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学院編
ご招待
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秘密基地を造ってから10日後。レン兄様を通じて俺とミルド、ナージュは父様たちから召集がかかった。
「お呼びと伺いました」
俺たちはレン兄様を先頭に父様の執務室を訪ねた。既に人払いを終えており、部屋にはいつものメンバーだけだ。レン兄様はともかく、ミルドとナージュは、緊張して顔色が悪い。
「よく来たな。早速だが、キース。頼んだ」
「はい。じゃ、これを耳に嵌めて。ここに魔力を流す」
3人とも訝しみながらも父様たちの手前、魔道具になっているイヤーカフを俺を参考にして嵌めたあと、躊躇いつつも魔力を流した。
「さあ、行こうか」
父様を先頭に宰相閣下、魔法師団長、騎士団長の順に魔法陣に魔力を流して入っていく。それを見た3人は驚きすぎたのか固まってしまった。
「レン兄様!レン兄様!!!入って!」
「あっ、ああ。何がどうなって?」
ブツブツ言いながら足を踏み入れたレン兄様に続いて、ミルド、ナージュが茫然としながらも入っていった。最後は俺だ。あれから部屋の中がどうなったのか楽しみで仕方ない。魔法陣を潜ると、ソファーや机があるかと思いきや、意外なことに毛足の長い絨毯が敷かれているだけだった。隅の方に魔道具のポットと茶器が備え付けられた棚があり、大きなクッションが至る所に置いてある。父様たちは思い思いの場所でクッションに座り込み寛いでいた。半分寝そべる姿勢の宰相閣下は、リラックスしすぎだ。
「あの、父上。これは・・・・」
「うわっ!なかなかいいんじゃない?クッションは持ち込み?取り敢えず、ここにあるの、使っていい?」
どうしていいのか戸惑うレン兄様とは対照的に、俺はこの空間がとても気に入った。いそいそと自分好みのクッションを見つけると靴を脱いでクッションを抱えて胡座をかいた。本当は宰相閣下みたいに寝転びたかったが、さすがにそこは自重した。
「おっ!キースは分かってるな。いつも椅子だと尻と腰が辛いからな。これなら、快適に過ごせるだろ?ここは、空調も気にする必要がないからな」
「ち、父上!そのような喋り方!その態勢!不敬すぎます!」
俺と友達のように喋る宰相閣下に目を剥いたのはその息子。
「ミルド。そんなに怒ると血管切れそうだよ」
「その方たちもキースを見習って寛いで構わんぞ」
父様に促されて、レン兄様たちもそれぞれクッションに座るが、膝を抱えて畏まっている。3人の俺に向ける視線が、どういうことだ?!と聞いていた。
「ここは、俺が造った亜空間の部屋だから、他には誰も入れないし、入口はあそこだけ。父様の執務室はそこから常に見られるようにしてある。俺も室内が整ってから初めて入った」
レン兄様たちに説明しながら、人数分のお茶を入れた。今度来るときはお茶菓子を持ってこよう。お酒とつまみがあるということは、既に酒盛りをしたのだろう。
「その方たちをここに呼んだのは、この国の存亡に関わる」
「ちょ、ちょっと待ってください父上!」
半ば放心していたレン兄様が起動した。
「どうした?」
「ここをキースが造ったとはどういうことですか?!」
「落ち着け、レン。まず3人はこれを読め」
父様は、神託の聴き取り調査書の簡略版をレン兄様に手渡した。レン兄様たちがそれを読んでいる間、俺たちはこの部屋の内装で盛り上がってしまった。
「このスリッパがいいのだよ」
「裸足で充分だろう?」
「これの良さが分からんとは」
「このクッションのもっと大きいサイズが欲しいんだ」
「ベッドより手軽に休めるな」
「毛布も用意しとくか」
「お酒の種類は豊富にあるのにつまみが貧相じゃない?」
「つまみは毎回持ち込み持ち帰りだ。いつ来られるか分からんからな」
「あっ、なーる」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「眠くなってきた。私に用が出来たらおこしてくれていいぞ?」
「自分だけずるいぞ、バイオール」
「ちょっと飲んでてもいいか」
「いいわけあるか!」
「ちょっとくらい構わんだろ?バイオールのように寝たりはせんぞ?しかし、腹減ってきたな」
「そうだな。キース。ちょっと厨房に行って何かもらってきてくれ」
「つまみも頼むな」
