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学院編
イベントを潰せ!
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ゴトゴトと音を立てて馬車が進んでいく。俺は、今日から学院に通うルナを迎えに行って、今、膝の上にのせている。8年もそれを続けていれば、さすがにルナも慣れて大人しく収まってくれるようになった。
「やっとルナと一緒に通えるようになった」
「ふふふ。アンジュ様やマリー様から学院のことを伺って、ずっと楽しみにしておりましたの。ナイジェル様やレンディール殿下とお昼をご一緒なさっているのでしょう?」
ルナは、物語の通りに、いやそれ以上に愛らしい淑女に成長した。庇護欲をそそる女性的で儚げな外見と、それを裏切る物理的な強さには、惚れ惚れしてしまう。魔法を駆使すれば城の騎士たちと互角に戦える。こんな令嬢どこにも居ないだろう。マリーもアンジェリーナ嬢も強いけどな!
「明日からはルナも一緒だよ。今日は、式が終わったら、街に降りてみない?」
「まあ!宜しいのですか?是非行きたいです」
ルナの目的は、雑貨店だろう。今日着けている髪飾りもデートしたときに俺が購入し贈ったものだ。高価すぎず、かといって、安っぽくはなく、可愛らしくて普段使いには適している。
「さあ、着いたよ」
先に馬車を降り、手をさしのべた。女性がひとりで降りるには、馬車のステップは小さくて一段が高すぎる。そのままエスコートしてルナの教室まで送り届けた。クラスは、爵位に準じているから、侯爵令嬢のルナはAクラスだと分かっている。授業は選択制だから、クラスはあまり重要ではない。
「帰りも迎えに来るから、ここで待ってて」
「はい、キース様。送ってくださり、ありがとうございました」
俺は、ルナの指先に軽く口づけを落として、レン兄様のいる特別室に向かった。周りに同級生がいる中での触れ合いに、ルナは動揺していたが、周りへの牽制は必要だろう?
「遅かったな」
「ああ。教室までルナを送り届けてた」
「ハァ、お前が羨ましい」
ジトッとした目で見られても、俺にはどうしようも出来ない。レン兄様もアンジェリーナ嬢を迎えに行ったりしたいんだろうが、今までは無理だった。
「今日からはネルロワイエ異母兄はミナレア王女を迎えに行くから、レン兄様はアンジェリーナ嬢を迎えに行けばいんじゃない?」
「迎えに行くかな、あいつ」
「通り道だし、行くでしょ。毎日、屋敷を訪ねてるくらいだもん」
レン兄様とミナレア王女のイベントを潰すために、宰相閣下と俺は、ミナレア王女と仲良しのネルロワイエ異母兄を迎えに行かせることにした。そして、レン兄様が学院をウロウロしないようにここで俺と待ち合わせて、入学式の会場へ一緒に行くことになっている。
「迎えに行きたい。今年で最後の学院生活なんだ。少しでもアンジュと思い出を作りたい」
レン兄様は、アンジェリーナ嬢一筋である。他のご令嬢には愛想笑いひとつしない。そのギャップと一途さがご令嬢たちの支持を得ているというのだから、女性の心理は難しい。
「うん。今年はいいんじゃない」
「そう思うか?私もアンジュを膝に乗せたい。額にも頬にも髪にも指先にも口づけたい」
レン兄様の溺愛基準が俺だった。分かってたけど。
「いきなりそれは・・・・。とりあえず、迎えから始めて、その辺は、ネルロワイエ異母兄とミナレア王女の進捗を見て、ってことで。まあ、指先くらいにはいいんじゃないか?」
「お前もナージュもずるい」
最初のうちこそ顔を赤くしていたナージュもすぐに慣れて、マリーに同じことをやり始めた。愛情表現は大事だろ?
