28 / 34
学院編
王妃様の思惑
しおりを挟む
俺は、ナージュにマリーの確保を任せて、すぐにオーシャック侯爵家にある統括室に秘密裡に転移した。それぞれの空き家とローズ離宮に待機させている魔道具たちに魔法陣の発見を指示しておく。近くにいる諜報員にも偵察機を送り、監視を強化させた。そして、父様への面会依頼もそこそこに、呼び出しておいた4人を秘密基地に押し込んだ。
「魔法師団長殿。例の魔法陣の解析はどうなってる?」
「あれは、我が国のものではないから、なかなか進まないのが現状なのだよ」
「じゃあ、転移の魔法陣に絞り込んで。ぱっと見た感じじゃ、ビクリアール王国じゃなくてグレータール帝国製。王妃様の愛人の2人のうち、ひとりは帝国出だから、そこから仕入れた可能性がある」
「急にどうしたんだ?」
俺の慌て振りに、みんな戸惑っている。
「王妃派の連中が家を購入してるって報告したでしょ。その中のどれかに通じる魔法陣がローズ離宮の何処かにあるはずなんだ。今、魔道具たちに探させてる。何処かにあるはずなんだけど、巧妙に隠されてて見つからないんだ」
「落ち着け、キース」
宰相閣下は俺の肩を掴んで揺さぶった。
「大丈夫。落ち着いてる。騎士団長殿。聖公国側との国境に異常は?」
「ない。商人の出入りが多少多くなったくらいだ」
「それか?怪しいな」
ドン!!!
「あーもー!!!落ち着いて初めから説明しろ!キース!何が起こってるのかさっぱり分からんぞ?!」
宰相閣下がキレた。俺は、落ち着いているつもりだったが、説明がすっぽりと抜けたまま話を進めるくらいには、焦っていたようだ。手で顔を覆って一度大きく息をした。
「ごめん。えっと。まず結論から言うと、王妃様個人はビクリアール王国じゃなくて、グレータール帝国と繋がってる可能性が高い。この前、父様たちと推測した王妃様の狙いは、前提条件が間違ってた。王妃派の貴族は、ビクリアール王国との関係を深めるために王妃様、ひいては、ネルロワイエ異母兄を支援している。それを隠れ蓑にされた。動機は恐らく復讐。ミナレア王女のことを黙認しているのは、この国とビクリアール王国は勿論のこと、あわよくばトロピール王国もグレータール帝国に献上するため」
「それ程までに恨まれることをした記憶はないぞ?」
王妃様の憎しみが理解できないと首を傾げる父様たちだが、これは謂わば逆恨みのようなものだ。
「この国に来て、いろんな制限がかけられたでしょ?ローズ離宮からは簡単に出られないし、お茶会を自由に開けない。ドレスや宝飾品も予算以上に購入できない。貢がせようにも相手がいない。自分好みの男と夜を楽しもうにも王妃派でなければその権力も通じない。辛うじて、王妃派の貴族とは繋がりがあるけど、それ程羽振りもよくなければ、力を持っているわけでもない。祖国でやりたい放題だった王妃様にとって、ここは無い無い尽くしなんだよ。気分は監獄。こんな場所に自分を追いやった祖国もこんな待遇を強要するこの国も苛立ちと憎悪の対象でしかない」
呆れるほどの自分勝手さだ。
「何故、グレータール帝国なんだ?王妃様とは殆ど繋がりがない上、うちとは聖公国と聖公国が管理する聖者の森を挟んでいるから、国境を面していないぞ?」
宰相閣下の指摘は実際にその通りなんだけどね。
「グレータール帝国は、魔法陣において、他の追従を許さないくらい発達している。この国で発見されても解析は難しい。トロピール王国はともかく、この国とビクリアール王国を取り込めば、聖公国を包囲できる。王妃様はグレータール帝国の甘言にのせられて、それに手を貸している。漁夫の利を狙うつもりだ。それにあそこの第2王子がマリーを所望してたよね?」
聖公国を国の内部に取り込むことで得られる利に気付いた父様たちの顔色が変わった。
「帝国に我が国の情報はどれだけ漏れてる?」
「王妃派の手に入れられることくらいかな。王妃様の仕事は母様が担ってるからね。ただ、父様はローズ離宮には足を踏み入れないで欲しい。いつどんなタイミングで何をされるか、まだ予測不可能だから」
父様は重々しく頷いた。ローズ離宮に行くときは、護衛はそれ程連れて行けない。薬を盛られる可能性は高い。今度こそ、後手になんて回ってやるものか!