いや、おっさんたち。さすがにちょっと自由すぎやしませんかね?端の方で真面目に調査書を読んで愕然としている3人が憐れになってきた。
「お呼びと伺いました」
俺たちはレン兄様を先頭に父様の執務室を訪ねた。既に人払いを終えており、部屋にはいつものメンバーだけだ。レン兄様はともかく、ミルドとナージュは、緊張して顔色が悪い。
「よく来たな。早速だが、キース。頼んだ」
「はい。じゃ、これを耳に嵌めて。ここに魔力を流す」
3人とも訝しみながらも父様たちの手前、魔道具になっているイヤーカフを俺を参考にして嵌めたあと、躊躇いつつも魔力を流した。
「さあ、行こうか」
父様を先頭に宰相閣下、魔法師団長、騎士団長の順に魔法陣に魔力を流して入っていく。それを見た3人は驚きすぎたのか固まってしまった。
「レン兄様!レン兄様!!!入って!」
「あっ、ああ。何がどうなって?」
ブツブツ言いながら足を踏み入れたレン兄様に続いて、ミルド、ナージュが茫然としながらも入っていった。最後は俺だ。あれから部屋の中がどうなったのか楽しみで仕方ない。魔法陣を潜ると、ソファーや机があるかと思いきや、意外なことに毛足の長い絨毯が敷かれているだけだった。隅の方に魔道具のポットと茶器が備え付けられた棚があり、大きなクッションが至る所に置いてある。父様たちは思い思いの場所でクッションに座り込み寛いでいた。半分寝そべる姿勢の宰相閣下は、リラックスしすぎだ。
「あの、父上。これは・・・・」
「うわっ!なかなかいいんじゃない?クッションは持ち込み?取り敢えず、ここにあるの、使っていい?」
どうしていいのか戸惑うレン兄様とは対照的に、俺はこの空間がとても気に入った。いそいそと自分好みのクッションを見つけると靴を脱いでクッションを抱えて胡座をかいた。本当は宰相閣下みたいに寝転びたかったが、さすがにそこは自重した。
「おっ!キースは分かってるな。いつも椅子だと尻と腰が辛いからな。これなら、快適に過ごせるだろ?ここは、空調も気にする必要がないからな」
「ち、父上!そのような喋り方!その態勢!不敬すぎます!」
俺と友達のように喋る宰相閣下に目を剥いたのはその息子。
「ミルド。そんなに怒ると血管切れそうだよ」
「その方たちもキースを見習って寛いで構わんぞ」
父様に促されて、レン兄様たちもそれぞれクッションに座るが、膝を抱えて畏まっている。3人の俺に向ける視線が、どういうことだ?!と聞いていた。
「ここは、俺が造った亜空間の部屋だから、他には誰も入れないし、入口はあそこだけ。父様の執務室はそこから常に見られるようにしてある。俺も室内が整ってから初めて入った」
レン兄様たちに説明しながら、人数分のお茶を入れた。今度来るときはお茶菓子を持ってこよう。お酒とつまみがあるということは、既に酒盛りをしたのだろう。
「その方たちをここに呼んだのは、この国の存亡に関わる」
「ちょ、ちょっと待ってください父上!」
半ば放心していたレン兄様が起動した。
「どうした?」
「ここをキースが造ったとはどういうことですか?!」
「落ち着け、レン。まず3人はこれを読め」
父様は、神託の聴き取り調査書の簡略版をレン兄様に手渡した。レン兄様たちがそれを読んでいる間、俺たちはこの部屋の内装で盛り上がってしまった。
「このスリッパがいいのだよ」
「裸足で充分だろう?」
「これの良さが分からんとは」
「このクッションのもっと大きいサイズが欲しいんだ」
「ベッドより手軽に休めるな」
「毛布も用意しとくか」
「お酒の種類は豊富にあるのにつまみが貧相じゃない?」
「つまみは毎回持ち込み持ち帰りだ。いつ来られるか分からんからな」
「あっ、なーる」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「眠くなってきた。私に用が出来たらおこしてくれていいぞ?」
「自分だけずるいぞ、バイオール」
「ちょっと飲んでてもいいか」
「いいわけあるか!」
「ちょっとくらい構わんだろ?バイオールのように寝たりはせんぞ?しかし、腹減ってきたな」
「そうだな。キース。ちょっと厨房に行って何かもらってきてくれ」
「つまみも頼むな」
いや、おっさんたち。さすがにちょっと自由すぎやしませんかね?端の方で真面目に調査書を読んで愕然としている3人が憐れになってきた。
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