「そろそろ行こうか」
「裏庭を突っ切るか?」
「いや、昨日の雨で泥濘んでる。それに急ぐ必要も無いだろ?」
「そうだな」
これは、物語の影響なのか?態々、イベントが起こる時間にその場所を通ろうと提案するレン兄様に背筋がゾクッとした。
「やっとルナと一緒に通えるようになった」
「ふふふ。アンジュ様やマリー様から学院のことを伺って、ずっと楽しみにしておりましたの。ナイジェル様やレンディール殿下とお昼をご一緒なさっているのでしょう?」
ルナは、物語の通りに、いやそれ以上に愛らしい淑女に成長した。庇護欲をそそる女性的で儚げな外見と、それを裏切る物理的な強さには、惚れ惚れしてしまう。魔法を駆使すれば城の騎士たちと互角に戦える。こんな令嬢どこにも居ないだろう。マリーもアンジェリーナ嬢も強いけどな!
「明日からはルナも一緒だよ。今日は、式が終わったら、街に降りてみない?」
「まあ!宜しいのですか?是非行きたいです」
ルナの目的は、雑貨店だろう。今日着けている髪飾りもデートしたときに俺が購入し贈ったものだ。高価すぎず、かといって、安っぽくはなく、可愛らしくて普段使いには適している。
「さあ、着いたよ」
先に馬車を降り、手をさしのべた。女性がひとりで降りるには、馬車のステップは小さくて一段が高すぎる。そのままエスコートしてルナの教室まで送り届けた。クラスは、爵位に準じているから、侯爵令嬢のルナはAクラスだと分かっている。授業は選択制だから、クラスはあまり重要ではない。
「帰りも迎えに来るから、ここで待ってて」
「はい、キース様。送ってくださり、ありがとうございました」
俺は、ルナの指先に軽く口づけを落として、レン兄様のいる特別室に向かった。周りに同級生がいる中での触れ合いに、ルナは動揺していたが、周りへの牽制は必要だろう?
「遅かったな」
「ああ。教室までルナを送り届けてた」
「ハァ、お前が羨ましい」
ジトッとした目で見られても、俺にはどうしようも出来ない。レン兄様もアンジェリーナ嬢を迎えに行ったりしたいんだろうが、今までは無理だった。
「今日からはネルロワイエ異母兄はミナレア王女を迎えに行くから、レン兄様はアンジェリーナ嬢を迎えに行けばいんじゃない?」
「迎えに行くかな、あいつ」
「通り道だし、行くでしょ。毎日、屋敷を訪ねてるくらいだもん」
レン兄様とミナレア王女のイベントを潰すために、宰相閣下と俺は、ミナレア王女と仲良しのネルロワイエ異母兄を迎えに行かせることにした。そして、レン兄様が学院をウロウロしないようにここで俺と待ち合わせて、入学式の会場へ一緒に行くことになっている。
「迎えに行きたい。今年で最後の学院生活なんだ。少しでもアンジュと思い出を作りたい」
レン兄様は、アンジェリーナ嬢一筋である。他のご令嬢には愛想笑いひとつしない。そのギャップと一途さがご令嬢たちの支持を得ているというのだから、女性の心理は難しい。
「うん。今年はいいんじゃない」
「そう思うか?私もアンジュを膝に乗せたい。額にも頬にも髪にも指先にも口づけたい」
レン兄様の溺愛基準が俺だった。分かってたけど。
「いきなりそれは・・・・。とりあえず、迎えから始めて、その辺は、ネルロワイエ異母兄とミナレア王女の進捗を見て、ってことで。まあ、指先くらいにはいいんじゃないか?」
「お前もナージュもずるい」
最初のうちこそ顔を赤くしていたナージュもすぐに慣れて、マリーに同じことをやり始めた。愛情表現は大事だろ?
「そろそろ行こうか」
「裏庭を突っ切るか?」
「いや、昨日の雨で泥濘んでる。それに急ぐ必要も無いだろ?」
「そうだな」
これは、物語の影響なのか?態々、イベントが起こる時間にその場所を通ろうと提案するレン兄様に背筋がゾクッとした。
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