人の国の置かれている状況を簡潔に説明した。

「王弟に王宮を乗っ取られた。王弟の背後には破壊神がいる。だが、王弟自身は乗っ取られてはいない。俺が聖剣で切りつけても傷ひとつ負わなかった。定例の訓練を終えて、いつものように俺と騎士団長で報告にあがったんだ。その時にな、視察に出掛けて不在の陛下の代わりにその場に居て、興味本位でか聖剣は人を殺めないのは本当かと問われてな。態々、切りつけさせたんだ。あの時は、本当にヒヤヒヤしたぜ。ただ、以前会った時には魔力はそれほど高くなかったはずなんだが、今は、ガルドくらいありそうなんだよな」

「その時、王宮内部に変わったことは?」

「特になかったと思う」

「そうですか・・・・。ジャイの言う通り破壊神が背後にいるのは間違いなさそうですね。本体は何処かに潜んでいると、そういうことでしょうか・・・・」

「恐らく。王宮の主だった重臣は無事だ。この地下にいる。騎士団もアンデッド対策の訓練が功を奏してほぼ無傷だ。だが、王都民は・・・・。冒険者ギルドも無事を確認しているが他は駄目だな。転移陣や他の通信機能が作動しなくてな。助けも呼べない。城には入れないしな」

だから、わたしたちが気付くのを待っていたと言う。ジャイは半月の間、冒険者ギルドと神殿、それに衛兵の詰め所のある王都の門を行き来して、食料を配ったり、水を確保したりと忙しくしていたらしい。とにかく半月の辛抱だとみんなに言い聞かせて。

「半月も連絡が取れないのに、どの国のギルドでも騒ぎになっていないなんておかしいですね。とりあえず、冒険者ギルドに移動して、転移陣と通信機能を見てみましょう」

転移陣が動かせないとなると、わたしが転移させなければならない。りーぱぱですら出来ないことをわたしがやっちゃうのは不味い。それなら、転移陣をりーぱぱが直したことにした方がマシだ。恐らく、わたしなら直せるとりーぱぱは踏んだのだろう。

「いや、その前に第2王子を救出に行きたい」

「それなら、既に地下牢から龍神の国の皇都に移した」

「そう言えば、国王陛下たちはどうやって城を抜け出したんですか?第2王子殿下だけが地下牢にいるなんて、囮にしても酷すぎる」

「陛下と第1王子はそれぞれ公務で重臣を伴って別々に地方に出掛けていたんだ。王妃様は重臣たちの奥方と子供たちを引き連れて、保養地で懇親会をしていたらしい。2日のことだからと、留守の間、城を預かっていたのが第2王子とその側近達だった。城の警備も普段より手薄だったらしいから、その隙を突かれて、だな。俺は、そっちに行く前の骨休めに宿でゴロゴロしてたんだ。そしたらよぉ、外がアンデッドだらけじゃねぇか。驚いたなんてもんじゃねぇぞ」

で、すぐに神殿に聖水を取りに行ったと。

「計画的ですね」

「そう思う」

「ん?」

「どうした?」

「今、何か引っかかったような。・・・・・・はっ!シャナ!龍神の国に戻ります!ガルドたちはここで待機。すぐに戻ります!」

りーぱぱに急かされて、何が何だか分からないうちに龍神の国の王宮、巨人の国の第2王子を目標に転移した。王子はひとりベッドに寝かされている。慌ててたからここに飛んでしまったけど、人がいなくてほっとした。

「人払いを命じておいて良かった。シャナ、鑑定を」

どうやら、りーぱぱに先見の明があったらしい。そうだよね。じゃなきゃ、りーぱぱが場所を指定するはずだ。ふう。持つべき者は賢い後見人だね♪

(鑑定!)

「何、これ。隷属。主はハイランデルク」

「やはり」

「りーぱぱは分かってたの?」

「確信はありませんでしたが。シャナ、解呪してください」

「うん」

わたしは、聖魔法を使って隷属を解呪した。ステータスから表示が消えたから成功だ。

「さあ、戻りますよ」

わたしたちは慌ただしく、ガルたちの待つ巨人の国の神殿に転移した。

「早かったな」

ガルが私たちを迎えてくれた。ついでにわたしを抱き上げる。もうこれは癖なんだよね。

「ええ。第2王子が生かされたまま地下牢にいたことが引っかかったんです。何故、アンデッドにしないのかと」

「たしかにな。それで?」

全員がりーぱぱに注目した。その中にこの国の騎士団総帥と魔術師団長がいる。地下から出てきたようだ。

「隷属をかけられていました。主はハイランデルク。この国の王弟の名です。ああ、大丈夫です。解呪してきました」

ほっとした様子で騎士団総帥が地下へと戻って行った。陛下たちにこのことを伝えるのだろう。心配しているに違いない。

「リーランス様。王弟殿下は、闇魔法を使えません。彼と同期だった私が保証します。誰が王弟殿下を主として隷属をかけたのでしょう?」

あれ?闇魔法じゃないよ。暗黒魔法だった。だから、聖魔法で解呪したんだもん。りーぱぱは頭を横に振った。

「あれは・・暗黒魔法でした。通常の光魔法では解呪出来なかったことからも、明らかでしょう」

「そんな。やはり、王弟殿下は・・・・」

重苦しい空気がこの場を満たした。ここでわたしに出来ることは何もない。

「早めに国王一家を避難させましょう。冒険者ギルドから転移できればいいのですが・・・・」

「そうでしたね。取り乱して申し訳ありません」

「大人数は目立ちますから、私、シャナ、ガルド、ジャイで様子を見に行きましょう。ザラムとバルは転移する人数の把握と移動する際の班分けを、クレーとシアンは神殿周囲の警戒を頼みます。・・・・ザラムには適宜連絡を入れます」

ざらぱぱはりーぱぱの耳打ちに頷いている。戦闘時のざらぱぱは誰よりも頼りになる。ガルが不機嫌になるし、機嫌を直すのに苦労するから言わないけどね。りーぱぱの人選に、誰も異を唱えることはなく、わたしたちは直ぐさま己のすべきことを把握して行動に移した。
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