「魔法師団長殿。例の魔法陣の解析はどうなってる?」
「あれは、我が国のものではないから、なかなか進まないのが現状なのだよ」
「じゃあ、転移の魔法陣に絞り込んで。ぱっと見た感じじゃ、ビクリアール王国じゃなくてグレータール帝国製。王妃様の愛人の2人のうち、ひとりは帝国出だから、そこから仕入れた可能性がある」
「急にどうしたんだ?」
俺の慌て振りに、みんな戸惑っている。
「王妃派の連中が家を購入してるって報告したでしょ。その中のどれかに通じる魔法陣がローズ離宮の何処かにあるはずなんだ。今、魔道具たちに探させてる。何処かにあるはずなんだけど、巧妙に隠されてて見つからないんだ」
「落ち着け、キース」
宰相閣下は俺の肩を掴んで揺さぶった。
「大丈夫。落ち着いてる。騎士団長殿。聖公国側との国境に異常は?」
「ない。商人の出入りが多少多くなったくらいだ」
「それか?怪しいな」
ドン!!!
「あーもー!!!落ち着いて初めから説明しろ!キース!何が起こってるのかさっぱり分からんぞ?!」
宰相閣下がキレた。俺は、落ち着いているつもりだったが、説明がすっぽりと抜けたまま話を進めるくらいには、焦っていたようだ。手で顔を覆って一度大きく息をした。
「ごめん。えっと。まず結論から言うと、王妃様個人はビクリアール王国じゃなくて、グレータール帝国と繋がってる可能性が高い。この前、父様たちと推測した王妃様の狙いは、前提条件が間違ってた。王妃派の貴族は、ビクリアール王国との関係を深めるために王妃様、ひいては、ネルロワイエ異母兄を支援している。それを隠れ蓑にされた。動機は恐らく復讐。ミナレア王女のことを黙認しているのは、この国とビクリアール王国は勿論のこと、あわよくばトロピール王国もグレータール帝国に献上するため」
「それ程までに恨まれることをした記憶はないぞ?」
王妃様の憎しみが理解できないと首を傾げる父様たちだが、これは謂わば逆恨みのようなものだ。
「この国に来て、いろんな制限がかけられたでしょ?ローズ離宮からは簡単に出られないし、お茶会を自由に開けない。ドレスや宝飾品も予算以上に購入できない。貢がせようにも相手がいない。自分好みの男と夜を楽しもうにも王妃派でなければその権力も通じない。辛うじて、王妃派の貴族とは繋がりがあるけど、それ程羽振りもよくなければ、力を持っているわけでもない。祖国でやりたい放題だった王妃様にとって、ここは無い無い尽くしなんだよ。気分は監獄。こんな場所に自分を追いやった祖国もこんな待遇を強要するこの国も苛立ちと憎悪の対象でしかない」
呆れるほどの自分勝手さだ。
「何故、グレータール帝国なんだ?王妃様とは殆ど繋がりがない上、うちとは聖公国と聖公国が管理する聖者の森を挟んでいるから、国境を面していないぞ?」
宰相閣下の指摘は実際にその通りなんだけどね。
「グレータール帝国は、魔法陣において、他の追従を許さないくらい発達している。この国で発見されても解析は難しい。トロピール王国はともかく、この国とビクリアール王国を取り込めば、聖公国を包囲できる。王妃様はグレータール帝国の甘言にのせられて、それに手を貸している。漁夫の利を狙うつもりだ。それにあそこの第2王子がマリーを所望してたよね?」
聖公国を国の内部に取り込むことで得られる利に気付いた父様たちの顔色が変わった。
「帝国に我が国の情報はどれだけ漏れてる?」
「王妃派の手に入れられることくらいかな。王妃様の仕事は母様が担ってるからね。ただ、父様はローズ離宮には足を踏み入れないで欲しい。いつどんなタイミングで何をされるか、まだ予測不可能だから」
父様は重々しく頷いた。ローズ離宮に行くときは、護衛はそれ程連れて行けない。薬を盛られる可能性は高い。今度こそ、後手になんて回ってやるものか!
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
25
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる