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幼年期編
呼び出し
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毒を盛られてから、数日後。体調も戻り、のんびりといつもの木の上でぼーっと物語のことを考えていた。バウンキースの毒殺未遂なんてなかった。いや、バウンキースに限らず、毒を盛られた描写はなかった。これもマリーテレーズが生き残り、アンジェリーナがネルロワイエの婚約者にならなかったことで生じた差異なのか?
「バウンキース殿下。国王陛下がお呼びです」
きっと、毒殺未遂のことだろう。
「分かった」
そう言って木の上からダイブした俺をいつものように危なげなく受け止めてくれた俺の護衛は、そのまま抱き上げて、父様の執務室へと運んでいった。5歳児の歩みでは、父様達を無駄に待たせてしまうから仕方ないのだ。執務室の中に居たのは、父様と宰相閣下、騎士団長、魔法師団長、オーシャック侯爵の5人。母様は居ない。
「呼び出された理由は分かっているな?」
分かってる。だから、人払いがされて、護衛や侍女たちが出ていったすぐ後結界を張った。
「俺の毒殺未遂」
「それと、解毒のことだ」
・・・・ああ。緊急事態だったから、自力で解毒したんだった。医者の到着を待ってたら、確実に死んでた。
「まず、今回のことは例の書物にはなかったよな?」
その通りです、宰相閣下。
「ちょっとずつ未来がズレ始めたんだと思う」
「どういうことだ?」
どうやら、俺と1番交流のある宰相閣下が仕切るようだ。
「マリーテレーズが生きていて、アンジェリーナがネルロワイエの婚約者にならなかった。つまり、今、家族から俺は疎まれておらず、レン兄様との仲は良好なまま。俺たち3人は同じ立ち位置にいる。立ち位置は同じでも、ネルロワイエ異母兄様には圧倒的に不利な状況になった。だから、ダリア離宮に嫌がらせが始まり、食事に毒が盛られた」
要するに、ライバルは少ない方がいいってこと。
「それでは、」
「うん。疑われるのは王妃様。だから、次に何か仕掛けるなら俺たちじゃなくて、あっち」
なるほどって顔しないでよ、騎士団長殿。脳筋か?!
「証拠がない」
ダリア離宮の侍女がひとり亡くなったそうだが、王妃様との接点は皆無。彼女が毒を盛った証拠は出てこなかった。毒殺未遂の犯人は見つかっていないことになる。
「神託って言っても、これから起こる全ての事を教えられたわけじゃない。ズレが生じてるんだから、出来事もズレ始めてる。俺が毒を飲んだのも偶然じゃない。俺が飲まなかったら、マリーが飲んでた。あのジャガイモのスープは、俺とマリーの好物なんだ。マリーなら、確実に死んでた」
5人は難しい顔をしている。
「マリーテレーズが狙われたと?」
「俺は、普段、サラダから食べる。スープを真っ先には飲まない。マリーは、スープから食事を始める。そういうこと」
「そんな。何故、王太子争いに関係の無いマリーが?」
「言わなかった?本来ならマリーテレーズは神託では池に落ちて既に亡くなってる。酷なようだけど、マリーが生きていることは、この世界の有りようとは反しているかもしれないんだ。もし、その差異を修正するように無意識のうちに物事が動いていたら?だから、マリーには細心の注意と警戒が必要なんだ。少なくとも、神託を受けた期間は。オーシャック侯爵も充分過ぎるほど気を付けてね?」
神妙な顔でオーシャック侯爵は頷いた。自分の命が危ないと言われているのだから、心中穏やかとは言えないだろう。
「ところで、あれは即死に近い毒だったとか。何故、バウンキース殿下は、生きておられるのか?」
魔法師団長の疑問はもっともだろう。答えなくちゃダメかなぁ。うん。ダメなんだねぇ。
「ああ。俺、自力で解毒できるんだ」
ここで、俺は仕方なく爆弾を投下した。
「バウンキース殿下。国王陛下がお呼びです」
きっと、毒殺未遂のことだろう。
「分かった」
そう言って木の上からダイブした俺をいつものように危なげなく受け止めてくれた俺の護衛は、そのまま抱き上げて、父様の執務室へと運んでいった。5歳児の歩みでは、父様達を無駄に待たせてしまうから仕方ないのだ。執務室の中に居たのは、父様と宰相閣下、騎士団長、魔法師団長、オーシャック侯爵の5人。母様は居ない。
「呼び出された理由は分かっているな?」
分かってる。だから、人払いがされて、護衛や侍女たちが出ていったすぐ後結界を張った。
「俺の毒殺未遂」
「それと、解毒のことだ」
・・・・ああ。緊急事態だったから、自力で解毒したんだった。医者の到着を待ってたら、確実に死んでた。
「まず、今回のことは例の書物にはなかったよな?」
その通りです、宰相閣下。
「ちょっとずつ未来がズレ始めたんだと思う」
「どういうことだ?」
どうやら、俺と1番交流のある宰相閣下が仕切るようだ。
「マリーテレーズが生きていて、アンジェリーナがネルロワイエの婚約者にならなかった。つまり、今、家族から俺は疎まれておらず、レン兄様との仲は良好なまま。俺たち3人は同じ立ち位置にいる。立ち位置は同じでも、ネルロワイエ異母兄様には圧倒的に不利な状況になった。だから、ダリア離宮に嫌がらせが始まり、食事に毒が盛られた」
要するに、ライバルは少ない方がいいってこと。
「それでは、」
「うん。疑われるのは王妃様。だから、次に何か仕掛けるなら俺たちじゃなくて、あっち」
なるほどって顔しないでよ、騎士団長殿。脳筋か?!
「証拠がない」
ダリア離宮の侍女がひとり亡くなったそうだが、王妃様との接点は皆無。彼女が毒を盛った証拠は出てこなかった。毒殺未遂の犯人は見つかっていないことになる。
「神託って言っても、これから起こる全ての事を教えられたわけじゃない。ズレが生じてるんだから、出来事もズレ始めてる。俺が毒を飲んだのも偶然じゃない。俺が飲まなかったら、マリーが飲んでた。あのジャガイモのスープは、俺とマリーの好物なんだ。マリーなら、確実に死んでた」
5人は難しい顔をしている。
「マリーテレーズが狙われたと?」
「俺は、普段、サラダから食べる。スープを真っ先には飲まない。マリーは、スープから食事を始める。そういうこと」
「そんな。何故、王太子争いに関係の無いマリーが?」
「言わなかった?本来ならマリーテレーズは神託では池に落ちて既に亡くなってる。酷なようだけど、マリーが生きていることは、この世界の有りようとは反しているかもしれないんだ。もし、その差異を修正するように無意識のうちに物事が動いていたら?だから、マリーには細心の注意と警戒が必要なんだ。少なくとも、神託を受けた期間は。オーシャック侯爵も充分過ぎるほど気を付けてね?」
神妙な顔でオーシャック侯爵は頷いた。自分の命が危ないと言われているのだから、心中穏やかとは言えないだろう。
「ところで、あれは即死に近い毒だったとか。何故、バウンキース殿下は、生きておられるのか?」
魔法師団長の疑問はもっともだろう。答えなくちゃダメかなぁ。うん。ダメなんだねぇ。
「ああ。俺、自力で解毒できるんだ」
ここで、俺は仕方なく爆弾を投下した。
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